適材適所ってあるのかな。それを決めるのは誰だ。
そして龍太郎君はチカラを抜いた。
みんなホッとした表情になる。
だが。
「…ネエ、ゾフィーの診察はシテネエノ?この子傷だらけジャン。古いヤツもアルケド…ここひと月くらい前ノモ。」
龍太郎君の声が低くなる。赤い目は細められている。
「…そうか!以前孤児院で付けられたヤツと、先月侍女長が亡くなったあと付けられたものか!
ゾフィー、怪我してたら早く言えよ!」
ヤマシロ君が声を上げる。
「オイ、まだ彼女は診察されてないのか?」
「アンディ様、彼女はとにかく後輩達を見てくれと。
自分は見届けたら…ブルーウォーターに行かずに…孤児院に戻るから、と。」
院長先生が汗を掻いている。
その後ろで気絶した子供達はショコラさん兄妹と、病院のスタッフが運んで行く。
「アイツらこそ孤児院に返されるんだ。」
アンちゃんが皮肉屋の笑みを浮かべた。
それと入れ違いに入ってきたのは。
「ゾフィー。久しぶり!」
ドギーとマギーだった。あー、決まってから呼ぶって言ってたな。
そして子供達を見回す。女の子二人と男の子一人を。
「貴方達が残ったの?ブルーウォーターは…レイカ様のところは大丈夫よ、安心して働けるわ。」
にっこりと笑った。
「ドギーにマギー。ああ…本当に無事だったのね?」
ゾフィーさんが安心したのか、座り込む。
「いくらヤマシロさんが危険が無いと言っても…他所の国だから…」
つぶやきながらもその表情は柔らかい。
「ねえ、龍太郎ちゃん。貴方このお嬢さんが怪我してるのがわかったの?」
「ウン、オッカサン。骨のひびってネ、完治するのに何ヶ月もカカルンダヨ。」
(※作者の体験です。)
「オイラの目はナンデモ見通スノサア。」
「あら。エッチ。」
…母よ。何を言ってるんだい。
「エッ、イヤ透視能力がアルワケじゃ無いヨ!そんな破廉恥なコト、オイラしねえから!信ジテ!」
慌てふためく神獣。
まったく母にかかると子供同然なのだ、このドラゴン様は。
「…つまり、あの屋敷のバカ息子にやられたのか。」
アンちゃんの顔が怖い。
「殴られて階段から落ちたのです。そして孤児院に逃げ込みました。」
「ちゃんと言えよ!怪我のことはさあ!」
ヤマシロ君が怒鳴る。
「顔や手の怪我は治りましたし、ただ、ちょっと歩くのが痛い…でもかなり治りましたから。」
そしてコチラをじっと見る。
「子供達が理不尽な暴力を受けては行けないから、と心配して付いて参りましたが…ドギーさんやマギーさんの顔色の良さ。
本当に大事にされているのですね。」
そして深く頭を下げた。
「この子達を宜しくお願いします。
アンディ様、奥方様。神獣様と「オッカサン」様。」
あ、うん。
すっと立ち上がる母。
「あら、何を言うの。貴方もいらっしゃいよ。」
「エッ。」
龍太郎君が目を丸くする。
「おや、そうですか。」
アンちゃんが私を見る、そして私も頷く。
「良い軟膏があるのよ、エリーフラワー様印の。怪我に塗ってあげるわよ。傷が治ったらね?貴女もこちらで働いてよ。」
母は微笑む。
「はい?」
固まるゾフィーさん。
「私はね。レイカの母でね。ドギーとマギーの雇い主なのよ。彼らにはいつも助けられているわ。」
「まっ!そうだったのですか!それはご無礼を。」
ペコペコと銀髪の頭を下げる。
「そうだよ、ゾフィー。奥方様はとても出来たおひとなんだよ。」
「ドギマギの言う通りダヨ、オイラはね、オッカサンと思って慕ッテイルノサ。メリイとミリイの次に好きナンダヨ。」
「あらあ。龍太郎ちゃんたら。本当に可愛いわね。
…ヨーシヨシヨシ。」
「ウウン!もっとナデテエ!」
いつもの光景である。
だが、孤児院の少年少女達には強い衝撃を与えたようだ。
ポカンとして母達を見ている。
多分目の前の光景が信じられないのだろう。
「え。ドラゴン様が懐いてる?そんな事って…ある?」
「…いいか?世の中には決して逆らってはいけない人がいるんだよ。
もちろん王族の方々もそうだし、動物に恐ろしいほど愛されているブルーウォーターの一族もそうだ。」
彼等の後ろにアンちゃんがそっと立つ。
「…そしてな。わが義母殿もだ。彼女は白狐様と神竜様の大のお気に入りなんだよ。」
「…!!」
顔が強張る子供達。
「ええ。しんのらすぼす。」
「あのかたは、しんじゅうさまたちを、えづけなさってます。」
コハク国のツインズも震える声で付け加える。
「やだわあ。褒めても何も出ないわよ♫」
褒めてたっけ?
「そうそう。このお蕎麦の職人さん達がね、貴方達を指導してくれるわよ。」
母が子供達にコハク国のツインズを紹介する。
「やあ。キミ達。立派な蕎麦職人にしてあげようね。」
「私達はいずれ開業するのよ。手伝ってほしいの。」
「は、はい。お話は伺っております…」
「そして、ゾフィーさん。よければ貴女は私を手伝ってくれないかしら?」
「あ、えーと。」
「ねえ、ショコラさん。良いと思わない?」
「御母堂様。つまり子守りの手伝いをしてもらうのですか?
なるほど。孤児院の手伝いをしてるなら行けるかもですねえ?」
ショコラさんも腑に落ちた顔をする。
「というかね?シンゴ君。」
「え?俺っすか?ご義祖母さん?」
「ラーラさんがまもなく出産でしょ。そちらの子守りも必要じゃない。」
母はにこやかに笑った。
「それにな。ゾフィー。アンタは孤児院を出た人間なんだろ。今は17か?緊急避難で戻ってきたのはいいが、いつまでもいられるわけじゃねえだろ。
悪い話じゃ無いと思うがな。ドギマギと一緒に働いたらどうだ。」
アンちゃんの発言はもっともだった。




