第21話 金色の鳥と森の木漏れ日
「今日は、あの金色の鳥を探してみよう!」
ELOにログインした雪乃は、森の中を歩いていた。
昨日、大きな木の上で見つけた鳥の巣。
そこから飛び立ったのは、金色の羽根を持つ美しい鳥だった。
『陽羽鳥』という名前のモンスター。
「もう一回見たいなぁ」
雪乃は昨日の木を思い出しながら、森の中を進んでいく。
もちろん、鳥に会える保証はない。
それでも、あのきらきらした羽根をもう一度見てみたかった。
「巣の近くにいるかな?」
そんなことを考えながら、雪乃は木々の間を駆けていった。
大きな木を再訪!
しばらく歩くと、昨日見つけた大きな木が見えてきた。
「着いた!」
雪乃は木の根元へ近づいた。
昨日と同じように、周囲には木の実が落ちている。
《陽光の実》もいくつか見つけた。
「今日もある!」
一つ拾ってアイテム欄にしまう。
それから、木の幹を見上げた。
枝の間にある巣は、昨日と変わらずそこにある。
「鳥さん、いるかな?」
雪乃はゆっくりと木に登り始めた。
幹に手をかけ、枝へ移動する。
昨日よりも慣れた動きで、あっという間に巣の近くまでたどり着いた。
けれど、鳥の姿は見えない。
「いないねぇ」
巣の中には、薄い青色の模様がある卵が二つ並んでいる。
雪乃は少し離れた枝に腰を下ろした。
「帰ってくるかな?」
しばらく待ってみることにした。
木の上でのんびり
枝に座った雪乃は、周囲の景色を眺めた。
高いところから見る森は、地上とは違う。
木々の葉が重なり合い、遠くまで緑色が続いている。
風が吹くと、葉っぱが一斉に揺れた。
「気持ちいいなぁ」
雪乃は足をぶらぶらさせた。
そのとき、すぐ近くの枝に小さな生き物が現れた。
「ん?」
茶色い身体に、ふさふさした尻尾。
『《ツリースクワール》』
以前にも見かけたことのあるリス型のモンスターだ。
ツリースクワールは雪乃に気づくと、少しだけ警戒した。
けれど、逃げる様子はない。
「こんにちは!」
雪乃が手を振る。
ツリースクワールは枝の上をちょこちょこと歩き、木の実を一つ抱えた。
「木の実食べるの?」
ツリースクワールは木の実を両手で持ち、かりかりと食べ始めた。
「おいしい?」
もちろん返事はない。
雪乃もアイテム欄から《陽光の実》を取り出した。
「私も食べよう!」
かりっ。
「うん、おいしい!」
ツリースクワールと並んで木の実を食べる。
なんだか不思議な時間だった。
金色の鳥が帰ってきた!
しばらくすると、遠くから羽音が聞こえてきた。
ばさっ。
「ん?」
雪乃は顔を上げた。
森の向こうから、金色の鳥が飛んでくる。
「あっ!」
陽羽鳥だ。
昨日と同じ、光を反射する美しい羽根。
陽羽鳥は木の周囲を一周すると、巣の近くの枝へ止まった。
「帰ってきた!」
雪乃は嬉しそうに声を上げた。
しかし、大きな声に驚いたのか、陽羽鳥はすぐにこちらを向いた。
雪乃は慌てて口を閉じた。
「……静かにしないと」
小さな声でつぶやく。
陽羽鳥はしばらく雪乃を見つめていたが、やがて巣へ近づいた。
そして、卵の様子を確認するように身体をかがめた。
「お母さんなのかな?」
雪乃は少し離れた枝から、その様子を眺めていた。
陽羽鳥は卵のそばで羽根を広げ、しばらくじっとしている。
「きれいだなぁ……」
雪乃は目を輝かせた。
近くで見ると、羽根の一枚一枚が淡い金色に輝いている。
まるで小さな光が集まってできているようだった。
落ちてきた金色の羽根
陽羽鳥が翼を広げたとき、金色の羽根が一枚、ひらりと落ちてきた。
「あっ!」
羽根は風に乗り、雪乃のいる枝の近くへ流れてきた。
雪乃は手を伸ばす。
ひらり。
指先に羽根が触れた。
「取れた!」
『《陽羽の羽根》を入手しました』
雪乃は羽根を手のひらに乗せた。
昨日拾った《風羽》よりも大きく、金色の光が美しい。
「わぁ……!」
思わず見とれてしまう。
そのとき、陽羽鳥がこちらを向いた。
「あっ、ごめんね!」
雪乃はすぐに羽根をしまった。
けれど、陽羽鳥は特に怒った様子もなく、再び巣の方へ向き直った。
「落ちてきたものだから、いいのかな?」
雪乃は少し考えた。
それから、陽羽鳥の邪魔にならないように、そっと木を降りることにした。
