案じるより、なんとやらである。
その時だった。
「アンディさん、お話が。」
メアリアンさんが兄と入ってきた。
後ろにはハンゾー君がいる。
その表情は深刻である。
「メアリアンさん?」
「…これは微妙な話なので…お伝えするのは迷ったんです。だけど、ランドさんもハンゾーさんもアンディさんにお話するべきだと…。お帰りを待っていましたわ。」
メアリアンさんの眉間にはシワが刻まれていて、奥歯にモノが挟まったような言い方をしている。
「場所を変えるか。」
ここはレストラン部分だ。自宅へと入る。
「シンゴには見張らせるから…奴には聞かれてもいいか?」
「ええ、レイカさんも一緒に。」
メアリアンさんに促されて同席する。
「…私、見えてしまったんですの。」
メアリアンさんが切り出す。
ドキリ。
えっ!何か怖いことを話すのかしら、この人は。
悪霊退散!
「…何を?」
アンちゃんが真顔になる。
「…ここのところ、メンドン国のジャラシン妃とご一緒してましたでしょ。」
「…ええ。まだアラン様のところに…グランディにいらっしゃいますがね。」
「あのかたの夭折されたお姉様とか、お友達、優しかったお婆様とお話をしたいとのご要望があって、それで先日霊視をして差し上げたんです。」
「うん、それは聞いているよ。」
アンちゃんが碇ゲンドウのポーズになる。
「…その方達はもう、いらっしゃらなかったのでお役には立てなかったんですけど…代わりに見えてしまったのです。」
「…マズイものが?」
アンちゃんの顔は怖いくらいに真剣だ。
えええ。やはりオカルトなことかしら?
「…ジャラシン妃様はみごもっておいでなんです。
もうひとつ魂が見えましたの。」
メアリアンさんは微笑んだ。
「しかも、ご本人は気づいてらっしゃらないのですわ。
……王族のお子様でしょう?
黙っておくべきか…かなり初期なので、気をつけた方が、良いと…。
本当はご本人の要望がないかぎり、お伝えしてないんですよ。」
「ええっ。」
びっくり仰天するわたし。
「おめでたいけど大変!今日乗馬で遠出なさるって言ってたワ!」
アンちゃんが立ち上がる。
「すぐにご連絡を!」
「…ちなみに姫君ですわ。ひとりっ子で次の子が欲しいとおっしゃってましたから、喜ばれると思いますの。」
メアリアンさんはにこやかに言うのだった。
「ありがとう!メアリアンさん!」
アンちゃんは走りさった。
そうだよ、念願の第二子を…グランディで流産とかしたら、ダメ!絶対。
そして、それを知ったメンドン国のジャラシン様は。
「なんて素敵ですの!ウチの娘をヴィヴィアンナ様のところのキラ王子様に嫁がせますわ!」
とおっしゃったそうだ。
めでたし、めでたし?
これでアラン様のお子様が外国に嫁ぐことはなくなった。
いや、もうなんか王族って大変。
その後は。
「ネモさん、お願いだ。キューちゃんを呼び出してください。
何しろ身重のジャラシン妃様をメンドン国へご安全にお送りしたいのです。キューちゃんに頼んで下さいな。」
「私からも頼むよ。ネモ公。」
アンちゃんとアラン様から頼まれたネモさん。
(母やエドワード様に取り次ぎを頼まなかったのは、王族間の秘密の共有だからである。)
「了解です。キューちゃんも妊婦の為ならやってくれますよ、頼むよ。キューちゃん。
私と一緒にメンドン国までお送りしようね。」
キュー。
現れたキューちゃんを従えて、ネモさんが安全に送ったそうだ。
(無意識にメンドン国にブルーウォーターが恩を売ったことになる。)
良かった。
そして、とりあえずアラン様がグラッシーに会う話は保留になったのである。




