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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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330/357

想いが広がる。子供時代の終わりは近い。ザックは立ち上がる。

 その後は。

「レイカ叔母さん!お祖母ちゃん!沢山魚を釣ったよ!」

ミルドルが屈託のない笑顔で帰ってきた。


ああ、アンタはまだまだ子供だね。

ホッとするわよ、おばちゃん。

ハンゾー君も一緒に子供達と帰ってきた。

ご苦労様。顔が疲れているね…。


「あ…そういえばザックの姉さん、大丈夫?なんか食べられそう?

そうだ、綺麗な石を拾ったんだよ!お守りにどうかな?」

「あら、ほんと。綺麗な石じゃないの、ミルドル。」

母がニコニコとして奥にある水晶玉の横においた。

「これね、キューちゃんから貰った水晶玉なのよ。横に置いとけば御利益が移るかもしれないわねえ。」


なるほど?

良くみれば翡翠みたいな緑の石だ。いや?マジで翡翠かもしれん。

おお、水晶玉から光が出て包み込んだよ。

青く光っていく石。ミルドルや母の願いでキューちゃんの加護がついたのだろうか。

「ま、まあ!そんな私に?勿体ないですわ…」

「何を言うんですか。ザックの大事なお姉さんだもの。この石が少しでも、役に立てば嬉しいよ。」

ニコニコとするミルドル。彼の笑顔には少しの曇りもない。善意100%だ。


「ミルドルさん…ああ、これは。」

ザックでは勝てないわ。と言う言葉を飲み込んだのね…。



「…凄いな。流石に神獣様にも、愛されている…善良なモルドールの一族だ。」

ポツリと、ザックが言う。

「かなわないなあ。」

そして下を向いた。

……かなわないなあ、ミルドルには、と言いたかったんだね。キミも。


「…ザック。俺はオマエの気持ちがわからないでも、ないよ。」

ハンゾー君が真面目な顔で言う。その手は軽く握られている。

「ハンゾーさん…」


「…素直で思ったことを、思った通りに口にできる。しかもそれを皆んなから受け入れられる。

凄いな、とは思う。羨ましいともね。」

下を向いて苦笑する。

「…。」

黙って聞いているザック。


「とてもじゃないが私には、真似が出来なくってね。」

これは、ミルドルにかこつけてヨーゼフ君の事を言ってるのか。


シンゴ君が複雑な表情になっている。



「さあ、じゃあバーベキューにしましょうか。お腹空いたでしょ。準備できてるのよ。」

母が明るい声を上げた。雰囲気をガラリと変えるね、この人は。

「焼きそばも用意したわよ。」

「レイカ様!焼きそばとはなんですか?」

「ああ、アニーちゃん達は初めてだったね。」


和やかに宴は進んでいく。


「ザックの姉さん、これ俺が釣ったイワナですよ!」

ドンが魚を焼いて渡す。

「こっちの焼きそばはどうですか?オレ、こないだの夏祭りの時手伝いをして焼いたから、お手のものですよ。」

リッキーも皿に焼きそばを乗せてカルラさんに進める。

みんないい子達だ。


「このメンバーで食事をするのは久しぶりなんだろ?」

「ええ、ヤマシロさん。オレ、ホントにここに来れて良かったっす。」

焼きそばの青のりを歯につけて泣いてるのはロラン君か。

「昔から感激屋だものね、ロランは。」

ゾフィーさんも和やかだ。


「奥様。あのお嬢様は帰ったのですか?金髪の綺麗な子。」

ドギーがソーセージを食べながら聞いてきた。

「ええ、あの後ココアを飲んでからね。」

母が微笑む。


ピクリ、とザックが身体を震わせる。


「そうかあ。ケイトも残ってて一緒に食えばよかったのにな。」

ドンが鼻をならす。

「そうだよ。こーんな厚い肉、寮じゃ食えねえよ。」

リッキーも串に刺された肉を頬張りながら言う。


「ザックもお姉さんと過ごせて良かっただろ?」

「そうだな…ミルドル。それはそうなんだ。」

ザックは薄く微笑む。

「ミルドル。」

「何?」

「オマエはいいやつだよな。」

その声は硬い。

「何言ってんだよ。何も、出ないよ。」

額面通りに受け取って照れるミルドル。

ドンとリッキーが固唾を飲んで二人を見守っている。

「頼むから、オマエはその…好みを突き通してくれ。

歳上で、けったいな女性が好きだと言う。」


「なななななな、何を言ってる。」

ミルドルは慌てる。


「ゾフィーさん、警戒しないでね。ミルドルはエメリン先生が好きなだけなのよ。」

母が慌てて口を挟む。

「わかってますわよ、奥様。ミルドル坊っちゃんが私を見る目にカケラもいやらしさがありませんからね!」

ゾフィーさんは笑う。

ああ、彼女はそう言うことに敏感なんだな。

「それに私はケッタイな人じゃありません。」


…ははは。


「うん、そうだな。この際言っておくよ。」

ザックは、いきなり水を飲み干す。

「ミルドル、ドン。リッキー、聞いてくれ。

オレはな、ケイトが好きなんだよ。」


まわりは静まりかえった。


「…それは、わかってたけど。」

「ああ。」

ドンやリッキーが言葉を押し出す。

二人の表情が固くなってる。


「…えっ。気が付かなかった。」

ミルドル、アンタはそうだよね。


「…さっき告ったら、逃げられた。

でもな。まだ諦めるつもりは、ないんだ。」

うわあ、そこまでぶっちゃけるんかい。


「ええええ!」

「思いきったなあ!」

ドンとリッキーは声をあげた。

その顔は複雑だ、先を越されたと思ってるんだろう。


…ザックはキミ達よりひとつ歳上だ。

そして色々と苦労してきた。

みんなより…大人になるのが早かったんだよ。


「…ああ、そうか。うん、好みは色々だよな。

お互いな?ま、頑張れよ。」



ミルドルは眉尻を下げて、口元だけで笑っている。

(オマエも物好きだよな。)

と言う顔だ。


そしてその表情にはザックへの同意はあるが、ケイトちゃんへの興味が全然ない事が読み取れる。




…彼女が不憫で、おばちゃんの心は痛むのだった。

「闇は広がる」のフレーズからですね。タイトルネタ。

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― 新着の感想 ―
闇は拡がる、ですね。確かに。 でも、ケイトもザックも心に抱えたほんの少しばかり抱えている闇が広がることはないでしょう。 こんな素敵な人たちに囲まれているから。 ハンゾーの言うことが切ないですね。 生ま…
ケイトはなぁ恋ごごろがあれば何してもいい訳ではないし ケイトが思ってる以上にミルドルに対して嫌な言動してきたから ここまでまっすぐなミルドルが嫌だと思われるほどの事をやったケイトは自業自得で その恋ご…
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