愛されるよりも。愛したかったんだろ?マジで。
誤字報告ありがとうございました。
「なんだ?この馬鹿者どもは?」
あら、アンちゃん。
その手にはカレーヌ様のお店の箱がある。
お茶菓子を買いに行ってくれたのね。なんと気がきくのでしょう。
「シンゴ、この箱を厨房に運んでおけ。後で客に出すんだ。」
「はっ。」
「アンディ様!?あ!レイカさんにシンゴ!」
三人の声が揃った。
ホントに気がついてなかったんだな。
「嫌だ。見てたんですか。お声をかけてくだされば。」
ショコラさんが私を見て慌てる。
「たっ、助けてえ、レイカさあん。この手が痛いんです!」
お、折れそうで…!!」
セピア君が手を押さえてのたうちまわる。
「けっ。どうせショコラに泣き言いって抱きついて、触りまくろうとしたんだろう?!自業自得だぜ。」
「アンディ様…そんなあ。」
「レイカちゃん、悪いけど。」
「わかったわ!」
手を振りかざしてセピア君に近寄る。
私の腕輪がぼうっと青く光る。
ほーら、お仕置きだべえ。
手にチカラを込めて打つ!打つ!打つ!
(加護のおかげか私の手は痛くないよ。)
バシ!
「清めたまえ!」
バシシ!
「払いたまえ!」
バシシシイイイイイ!!
「煩悩退散!精力減退!枯れろ!!萎れろ!抜け落ちろ!」
「な、何のことを後半言ってるのですかあああ!!うっううう。アッアアアア!」
セピア君の悲鳴は響く。
そして腕輪は緩んだ。セピア君の手が青い光に包まれる。
キューちゃんの加護か、龍太郎君のチカラか。傷を治してあげている様だ。
「…なんかめちゃくちゃ言われましたが、助かりました。」
「……オマエ、コレで懲りたか?もうショコラに絡むのはやめろよ。」
アンちゃんが静かに諭す。
「うう、アンディ様。」
腕をなでさすりながらも、まだ立てないらしい。
ざっざっざっ。
ショコラさんが砂利を踏みながらセピア君に近づく。
うん、防犯の為に歩くと鳴る砂利を敷いてるのよ。
「……セピア。アンタ早くロージイと結婚しなよ。そして子供をこさえな。」
ショコラさんは這いつくばるセピア君の隣に立って、見下ろした。
「…ショコラさん…?」
ショコラさんは膝を折って視線を合わせている。
「アンタが常に何人もの女にちょっかいをかけるのは、ひとりがいなくなってもまだ他の女がいる、と安心したかったんだろ?」
何故かその表情は菩薩様の様に優しかった。
「……。」
セピア君の顔からはいつもの調子の良さが消えていた。
これは、ショコラさんは本気でセピア君に引導を渡しに来ている。
「常に自分のまわりに愛情が無いと不安なんだ。」
「…ショコラさん……何で、そんなに…」
セピア君の肩は震えている。
「……私の事をわかってくれるんですか。」
ポタポタ。
砂利の上に水滴が落ちる。
「アンタはひとつ考え違いをしている。」
「…え?」
「アンタは女性からの愛情が欲しいんじゃないんだよ、本当は。
愛情を注いでもいなくならない、嫌がらない相手が欲しいんだ。」
「………。」
セピア君の目から光が落ちた。
アンちゃんは深く腕組みをしている。
ハンゾー君は目を見開いている。
シンゴ君は…まだお菓子を置きにいって不在か。
「…アンタが心底好きだったチル。まだ甘えたかった両親はあっと言う間にいなくなった。
それでアンタの心には穴が空いている。」
「……ショコラさ…ん。」
「怖いんだよね、また好きになった人が…いなくなるのは。心を預けたら相手がいなくなるような気がするんだろう?」
アンちゃんが身じろぎをする。
多分、
「踏みこみすぎだ、ショコラ。」
と止めたいのだろうが、やはり静観することにしたんだろう。
「…だから、アンタには愛すれば愛するだけ愛情を返してくれる、絶対的に盲目的にアンタを愛してくれる存在が必要なんだよ。」
「それで…子供を…ですか?」
「…子供はね、小さいときは本当に親が好きなんだよ。無条件で。」
ああ、それは思う。
「スタンドバイミー」とかでも、あんな酷い親でも子供は慕っていたんだ。
「…ショコラさん…うう。」
セピア君は静かに泣いている。ショコラさんの言葉は岩に染みいるセミの声(松尾芭蕉)の様に染み込んでいるのだろう。
「…今までの彼女の中にだって、アンタを真剣に好きだった子がいただろうに。
アンタは深入りしそうになったら自分で逃げて誤魔化して来たんだよ。」
そうだったのか。
「だけど、ロージイは。祈りを込めたトパーズでアンタを救ったロージイなら。
その愛情を信じられたんだろう?
さあ、彼女と家庭をしっかりと作るんだよ。」
「………。」
セピア君は無言で跪いて泣いている。
彼にもわかったんだ。
ショコラさんが彼を深く理解していたことに。
どこかで間違えなければ。彼女との人生を歩めたことを。
それがどんなにかけがえの無いものだったか。
だけど、もう遅い。
Kinkiキッズです。タイトルネタ。




