いたいけな瞳。14の瞳は何をうつすのか。
「じゃあミルドルにザック。中でシャワーを浴びて、学校に行きなさい。」
「はーい。おばあちゃん。」
「シャワーをお借りします。おばあさま。」
母は平常運転である。流石だ。
「じゃあ、皆様。ウチのシャワー室も使ってください。特にエドワード様。この後授業なのでは?」
シンゴ君が立ち上がる。
「おお、かたじけない。」
そのあとをヨーゼフ君やマーズさんも付いていく。
「あっ、そうだ。聞いてもいいですか?ヨーゼフ様。」
「なんだい、ミルドル君。騎士の仕事のこととか聞きたいのかい?」
足をとめてニコニコしてミルドルに向き合うヨーゼフ君。
ミルドルの顔は緊張で強張っている。
「ええと…ショコラさんとちゃんと、真面目に付き合ってるんですか?」
「えっ?」
うわお。いきなり忖度なく聞いてきたぞ。
――ははん。
ミルドルよ。母の威を借りてるな。
何しろ母が可愛がっている孫だ。母の前ではミルドルをぞんざいに扱えない。誰もね。
(龍太郎君が怖いからね。さっきのセピア君みたいに。)
アンちゃんは面白そうな表情だ。
ブラッキー君とシンゴ君はポカンと口を開けている。
エドワード様とマーズさんは顔を見合わせている。
ザックはやれやれって表情で、ドギマギとゾフィーは固まっている。
「まあ、ミルドル。何を言ってるの?」
母が眉を上げて嗜めた。
「大人の恋愛事情に首を突っ込むもんじゃありませんよ。」
「だっておばあちゃん。ショコラさんは僕もお世話になってるんだ。
生半可な気持ちで付き合ってもらっちゃ困ります。
セピアの兄ちゃんは気さくで楽しい人だけど、女性にだらしなかったでしょ。
ショコラさんは随分と気を揉んでいたんだ。
だから次の相手には大事にしてもらいたいんだよ。」
きっ。
ミルドルは目にチカラを込めてヨーゼフ君を見る。
十四歳の少年の目はどこまでも真っ直ぐだ。
怖いもん無しの瞳である。
ああもう。
「ヨーゼフ君。うちの甥っ子がすみませんねえ、オホホホ。やあねえ。この子ったら。」
とりあえず笑い話にして流してしまおう。
おばちゃん世代の得意わざである。手を上から下にふるジェスチャー付きだ。
「そうですわよ、おほほほ。気を悪くなさらないでね?
ミルドルはショコラさんやラーラさんとか、サマンサちゃんもね、姉と思って慕ってますのよ、おほほほ。
ほほほほ。」
母も乗っかる。手を振る。
おばちゃん達のパワーで和ませるぞ!
「ああ、はい…そうですね。」
ヨーゼフ君が真顔になる。
ちっ、流さなかったか。
その隣に真面目な顔のエドワード様が立つ。
「ミルドル君。」
「はい。」
「君のその真っ直ぐな気質は素晴らしい。騎士に必要なものだよ。」
柔らかく優しい声でヨーゼフ君はミルドルに話しかける。
「……はい。」
「そうだね、ショコラさんはね、今のところ1番気になって、1番好きな女性なんだ。それは間違いないし、同時に他の女性に目が行くほど私は器用ではないよ。」
「…出過ぎた事をいってすみません。」
「いいんだよ、君は善良で真っ直ぐなモルドール一族なんだものね…」
「そうだな。」
「そうでござるな。」
アンちゃんやエドワード様も頷く。
「ただ、こればかりは相手がある事だからね。」
ヨーゼフ君は静かに笑った。
「そうだな。コイツが本気になったらとても重い奴なんだ。それで何度も女性に逃げられてるからな。」
シンゴ君が口元にアンちゃんそっくりな皮肉な笑みを浮かべる。
「シンゴ、それは余計だろ。だから今回は私も慎重になっているんだよ。」
カリカリ。
ヨーゼフ君は頭をかいた。
豊かな茶色の髪が揺れる。
…やはりこの人は大型犬っぽいぞ。
「やはり異動願いを出すとするかな。ブルーウォーター近くの国境警備に。そしたらすぐ来られるし。」
ヨーゼフ君は腕組みをする。
「うむ。それよりもキッパリとグランディの騎士をやめて、ディックさんが立ち上げた、ブルーウォーターの第一騎士団にはいるでごさる。
なに、拙者がいくらでも推薦するでごわすからな。
安心するでござるよ、わっはっは。」
エドワード様は豪快に笑っている。
「ああ、良いですねえ。私からもネモ兄に話を通しましょう。」
マーズさんがにこやかに笑う。
すげえ。どんどん話が決まっていくぞ。
「そうだな!ここにはシンゴもいるしな!なあ、シンゴ。」
バンバン!
シンゴ君の肩をたたく、ヨーゼフ君。
「ええええ。」
シンゴ君、顔が引き攣っているぞ。