木の下で見つけた小さな花
地面に降りた雪乃は、木の周囲を少し歩いた。
すると、根元から少し離れた場所に、小さな黄色い花が咲いているのを見つけた。
「あっ、花!」
しゃがみ込んで眺める。
花びらは細く、中央には小さな金色の粒がある。
『《陽だまり花》』
「陽だまり花……」
名前を読み上げる。
雪乃は一本だけ採取した。
『《陽だまり花》を入手しました』
その隣には、赤い小さな実も落ちていた。
「これも実かな?」
拾い上げる。
『《熱実》を入手しました』
「熱実?」
雪乃は匂いを嗅いでみた。
少し甘い香りがする。
「食べられるのかな?」
雪乃は一つだけ口に入れた。
ぱくっ。
「ん……?」
最初は甘い。
けれど、すぐに舌の奥がぴりっとした。
「わっ、辛い!」
雪乃は目を丸くした。
「からーい!」
口の中がじんわり熱くなる。
『《火傷》の状態異常を受けました』
「ええっ!?」
雪乃は慌ててアイテム欄を開いた。
舌がひりひりする。
「辛いだけじゃなかった!」
状態表示を見ると、火傷の効果がついていた。
「うわぁ、どうしよう!」
雪乃は回復用の薬を探す。
以前から持っていた状態異常用の薬が見つかった。
「これかな!?」
説明を確認し、火傷に対応する薬を使う。
すると、身体の熱が少しずつ引いていった。
「ふぅ……」
雪乃は胸をなで下ろした。
「びっくりしたぁ……」
それでも、熱実の味は少し気になった。
「辛かったけど、味はちょっとおいしかったなぁ」
雪乃は残りをアイテム欄へしまった。
新しい耐性!
薬を使って落ち着いた雪乃は、状態表示を確認した。
すると、見慣れない表示が追加されていた。
『スキル《火傷耐性》を獲得しました』
「おっ?」
雪乃は目を丸くした。
「火傷耐性!」
どうやら、熱実によって火傷を経験したことで、耐性が身についたらしい。
「また耐性が増えた!」
雪乃は嬉しそうに笑った。
ただし、まだ火傷を完全に防げるわけではない。
同じようなものを食べれば、また火傷する可能性はある。
「次は気をつけよう……」
そう言いながらも、雪乃は熱実をもう一度食べるかどうか少し考えていた。
「でも、味は気になるんだよねぇ」
やっぱり好奇心には勝てないようだった。
今日の冒険は大成功!
その後、雪乃は大きな木の周りをもう少し歩いた。
陽羽鳥は巣の近くにいたが、邪魔をしないように遠くから眺めるだけにした。
木の根元では《陽だまり花》を見つけ、近くの草むらでは小さな虫も見かけた。
「今日は鳥さんにも会えたし、よかった!」
雪乃は満足そうに笑った。
アイテム欄には、《陽羽の羽根》や《熱実》などが増えている。
それから、新しく覚えた《火傷耐性》。
「今日もいっぱい見つけたね!」
『ログアウトしますか?』
「はーい!」
雪乃は笑顔でログアウトした。
金色の鳥に再会できた。
小さな羽根も手に入った。
そして、少し痛い目にも遭った。
けれど、それもまた冒険の一つ。
雪乃は今日も、森の中で自由に過ごしたのだった。
現実世界・学校
「火傷したの!?」
昼休み。
舞は雪乃の話を聞いて、驚いた声を上げた。
「うん! 赤い実を食べたら、舌が熱くなっちゃった!」
「また食べたんだ……」
優真が苦笑する。
「熱実って名前なら、ちょっと警戒してもよかったんじゃないか?」
「だって、甘い匂いがしたんだもん!」
雪乃は少し頬を膨らませた。
舞は呆れながらも笑っている。
「でも、火傷耐性を覚えたんだね」
「うん! これで火傷にも少し強くなったよ!」
「耐性が増えていくのは面白いね」
優真が言った。
「そうなの! あとね、陽羽鳥にも会えたんだよ!」
雪乃は嬉しそうに話を続けた。
「金色の羽根がすっごくきれいだった!」
「巣の近くにいたんだよね?」
舞が確認する。
「うん! 卵もあったよ!」
「じゃあ、あまり近づきすぎないようにしないとね」
「分かってるよ!」
雪乃は元気よく頷いた。
「今度は遠くから眺めるんだ!」
舞は微笑んだ。
「それがいいね」
雪乃は窓の外を眺めた。
次はどんなものが見つかるだろう。
森の中には、まだまだ知らないものがたくさんある。
そのことを考えるだけで、雪乃は楽しくなってしまうのだった。




