↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
53/135

第53話 森の奥で見つけた木漏れ日の広場

 昨日も見た銀色の魚。水面から勢いよく跳ねる姿が、どうにも頭から離れない。


「今日も跳ねてるかな?」


 ログインした白雪は、森の中を軽い足取りで進んでいた。


 白蒼の疾風のブーツが地面を蹴り、白いマントが風に揺れる。


 途中で見つけた小さな花に目を留めたり、木の根元に生えていたキノコを覗き込んだりしながら、昨日の池へ向かう。


 もちろん、寄り道は忘れない。


「このキノコ、昨日のとは違うね」


 茶色い傘に白い斑点があるキノコだった。


 白雪はしゃがみ込んで、傘の裏側を覗いてみる。


「うーん……食べられるのかな?」


 指先で軽く触ってみる。特に変化はない。


 匂いを嗅いでみると、土のような香りがした。


「今日はやめておこうかな」


 別に食べたいものがないわけではない。今は池の魚の方が気になっているのだ。


 白雪はキノコを採取して、インベントリにしまった。


《白斑キノコを入手しました》


「また今度ね!」


 誰に向かって言ったのか分からない挨拶をして、再び歩き始めた。


 ◆


 池に到着すると、水面には木々の影が映っていた。


 白雪は昨日と同じ場所にしゃがみ込む。


「お魚さーん!」


 呼んでみる。


 当然、返事はない。


 水面をじっと眺めていると、草の陰から銀色の影が現れた。


「あっ!」


 すいっ。


 魚は白雪の目の前を通り過ぎていく。


「いた!」


 さらに、少し離れた場所で別の魚が跳ねた。


 ぱしゃん!


「おおっ!」


 昨日と同じように、魚たちは水面から飛び出している。


 白雪はしばらくその様子を眺めていた。


 すると、池の反対側から小さな鳴き声が聞こえた。


「ぴぃっ」


「あれ?」


 顔を上げると、淡い青色の翼を持つ白い小鳥が枝に止まっていた。


「あっ、この前の鳥さん!」


 小鳥は白雪を見つけると、枝から飛び立った。


 そして池の水面を越え、少し離れた水辺へ向かっていく。


「またどこかに行くの?」


 白雪は立ち上がり、小鳥を追いかけた。


 池の縁を回っていくと、水辺に大きな丸い葉っぱがいくつも浮かんでいる場所に出た。


「わあ、葉っぱがいっぱい!」


 葉っぱは濃い緑色で、中心が少しだけくぼんでいる。大きさは白雪の顔よりも大きい。


 その上には、小さな水滴がいくつも乗っていた。


 風が吹くと水滴が葉の上を転がり、縁から水面へ落ちていく。


 ぽちゃん。


「面白い!」


 白雪は葉っぱのひとつに触れてみた。


 ぷるん。


 思ったより弾力がある。


「乗れるかな?」


 白雪は水辺に足を置き、葉っぱに体重をかけてみた。


 ぐにゃり。


「おっと!」


 葉っぱが沈み込む。


 慌てて岸へ戻ると、葉っぱはゆっくり元の形に戻った。


「乗れそうで乗れないね」


 白雪は別の葉っぱを観察した。


 こちらは少し大きく、縁が厚くなっている。


「こっちはどうかな?」


 今度は片足だけ乗せてみる。


 ぷるん。


 葉っぱは少し沈んだが、先ほどよりもしっかりしていた。


「おっ!」


 もう片方の足も乗せる。


 ぐらり。


「わわっ!」


 白雪は両腕を広げてバランスを取った。


 葉っぱは水面に浮かんだまま、ゆっくり揺れている。


「乗れた!」


 白雪は嬉しそうに笑った。


 しかし、喜んでいる間にも葉っぱは揺れ続けている。


 少し身体を傾けると、葉っぱも傾く。


 反対側に重心を移すと、今度は逆向きに揺れた。


「おお……これ、難しい!」


 白雪は足元を見ながら、慎重に身体を動かした。


 葉っぱの上に乗ったまま、なんとか姿勢を保つ。


 そのとき、隣の葉っぱに小さな虫が止まった。


「あっ、虫さん!」


 思わずそちらへ顔を向ける。


 ぐらっ。


「わああっ!」


 葉っぱが大きく傾いた。


 白雪は水の中へ落ちる寸前で跳び上がり、隣の葉っぱへ飛び移った。


 ぽよん!


