青春が道に迷っている時ならば、ずっと迷っていろ。
「…私はね、アンタには心底呆れているんだ。ロージイと上手くいって心からホッとしてる。」
「…ショコラさん?」
「私はあの時聞いていたんだよ。かなり前の話だけども。
アンタがロージイの所に潜入した時、当初浮かれていたよね?
『あのロージイはとても良い女だ。ダメもとで口説いてみる。極上の見かけと身体付きだよね。変な騎士崩れに(ディックさんのことか?)惚れてるみたいだけど、見込みはなさそうでさ。そこに付け入る価値はあるな。』ってさ、そこらの若い忍び連中とね。」
「そ、それはただの軽口で!」
うわあ。セピア君、アンタ最低だわ。
フン!
ショコラさんは鼻で笑った。
「そのあと何を言ったのか覚えてないのかい?
『このままだと、ショコラさんと付き合って…多分結婚することになるんだろう。それはそれで良いけれど。それなりに幸せになれるとは思うんだ。
でもな。
やはりもっとイイ女を狙いたいよね。ワンチャンあるかもな。』ってさ。
あのさあ、噂話をする時はまわりをもっとみなよ。」
何てことを言ったんだよ、ダメじゃん…
「セピア、オマエってヤツは…」
アンちゃんも額に手をやり、顔を左右に振る。
「おまえこそ馬鹿野郎だ。」
ハンゾー君がつぶやく。
「ショコラさん、それは…!そんな事を言った覚えは!!」
「無いとは言わせない。」
ショコラさんの顔は仁王像の様に怖い。
「ガ…ガキだったんです、調子に乗ってたんです……あああ。」
頭を抱えて泣きわめいている。
…私は中身が59歳だから、わからないではない。
男同士は、特に若い男性は酒の席や、または部室や空き教室なんかで時々女性たちを品定めして話しこむんだ。
(源氏物語の雨の夜の品定めみたいにね。)
うっかり聞いて気分が悪くなった事は、ある。
それを当事者のショコラさんが聞いていた。
地獄じゃん。
「セピア。」
ショコラさんはぐいっと顔を近づける。目を逸らして逃げようとするセピア君の顔を掴んで強引に目を合わせる。
「ひいっ。」
「私はね、アンタがロージイに振られた時の予備じゃないんだよ!!
馬鹿にすんな!
思いあがんな!
何様だよ、オマエはっ!!」
目を細めてガンをつけて睨みつける。
それはヤンキーがメンチを切るかのごとし。
「キャン。」
情け無い声をあげるセピア君。尻尾を丸めた犬のよう。
そして立ちあがるショコラさん。姉御と呼んでいいですか。
「だから私はね、単純でまっすぐなヨーゼフさんが好きなんだ。
彼はまっすぐに好意を向けて来る人で何の打算もない。
女を馬鹿にしていない、対等な存在として見てくれているんだよ。
セピア、アンタは仕事仲間だ。だから世話をした。
だけど男としては大嫌いだよ。」
あらあ。出たよ、大嫌いが。
「ショコラさん、違うんだ!あの時一緒にいたヤツらが、いけすかなくて!
ショコラさんに興味深々でさ!
ちょっとだけ牽制したかったんだよ。それでつい…まさか…聞いていたなんて…。」
セピア色の髪を振り乱して茶色の瞳は涙で溢れかえっている。
鼻水で顔はぐちゃぐちゃだ。
「…それで?俺は超良い女のロージイを落とせる程の男で?
ついでに私はそんな自分の馴染みの女だからって?
手を出すなって匂わせていた訳ね?」
ショコラさんの濃いブラウンの目は怒りに燃えている。
視線で人が殺せるなら、
オマエはもう死んでいる。(あべし!ひでぶ!)
「私を下げて自分をあげたことは許せない。
ロージイは私よりもずっと気性が激しい女だ。いつか素手で締め殺されるかもね。ふふふ。
ま、せいぜい仲良くやんな。」
そしてチラリとハンゾー君を見た。
「このアホウはそれでも好きなことは好き、嫌なことは嫌だと言えるヤツだよ。それだけは評価する。
考え方はどうしようもなくひねくれているけどもね。」
吐き捨ててショコラさんは立ち去った。
固まる男性陣。
パチパチパチ!!
思わず拍手をする私。気分はスタンディングオペレーション。
素敵よ!ショコラさん!
それでもね、セピア君が大怪我をした時は世話をしてあげていた。
行方不明の時は心底心配していた。
彼女の懐の深さは凄い。
「ああ、もう。本当にお馬鹿さん達だワね…。」
アンちゃんがため息をついた。
「青春時代」ですね。
森田公一とトップギャランの。タイトルネタ。




