人はそれを青春と呼びます。
ミルドルの学校の友人達が来たら、みんなで川に行くことになっているのだ。彼等を待ちながら庭で準備をする子供達。
弾けるような笑い声が青い空にこだまする。
私と母はお留守番で(シンゴ君とラーラさんもいる)、お昼ご飯の準備をする予定だ。
父とヒデジーニアスも奥にいるよ。
「おばあちゃん、レイカ叔母さん。川で魚を沢山取ってくるからね。バーベキューで一緒に焼こうよ。」
「坊ちゃん、私達も頑張りますよ。」
「私らも。」
ドギマギやロラン達も微笑む。
やはり同年代だ。仲良くなるのは早い。
カルラさんには中でゆっくりしてもらおう。
お茶を勧めた。
「カレーヌ様はお元気?」
「ええ。今度レイカさんのお子様のお誕生日ですから、お祝いのケーキを作るって張り切っておいでですわ。
飴細工も。」
「そうなの?嬉しいわ。」
六月二十日だ。もうすぐである。
ラーラさんの予定日でもあるし、ミネルヴァちゃんの誕生日でもあるのだ。
「猫ちゃんの飴細工を沢山作るのですって。アンディ様もお喜びになるでしょうし。」
あー、どこから食べるか悩むアンちゃんの顔が目に浮かぶよ。
……うん?何か外が騒がしいぞ。
「ザックの声もするみたい?」
様子を見に行くか。カルラさんも立ちあがった。
「え?、なんでだよ?なんでコイツがいるんだよ!」
ミルドルの声?怒っている?
庭には子供達が集まっている。ミルドルの友達が来たら、すぐに川辺に行こうとスタンバイしてたのは前述の通りだ。
「…ごめん、ミルドル。」
「なんかついて来ちゃった。」
ドンとリッキーが眉尻を下げている。
隣に立っているのは見事な金髪の美少女。
ケイトちゃんだ。
ミルドルのクラスメイトでケンカ友達の。
口を尖らせて怒り眉になっている。
「ザック、来たの?」
カルラさんが声をかける。
「姉さん。」
ザック君も困り顔だ。
「あ、あらあら。ケイトちゃん?」
「カルラさん!?」
そうか。この二人は顔馴染みか。
ケイトちゃんはカレーヌ様のところでバイトをしてたんだもの。しかもカレーヌ様には気にいられていた。
「ほらな?俺と姉さんが会うって言ってただろ?」
ぐったりした顔のザック。
「…だって!ほ、ほら!こんなに女の子が!みんなで集団デートのつもりだったんでしょっ!
勉学に励まなきゃいけないの、私達は!特に奨学金をもらったりしてる寮生はね?
ちゃらちゃらと不純異性交際はしちゃダメっ!
特に中等部の間はっ!」
ケイトちゃんは巻くしたてる。
おや、そんな校則あったのかしら?
「は、はいいい?デートお?」
目を丸くするマギーにアニーに、リサ。
「こっ、この人なんか、年上みたいだしっ?ミルドルは年上好きだしっ?」
ケイトちゃんはゾフィーさんを指さす。
「はああああっ?」
口をポカンと開けるゾフィーさん。
「……何を言ってるの?ケイトちゃん。」
「あっ、おばあさま。」
母が奥から出てきた。
そうか。母とも顔馴染みだったな。ケイトちゃんはモルドール領でも、バイトをしていたのだ。
そして、母も彼女を気に入っていた。
「良く働く良い子だもの。」
だ、そうだ。
「だ、だって!ドンもリッキーもここんとこ、ソワソワしちゃって!『今度の日曜日楽しみだな。』『天気が良いといいな。女の子もいるんだろ?』『ああ、ミルドルの所に集まるって。』『えええっ、いいじゃん、いいじゃん。』って!」
あら。それで乗り込んで来たわけか。
「あのね?ケイト。俺はキミに説明したよね?
ここでミルドルやドン達とバーベキューをする、それを手伝うと言うことにして、カレーヌ様が姉さんを寄越してくれたんだ。」
ザック君は静かに怒っている。
「そ!それは。だって。」
「そこにこちらの三人はおばあちゃんの所で働いているんだ。難癖つけるなよ。勝手に押しかけて何を言ってる。」
ミルドルがドギマギとゾフィーさんを指差す。
「…えっ?じゃ、この女性達はミルドルと…住んでるって事?」
ケイトちゃんの顔が真っ青になる。その視線の先はゾフィーさんだ。
「あのな、俺らが浮かれていたのもいけないかも知れないけどさ。ケイト、アンタには関係ないだろ。
俺らは楽しく川遊びとバーベキューをしたかったんだよ。久しぶりに、ミルドルのおばあちゃんにも会いたかったんだ。」
「あら。ドン君たら。」
母の顔がほころぶ。
「それに俺達だってマーズさんに見出された戦災孤児なんだ。
レイカさんところのお三人さんも、ハンゾーさんに孤児院から連れ出してもらったんだろう?話は聞いてるよ。
ちょっとだけ親近感を持ったんだよ。」
リッキーも言葉を添える。
「えっ、そうなの?」
ロラン君の顔がほころぶ。他の子達も緊張感が解けたみたいだ。ゾフィーの顔も優しくなる。
「…それに、わかってるだろ?ケイト。
ミルドルはエメリン先生に夢中だ。
他の誰にも興味を持ってないよ。
例え、一緒に住んでる侍女さん達がどんなに素敵でもね?」
「…ザック。」
ケイトちゃんが後退りをする。
「そして…クラスメイトの女子がどんなに美人でもね、眼中に無いのさ。」
ザック君の言葉は容赦なかった。
タイトルネタは中島みゆきさんの「糸」からですね。




