憧れの甘味だわ。ずうっと前から焦がれていたの。スイートなメモリーズ。
誤字報告ありがとうございます。
その日の夕方。
ショコラさんが帰ってきた。とてもご機嫌だったのでデートは上手くいったのかな。
「レイカさん、お休みありがとうございました。」
「いいのよ、楽しかったなら良かったわ。」
こちらを見てショコラさんは含み笑いをした。
「…ふふふ。とても美味しい巨大パフェでしたよ。」
「巨大パフェ。」
「ええ。『キャロラインのお店』の名物なんです。
高さが50センチはありましたね。」
ああ…前世の日本でもあったな。
巨大パフェ。メニューには五人前相当です。とか、一週間前までに予約してください。とか。
毎回頼もうと思いつつ、なかなか機会がなかった。
高校生には一万近くのお代はキツくて。
二十代ではダイエットしたくて。
…食べてみたかったわあ。
前世の私の憧れがよみがえる。
へえ、この世界でもやっているのね。
「食べきれたの?」
「ええ、なんとか。五人前相当でしたけどね。…飛び入り参加の迷惑な奴が来まして。ふっふふふ。」
わあ、なんか怖い含み笑いだわ。
「あの優待券を使ったから、割引きもしてくれるし、好きな席を選ばせてくれたんです。
『メリイ様と龍太郎様から最高のおもてなしをするようにと承っております。』って。
支配人の手が震えてましたよ。龍太郎様が前日わざわざメリイさんと来て、巨大パフェを食べて帰ったんですって。
二階の外を見下ろせる良い眺めの席を選びましたよ。」
「あらそれは。龍太郎君は巨大パフェを食べたかったのね。きっと。」
あの食いしん坊が食いつかない訳がないのだ。
「ええ。『視察に?査察に?キタヨ!オイラも巨大パフェ食ベタイじゃん!ソレにホントにパフェが巨大か確かめネエとな!』って言って、メリイさんを背中に乗せてのりつけたそうですわ。」
わあ。
「それは目立ったでしょう…かなり迷惑いえ、宣伝になったでしょうね…」
「ええ。王宮から王妃様付きの影、スケカクさん達が駆けつけたそうです。
『何事ですか?』と恐る恐る聞いたら、『メリイとのデートだよ!邪魔スンナヨ!』と威嚇して追い払われたそうで。」
なるほどねえ。
「その連絡はきたワよ。ま、微笑ましいなと思ったけどねえ。」
アンちゃんは苦笑いする。
こちらでは龍太郎君の姿を見るのは慣れっこだからなあ。
「で、メリイさんもわりと…お食べになるほうですから、2人で仲良く完食されたと。」
なるほど。
「それで昨日行ったら問答無用でそのパフェが出ました。」
苦笑するショコラさん。
「もちろん、最高級の材料を使われてました。支配人がつきっきりで。『龍太郎様に宜しくお伝えくださいませええええ!』と五回くらい言われましたね。」
彼は荒神でもあるからね。
母の事をお気に入りだから、普段自覚しないけど、ちょっとご機嫌を損ねたら問答無用で焼かれてしまう恐ろしい存在なのだ。
「それでね、通りを見下ろしながらヨーゼフさんとパフェをつついたんです。」
ショコラさんの頬は赤い。
「なんだか…恋する10代の気持ちになって…楽しかったです…色んな話をして。
特にブラッキー兄の話で盛り上がりましたわ。」
「おお、それは何よりね。アイツは面白いヤツだものネ。それにお互いグランディの王宮勤めだったから顔馴染みなんでしょうヨ。」
アンちゃんも思わず微笑む。
「…それにシンゴの話も。ふふ、まったくロンドことヨーゼフさんはシンゴのことが好きですわよ。」
「はあっ!なんだよ、ソレ!」
あら、シンゴ君いたのね。
「まあなア。くくっ、シンゴの結婚式で泣きながらスピーチするくらいだもんな。」
「やめてくださいっ!アンディ義父さん!」
顔を赤くするシンゴ君である。
ところで気になる事を聞いてみよう。
「こほん。それでさっき言っていた迷惑な飛び入りさんって?」
アンちゃんとシンゴ君が苦笑して顔を見合わせる。
あら?二人ともわかってるの?
「…下を見ながらパフェを食べていたヨーゼフさんが、『あ、セピアだ。やっぱりここを通るんだな。』って言ったんですよ。
そしたら本当にアイツが歩いてましてね。
ヨーゼフさんの声が聞こえたらしく、こっちを見て目を見開いてました。
………ふふふふふふ。あの顔ったら。」
黒い笑みを浮かべるショコラさん。
えええええ。ホントに会ったの??
「影の者はなア、耳が良いからな。」
「ええ、アンディ義父さん。特に自分の名前には反応しますよ。」
ああ、猫ちゃんだって寝てるかと思ったら自分の名前を呼ばれた途端、耳をぴくぴく動かすものね…。
「それで、アイツは店に駆け込んで、階段もドタドタと駆け上がって私たちの席に来たんです。
『これは!どういう事なんですか!ショコラさん!?
何でコイツと、ラブラブパフェを!』って叫びましてね。」
……あああ。
タイトルネタは聖子ちゃんのあの曲からですね。




