若さゆえ、苦しみ、若さゆえにキミに会いたいんだね。
「おい、ザック。言い過ぎだぞ。」
ドンが流石に嗜める。少しクマっぽい黒っぽい髪と目のガタイのいい少年だ。
「まあ、そうだな。ケイトの自業自得ってところもあるけどさあ。」
リッキーはため息をつく。
この子はちょっとだけキツネっぽいんだ。
いつも『ロッキーチャ○ク』のレッドを思いだしちゃう。
三角の顔の輪郭で赤ちゃけた髪で、目がつってる。そして愛嬌があるのよね。
「……。」
ケイトちゃんは下を向いて唇を噛んでいる。
その身体は細かく震えてる。
「ケイトちゃん、とにかく中にお入りなさいな。お茶でも飲んで落ち着きましょう。ね?」
「おばあさま…」
「ヤマシロ君、ハンゾー君。子供達とカルラさんをお願い。いってらっしゃい。」
とりあえず事態の収拾をはかる。
もうキミ達、出かけちゃって。
「はっ、レイカさん。かしこまりました。」
「おい、おまえら行くぞ。」
「そうだな、みんな行こうぜ。」
ミルドルが声をかける。
「お、おう。」「はい、坊ちゃん。」
ザック君は気まずそうな顔をするが、
「さあ、ザック。」
「…うん。」
お姉さんのカルラさんに促されて歩き出す。
チラリと何度も振り返ってケイトちゃんを見る表情は。
……キミの方が泣きそうだよ、ザック君。
言い過ぎたと思ってるんだね。
――――そしてここにいる大人には誰でもわかっちゃったよ。
ケイトちゃんの事が好きなんだね、きっと。
…………ああ。甘酸っぺえ。
「ケイトちゃん、はい。ココア。」
「ありがとうございます…」
リビングに連れて来た。さっきまでカルラさんがいたところだよ。
シンゴ君とラーラさんも来て、遠巻きに見ている。
コトン。
「ケイトちゃん、キミはミルドルを好いていてくれているんだね。」
「えっ。」
コトンと、クッキーを出しながら「耳をすま○ば」で聞いたようなセリフを吐くのは、ウチの父である。
いきなりだなあ。
「お父さん、ズバリ言うわね。」
コレまた懐かしいフレーズを思い出すよ、お母さん。
「いえ、そんな。私がミルドルを…そ、そんなことは。」
赤くなって狼狽えるケイトちゃんである。
「…いいのよ、ここの人達はみんな大人だし。余計なことを…本人には言わないわよ。」
「ラーラさん…」
ラーラさんがそっとケイトちゃんの肩に手をやる。
ケイトちゃんはもちろん、シンゴ君やラーラさんとも顔馴染みだ。
彼女がミルドルの事が好きなのはとっくにみんな知ってる。
「ごめんなさい。…私駄目なんです。どうしても突っかかってしまって。」
ポツリと言葉を押し出す。
ポロポロ。
それと同時に涙も出てくる。
「貴女を見てるとね、」
ラーラさんが眉尻を下げた。
「昔の私を思い出してむず痒いのよ。」
シンゴ君も苦笑する。
「そうだよな、ラーラもそうだった。」
ホント、そう。ツンデレで。
「…シンゴのことが好きなのに。つい憎まれ口ばかり。
ケンカしては落ち込んで。避けられると思いこんで。」
「そうだったんですか!?」
顔を上げるケイトちゃん。その顔には赤みが差している。
「コホン、照れるからやめろ。」
シンゴ君も顔が赤い。
「…だけどな、ケイト。アンタはやり過ぎた。
ラーラはアンタよりは素直だったよ。
ミルドルはアンタに嫌われてると本気で思っているよ。」
シンゴ君の言葉も容赦が無かった。
「…はい。」
またしょげるケイトちゃんだ。
「…まあ、大人の私たちから見るとだね、二人とも青くて若いんだよ。」
父よ。今日は語るなあ。
「来年の高等科からコースが綺麗に分かれるんだろう?自然と距離が開く。…そのうち落ち着いて話せることもあるんじゃないか。月日が経てば。」
「…わかってるんです、だから焦ってしまって。離れて、今までみたいに隣の席で…同じクラスでもなくなっちゃうから。」
「うん。そうね。」
母も頷く。
「…貴方は女官を目指すのよね?文官コースに進むのでしょう?」
「…はい、私には勉強しか取り柄がありませんから。
同じ騎士コースに進むことも…出来ませんし。」
なんと。そこまで思い詰めていたか。
母やシンゴ君と顔を見合わせる。
「…ミルドルはモテるんです。最近。」
「あら。」
満更でも無い顔だよ、母よ。
「…今はドンやリッキーや、ザックがいて私にも何かと声をかけてくれているんです。お昼なんかも一緒に食べてます。」
へええ。紅一点か。
「…ミルドルにランチを誘いにくる女生徒をドンやザックが追い払ってくれるんですよ、オレらが先約だからって。
…でも、来年みんな離れ離れになっちゃう…。
今でも選択授業が増えてて、あまり一緒にいられないのに。
騎士コースで女性騎士志望の女の子が、ミルドルに興味持ったら…どうしよう。」
そしてまた涙を浮かべるケイトちゃんだ。
真珠の涙にみんなイチコロよ(シャランラ♫)じゃ無いけど、ツンデレが発動していない美少女には、つい同情しちゃうなあ。
「…ああ、そうか。アンタはアイツらの姫なんだな。」
シンゴ君が口元をあげる。
「え?」
「いい友達を持ったな。…でもそのうち1人で歩かなくっちゃな。
厳しいことを言えばな?エメリン先生は…性格はともかく才能に溢れた人だ。子供達への気配りは半端ない。
ザックのためにひと肌も、ふた肌も脱いでる。
神竜様に威嚇されながらも、な。」
そうだった。始め龍太郎君はザックのお姉さん救出計画にやる気はあまり無かったけど(エメリン主導と思って)、私が頼んだら快く協力してくれたんだ。
「なあ、ケイト。エメリン先生に勝ってみろよ。
語学?経営学?外交?色んなことを極めてさ、完璧な女官になって、いやもう文官をめざせよ。
この国の中枢に食い込むような存在を目指せ。
ネモ様やリード様に認められるような。
ミルドルの方から惚れ込んで寄ってくる女になれ。」
「シンゴさん…」
パチパチパチ!
拍手してるのは我が母だ。
「そうよ!ケイトちゃん!貴女は学年1の成績なんですものね!」
「おばあさま…」
「本当にそうよ。」
「レイカさん?」
「ブルーウォーターは能力主義だと思うわ。貴族じゃなけりゃ出世しないってことはないはずよ。」
そうだよ、頑張れ。
そのうちミルドルみたいなガキじゃなくて貴女の努力を見てくれる人が現れるよ、きっと。
「…はい。」
ケイトちゃんが顔を上げて微笑んだ。
その時。
「おや、どうしましたか?ハンゾーさん。」
ヒデジーニアスの声が聞こえた。
「レイカさん、御母堂様。カルラさんが貧血を起こして。戻って参りました。」
そこにはハンゾー君に支えられているカルラさんがいた。
…後ろにザックを従えて。
「君に会いたい」ですね。私もサビしか知らないんですが…。ザ・ジャガーズでしたっけ。