 今度はそちらが大きく沈む。


「きゃっ!」


 結局、白雪は水の中へ落ちた。


 ばしゃん!


「つ、冷たい!」


 浅い場所だったので、身体が沈むことはなかった。


 白雪は水の中に立ち上がり、濡れた前髪を手で払う。


「失敗しちゃった……」


 けれど、すぐに笑顔になった。


「もう一回!」


 ◆


 今度は葉っぱの上に長く立つことを目標にした。


 最初は一枚の葉っぱに乗り、揺れに合わせて身体を動かす。


 少し慣れてきたら、次の葉っぱへ移る。


 ぴょん。


 ぷるん。


 ぴょん。


 ぐらり。


 水に落ちそうになりながらも、白雪は何度も挑戦した。


 途中で葉っぱの縁に生えていた小さな花を見つける。


 淡い青色の花びらが、水面に向かって開いていた。


「こんなところにもお花がある!」


 白雪は葉っぱから降り、花を採取する。


《水浮花を入手しました》


 その近くには、丸い粒のような実もあった。


 薄い緑色で、表面には細かな水滴がついている。


「これは食べられるかな?」


 白雪は実をひとつ採取し、軽く匂いを嗅いだ。


 青っぽい香りがする。


 少しだけ指先で押してみると、柔らかく弾力があった。


「気になる!」


 ぱくっ。


 口に入れると、最初はほとんど味がない。


 少し噛むと、みずみずしい甘さが広がった。


「おいしい!」


 さらに噛むと、ほんのりとした酸味が出てくる。


 最後には、舌の上で小さな泡が弾けた。


「んんっ? また泡!」


 白雪は目を丸くした。


 先日食べた泡弾実とは違い、こちらは控えめなしゅわしゅわ感だ。


「こっちも面白い味!」


 実をいくつか採取する。


《水浮実を入手しました》


 白雪は水浮実を一つ手のひらに乗せ、光にかざしてみた。


 透明感のある薄緑色がきれいだった。


「これ、何かに使えるかな?」


 料理に使えるかもしれないし、そのまま食べてもおいしい。


 今すぐ使い道を決める必要はない。


 白雪は大切そうにインベントリへしまった。


 そのとき、水面がぽこぽこと揺れた。


「ん?」


 葉っぱの下から、小さな水色の生き物が顔を出した。


 丸い身体に、背中には大きな葉っぱが一枚。


 以前、池の近くで出会った泡を吹く生き物に似ている。


「あっ、こんにちは!」


 生き物は白雪を見上げると、ぷくっと頬を膨らませた。


 ぽわん。


 小さな泡が浮かぶ。


「泡だ!」


 白雪は《泡操作》を使い、泡をそっと持ち上げた。


 泡は葉っぱの上をふわふわと移動する。


 生き物はその泡を追いかけるように、葉っぱの下を泳ぎ始めた。


「こっちだよー」


 白雪が泡を少し右へ動かす。


 生き物も右へ。


 今度は左へ。


 生き物も左へ。


 まるで追いかけっこをしているようだった。


 白雪は笑いながら泡を動かす。


 ぽわん、ぽわん。


 生き物も次々に泡を吹いていく。


 そのうち、一匹だけだったはずの泡が三つ、四つと増えていった。


「いっぱい出てきた!」


 白雪は泡をまとめて、葉っぱの上に並べてみる。


 小さな泡が水滴と一緒に揺れ、光を反射してきらきら輝いた。


 生き物はしばらく泡を見つめたあと、白雪の近くまで泳いできた。


 そして、水面から小さな葉っぱを押し出す。


「くれるの?」


 白雪は葉っぱを拾い上げた。


《水泡葉を入手しました》


「ありがとう!」


 生き物は一度だけ泡を吹くと、葉っぱの下へ戻っていった。


「また遊ぼうね!」


 ◆


 その後も白雪は、水辺の丸い葉っぱで遊んでいた。


 今度は葉っぱの上に乗って、少しだけ移動してみる。


 風が吹くと葉っぱが揺れ、水面をゆっくり進んでいく。


「おおっ、動いてる!」


 白雪は《白蒼の疾風》のブーツで葉っぱの中心を踏み、身体の揺れに合わせて姿勢を調整した。


 葉っぱが右へ流れれば、左へ重心を移す。


 左へ揺れれば、今度は右へ。


 何度か繰り返すうちに、少しずつ揺れに慣れてきた。


《平衡歩行の熟練度が上昇しました》


「あっ、上がった!」


 白雪は表示を見て、嬉しそうに頷く。


 さらに、葉っぱから別の葉っぱへ飛び移ってみた。


 ぴょん!


 着地。


 ぐらり。


 身体が傾く。


 すぐに姿勢を戻し、次の葉っぱへ。


 ぴょん!


