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第92話 初日の終わりと夜のランキング

 夕暮れが夜へと変わり始めた頃。


 白雪は草原の帰還地点へ向かって歩いていた。


「今日はいっぱい走ったなぁ」


 白雪は両手を頭の後ろに回し、のんびりと歩く。


 アイテム欄には、今日見つけた植物や石、動物の毛などがいくつも入っている。


 一つ一つを整理するつもりはない。


 とりあえず、見つけたものは入れておく。


「あとで見てみようっと」


 そう言って、白雪は空を見上げた。


 イベント開始時には明るかった空も、今はすっかり暗くなっている。


 そのとき、視界に大きな通知が表示された。


<システムメッセージ>


 《未知なる大地の探索祭》


 第1日目の探索時間が終了しました。


 参加者は安全な場所へ帰還します。


「おっ、終わった!」


 周囲の景色が淡い光に包まれる。


 次の瞬間、白雪はイベント参加者用の休憩エリアに立っていた。


 そこは広い草原を模した場所で、中央には大きな焚き火が設置されている。


 周囲にはベンチや簡易テントが並び、戻ってきた参加者たちが思い思いに過ごしていた。


「わぁ、いっぱい人がいる!」


 白雪は辺りを見回した。


「白雪ちゃん、こっち!」


 聞き覚えのある声がした。


 振り返ると、黒羽が手を振っていた。


「黒羽ちゃん!」


 白雪は小走りで近づいていく。


「お疲れ。どうだった?」


「楽しかったよ! いっぱい変なの見つけた!」


「変なのって……」


 黒羽は苦笑した。


「黒羽ちゃんは?」


「私は森の奥で仕掛けを見つけたわ。思ったより複雑だったけど、先へ進めた」


「おお! すごい!」


「それと、少し厄介なモンスターもいたわね」


「強かった?」


「動きを見れば対処できる相手だったけど、周囲の地形も利用してくるタイプだったわ」


 黒羽が今日の探索について説明していると、少し離れた場所からユウマが歩いてきた。


「二人とも戻ってたか」


「あ、ユウマ!」


「お疲れ」


「おう。そっちも無事だったみたいだな」


「うん!」


 白雪は元気よく頷いた。


「ユウマは何してたの?」


「山で大きなモンスターと戦ってた。結構硬くてな」


「大きいの?」


「かなりな。岩でできたようなやつだ」


「岩!」


 白雪の目が輝く。


「どんな形だった?」


「えっと……」


 ユウマが説明を始めると、白雪は興味津々で聞いていた。


「胸のところに銀色の鉱石があって、そこが弱点らしい」


「へぇー! 見てみたい!」


「いや、あれは近づくと危ないぞ」


「そっかぁ」


 白雪は少し残念そうにした。


 黒羽は二人の会話を聞きながら、今日の探索で得た情報を頭の中で整理していた。


「ところで、二人とも初日のランキングは確認した?」


「まだ!」


 白雪が即答する。


「俺は戦闘の途中で一度見た」


 ユウマはイベント画面を開いた。


「今は更新されてるはずだ」


 三人はそれぞれランキング画面を表示した。


<システムメッセージ>


 《未知なる大地の探索祭》

 第1日目 暫定個人ランキング


 1位 白雪

 2位 レイ

 3位 ユウマ

 4位 セツナ

 5位 黒羽


 ※ランキングはイベント終了まで変動します。


「……あら」


 黒羽が少し驚いたように声を漏らした。


「白雪、また一位ね」


「え?」


 白雪は画面を見直した。


「ほんとだ!」


「今日だけでこれだけ見つけてたら、そうなるか」


 ユウマも納得したように頷く。


「白雪はどこを探索してたんだ?」


「草原!」


「草原か。何を見つけた?」


「えっとね、綿毛がいっぱい飛んでるところとか、石が音を鳴らす穴とか!」


「……それだけ?」


「あと、小さい動物!」


 白雪は指を折りながら、今日見つけたものを説明していく。


 その話を聞いていた黒羽は、途中から少し困ったような顔になった。


「白雪……それ、全部自分で見つけたの?」


「うん!」


「誰かに教えてもらったわけじゃなく?」


「うん!」


「……そう」


 黒羽は小さく息を吐いた。


 白雪は普通に探索しているつもりなのだろう。


 けれど、話を聞けば聞くほど、普通の探索とは思えない。


「まあ、白雪らしいな」


 ユウマは苦笑した。


「そうかな?」


 白雪は首を傾げた。


「それより、黒羽ちゃんは五位だよ!」


「そうね。まだ初日だから、順位は気にしていないわ」


「ユウマは三位!」


「こっちもまだ暫定だ。明日以降も気を抜けないな」


 三人はそれぞれランキングを閉じた。


 周囲では、ほかの参加者たちも順位を確認している。


「一位の白雪って、あの白い装備の子か?」


「たぶんそうだ。今日、草原で変なことしてるのを見たぞ」


「変なこと?」


「草むらにしゃがみ込んで、ずっと何かを眺めてた」


「それで一位なのか……」


 少し離れた場所から、そんな会話が聞こえてきた。


 白雪は気づいていない。


 焚き火の近くにあった丸太のベンチへ向かい、腰を下ろした。


「ふぅ……」


 ようやく一息ついた。


「明日は何があるかなぁ」


 白雪は今日見つけた場所を思い返す。


 鳴石の空洞の奥には、まだ小さな穴が続いていた。


 土の中にできた空洞も気になる。


 そして、綿毛を飛ばしていた小さな動物たち。


「明日も行ってみたいところがいっぱい!」


「まだ探索する場所を決めてないの?」


 黒羽が隣に座った。


「うん。明日になったら考える!」


「相変わらずね」


 黒羽は小さく笑った。


 ユウマも近くのベンチに腰掛ける。


「俺は今日の山の続きだな。あの岩のモンスターを倒したら、奥に進めそうだった」


「倒せたの?」


 白雪が尋ねる。


「いや、時間切れで途中までだ」


「そっかぁ」


「明日は決着をつける」


 ユウマはそう言って、剣の柄に手を置いた。


 黒羽も明日の探索について考えているようだった。


「私は森の奥にあった結晶を調べたいわ。今日見つけた仕掛けの先に、まだ何かありそうだったし」


「みんな明日の予定があるんだね!」


「白雪は?」


「んー……」


 白雪は少し考えた。


「明日起きてから決める!」


「だと思った」


 黒羽が笑う。


 三人はしばらく焚き火のそばで話をしていた。


 やがて、休憩エリアの中央に再び通知が表示される。


<システムメッセージ>


 《未知なる大地の探索祭》


 第1日目の結果集計が完了しました。


 第2日目の開始まで、休憩エリアで待機できます。


「明日は二日目だね!」


 白雪は立ち上がった。


「今日はもう休むわ」


 黒羽も立ち上がる。


「俺も一度ログアウトする。明日に備えないとな」


 ユウマが続いた。


「うん! じゃあ、また明日!」


 三人はそれぞれログアウトの準備を始めた。


 白雪は最後にもう一度、今日のアイテム欄を眺めた。


「……あれ?」


 そこには、いつ拾ったのか分からない小さな石が一つ入っていた。


「これ、いつ拾ったんだろう?」


 白雪は首を傾げた。


 少し考えてみたものの、思い出せない。


「まあ、いっか!」


 結局、白雪はその石をそのまましまい込んだ。


 明日もきっと、何か面白いものが見つかる。

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