↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
63/135

第63話 森の奥で見つけた小さな光の正体

「光って、どこにあったの?」


 舞が白雪の隣に並び、前方を見渡した。


「えっとね、あっち!」


 白雪が指さしたのは、木々が少し密集している場所だった。


 葉の隙間から、淡い青色の光がちらちらと見えている。


「確かに何か光ってるな」


 優真も目を細める。


「モンスターかもしれないわね」


「そうかな?」


「光るモンスターもいるだろ」


「そっか! かわいい子だといいなあ」


 白雪は楽しそうに歩き始めた。


「戦うことになるかもしれないんだけどね……」


 舞が小さく呟く。


「白雪の場合、まず近づいて観察するんじゃないか?」


「そうね」


 二人は顔を見合わせ、白雪の後を追った。


     ◇


 木々の間を進んでいくと、地面に小さな青い花が咲いていた。


「あっ、お花!」


 白雪はすぐにしゃがみ込む。


「また花か」


「だって、きれいだよ!」


 花びらは薄く透き通っていて、中心部分が淡く光っている。


 白雪が指先で触れると、花びらが小さく揺れた。


《光青花を入手しました》


「光青花だって!」


「光る花なんだね」


 舞も近くで観察する。


「この辺り、ほかにも咲いているわ」


「本当だ!」


 白雪は周囲を見回した。


 木の根元には白い花、岩の隙間には紫色の小さな花もある。


 それぞれ一つずつ採取してみる。


《森白花を入手しました》


《紫根花を入手しました》


「こっちは紫色だよ!」


「花だけでも種類が多いな」


 優真が感心したように周囲を見る。


「白雪はこういうものを見つけるのが好きなのね」


「うん! 知らない花があると気になるもん!」


 白雪は満足そうに立ち上がった。


 そして、再び青い光を探す。


「あっ、あそこ!」


 木の枝の間で、光がふわりと動いた。


 今度はさっきより近い。


 三人はそちらへ向かった。


     ◇


 光が見えた場所は、小さな岩場だった。


 岩の周囲には苔が生えていて、地面には青白い小石がいくつも転がっている。


 その中央に、淡い青色の光が浮かんでいた。


「わあ……!」


 白雪が足を止める。


 光は小さな球のような形をしていた。


 ふわふわと上下に揺れながら、周囲を漂っている。


「何だろう、あれ?」


 舞が慎重に距離を取る。


「モンスターか?」


 優真は剣の柄に手を添えた。


 白雪は二人の間から、光をじっと見つめる。


「小さいね」


 光は白雪の方へゆっくり近づいてきた。


 ぽわん。


「あっ!」


 白雪が手を伸ばす。


 光は指先のすぐ前で止まり、くるりと一回転した。


「かわいい!」


「触って大丈夫なのか?」


「分かんない!」


「分からないなら、少し待ちなさい」


 舞が止める。


 しかし光は、白雪の手の周りをくるくると回り始めた。


 そして、白雪の手の甲にちょこんと触れる。


 ひんやりとした感触が伝わった。


「冷たい!」


 光は驚いたように離れ、少し上へ浮かんだ。


「ごめんね?」


 白雪が声をかけると、光はまた近づいてきた。


 敵意はなさそうだった。


「友好的なモンスターなのかな?」


 舞が呟く。


「名前は表示されないな」


 優真も周囲を確認した。


 白雪は光の動きに合わせて、ゆっくり手を動かしてみた。


 光はその手を追いかけるように移動する。


「おいでー」


 ぽわん。


 光が白雪の指先に近づく。


「わあ、ついてきた!」


 白雪は嬉しそうに笑った。


     ◇


 光は白雪の周りを何度か回ったあと、岩場の奥へと移動した。


「あっ、待って!」


 白雪が後を追う。


「また追いかけるのね」


 舞も続く。


「何かあるのかもしれないな」


 優真が最後尾を歩いた。


 岩場の奥には、小さな窪みがあった。


 そこには青白い石がいくつも埋まっている。


 光はその石の上に浮かび、ふわふわと揺れていた。


「ここがお家なのかな?」


 白雪はしゃがみ込んだ。


 石の表面には細い模様があり、光が触れるたびに淡く輝く。


「この石、きれいだね!」


 白雪は手近な一つを拾い上げた。


《光紋石を入手しました》


「光紋石!」


 さらに周囲を見てみると、石の隙間に小さな粒が落ちていた。


《青光粒を入手しました》