 今度は成功した。


「できた!」


 少しずつコツを掴んできたらしい。


 ただし、調子に乗って大きく跳びすぎると、葉っぱが大きく揺れて水の中へ落ちてしまう。


 それでも白雪は楽しそうだった。


「もう一回!」


 何度目かの挑戦を終えた頃、池の向こうから小鳥の鳴き声が聞こえた。


「ぴぃっ」


 顔を上げると、淡い青色の翼を持つ白い小鳥が枝に止まっている。


「あっ、またいた!」


 小鳥は白雪を見て、翼を広げた。


 しかし、今度は飛び立たず、枝の上で羽を休めている。


「今日はここにいるの?」


 白雪が手を振ると、小鳥も小さく鳴いた。


 その姿を眺めていると、空が少しずつ夕方の色に変わっていった。


「もうこんな時間!」


 白雪は水辺から岸へ上がり、装備の状態を確認する。


 水に落ちて濡れたけれど、装備に問題はない。


 《自己修復》の効果もあり、白蒼の疾風はいつも通りの状態を保っていた。


「今日もいっぱい遊んだね!」


 今日の収穫は、白斑キノコ、水浮花、水浮実、水泡葉。


 それから、丸い葉っぱの上で遊ぶ方法も少し覚えた。


 白雪は最後に水面を覗き込んだ。


 銀色の魚が一匹、静かに泳いでいる。


「またね、お魚さん!」


 魚は水草の向こうへ消えていった。


 白雪は笑顔で手を振り、森の帰り道へ向かう。


 明日は何を見つけられるだろう。


 そんなことを考えながら、今日も白雪は森の中を自由に駆け回っていった。 池の水面が、きらきらと光っている。


「今日はどこに行こうかな?」


 白雪は池のほとりに立ち、周囲を見回した。


 昨日は丸い葉っぱの上で遊んだり、水辺の小さな生き物と泡遊びをしたりした。


 今日はまだ行っていない場所を探してみたい。


 そう思っていたところ、池の端に細い水の流れがあることに気づいた。


「あれ? ここから水が流れてる」


 池から森の奥へ向かって、小さな水路が続いている。


 幅は狭く、水深も浅そうだ。水は透明で、底にある小石がよく見える。


「どこまで続いてるんだろう?」


 白雪は水路の横を歩き始めた。


 水路は木々の根元を通り、草むらの間を抜けている。ところどころに小さな段差があり、水がそこを越えるたびに、さらさらと音を立てていた。


 白雪は水の流れに合わせて歩く。


 途中、小さな水たまりを見つけた。


「ここ、ちょっと深いね」


 しゃがみ込んで覗いてみると、底に丸い石がいくつも転がっている。


 その中に、ひとつだけ黄色く光るものがあった。


「ん?」


 手を伸ばして拾い上げる。


 それは、薄い黄色の半透明な石だった。表面には細い線が何本も入っていて、光にかざすと水のような模様が浮かんで見える。


《流紋石を入手しました》


「流紋石! 模様がきれい!」


 白雪は石をくるくると回して眺めた。


 さらに水たまりの縁には、小さな白い花が咲いていた。


 花びらは細長く、風に揺れるたびに水滴が落ちる。


「この花もかわいい!」


《水音草花を入手しました》


 採取した花をインベントリにしまい、白雪は再び水路を追いかけた。


 ◆


 水路を進んでいくと、木の根が何本も地面から飛び出している場所に出た。


 根と根の間を水が流れ、細いトンネルのようになっている。


「くぐれるかな?」


 白雪は少し屈んで、根の下を覗き込んだ。


 向こう側には光が見える。


「行けそう!」


 四つん這いになり、根の隙間をくぐる。


