ひとに言えず想いと、言葉ばかりが積もっていけば。もどかしさはあなたには良くないね。
「アンタには関係ないだろっ!何しゃしゃり出てンだよ!セピア!」
まるでスケバンのように凄む声が聞こえる。
…ショコラさんである。
怒っている。チョコレート色の髪を振り乱して。
美しいヤマネコが威嚇してるみたいだ。
ここはレストランの裏手である。目隠しのために木で覆われているのだ。
木のかげから、恐る恐る顔を出す。
「ううぅ!だってショコラさん!色んな噂が駆け巡ってえ!オレ、じっとしてられなくってええ!」
うわあ。セピア君半泣きだよ。
「…で?ハンゾー、アンタはなんなの?コイツに引きずられて来たようだけど???」
ショコラさんはハンゾー君に向き直る。
「…い、いえ。それは。」
口ごもるハンゾー君。下を向いている。
告白するならこれが最後のチャンスだぜ、ベイビー。
言葉にできないなら恋は終わり…かもね?
こんな時なのに、頭の中にサ○ンのサウンドが流れるわたくし。
はあっ。
ため息をつくショコラさん。
「…あの、引っ越しをするって聞きました。」
ハンゾー君が言葉を搾り出す。
「…それがアンタに何の関係が?」
バッサリである。
「…いえ。」
「けっ!ハンゾー!オマエってヤツは!
もっとしっかりハッキリしなよっ!言いたいことは言える時に言っとかねえと後悔するんだぜ!」
セピア君の自説が炸裂だ。
「…それは一理ある。」
シンゴ君はポツリと言う。
そうだよね、あなたはいきなりの告白でラーラさんを手に入れたんだ。
私とシンゴ君に気づかないのか、三人の修羅場は続く。
「…ううう!ショコラさあん!オレ、嫌だ嫌だ寂しいよっ!ここを出ていってあんなヤツと住まないでえ!」
セピア君が吠えた。
「…アンタにも関係ないよね!セピア!」
ショコラさんは叱責する。その目はゴミムシを見るようである。
いいぞ!いいぞ!
「わかってるけど!気持ちが追いつかないんだ!」
セピア君はショコラさんに駆け寄る。そして縋りつこうとした。
「…ショコラさん!せめてその胸で泣かせて!
……うううう!イタタタタ!!」
ショコラさんに抱きつこうとしたセピア君だが、弾けるように立ちどまった。
「…くうううう!この左手の痛みが!封印された呪いかっ!ショコラさんに触りたいのにイイイイイ!」
厨二病の少年のように封印された?左手を見せつけるように掲げるセピア君。
その加護の腕輪は赤く光って締め付けている。
…ロージイの怒りである。
バカだね。懲りないヤツだ。
「せ、せめて、触れないのなら!近づくだけでも!ショコラさあああん!」
手を前で交差して近づく。セピア色の髪を振り乱し、自分で自分の身体を抱いてる格好で。
いや?腕輪が付いている左手が彼の前進を止めているのだ。
「ええいっ!」
ジャンプしながらショコラさんに近づくセピア色の忍び。
そこには常識も通用しない。なりふり構わず情熱のパワーがほとばしっている。
「なんちゅー執念だ。アイツすげえな。」
シンゴ君の顔も強張る。
「そしてあれがハンゾーに足りないものだなあ。」
シンゴ君、私もそう思う。
足して二で割れば良い。いやそれでも濃いか。
五倍希釈くらいがちょうどいいかも。
(カル○スやコー○スみたいに。)
「…セピア!しつっこい!」
ショコラさんが、近づくセピア君を蹴り上げる!
「ああっー!ショコラさん!素晴らしい脚力っ!いいっ!」
…私は何を見せられてるんだろう。
「おいっ!ハンゾー!好きなら好きと言えっ!オレの姿を手本にしろよっ!」
「反面教師だ!バカタレ!」
ショコラさんは叫んだ。
アラ。ハンゾー君にも飛び火が。
「…だけどね、ハンゾー。アンタ、このバカを止めもしないってのはどうなの?私が困ってるのがわからなかったの?
少なくともヨーゼフさんならコイツをはがいじめにするし、ブラッキー兄さんなら踏みつけている。」
ショコラさんの言葉と視線は冷たい。
「……それは!」
「私はね、真っ直ぐ気持ちをぶつけてくるセピアの方が、見どころあるとは思うよ。
…恋愛にはね、時には積極性も必要なんだよ!
次に好きになった人には上手くやるんだよ!?
……いいね?ハンゾー。」
そしてかすかに笑った。
ショコラさんの言葉はまったくもって容赦が無かった。
ハンゾー君はガックリと膝から崩れ落ちたのである。
「うおおおっ!手が千切れるう!」
そしてセピア君はのたうちまわっていた。
いとしのエリーからですね。




