五月の最後の日曜日の話。
誤字脱字報告ありがとうございます。
しばらくして母がシンゴ君と出勤して来た。
「お義母さん、さっきはお騒がせしました。お義父さんにも宜しくお伝えください。」
「いいえ、良いのよ。こっちこそお父さん、仕事が立て込んでいて出てこなくてごめんなさいね?」
まあ父は、確かに書類仕事が溜まっていたらしいが、顔を出さなかった理由の半分は、濃い人々に恐れをなしていたんだと思う。
エドワード様やマーズ様相手にケロリとしている母の方が凄いのである。
「ねえ、それでね。今度の日曜日なんだけど。」
「ああ、例の件ですか?ミルドルがザックやお友達を連れて集まる、という。」
アンちゃんが顔に手をおいて母に向き合う。
「ええ、近くの河原で釣りをしたりして、その後ウチでバーベキューを。
もちろんドギマギとゾフィーも参加だけど、ここで働いてる子達も連れてくるといいわ。」
「なるほど。子供達の世話係に、ハンゾーを付き添わせるんですね?アイツが連れてきた子達が勢ぞろいですからね。」
アンちゃんの目が光る。そういう名目だ。
もとからそんな計画があったけど、アンちゃんの発言はその辺にいる、忍びの皆さんに満遍なく聞かせるものだ。
ショコラさんとかね。
「それに、アニーちゃんだって、リサちゃんだって、ロラン君だって息抜きしたいでしょ。
もちろん、ドギーやマギーもね?みんな年が近いのだし、同じ所の出身だもの。」
「ザックの他にドンやリッキーも呼びますか。彼らも久しぶりで喜ぶでしょうね。」
「もちろん、カルラさんもね?」
母の言葉に、アンちゃんは頷く。
「いいですね、ザックに会いたいはずですよ。」
それが1番の目的なのだ。カルラさんとザック君の姉弟のふれあいが。
え?1番の目的はカルラさんとハンゾーくんの交流じゃないかって?
うーん…そうね。
「カレーヌ様に根回しをしましょう。カルラさんにお休みをくださるように。
ホント、カルラさんにも良い気晴らしになるでしょうね。ゾフィーと気が会うかもしれない。」
それはそうだ。あの2人は男性恐怖症気味という同じくくりにはいる。
今回は少年ばかりだし、大丈夫だろう?
「そんなに大人数で。護衛がハンゾーだけで大丈夫ですか?」
シンゴ君が不安そうな目を向ける。
確かに。カルラさんとゾフィーさんにドギーにマギー。
ミルドルにザック。多分、ドンとリッキー。
それにロラン、アニー、リサ。
ハンゾー君だけでは心配なのね、シンゴ君は。自分が付いていくつもりかしら。
それに。ゾフィーさんは隣の家に住んでいて、愛妻家で、モルドールと義理の家族のシンゴ君には慣れているし、
ハンゾー君のことは自分達を孤児院から連れ出してくれたし、指導係だから心を開いている。
「シンゴ、オマエはもう、休みの日はラーラについていた方がいいぞ。もうすぐ産まれるだろ。」
アンちゃんが苦笑する。あとひと月足らずで予定日なんである。
「まあ、そうですが。」
「それにザックも中々の剣の使い手だ。自分の身は守れるだろ。エドワードの指導も受けてるしさ。
それにミルドルの腕輪があれば…だいたいのことは大丈夫だろうよ。」
「それも、そうです…ね。」
「うーん、ヤマシロを付けるか。アイツは孤児院の先輩だしな。」
アンちゃんが頭に手をやる。
「ああ。それならゾフィーも大丈夫ですね。」
シンゴ君の顔がゆるむ。
「アイツも苦労人だ。ハンゾーとは相性がいいですから。」
「そうだな。ブラッキーじゃ面倒なことになりそうだからな。」
アンちゃんが声をひそめる。
ブラッキー君はショコラさんの兄だし、腹芸はできない。
例えばミルドルから、
「ねえ、ショコラさん元気?ヨーゼフさんとうまく行ってるの?」
と聞かれたら、
「はい、それはもう。ミルドル坊ちゃんのおかげですよ!」
とか言って、無意識にハンゾー君の心をえぐるであろう。
今は水曜日。金曜日にはメンドン国ご一行がお帰りになる。
日曜日にはハンゾー君の身体もあくだろう。
さて。日曜日。良い天気だ。五月晴れだ。
ショコラさんやメアリアンさんとウチの兄に子供達を頼んで、(従兄弟同士遊ばせてもらって)また母の家に来た。ハンゾー君と三人の孤児を連れてます。
私は、ご飯や下ごしらえの手伝いである。大人数だからね。
(アンちゃんは『ごめーん!ちょっとアラン様に呼ばれちゃって!』とのことだ。)
「あら、ヤマシロ君。」
母の家についたらヤマシロ君がひょいっと現れた。
「レイカさん、どうも、
やあ、ドギーにマギー!ゾフィーと上手くやってるか?
ロランにアニーにリサ!ちゃんとレイカさんの言う事を聞いてるんだろうな?」
同じ孤児院出身者が、自然と家の前庭に集まって、和気藹々としている。
和やかな光景だ。
ゾフィーさんの表情も明るい。
そして歓談しながらテーブルを並べたり、野菜を切ったり。
「お招きありがとうございます。」
そこにカルラさんが来た。
そしてハンゾー君を見て表情がやわらぐ。
ハンゾー君も軽く頭を下げ、
「もうすぐ、弟さんが来ますよ。お友達と一緒に。」
ミルドルもにっこりと笑って付け加える。
「うん、ザックと久しぶりに会うんでしょ。
一緒に来るのは音楽コースの子なんだけどね、気のいい奴らだよ。とりあえず、ザックのお姉さん。
中で休んでいてよ。」
「レイカさん、モルドール夫人。こちらバーベキューのご準備ですか?お手伝いしますわ。」
「いいのよ、座ってて。これからみんなで川遊びをしてそれから、ここでバーベキューの予定なの。大丈夫?」
大分日にも焼けて健康そうだけど。まだまだ白くて細い。
「ええ、カレーヌ様の所でもバリバリ働いておりますから。平気ですよ。今日は郊外の良い空気を楽しみに参りました。」
「ふふ。貧血を起こしたらハンゾー君がおぶってくれるわよ、ね?」
母がウィンクをする。
「そんな。」
赤くなるカルラさんだ。
「あ、それはもう。頼ってください。」
真顔で頷くハンゾー君である。まったく邪心を感じさせない。
これがセピア君とは違うところだな。