 背中のマントが枝に引っかかりそうになったので、片手で押さえながら慎重に進んだ。


 途中、頭の上で葉っぱが揺れた。


 さらさら。


「わっ、葉っぱ!」


 顔のすぐ横を小さな虫が通り過ぎていく。


 白雪は思わず目で追ったが、狭い場所なので追いかけるのは諦めた。


 ようやく反対側へ抜けると、そこには少し広い空間があった。


「わあ!」


 木々の間から、柔らかな光が差し込んでいる。


 地面には緑色の苔が広がり、中央には大きな倒木が横たわっていた。


 その周囲には、小さな白い花や青い花が咲いている。


 水路は倒木の下を通り抜け、反対側へ続いていた。


「ここ、きれいだねえ」


 白雪は倒木の近くまで歩いていった。


 木の表面には柔らかな苔が生えている。ところどころに小さなキノコも顔を出していた。


「キノコもある!」


 白い傘に淡い緑色の模様が入ったキノコだった。


 白雪はしゃがみ込み、そっと匂いを嗅いでみる。


 少し甘い香りがした。


「おいしそうな匂い……」


 食べてみたい気持ちはある。


 けれど、見たことのないキノコだ。以前のように毒や状態異常があるかもしれない。


 白雪は少し考えたあと、ひとつだけ採取した。


《木陰茸を入手しました》


「あとで食べてみようかな?」


 食べるかどうかは、気が向いたときに決めればいい。


 今はほかにも気になるものがある。


 倒木の裏側を覗くと、小さな青い実がいくつもまとまって生えていた。


「これは何かな?」


 ひとつ摘まんで匂いを嗅ぐ。


 甘酸っぱい香りがする。


 白雪は迷わず口に入れた。


 ぱくっ。


「んっ!」


 最初は甘い。


 そのあと、舌の上に少しだけ冷たい感覚が広がった。


「冷たい! でもおいしい!」


 もうひとつ食べてみる。


 今度は少し酸味が強かった。


「同じ実なのに味が違う!」


 白雪は面白そうに残りを眺めた。


《木陰青実を入手しました》


 採取した実をしまい、白雪は満足そうに頷いた。


 ◆


 そのとき、倒木の向こうから小さな音がした。


 かさっ。


「あれ?」


 白雪が振り向くと、倒木の上に小さな生き物が立っていた。


 茶色い身体に、白いお腹。頭には小さな葉っぱが一枚乗っている。


 大きさは両手に乗るくらいだ。


 生き物は白雪を見ると、ぴたりと動きを止めた。


「こんにちは!」


 白雪が手を振る。


 生き物は少し後ずさった。


「あ、逃げちゃう?」


 白雪はその場にしゃがみ、動かずに待ってみた。


 しばらくすると、生き物は倒木の上をゆっくり歩き始めた。


 白雪の手元にある木陰青実を見ている。


「これ、食べる?」


 白雪は実をひとつ、倒木の上に置いた。


 生き物は警戒しながら近づき、鼻先で実をつついた。


 くんくん。


 そして、ぱくり。


「あっ、食べた!」


 生き物は小さな口を動かして実を食べると、白雪の方を見た。


「おいしい?」


 返事の代わりに、頭の葉っぱがぴょこんと揺れる。


 白雪は嬉しくなった。


「よかった!」


 生き物はその場で少しだけ身体を丸めたあと、倒木の裏側へ移動した。


 しばらくすると、口に何かをくわえて戻ってくる。


 ころん。


 白雪の前に落とされたのは、白い小さな種だった。


「これ、くれるの?」


 拾い上げると、淡い緑色の筋が入っている。


《木陰の種を入手しました》


「ありがとう!」


 生き物は白雪を見上げ、今度は少しだけ近づいてきた。


