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第95話 風鳴り精の案内

 青白い光に包まれた小さな空間。


 白雪は、ふわふわと飛んでいく《風鳴り精》の後を追っていた。


「待ってー!」


 風鳴り精は小さな羽を動かし、通路の奥へ進んでいく。


 白雪も狭い通路を抜け、その後を追いかけた。


 やがて通路は少しずつ広くなり、天井も高くなっていく。


「おおっ!」


 そこは、先ほどの小部屋よりもずっと広い空洞だった。


 壁には青白い結晶がいくつも埋まっている。


 天井の亀裂からは風が吹き込み、空洞の中央にある大きな岩を通り抜けていた。


 その岩には、大小さまざまな穴が開いている。


 風が穴を通るたびに、異なる音が響いていた。


 ヒュウ……。


 チリリ……。


 ポォン……。


「わぁ……!」


 白雪は目を輝かせた。


「ここ、音がいっぱい!」


 風鳴り精は大きな岩の上に止まり、羽を広げる。


 すると、周囲の結晶が一斉に淡く光った。


 その光に反応するように、空洞の風が少し強くなる。


 ヒュウウウ……。


 岩の穴から、澄んだ音が響いた。


 白雪はしばらく聞き入っていた。


「なんだか楽器みたいだね」


 風鳴り精は、白雪の方を向いて小さく鳴いた。


 チリリ。


「もう一回?」


 白雪が近づくと、風鳴り精は岩の上を移動した。


 その先には、丸い青色の石がいくつも並んでいる。


 白雪は一つ拾い上げた。


「これも鳴るのかな?」


 石を軽く振る。


 コロン。


「おっ!」


 もう一度振ってみる。


 コロン、コロン。


 音は小さいが、耳に心地よい。


 白雪は石をいくつか拾い、順番に鳴らしてみた。


 すると、風鳴り精が一つの石を前足で押した。


 コロン。


 その音に合わせて、空洞の奥から風が吹き抜ける。


「えっ、今のは?」


 白雪は石を見た。


 もう一度、風鳴り精が石を押す。


 コロン。


 ヒュウ……。


 別の穴から風が流れ、岩の表面に埋まった結晶が光った。


「もしかして、石を押すと風の通り道が変わるの?」


 白雪は試しに、隣の石を押してみた。


 コロン。


 今度は別の方向から風が吹く。


「おおっ! できた!」


 面白くなった白雪は、いろいろな石を押してみた。


 一つ押すと風が右へ流れる。


 別の石を押すと、天井の穴から風が吹き込む。


 さらにもう一つ押すと、岩の穴から低い音が鳴った。


「すごいすごい!」


 白雪は夢中になって石を押していた。


 そのうち、風鳴り精も一緒になって石を押し始める。


 コロン。


 コロン。


 ヒュウ……。


 チリリ……。


 空洞の中に、いくつもの音が重なっていく。


 そして最後の石を押した瞬間。


 ゴゴゴ……。


 空洞の奥にあった岩壁が、ゆっくりと動き始めた。


「わっ!」


 白雪は手を止めた。


 岩壁の向こうには、細い通路が現れている。


 その奥から、青白い光が漏れていた。


「また開いた!」


 白雪は嬉しそうに通路へ向かった。


 風鳴り精も、すぐ後ろをついてくる。


 通路の先には、小さな泉があった。


 水面は青く透き通り、底には細かな結晶が沈んでいる。


 泉の周囲には白い草が生え、風が吹くたびに水面へ小さな波紋が広がっていた。


「きれい……」


 白雪は泉のそばにしゃがみ込んだ。


 水面に指先をつける。


 ひんやりとしていて、気持ちがいい。


 すると、泉の底から小さな光が浮かび上がってきた。


 ぽちゃん。


 水面から顔を出したのは、半透明の小さな魚だった。


 身体は青白く透き通り、尾びれが風を受けるように揺れている。


「わっ、魚!」


 魚は水面を一周すると、白雪の指先へ近づいてきた。


「こんにちは!」


 白雪が指を動かすと、魚もその動きに合わせて泳ぐ。


 しばらく遊んでいると、魚が水面から小さく跳ねた。


 その口から、水の粒が飛び散る。


 白雪の頬に水滴がついた。


「冷たっ!」


 魚は楽しそうに、もう一度跳ねた。


「もう一回!」


 白雪も水面を指先で軽く叩く。


 ぽちゃん。


 魚が跳ねる。


 ぽちゃん。


 白雪が水を揺らす。


