オレンジは琥珀色の香り。
キューちゃんの目から青い光が放たれる。
部屋中を満たしていくよ。
「おお、おお!何という慈愛に満ちた青い光でしょうか!」
ダンさんが嘆息する。
特に青い光をまとっているのは我が母である。
「…そのもの青い光をまといて、降り立つべし。神獣と人間との縁を結ばん。」
「何それ?レイカちゃん。」
「いやなに、頭に浮かんだことが勝手に口から出ただけよ、オホホ。気にしないで。」
…ジブ○って頭に染み込んでるなあ、私の世代は。
「この光で浄化とか済んだのカシラ。」
「ええ!アンディ様。五十肩が治りましたぞ!
心なしか腹も引っ込んだ気がします!」
ダンさん、それは気のせいでは。
「せるろーす、つぶし…」
「すばらしき、わざですな。」
こら、ツインズ。本気にしないのよ。
でもさ?いつものキューちゃんなら…口に入れて出す?よね。加護を付けるとき。
今回は光だけで良いのかしら。
シューー!!
ああっ、ダイソンのような吸引力で全てのコハクが(アンちゃんが買う予定のもの以外も)、
ヒュー…ストン!と、
神獣のお口のなかに!
…やっぱりか!やはりこの工程は外せないってか!
「あ、これは何事でございますかあ!」
ダンさんの悲鳴が響く。
「落ち着いて。いつもの事ですわ。」
母はニコニコしながらキューちゃんを撫でる。
ゴクリ。
「うわあっ、ごっくんだ!お腹壊さないの?」
ロランが目を丸くしている。
ドドドドドド!
光と風と一緒に琥珀を吐きだす、キューちゃん。
青い光に包まれていてキラキラと神々しく光っている。
輝きは二割増しになっているようだ。
「はは。やっぱり一度体内にいれるんだなア。」
乾いた笑いのアンちゃん。
「ま、まさか。幻のブルーアンバーになったってことですか?」
ダンさんの目も口も限界まで開かれている。
「そうネ。光によって色が変わるんでしょ。」
アンちゃん物知りだな。
「ええ、太陽光で変わるのです。」
「コハク国の王族の方がお持ちになっています。」
コハク国の双子も説明だ。
うん、青い光が落ち着いてきた。電灯の灯りだと普通のコハクの色だね。
「何か…良い匂いも致しますな。」
くん、と鼻を鳴らすダンさん。
あー、それはね…。
「さっきキューちゃんが夏みかんを食べたでしょ。それが香料となって添加されてるみたいよ。」
わあ。母がバラした。
「え!」
「中に染み込ませたんだ、ですって。良い香りは半永久的に続くって。ん?なあに?部屋の隅に置いておくと害虫避けにもなるの?ありがとう、キューちゃん。良い子ね!」
…そういえば聞いたことあるわ。レモンの香りの成分は〇〇ブリ避けになるとかならんとか…。
キュー。
母が撫で回すと目を細めて良いお返事をする。
「さっきの青い光はサービスなんですってよ!みんな痛い所取れたでしょ?」
「あ、そういえば虫歯が。」
「おでこのニキビがない!」
アニーとリサも自分の顔を触って確認している。
「そしてね、この琥珀にはキューちゃんの加護をたっぷり付けたんだって。
悪い人が近づくと熱くなって知らせてくれたり、物理的な攻撃を弾いてくれたりするそうよ。
…あとは、すばやさやかしこさがあがるとか。」
ドラ○エじゃないんだから。
「じゃあ、リサにアニーに、ロラン、ゾフィー。
キューちゃんに今度はクッキーをあげましょうか。」
「は、はい。」
母と子供達が口にクッキーを放り込む。
ネコカフェのネコの形をしたクッキーがドンドン口の中に飲み込まれていく。噛んでないよね?
五十枚ほど口にすると、
コーーン!
目を細め、舌舐めずりをしてキューちゃんは消えて行った。
「す、凄いものを見ました…」
ダンさんが放心している。
「まあなア。まだ龍の字のほうが意思の疎通が出来るもんなあ。白狐の旦那は行動が読めないことがあるよ。」
アンちゃんは苦笑した。
「それもこれも、お義母さんのおかげです。ありがとうございます。」
「あらあ、何を言うの。アンディさん。ヴィヴィアンナ様のためですもの。それに私達にブローチを買ってくれるのでしょ。」
「ええ、それはもちろん。さア、ダン。幾らまけてくれるのかしら?」
ぶんぶんぶん!
顔を左右に振るダンさん。
「そんな、お代なんかいただけません!
わ、私が持ってきた全ての琥珀に物凄い加護がついております!
お譲りするペンダントやブローチ以外の、イヤリングやピアス、それ以外のアクセサリー…!」
確かに。全部で50はあるもんなあ。
「い、いくつかは家宝にいたしますが、売るとしてもどれくらいの値段がつくか、いやはや…」
「柑橘系の爽やかな香り付き♡だしね。指でこすると良い匂いがするワよ。」
アンちゃん。昔雑誌に付いてたカードじゃないんだから。
(レモンのところをこすってごらん!いいにおいがするよ!ってあったよね。)
ダンさんは幾ら言っても一銭も受けとらず、逆にホクホクして帰って行った。
ま、いいか。
和田慎二さんの「愛と死の砂時計」の中で、宝石に匂いを吹き付けるってのがありました。ちょっとそれを思い出しました。
タイトルネタも和田慎二さんの漫画から。
「オレンジは血の匂い」
神がかっこよかったです。




