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第47話 森に響く小鳥の歌と不思議な木の実

「ぴぃっ、って鳴いてたよね?」


 白雪は森の中で立ち止まり、耳を澄ませた。


 前回、池から帰る途中に聞こえた小鳥の鳴き声。


 淡い緑色の羽根が枝の間にちらりと見えたけれど、姿をはっきり見る前に帰る時間になってしまった。


「今日は見つけられるかなぁ」


 白雪は声が聞こえた方向へ歩き出した。


 木々の間を抜けると、地面には落ち葉がたくさん積もっていた。


 ふかふかした落ち葉を踏むたび、さくっ、さくっと音がする。


「おお、ここ歩くの楽しい!」


 白雪は少しだけ足を速めた。


 わざと落ち葉が多い場所を選んで歩いていると、突然、足元から小さな虫が飛び出した。


「わっ!」


 驚いて一歩下がる。


 虫は白雪の目の前を飛び、近くの木の幹に止まった。


 小さな羽根が透明で、背中には青い模様がある。


「きれいな虫さんだね」


 指を近づけると、虫は羽根を震わせて飛んでいった。


 白雪はその姿を見送ってから、木の幹に生えている苔に気づいた。


 苔は普通の緑色ではなく、少し黄色がかった色をしている。


「こっちは何だろう?」


 指先で触れてみると、ふわりと柔らかかった。


 少しだけ採取する。


『《黄緑苔》を入手しました』


「黄緑苔だって!」


 白雪はアイテム欄にしまい、再び歩き出した。


 そのとき。


 ぴぃっ!