 白雪が指先を差し出すと、鼻先をちょんと触れさせる。


「ふふっ、くすぐったい!」


 それから生き物は、倒木の下へ潜り込んでいった。


「またね!」


 白雪は小さく手を振った。


 ◆


 倒木の周囲をひと通り見て回ったあと、白雪は水路の続きを追いかけた。


 木漏れ日の広場を抜けると、少しだけ地面が下り坂になっている。


 水路も傾斜に沿って流れ、途中で小さな段差を作っていた。


 白雪は水の流れを見ながら、近くの石に腰掛ける。


「ここ、涼しいね」


 風が吹き抜けると、木々の葉が揺れた。


 水の音と葉の音が重なって、心地よい。


 そのまま少し休んでいると、水路の向こう側に小さな白いものが動いた。


「あっ!」


 白い羽根だった。


 いや、羽根ではない。


 よく見ると、小さな鳥が水路の石の上を歩いている。


 身体は薄い灰色で、翼の先だけが淡い緑色をしていた。


 鳥は水路にくちばしをつけ、水を飲んでいる。


「小鳥さんだ!」


 白雪が近づくと、鳥は顔を上げた。


 逃げるかと思ったが、すぐには飛び立たない。


 白雪は少し離れた場所にしゃがみ、静かに眺めた。


 鳥が水を飲み終えると、今度は水路の中にある小さな石をつつき始めた。


 ころん。


 石が転がる。


「何してるの?」


 鳥はもう一度つついた。


 ころん。


 石は水に流され、少し下流へ移動していく。


 鳥はその後を追いかけた。


「石を追いかけてる!」


 白雪は面白くなり、鳥と一緒に水路を追いかけた。


 石は水の流れに乗って、少しずつ下へ進んでいく。


 途中で別の石にぶつかり、くるりと回った。


 鳥はそれを追いかけ、白雪も後を追う。


 やがて石は水路の端に引っかかって止まった。


 鳥は満足したように鳴いた。


「ぴっ」


「楽しかった?」


 白雪が笑うと、鳥は翼を広げた。


 そして、木々の間へ飛んでいってしまった。


「あー、行っちゃった」


 白雪は飛んでいく姿を見送った。


 その後、石を拾い上げてみる。


 丸く磨かれた、淡い青色の石だった。


《水流丸石を入手しました》


「これを追いかけてたんだね!」


 鳥が何を考えていたのかは分からない。


 ただ、石を追いかける姿は少し面白かった。


 ◆


 夕方。


 白雪は木漏れ日の広場へ戻り、最後にもう一度、倒木の周囲を見た。


 小さな生き物の姿はもうなかった。


 けれど、置いていった木陰の種はインベントリに入っている。


「今度来たら、また会えるかな?」


 白雪は倒木に手を振った。


 今日の収穫は、流紋石、水音草花、木陰茸、木陰青実、木陰の種、水流丸石。


 気づけば、またいろいろなものが増えていた。


「何か作るときに使えるかなあ」


 以前から集めている素材も、インベントリの中にはたくさんある。


 料理に使えるものもあれば、装備の材料になるものもあるかもしれない。


 でも、今はまだ何に使うか決めなくていい。


 気になったものを見つけて、集めて、遊んで。


 それが白雪の冒険だった。


「今日は楽しかった!」


 白雪は池へ戻る道を歩き始めた。


 水路の音が少しずつ遠ざかる。


 森の奥には、まだ見たことのない場所がたくさんある。


 明日もまた、気になるものを探しに行こう。


 白雪は白蒼の疾風のマントを揺らしながら、森の中を駆けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。