 そんなことを繰り返しているうちに、魚は白雪の指先へ近づき、くるりと一周した。


<システムメッセージ>


 未発見の水棲生物を発見しました。

 《風水魚》の発見ポイントを獲得しました。


「風水魚っていうんだ!」


 白雪は嬉しそうに魚を眺めた。


 泉の縁には、小さな青い実が落ちていた。


「これは何かな?」


 拾い上げると、表面が水滴のように透き通っている。


 白雪は匂いを嗅いでみた。


 爽やかな香りがする。


「食べてみよう!」


 ぱくっ。


 噛んだ瞬間、口の中にひんやりした甘さが広がった。


「おいしい!」


<システムメッセージ>


 《風水の実》を入手しました。

 《味覚》の熟練度が上昇しました。


 白雪は残りの実をアイテム欄へしまった。


 そのとき、風鳴り精が泉の反対側へ飛んでいった。


「あっ、待って!」


 白雪は慌てて立ち上がる。


 風鳴り精は泉の奥にある小さな岩の隙間へ入っていった。


 白雪も覗き込む。


 そこには、青白い結晶が一つだけ埋まっていた。


「これも光ってるね」


 結晶に触れると、淡い風が白雪の手を包み込む。


<システムメッセージ>


 《風鳴りの泉》を発見しました。

 発見ポイントを獲得しました。


「やった!」


 白雪は満足そうに笑った。


 風鳴り精は泉の上を一周し、再び白雪の肩へ止まった。


「案内してくれてありがとう!」


 白雪がそっと指先を近づけると、風鳴り精はその指に触れてから飛び立った。


 そして、来た道とは別の方向へ消えていった。


「またねー!」


 白雪は手を振った。


 北の森林。


 黒羽は大きな根の扉の前で、周囲を調べ続けていた。


 扉の中央には、緑色の結晶と同じ模様が刻まれている。


 しかし、結晶を近づけても扉は開かない。


「結晶だけでは駄目なのね……」


 黒羽は扉の左右に目を向けた。


 右側には細い根が何本も伸びている。


 左側には、壁の一部に小さな穴が並んでいた。


「左右で仕掛けが違う?」


 黒羽はまず右側の根を調べた。


 根の先端には、小さな結び目のようなものがある。


 そこを押すと、根が少しだけ動いた。


「……なるほど」


 黒羽は一つずつ根を動かし、形を整えていく。


 すると、扉の模様が一部分だけ光った。


「順番があるのね」


 黒羽は根の配置を記憶し、残りの仕掛けを探し始めた。


 山岳地帯。


 ユウマは岩の隙間の奥へ進んでいた。


 《岩殻の守り手》がいた場所を抜けると、少し広い通路に出る。


 壁には銀色の鉱石が点々と埋まっていた。


「山銀鉱が多いな……」


 ユウマは周囲を確認しながら進む。


 通路の先には、崩れた岩の山があった。


 その向こうから、かすかに水の流れる音が聞こえる。


「水場でもあるのか?」


 ユウマが近づくと、岩の隙間から冷たい風が吹いてきた。


 さらに奥には、何か大きなものが動いたような跡が残っている。


「まだ何かいるのか……?」


 ユウマは剣を構えた。


 そのとき、イベント画面に通知が表示された。


<システムメッセージ>


 《未知なる大地の探索祭》

 第2日目 途中経過ランキング


 1位 白雪

 2位 黒羽

 3位 レイ

 4位 ユウマ

 5位 セツナ


「……黒羽が上がったか」


 ユウマは順位を確認し、画面を閉じた。


 白雪が一位を維持している。


 黒羽も順位を上げてきた。


「俺もまだまだだな」


 ユウマは剣を握り直し、通路の奥へ進んだ。


 イベント専用の休憩エリア。


 その頃、別の場所ではレイとセツナもランキングを確認していた。


 レイは表示された順位を見て、小さく息を吐く。


「白雪は相変わらず一位か。黒羽も上がってきたな」


 その視線は、ランキングの上位に並ぶ名前を追っていた。


 一方、セツナも順位を確認していた。


「……まだ二日目。ここからね」


 二人とも、まだ探索を続けるつもりだった。


 イベント二日目。


 白雪は新しい場所を見つけ、黒羽は仕掛けの攻略を進め、ユウマは山の奥へと向かっている。


 順位は少しずつ動き始めていた。


 そして、探索祭はまだ終わらない。

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