「あっ!」


 頭上から鳴き声が聞こえた。


 見上げると、淡い緑色の小鳥が枝に止まっている。


 白いお腹に、黄色い尾羽。


 以前、白い幹の木がある広場で見かけた鳥とよく似ている。


「いた!」


 白雪が手を振ると、小鳥は一度だけ首を傾けた。


 そして、枝から飛び立つ。


「待ってー!」


 白雪は追いかけた。


 小鳥は遠くへ飛んでいくわけではなく、少し先の枝に止まっては鳴き声を上げる。


 ぴぃっ。


 ぴぃっ。


 まるで、こちらを呼んでいるようだった。


「もしかして、こっち?」


 白雪は小鳥の後を追い、木の根を越えて進んでいく。


 途中で小鳥が高い枝へ移ると、白雪も木に登った。


 《登攀》を使って枝へ上がり、そこから別の枝へ跳び移る。


 ふわっ。


 とんっ。


「よいしょ!」


 白蒼のマントが風に揺れる。


 小鳥は少し離れた枝で待っていた。


「待っててくれたの?」


 白雪が近づくと、小鳥はまた鳴いた。


 ぴぃっ。


 それから、木の向こうへ飛んでいく。


 白雪はその後を追った。


 しばらく進むと、周囲の木々が少しずつ低くなり、地面に木漏れ日が差し込む場所へ出た。


「わあ!」


 そこには、背の低い草が広がる小さな斜面があった。


 草の間には、丸い実がいくつも落ちている。


 淡い黄色で、表面には小さな白い斑点がある。


「あっ、木の実!」


 白雪はひとつ拾い上げた。


 匂いを嗅ぐと、甘い香りがする。


「おいしそう……」


 少しだけ迷ったあと、口に入れた。


 かりっ。


「んっ!」


 最初は甘い。


 そのあと、舌の上で小さな刺激が弾けた。


「わっ、ぱちぱちする!」


 白雪は目を丸くした。


 噛むたびに、舌の上で細かな刺激が広がる。


 酸っぱさも少し混じっていて、最後にはすっと消えていった。


「面白い味!」


『《星粒の実》を入手しました』

『《味覚》の熟練度が上昇しました』


「星粒の実なんだ!」


 白雪は残りの実をいくつか拾い、アイテム欄にしまった。


 そのうち一つをもう一度食べようか迷ったが、さっきの刺激が少し面白かったので、結局もう一つ口に入れた。


「やっぱり、ぱちぱちする!」


 そのとき、近くの草むらが揺れた。


 かさかさっ。


「ん?」


 白雪はしゃがみ込んだ。


 草の間から、小さな生き物が顔を出している。


 丸い身体に、薄い茶色の毛。


 頭には小さな葉っぱが一枚乗っていた。


「あっ、かわいい!」


 生き物は白雪を見ると、すぐに草むらへ隠れてしまった。


「あらら……」


 白雪は少し離れたところに座り、しばらく待ってみる。


 すると、草むらから鼻先だけが出てきた。


「こんにちはー」


 生き物は白雪の手元にある実をじっと見ている。


「これ、食べたいの?」


 白雪は《星粒の実》をひとつ、草むらの近くに置いた。


 生き物はしばらく様子をうかがっていたが、やがてそっと近づいてきた。


 くんくん。


 実の匂いを嗅ぐ。


 そして、小さな口でかじった。


「食べた!」


 白雪が嬉しそうに笑うと、生き物は実をくわえて草むらへ戻っていった。


「おいしかったかな?」


 返事はない。


 けれど、草むらの向こうで小さな音が聞こえた。


 かりっ、かりっ。


 どうやら、食べているらしい。


「ふふっ」


 白雪は立ち上がり、斜面の周囲を歩いてみた。


 すると、少し離れた場所に小さな木が生えている。


 枝には、薄い緑色の葉っぱと丸い実がなっていた。


 実の表面には細かな模様があり、光に当たると淡く輝いている。


「こっちにも実がある!」


 白雪は木の根元に落ちていた実を拾った。


『《若光の実》を入手しました』


「若光の実……。光ってるね」


 手のひらで転がすと、表面の模様がきらりと光った。


 白雪は実をかじってみる。


 しゃくっ。


「んー……」


 最初は少し酸っぱい。


 そのあと、ほんのり甘さが広がる。


「こっちは酸っぱいけど、おいしい!」


 残りはアイテム欄にしまった。


 木の根元には、小さな白い花も咲いている。


 花びらの先が淡い黄色で、風が吹くと花全体が小さく揺れた。


「この花もかわいいね」


 白雪は花を採取した。


『《若光花》を入手しました』


 そのとき、少し離れた枝の上で小鳥が鳴いた。


 ぴぃっ。


「あっ、鳥さん!」


 小鳥は斜面の向こうにある大きな木へ飛んでいく。


 白雪はその姿を追いかけた。


 大きな木の枝には、小さな巣があった。


 巣の中には、淡い緑色の卵が二つ並んでいる。


「あっ、ここがお家なんだ!」


 小鳥は巣の近くに止まり、白雪を見ていた。


 白雪は少し離れた場所で立ち止まる。


「卵があるんだね。触らないから安心してね」


 小鳥は短く鳴いた。


 ぴぃっ。


 白雪はしばらくその姿を眺めていた。


 すると、巣の近くに小さな羽根が落ちているのを見つけた。


 風に飛ばされて、枝の上に引っかかっている。


「あれ、羽根かな?」


 白雪は木に登り、枝に手を伸ばした。


 羽根をそっと拾い上げる。


『《若葉鳥の羽根》を入手しました』


「若葉鳥の羽根!」


 白雪は羽根をアイテム欄にしまった。


 そのまま木から降りようとしたところで、枝の奥に何か光るものが見えた。


「ん?」


 枝の付け根に、小さな透明の粒がいくつもついている。


 雨粒かと思ったが、触れても水のように流れない。


 ひとつ摘まんでみる。


 ころん。


 小さな粒が指先に乗った。


『《若葉露珠》を入手しました』


「露みたいな石かな?」


 白雪は粒を光にかざしてみた。


 中に小さな緑色の光が見える。


「きれい!」


 もう少し採取しようとしたが、残りは枝にしっかりくっついていた。


「取れないね」


 無理に引っ張らず、そのままにしておく。


 木から降りると、小鳥はまだ巣の近くにいた。


「案内してくれてありがとう!」


 白雪は手を振った。


 小鳥は一度だけ鳴き、枝の奥へ移動する。


 白雪は斜面を振り返った。


 星粒の実に、若光の実。


 小さな生き物にも会えた。


 それに、緑色の小鳥の巣も見つけられた。


「今日もいっぱい見つけたね!」


 白雪は満足そうに頷いた。


 そして、帰り道を探そうと周囲を見回す。


 すると、斜面の先に細い水の流れが見えた。


「あれ? 水がある!」


 小さな流れは、木々の間を抜けてどこかへ続いている。


 白雪は水辺へ向かって歩き出した。


「ちょっとだけ見てみよう!」


 帰るつもりだったのに、また新しい気になるものを見つけてしまった。


 白雪の冒険は、まだまだ終わりそうになかった。

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