何人たりとも彼の目からは逃れられない。
誤字報告ありがとうございます。
「オッカサン!このシャケおにぎり美味シイヨ!
ジャガイモの味噌汁もサイコーダネ。」
私達が持参した鍋に顔を突っ込んでいる神竜。
「あらあ。龍太郎ちゃん。相変わらず可愛いし、良い食欲ね。
さあ、こっちもお食べなさい。」
いそいそと隣のランチボックスを開ける母。
「ワアイ!ツナサンドダネ!オイラ、サンドウィッチの中では、1番好きサ!」
「うふふ。ツナ缶はモルドールの名物ですもの。喜んでもらって嬉しいわ。」
ガツガツ。ゴクン。
とても心温まる、そして良く見る光景である。
我が母に甘える偉大なる神獣の龍太郎君。それを慈母の微笑みで見守る母。
…ここはどこ?
それはね、グランディの国境病院の会議室なんである。
以前セピア君やジークさんが入院してたところだよ。
「悪いね、院長。場所を貸してもらっちゃってさ。
そこそこの人数が集まるし、子供達の健康チェックもしたいんだよ。」
アンちゃんが軽く圧をかけながら言う。
「…い、いいえ。アラン様のご側近アンディ様と神獣様のお役に立てるのでしたら、光栄でございます。」
汗を拭きながら院長は返事をする。
暴飲暴食をする龍太郎君を横目で見ながら。
見慣れないとびっくりするよね!
室内には私達夫婦とショコラさん、ブラッキー君。
コハク国の双子にシンゴ君がいる。
もちろん龍太郎君は母にベッタリだ。
そこだけ別世界である。
「龍太郎ちゃん。ほらお口にご飯粒が付いてるわよ。」
母がタオルでふいてやる。目を閉じてうっとりしている神獣。
「背中も拭いてあげましょうか?綺麗なウロコ。」
「ウウン!有り難う!乾布摩擦カナ!気持ちイイよ。」
あー、あったね。乾布摩擦。昭和の頃流行っていたなあ。
寒いのにあんなのしてられるかい、と思ってたよ。
今は色々問題があるからやらなくなったってね。
うっとりと母に拭きあげてもらう龍太郎君。
まさしく母は猛獣使いである。
「あいかわらずレイカさんのお母様はすごいです。」
アレクさんの目は見開く。
「コハク国のツインズ。オイラ、今度は蕎麦ガ食イテエな。ザル蕎麦がいいや。」
にやり。
口から覗く舌は血の様に赤く、歯は尖っている。
見る人をビビらせる要素が沢山だね。
「ははっ。いつでもおいでくださいませ。」
「おまちしております。」
軽くびびったのか、また平仮名だらけのセリフになってるよ。
コンコン。
「龍太郎様、お食事はお済みで?」
「子供達を連れてきてようございますか?」
ハンゾー君とヤマシロ君が顔を出す。
「ウン。」
「子供らの健康チェックは終わったのかよ?」
「はい、アンディ様。問題はありません。」
「私らが目を光らせてますからね、以前の院長がやってたようなムチを使ったしつけはもう、ありません。」
という事は以前の孤児院院長はしつけと称してムチを振るっていたのか。そして更迭されたんだな。
「じゃ、みんな入っておいで。龍太郎様にご無礼がない様にな。」
ヤマシロ君の言葉に子供達が硬くなりながら入室して来た。
シュウウウ……
部屋に満ちるドラゴンブレス。
(生臭いぞ?あ。ツナとシャケのフレーバーかあ?)
「ホホウ。オマエタチ…ヨク顔ヲ見セルノダ。」
説明しよう!龍太郎君はマジなモードになるとセリフから平仮名が無くなるよ!
母の肩から降りた龍太郎君はひとまわり大きくなって
天井近くに舞い上がる。
ズン!
威圧をかけてる?のを何となく感じる。
ピカリ。
龍太郎君の目から光が放たれた。
赤く綺麗なヒカリだな。ルビーみたいだよ。
母はケロリとしているが、アンちゃん達忍びの顔色は悪い。
「龍の字…少し抑えてくれよ…」
アンちゃんが脂汗を流している。
「アッハイ。良イ子はコレを浴びても平気ナンダヨ。」
わあ。アンちゃんは悪い子か。
比較的元気なのはショコラさんとブラッキー君だ。
特にブラッキー君は腹芸は出来ないからな。
シンゴ君、ハンゾー君、ヤマシロ君の顔色は真っ青である。
影の世界での実力者は…清濁併せ持つんだなあ。
おや。院長先生…椅子から立てませんか、そうですか。
さて、子供達はどうか。
ふむ。
五人の少女達の中、三人は転がっている。少年達は…ひとりはケロリでもうひとりは這いつくばっている。
「伸びているヤツは失格ダヨ。ブルーウォーターには入れてヤラナイ。」
わかりやすいね!
おや?壁側にすっくと背中を伸ばして立っている女性がいるぞ。
目のチカラは強い、じっとコチラを見ている。
銀色の髪に青い目だ。
「ホホウ、オマエ、大したモンダナ。」
「…ゾフィーと申します、神獣様。子供達の面接の付き添いで参りました。」
あらあ。彼女がゾフィーさんなの。




