美しき宝石(いし)よ。そなたの名前は琥珀。
それから何日か経った。
ここは猫カフェの隣の事務所なんである。
「アンディ様ー!こちらの琥珀でいかがでしょうか!」
ダイシ商会のダンさんが大粒の琥珀を並べている。
その表情は明るい。何よりもアンちゃんに会えた喜びに溢れているのだ。
相変わらずこの人アンちゃん好きだよなあ。
父は苦笑して、離れた所で事務仕事をしている。
ヴィヴィアンナ様のお子様に贈る琥珀を選ぶのだ。
「良いのを見つけて持ってきてよ。」
とアンちゃんが頼んでいたらしい。
「アンディさん、頼まれた通りコハク国の二人を連れてきたけど?」
ランド兄がコハク国ツインズを連れて入ってくる。
後ろでメアリアンさんも苦笑して入ってきた。
「ランド義兄さん。ありがとう。
ふふん。この腹黒タヌキに騙されないようにネ。
コハク国の人間なら琥珀の目利きも出来ると思ったのよ。」
…腹黒タヌキかあ。黒鉄ヒロシは裏切りタヌキだったな。
(クイズダービー)
懐かしいフレーズを思い出していると、
「アンディさまあ!私がアンディ様に不義理をするわけ無いじゃありませんか!」
ダンさんが悲痛な声をあげる。
「うわ、凄いコハクですね!どれもこれも良いものですよ。」
コハク国ツインズのスピカさんがため息をついた。
「ホント、これ。お高いンでしょ?ウチの爺様が持ってたようなやつだ!どれも当主クラスが持つもんですよ、こりゃ。」
その兄のアルクさんもびっくりだ!
「ヴィヴィアンナ様のお祝いに差し上げるのだからネエ。良いのを選んでちょうだいヨ?」
「ええっ!おれらがえらぶのですか?にがおもいです!」
「こちらのどれをえらんでも、もんだいないかと!」
ほらあ。双子達がテンパって言葉がひらがなに。
「ウーン。メアリアンさん、どれかピッ!とくるものないかしら?」
オイ。霊感頼りかよ。
苦笑するメアリアンさん。
ん?あらこっちはブローチ?
「おや、レイカちゃん気にいったの?」
「流石にお目にとまりましたか。アンディ様が奥方様にも琥珀をとおっしゃってましてな!ブローチやらブレスレットもご用意しておりますよ!」
ザラリ。
更に広げられる琥珀達。うわあ。イヤリングにピアス。
ブレスレットにヘアアクセ。
「ヴィヴィアンナ様のお子様にはペンダントをおくられるのでしょう?」
メアリアンさんの目が細くなる。
「どれも清浄な気に満ちてますけども、…特にこちらの琥珀に惹かれますわ。」
すっと二つのペンダントトップを手にとるメアリアンさん。
深くとろりと芳醇なコニャック色に煌めく。
「虫入りが貴重なのでしょうけど、あえて虫入りにしなくても良いと思いますのよ。」
「そうでございます、巫女姫様。なんとお目が高い!こちらのペンダントトップはこの中でも最高級品です!」
ああ…この人はギガントの溺愛された姫だったわね。
いい宝石に触れてきた人だ。沢山の国宝的宝石を目にして、審美眼は養われてきたんじゃなかろうか。
「その最高の原石から二つしかペンダントトップは取れませんでね、まあ小さいカケラは、こちらのブローチにも使われておりますが。」
ほほう。このブローチか。花をかたどっているね。
何となくひまわりや太陽を連想させるわね。
「マルチカラーの琥珀のブローチでございます。いかがですか?」
「レイカさん、いいじゃないですか?」
スピカさんが声をあげた。
「コハク国の民芸品として有名ですよ!豪華な見かけの割には軽いんです。」
アルク君も頷く。
「綺麗だわ。」
うっとりと眺める。
「いいですわね。レイカさんの髪の色や眼の色にも合いますわよ。」
メアリアンさんも微笑む。
「うん、わかったワ。
ねえダン、ヴィヴィアンナ様のお子様に差し上げるのはこっちのペンダントでね。
あとはこのブローチはレイカちゃんにプレゼントするワよ。」
「えっ、いいの。ありがとう。」
やったー!自分で買ってもいいかなと思ってたよ。
「アンディさん。お義母様に頼んでキューちゃんの加護をつけていただいたらいかがですか?」
「ああ!そうネ!メアリアンさん!ナイスだわ。」
「じゃあワシが母さんを呼んでくるよ。」
父が立ち上がる。
「ダン、このブローチはまだある?」
「ええ、アンディ様。」
「お義母さんとお義姉さんにもお揃いでどうかしら。」
「えっ、そんなつもりでは。」
慌てるメアリアンさん。
「いいじゃない!」
頷くわたくし。
「悪いよう。」
遠慮するランド兄。
「くくく。大丈夫よね?ダン。きっと沢山お勉強してくれるワね?」
「はい!アンディ様、もちろんでございますよ!」
そこに母がやってきた。ショコラさんとゾフィーさんもいる。
「あー、子供らはラーラが見てるのか。
ラーラも俺の義理の娘だものなア。ねえ、ダン。」
「ハイ、アンディ様。ちゃんとブローチは四つございますよ。」
「ふん。気が回るっていうか、先を読む力があるって言うか。そこまで有能だと可愛くないわネエ。
…やっぱりアンタは腹黒タヌキだわ。」
アンちゃん、ダンさんに可愛さを求めるのはちょっと。
結局、四つお揃いの琥珀のブローチもお買い上げになるアンちゃんだった。
「というわけで、お義母さん。キューちゃんを呼んでいただけませんか?」
「 ? 」
急な話で良くわかっていない(ブローチが四つあるのはわかったようだが、そこに自分のがあるとは思ってない)母である。
「ヴィヴィアンナ様に贈る琥珀に加護をつけていただきたいのですよ。」
「わかったわ!ヴィヴィアンナ様の御ためになるのなら!」
目をキラキラさせる母。母もヴィヴィアンナ様のファンなのである。
「ほら!ランド。猫カフェのお菓子をキューちゃんに用意して!それから貴方!厨房に夏みかんがあったわよね!」
「あ、うん。」
「わかった。」
兄と父をアゴで使う母。
すぐにキューちゃんへの貢ぎ物を用意するなんて気が回る。
「じゃあ!呼ぶわね!」
ザリザリザリ。
母が指輪をすりあわせると辺りに青い光が満ちるのだった。
この琥珀のブローチは私の私物です。コロナ前に買ったから…もう十年くらいは前の物です。




