危ないパッションに、負けるもんか。飛び込むよ、アクションで。
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「はい!ざるそばお待ち!」
今日もレストランに威勢の良い声が響く。
忍びの若い子達の賄いにお蕎麦を出してるのである。
「そうそう、茹でたそばはすぐに水でしめてな。」
「はい、師匠!」
コハク国の双子のアルク君が、孤児のロラン君に指導している。
「はいっ、三人前追加ね?」
スピカさんも生き生きと働いている。
「ふーん、今日のメニューはざるそばかあ。小鉢もついてるのネエ。最近初夏って感じで暑くなってきたからいいよな。」
「おいしそう。」「たべる。」
子供達もだいたい同じものを食べられるようになってるから、お昼はウチの家族も一緒になる事が多い。
「ある程度人数を回すことに慣れておかねえとな。」
「はい!」
アンちゃんの言葉に頷く若者達。
ロラン君にアニーちゃん、リサちゃん達もキビキビも働いている。
「孤児院での食事作りに慣れてましたけど、やはり違いますね。」
ロラン君は歯を見せて笑った。
そう、ここの形態は社員食堂に近い。交代で手の空いた若手が食べにくるのである。
「ネエ、レイカちゃん。もうすぐこの子達の誕生日でしょ。」
「うん。」
今日は六月の1日だよ。誕生日まであと十九日だ。
「ウチの子の誕生会にエリーフラワー様は来られるかな。」
アンちゃんが子供達に蕎麦を食べさせながら、自分も食べながら言う。
「土曜日だものね。大丈夫じゃないかしら。」
「ちょっとね…エリーフラワー様夫妻に確認したいことがあってね。」
「…?」
何のことやら。
「ショコラ、その顔は聞いてるな?」
アンちゃんがニヤリとする。
ショコラを見ると目が輝いて頬がほんのりと、赤くなっている。
「ヨーゼフさんのことですよね?
今月末でグランディの騎士を辞める予定だと聞きました。エドワード様がお仕事の口利きをしてくださったとか。この後お部屋探しに付き合うんですよ。」
なんと。
「なんだとっ!」
私の心の声にハモるように怒鳴るのはブラッキー君だ。
「おい、私も同行するぞ!二人でお部屋探しなんてっ!
そんな不純で不埒な!」
「ブラッキー、考え過ぎだ。」
アンちゃんが一喝する。
「まあ、騎士団の事は俺には直接関係ないけどな。
ちょっとどうなったかは気にはなってるんだ。
こないだネモさんの所にいったらね、リード様と話をされていてさ。」
ああ、先日のメンドン国との件だわね。
「先日マーズさんがネモさんに、ヨーゼフの再就職として、ブルーウォーター騎士団への所属を頼んでいたそうなんだ。
その時、その話が出てね。公宮の中のことだし、リード様とエドワードは仲が良い。エドワードからの推薦状もマーズさんから預かっていたらしくてね。
ネモさんも確認のつもりでリード様にお話したのさ。
反対はされないだろうと。」
なるほど。
「そしたらリード様がね、
ヨーゼフにはブルーウォーター第一騎士団に入団するより、エリーフラワー様の学園で騎士コースの教師をしてもらったらどうか、とおっしゃるんだ。
何しろ現役のグランディの騎士だったんだからなア。」
「あら、良いじゃないですか。定時で帰れそうですし。危険は無いし。私はブルーウォーターで働くとしか聞いてませんでしたよ。エドワード様の口利きでこちらの騎士団にはいるのだとばっかり。」
ショコラさんは手を叩いて喜ぶ。
「まあなア。どっちの仕事をするかはヨーゼフが決めることだけどな。
で、もう部屋探しか。早いな。」
アンちゃんが伸びをする。
そして横目でショコラさんの方を見て笑う。
「よっぽどすぐにショコラの近くに来たかったんだな。くくく。」
「やだあ、アンディ様。からかわないで下さいよ。」
ショコラさんが手で口を覆う。その表情は明るい。
「エリーフラワー様のところでの仕事の口聞きなら、レイカちゃんが頼んだ方が確実だったかもね。」
ああー、そうかも。私もショコラさんの為ならひと肌脱いだかも。
ヨーゼフ君とも付き合いあるしね。
逆にエリーフラワー様とヨーゼフ君はあまり今まで接点なかったかもね?
「でもまあ、エドワードも多忙だ。副校長と騎士コースの指導じゃな。
ヨーゼフが手伝ってくれりゃ楽になるだろうさ。」
アンちゃんは安心したのか、蕎麦湯をすする。
…ん?
でもさ、何か引っかかるよ。
「…学校、学科…教師………あああっ!?」
「どうしたの、レイカちゃん。」
「アンちゃん、老婆心だとは思うけれど。少し慎重になった方がいいかも。その話。」
「えっ、どうして?」
「…学園には、いるじゃないの…あの強烈なおひとが。」
「強烈?エメリン??なんで?……ああっ!そうか!
あの件か!俺はその場にいなかったけど、シンゴから聞いたんだった…!」
「ええ、あの時。」
皆様覚えておいでだろうか。
サードさんとサリーさんの結婚式でのカレーヌ様の発言。
今は、付き合っている人がいないというヨーゼフ君。
(この時はまだロンド君だった。)
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『ふうん。じゃあ、目を閉じて手を胸に置いて見て?
誰か頭に浮かぶ人いるかしら?』
『ハイ。』
カレーヌ様の言葉に素直に従う、ヨーゼフ君。
カレーヌ様は誰か紹介しようとして、ヨーゼフ君の好みを探ったのだった。
『えっ?まさか…そんな?な、何かの間違い…』
『ねえ、誰が浮かんだの?♬』
『は、始めショコラさんが浮かびまして。』
『まあ!』
『それは良い!』
みんなが盛り上がった。ここまでは、いい。
『で、ですが、その次の瞬間別の顔が浮かんで。それがどんどん大きくなって消えないんです…』
『…誰なの?それは?』
『レイカさん…エメリン先生なんです…』
――――――――――――――――――――
回想ここまで。
「…ああ、それは聞いてますわ。」
ショコラさんの声が怖くなる。
「でもあの後、ヨーゼフさんは私に向き合ってくれましたし、…エメリンに会っていませんよ。」
「ま、まあなア……」
流石のアンちゃんもしどろもどろだ。
「ふふふふふふ。おほほほほ。」
ショコラさんの口から低い笑い声が。
「はーっははははははははは!!」
ああっ。まるで「アラジ○」の「ジャフ○ー」の悪人笑いの様!
(劇○四季のね。)
「エメリンなんかに!この私が!負けるものですかああっ!!!」
ショコラさんに魔王が降臨した!仁王立ちになって手は腰に当てている。
その目はランランと輝いているし、血走っているぞ!
「ひ、ひいいいいいっ。」
すげえ!
元祖・黒い悪魔のアンちゃんまでビビらせているわよ?
「お、落ち着けよ、ショコラ。」
ブラッキー君は慌てている。
檻の中のクマさんのように、ウロウロと歩き回るのみなのだった。
バービーボーイズの「負けるもんか」