「こっちは小さい!」


「素材が採れる場所だったんだな」


 優真が石を眺める。


「イベントでもこういう発見がポイントになるのかもしれないわね」


 舞が言った。


「そうだね!」


 白雪は光の周りを見回す。


 すると、岩の隙間から細い風が吹き出していることに気づいた。


「ん?」


 白雪は顔を近づけた。


 ひゅう……。


 風と一緒に、青い光の粒が一つ飛び出してくる。


「あっ、出てきた!」


 光の粒は白雪の目の前を通り過ぎ、ふわりと上へ浮かんだ。


 白雪は手を伸ばしたが、届かない。


「もうちょっと!」


 そのまま背伸びをする。


 あと少し。


 ぴょん!


 白雪が跳び上がると、光の粒が指先に触れた。


《風光粒を入手しました》


「取れた!」


「わざわざ跳んだのか……」


 優真が呆れたように言う。


「だって届かなかったんだもん!」


 舞は笑っていた。


「でも、風が出ている場所を見つけたのは面白いわね」


 岩の隙間は小さく、人が通れるほどの広さはない。


 白雪は少し覗き込んでみた。


 奥は暗く、青い光がわずかに見える。


「中にも何かあるのかな?」


「入れそうにないわね」


「うーん……」


 白雪は岩の周りを回ってみたが、ほかに通れそうな場所はなかった。


「また今度見に来よう!」


 そう言って、あっさり立ち上がった。


     ◇


 岩場から離れると、青い光は再び白雪の周りを漂い始めた。


「まだついてくるね!」


「気に入られたのかしら」


「そうだったら嬉しい!」


 光は白雪の頭の上を通り、少し先の木の枝へ移動した。


 そこには、小さな巣があった。


「あっ、鳥の巣!」


 白雪はすぐに足を止めた。


 巣の中には、白っぽい小さな羽が一枚落ちている。


「羽があるね」


「親鳥が近くにいるかもしれないから、あまり近づかない方がいいわ」


「うん!」


 白雪は木の下から見上げるだけにした。


 青い光は巣の近くを一周すると、また白雪のところへ戻ってきた。


「この子、鳥さんのお友達なのかな?」


「どうだろうな」


 優真が周囲を見回す。


 木の枝の向こうに、小さな影が動いた。


 白い羽に青い模様のある鳥が、枝の上から三人を見ていた。


「あっ、鳥さん!」


 白雪が声を上げる。


 鳥は一度だけ鳴くと、森の奥へ飛んでいった。


 青い光もそれを追いかけるように移動する。


「あっ、行っちゃう!」


 白雪は少しだけ追いかけようとしたが、舞が声をかけた。


「白雪、そろそろ戻る時間も考えた方がいいんじゃない?」


「あっ、そうだった!」


 白雪は足を止めた。


 優真も周囲を見渡す。


「今日はこの辺りまでにしておくか」


「そうね。まだイベントまで時間もあるし」


「うん! また来ようね!」


 白雪は青い光が消えていった方向へ手を振った。


     ◇


 町へ戻る道の途中。


 三人は、森で見つけたものについて話していた。


「今日は光る生き物を見つけられてよかった!」


「結局、あれが何なのかは分からなかったけどね」


 舞が笑う。


「でも、素材も見つけたしな」


 優真が言った。


「うん! 光紋石も青光粒もきれいだった!」


「白雪は素材を集めるのが好きだな」


「好きだよ!」


 白雪は元気よく答えた。


「でも、集めようと思って集めてるわけじゃないんだよね」


「どういうことだ?」


「気になるものがあったら拾ってるだけ!」


「……なるほど」


 舞は白雪のアイテム欄を思い出した。


 きっと、今まで見つけた素材が大量に入っているのだろう。


「白雪、イベント前に一度持ち物を確認しておきなさいよ」


「うん!」


「本当に分かってる?」


「たぶん!」


「もう……」


 舞が苦笑する。


 優真も笑った。


 森の入口が見えてくる。


 その向こうには町の門があり、プレイヤーたちが行き交っていた。


「今日は楽しかったね!」


「ああ。森もなかなか面白かった」


「まだ見てない場所も多そうね」


「いっぱいあるよ!」


 白雪は嬉しそうに答えた。


 イベント開催まで、あと7日。


 白雪は今日も、順位や報酬のことより、目の前にある不思議なものを見つけることを楽しんでいた。


 そして、そんな白雪の自由な冒険が、いつか大きな発見につながることを、まだ誰も知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。