それが、恋だなんて言ってくれるなよ。君たちにはお手上げだよ、ややこしくて。
それから、アンちゃんはふいっとどこかに消えた。
いつものことなんで、あまり気にしなかった。
(オイ)
ネコカフェの開店準備でもするか。
子供達も遊ばせて。
「ああ…ネコちゃんって癒されますわあ。」
おや?ネコカフェで猫ちゃんを触りまくっているのは…メアリアンさんだ。
横でガルドルも猫ちゃんを猫ジャラシでじゃらしてる。
そういえばこの人、ネコ好きだったよな。
(グランディ王国物語 32話 『ネコなんか呼んでもこない』に詳しいよ。)
「最近タマちゃんいませんのね。」
メアリアンはクロタを撫でまわしながら言う。
「あの子はネモさんのお使いみたいなモノですからね。神出鬼没なのですよ。」
メアリアンさんもネコラブだけど、ガツガツし過ぎてネコに避けられる人だ。アンちゃんと同じくくりに入る。
クロタはウチの自宅からきたネコで、老猫だからおっとりさんで懐が深いのだ。大人しくメアリアンさんに身体を預けている。
お利口さんだねえ。
「…猫さんを撫でると癒されますわ。最近色々ありましたから。」
「…お疲れ様でした。メンドン国のことはメアリアンさんの御手柄ですよ。」
「うん、ゆっくり撫でてなよ。」
ランド兄がネコカフェのお菓子の在庫をチェックしながら言う。
ハンゾー君は…いないか。
「さっきね、セピア君がきたんだよ。そしてね、ハンゾー君を連れて行った。」
父が事務所から顔を出す。
えっ。
何を企んでいるのだろうか。あの嵐を起こす色ボケは。
「…多分ね。もう間に合わないでしょうけど…最後にちゃんと彼女と話をしろ、と言うのでしょうね。
ハンゾーさんに。」
メアリアンさんはクロタを抱きしめた。
ショコラさんの部屋探しのこととか…話がまわってるんだな。
「チルさんのことをセピアさんは引きずっていたでしょう?
何も言わなくて終わるのは、良くないと思ってるのでしょうね。
彼は彼なりにハンゾーさんを気にかけているのですよ。」
「……。」
そうかあ。気持ちはわからないでもない。
だけど…ショコラさんにはただ、迷惑なだけではないか。
「でもねえ、ハンゾー君はさ、カルラさんといい感じじゃなかったかね。先日うちに来たときもね。
……ほら、ランド。そのクッキー缶はもう賞味期限が短いから。ひっこめなさい。」
父が伝票をめくりながら言う。
ふうっ。
「さっきね、連絡があったんだよ。エドワード様から。
ヨーゼフさんを昼過ぎに連れてくると。」
ランド兄がクッキー缶を棚から下ろしながら、ため息をつく。
「…その連絡を受けたアンディ様が出ていった。
つまり…ショコラの両親を忍びの保養所から連れてこられるんです。」
ひょいっとシンゴ君が顔を出した。真剣な表情を浮かべて。
「…えっ、それって。」
「…エドワード様はスジを通すおかたです。
真面目な交際なら、あまつさえ同棲するならば、あちらのご両親に話を通すでごわす!でしょうね。」
えええっ!
「あ、あら大変!聞いてないわよ!ウチに…レストランに集まるの?」
そんな両家顔合わせってのに?
「多分ね。」
ランド兄が頷く。
「…ちょっとお。お茶菓子どうしよう!それからえーと、掃除も気合いを入れなくっちゃ!」
「レイカ、気にするのそこ?」
ランド兄は呆れていた。
「…ああ、そうか。セピア君がやらかすかも知れないのね。」
手が締め付けられるのを解けるのはワタシか。
「ええ、レイカ義母さん。セピアが暴走しないように私と見に行ってもらえますか。」
「シンゴ君、それはいいけど…お掃除とか…」
お客様が来るならまずは、トイレを掃除しろ。
前世の母の教えである。
「…ブラッキーがめちゃくちゃ磨いてますよ。あちこちを。
その為では無いんでしょうが、溢れる気持ちのままに。」
シンゴ君が苦笑した。
わあ。
「裏庭にセピアとハンゾーがいます。さ、レイカ義母さん。」
ああもう。アンちゃんが居ないときに。
チラリと振り返ってメアリアンさんを見ると、俯いてネコちゃんを撫でていた。
うん、ハンゾー君、失恋決定だものね。
仲を取り持とうとしたメアリアンさんにも忸怩たる想いがあるのだろう。
翔んだカップルの主題歌ですね。「僕らのダイアリー」から。




