↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
22/135

第22話 森で見つけた眠たげな小鳥

「今日はどっちに行こうかなぁ?」


 ELOにログインした雪乃は、森の中で立ち止まっていた。


 昨日は《陽羽鳥》に再会し、金色の羽根を手に入れた。


 それから、《熱実》という赤い実を食べて火傷までしてしまった。


「辛かったけど、おいしかったんだよね……」


 雪乃は昨日の味を思い出した。


 舌がひりひりしたのは大変だったけれど、甘さもあった。


「また見つけたら食べてみようかな?」


 そんなことを考えながら、雪乃は歩き始めた。


 今日は特に目的地を決めていない。


 気になったものを見つけたら、そちらへ向かうつもりだった。


 木漏れ日の小道


 しばらく歩いていると、木々の間に細い道が見えてきた。


 地面には小さな葉っぱが積もり、ところどころに白い花が咲いている。


「こんな道あったんだ!」


 雪乃は少し驚いた。


 今まで通ったことのない場所だ。


 道の先は緩やかな下り坂になっていて、木漏れ日が地面に丸い模様を作っている。


「行ってみよう!」


 雪乃は軽い足取りで進んでいった。


 途中、枝に小さな実がなっているのを見つけた。


 薄い紫色で、表面には白い点がいくつもある。


「これ、食べられるかな?」


 雪乃は一つ採取して、手のひらに乗せた。


『《星斑の実》を入手しました』


 名前を確認してから、匂いを嗅いでみる。


 甘い香りがする。


「おいしそう!」


 ぱくっ。


「ん!」


 甘い。


 けれど、噛んだあとに舌の上で小さな刺激が広がった。


「わっ、ぱちぱちする!」


 まるで小さな炭酸を飲んだときのような感覚だった。


「面白い味!」


 雪乃はもう一つ食べたいと思ったが、まずはアイテム欄に残りをしまった。


「あとで食べよう!」


 そのまま小道を進んでいく。


 眠そうな小鳥


 道の先には、小さな広場があった。


 大きな木が一本立っていて、その枝に白い小鳥が止まっている。


「ん?」


 雪乃は足を止めた。


 小鳥は丸い身体をしていて、羽根は淡い灰色。


 頭には小さな飾り羽根が一本立っている。


 そして、目を半分閉じていた。


『《ネムリコトリ》』


「眠そうな鳥さんだね」


 雪乃は小さな声で話しかけた。


 ネムリコトリは、こくりと首を傾ける。


 そのまま、目を閉じた。


「寝ちゃった?」


 雪乃は少し離れた場所に座り、鳥を眺めることにした。


 しばらくすると、ネムリコトリは枝の上で身体を丸めた。


 そして、小さな寝息を立て始める。


「ふふっ。かわいい」


 雪乃は思わず笑った。


 近づいて触ってみたい気もしたが、起こしてしまいそうなのでやめておいた。


 すると、ネムリコトリの羽根から小さな白い粒が落ちてきた。


 ひらり。


 雪乃の近くに落ちる。


「ん?」


 拾い上げてみる。


『《眠鳥の羽粉》を入手しました』


「羽粉?」


 粉のように細かく、光に当てると淡く輝いている。


「きれいだね」


 雪乃はアイテム欄にしまった。


 甘い香りのする花


 広場の端には、白い花がたくさん咲いていた。


 近づくと、甘い香りが漂ってくる。


「わぁ、いい匂い!」


 雪乃は花の近くにしゃがみ込んだ。


 花びらはふわふわしていて、触れると少しだけ揺れる。


『《夢綿花》』


「夢綿花……?」


 名前を確認する。


 花の中央には、小さな蜜の粒がついていた。


「これ、甘いのかな?」


 雪乃は指先でほんの少しだけ蜜を取った。


 そして、舐めてみる。


「んー……甘い!」


 花の香りと同じように、優しい甘さだった。


「おいしいね!」


 雪乃は花を少しだけ採取した。


『《夢綿花》を入手しました』


 そのとき、甘い香りが一段と強くなった。


「ん?」


 雪乃は鼻を動かした。


 ふわり。


 甘い香りが広がる。


「いい匂い……」


 雪乃は少しだけぼんやりした。


 まぶたが重い。


「……あれ?」


 目をこすってみる。


 眠くなってきた。


「おかしいなぁ……」


 雪乃は立ち上がろうとした。


 けれど、足に力が入りにくい。


『《睡眠》の状態異常を受けました』


「えっ!?」


 雪乃は慌てた。


「また眠くなるやつ!?」


 以前、森で見つけた《夢見花》でも眠ってしまったことがある。


 けれど、今回はまだ意識がはっきりしている。


「うわぁ、どうしよう……!」


 雪乃はアイテム欄を開こうとした。


 しかし、指先がうまく動かない。


「眠い……」


 視界が少しずつぼやけていく。


「薬……どこ……」


 なんとかアイテム欄を開いたが、眠気で操作が遅れる。


 そのまま、雪乃は地面に座り込んでしまった。


「ちょっとだけ……休憩……」


 そして、そのまま眠ってしまった。


 目が覚めたら……


「……ん?」


 雪乃はゆっくりと目を開けた。


 視界に入ったのは、木漏れ日の揺れる景色だった。


「……あれ?」


 身体を起こす。


 どうやら、しばらく眠っていたらしい。


 状態表示を確認すると、睡眠状態は解除されていた。


「寝ちゃった……」


 雪乃は頭を押さえた。


「また花のせいかなぁ?」


 周囲を見回す。


 夢綿花は変わらず甘い香りを漂わせている。


「いい匂いだったのに……」


 雪乃は少し残念そうに花を眺めた。


 そのとき、視界の端に通知が表示された。


『スキル《睡眠耐性》の熟練度が上昇しました』


「おっ!」


 雪乃は表示を確認した。


 以前、《夢見花》で眠ってしまったときに覚えたスキルだ。


 今回も睡眠状態になったことで、少し成長したらしい。


「少しずつ強くなってるんだね!」


 雪乃は嬉しそうに笑った。


 ただし、まだ眠らなくなるわけではない。


「次は気をつけよう……」


 そう言いながら、雪乃は夢綿花をもう一度見つめた。


「でも、いい匂いだったなぁ」


 小鳥のお昼寝場所


 広場の木を見上げると、ネムリコトリはまだ枝の上にいた。


 先ほどと同じように、丸くなって眠っている。


「まだ寝てる!」


 雪乃は少し驚いた。


 自分が起きたあとも、ずっと眠っていたらしい。


「寝るのが好きなのかな?」


 木の根元には、小さな羽根がもう一枚落ちていた。


 雪乃は拾い上げる。


『《眠鳥の羽根》を入手しました』


「今度は羽根!」


 雪乃は嬉しそうにしまった。


 それから、ネムリコトリを起こさないように、静かに広場を離れた。


 小道の先にあった水辺


 広場を抜けた先には、小さな水辺があった。


 水は浅く、底には丸い石が並んでいる。


「わぁ、水がある!」


 雪乃は近づいてみた。


 水面には小さな葉っぱが浮かんでいる。


 その葉っぱの上に、透明な雫が一つ乗っていた。


「きれい!」


 雪乃はそっと拾い上げた。


『《朝露珠》を入手しました』


「朝露珠……」


 手のひらに乗せると、雫の中に小さな光が浮かんでいる。


「宝石みたい!」


 その隣には、細い水草が生えていた。


 葉の先端には、小さな丸い実がついている。


「これも実かな?」


 雪乃は一本だけ採取した。


『《水滴草》を入手しました』


「水滴草!」


 名前を確認したあと、葉先の実を一つだけ口に入れてみる。


 ぷちっ。


「ん?」


 味はほとんどない。


 けれど、口の中にひんやりした感覚が広がった。


「冷たくておいしい!」


 雪乃は嬉しそうに笑った。


 そのとき、水辺の向こう側で何かが動いた。


 ぴょんっ。


 小さな青い生き物が跳ねた。


「あっ!」


 雪乃は目を向けた。


 身体は丸く、長い耳が二本生えている。


『《アオミミピョン》』


「かわいい!」


 アオミミピョンは雪乃を見ると、ぴょんぴょん跳ねて草むらへ消えてしまった。


「あー、行っちゃった!」


 雪乃は少しだけ追いかけたが、すぐに姿を見失った。


「速いねぇ」


 また会えたらいいな。


 雪乃はそう思いながら、水辺を離れた。


 今日の冒険は大成功!


 帰り道、雪乃は今日見つけたものを確認した。


 《星斑の実》


 《眠鳥の羽粉》


 《夢綿花》


 《眠鳥の羽根》


 《朝露珠》


 《水滴草》


「今日もいっぱい!」


 新しい場所を見つけることができた。


 眠ってしまったのは少し大変だったけれど、睡眠耐性も成長した。


「今度は眠らないで花を見たいなぁ」


 雪乃は笑った。


『ログアウトしますか?』


「はーい!」


 視界が白く染まる。


 今日もまた、森の中で不思議なものを見つけた。


 そして、眠たげな小鳥にも出会った。


 雪乃は次に訪れたとき、あの小鳥が起きている姿を見られるだろうか。


 そんなことを考えながら、ログアウトした。


 現実世界・学校


「また眠らされたの?」


 昼休み。


 舞は雪乃の話を聞いて、苦笑した。


「うん。甘い匂いの花があってね、近づいたら眠くなっちゃった」


「前にも似たようなことがあったよね」


「うん! でも今回はちょっとだけ起きていられたよ!」


 優真が尋ねる。


「睡眠耐性が上がったのか?」


「そうみたい!」


 雪乃は嬉しそうに頷いた。


「少しずつ強くなってるんだって!」


「それなら、同じ状態異常にはだんだん強くなっていくんだな」


「うん!」


 舞は少し考えてから言った。


「でも、眠くなる花には気をつけた方がいいよ」


「分かってるよ!」


 雪乃は元気よく返事をした。


「でも、甘い匂いだったんだよねぇ」


「そこが問題なんじゃない?」


 舞が笑う。


 優真も苦笑した。


「雪乃の場合、気になるものを見つけたら近づくからな」


「だって、気になるんだもん!」


 雪乃は笑った。


 次はどんな花や生き物に出会えるだろう。


 森にはまだまだ知らないものがたくさんある。


 雪乃は次の冒険を楽しみにしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。