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第20話 小さな水の友達と不思議な木の実

「今日は、ミズシズクに会いに行こう!」


 ELOにログインした雪乃は、森の中を歩いていた。


 昨日見つけた小さな隠れ家。


 岩の隙間を抜けた先にある、光る苔と小さな水たまりの場所だ。


 そこには、《ミズシズク》という白くて丸い生き物が住んでいた。


「また実をくれるかなぁ?」


 雪乃はそんなことを考えながら、昨日通った道を進んでいく。


 もちろん、実をもらうことだけが目的ではない。


 あのぷにぷにした生き物が、もう一度見たいのだ。


「早く会いたいな!」


 小さな隠れ家へ!


 風の岩場にたどり着いた雪乃は、細い木の根元へ向かった。


 昨日見つけた岩の隙間。


 そこからは今日も冷たい風が吹き出している。


「よし、入ろう!」


 身体を横にして、ゆっくりと隙間を抜ける。


 少し進むと、あの小さな空間が見えてきた。


 壁には青い苔が光り、水たまりの表面には天井から差し込む光が揺れている。


「おーい!」


 雪乃は水たまりへ近づいた。


「ミズシズクー!」


 しばらく待ってみる。


 けれど、姿は見えない。


「いないのかな?」


 水面を覗き込む。


 ぴちゃ。


 小さな音がした。


「あっ!」


 水たまりの端から、白い丸い頭が出てきた。


 《ミズシズク》だ。


「いた!」


 雪乃が笑顔になると、ミズシズクは水面に身体を浮かべた。


 昨日と同じ黒い目。


 背中には小さな葉っぱが一枚ついている。


「こんにちは!」


 ミズシズクは、ぴょこっと身体を揺らした。


「今日もかわいいねぇ」


 雪乃はしゃがみ込んだ。


 ミズシズクは水面をゆっくり移動し、雪乃の近くまでやってくる。


「おっ!」


 昨日より近い。


 雪乃はそっと手を水面に近づけた。


 すると、ミズシズクはその手の近くまで寄ってきた。


 ぷにっ。


 小さな身体が雪乃の指先に触れた。


「わっ!」


 雪乃は驚いた。


「触れた!」


 ミズシズクはそのまま水の中へ戻った。


 雪乃は嬉しそうに笑った。


「ふふっ。仲良くなれたかな?」


 水たまりの中を探検!


 ミズシズクが泳いでいる様子を眺めていると、雪乃は水たまりの底に何か光るものを見つけた。


「ん?」


 水の中を覗き込む。


 底には、小さな青い粒がいくつも転がっていた。


「何だろう?」


 雪乃は水に手を入れて、一つ拾い上げた。


『《雫晶の粒》を入手しました』


「しずくしょう?」


 水滴のような形をした小さな結晶だった。


 光にかざすと、内部に細かな泡が見える。


「きれい!」


 もう一つ拾ってみる。


 こちらは少し白っぽい。


『《白雫晶》を入手しました』


「こっちは白い!」


 雪乃は二つを並べて眺めた。


 すると、ミズシズクが近づいてきた。


 雪乃が拾った結晶をじっと見ている。


「これ、好きなの?」


 ミズシズクは身体を揺らした。


「そうなのかな?」


 雪乃は結晶を水の中へ戻してみた。


 すると、ミズシズクはそれを追いかけるように泳ぎ始めた。


「わっ、遊んでる!」


 雪乃は水面に手を入れ、結晶を少しだけ転がしてみた。


 ミズシズクも後を追う。


 ころころ。


 ぷかぷか。


「ふふっ。面白い!」


 しばらく一緒に遊んでいた。


 水の実を食べてみよう!


 水たまりの奥には、小さな植物が生えていた。


 丸い葉が水面に浮かび、その中央には透明な実がついている。


「また実がある!」


 雪乃は近づいてみた。


 実の中には小さな泡がいくつも浮かんでいる。


 昨日食べた《泡水の実》によく似ていた。


「これも食べられるのかな?」


 雪乃は一つだけ採取した。


『《水泡の実》を入手しました』


 手のひらに乗せて、匂いを嗅いでみる。


 ほんのり甘い香り。


「おいしそう!」


 雪乃はそのまま口に入れた。


 ぱくっ。


 ぷちぷちっ。


「んんっ!」


 口の中で泡が弾けた。


 昨日の《泡水の実》よりも少し甘く、後味はさっぱりしている。


「おいしい!」


 雪乃は嬉しそうに頷いた。


『満腹度が少し回復しました』


「ふふっ。おやつだね!」


 残りの実はアイテム欄へしまった。


 すると、ミズシズクが雪乃の足元へ近づいてきた。


「ん? 食べたいの?」


 雪乃は採取した実を一つ取り出して、水面へ置いてみた。


 ミズシズクは近づいて、実に口をつけた。


 ぱくっ。


 そして、ぷるんと身体を揺らす。


「食べた!」


 雪乃は嬉しくなった。


「おいしい?」


 ミズシズクは水面で小さく跳ねた。


 どうやら気に入ったらしい。


 隠れ家の外へ!


 しばらくミズシズクと遊んだあと、雪乃は隠れ家の外へ出ることにした。


「また来るね!」


 ミズシズクは水面から顔を出していた。


 雪乃が手を振ると、ぷこっと小さな泡を吐き出す。


「ばいばい!」


 岩の隙間を抜け、風の岩場へ戻る。


 外では風が吹き、木の葉がさらさらと揺れていた。


「気持ちいい!」


 雪乃は大きく伸びをした。


 そのとき、少し離れた場所に大きな木があることに気づいた。


 昨日は岩場の周りばかり見ていて、気づかなかった木だ。


 幹は太く、枝が横へ大きく広がっている。


「大きな木!」


 雪乃は近づいてみた。


 根元には、いくつもの木の実が落ちている。


 赤いもの。


 茶色いもの。


 それから、少し金色に光るもの。


「わぁ、いっぱい!」


 雪乃はしゃがみ込んだ。


 金色の木の実


 金色の実は、指先ほどの大きさだった。


 表面には細い筋が入っていて、光に当たるときらきら輝く。


「これ、何だろう?」


 拾い上げてみる。


『《陽光の実》を入手しました』


「ようこうのみ?」


 雪乃は実を眺めた。


 匂いを嗅ぐと、甘い香りがする。


「おいしそう!」


 雪乃は一つ口に入れてみた。


 かりっ。


「ん?」


 最初は少し硬い。


 けれど、噛んでいると甘さが広がってきた。


「甘い!」


 その直後、身体がほんのり温かくなった。


「……あれ?」


 手のひらを見てみる。


 何も変わっていない。


 しかし、身体の奥がぽかぽかする。


『一時的に体温が上昇しました』


「体温?」


 雪乃は首を傾げた。


「寒いときに食べたらよさそう!」


 残りの実をいくつか拾い、アイテム欄にしまった。


 その近くには、赤い実も落ちている。


 こちらは表面が少しざらざらしていた。


「こっちはどうかな?」


 匂いを嗅いでみる。


 甘酸っぱい香りがする。


 雪乃は一つだけ食べてみた。


 ぱくっ。


「すっぱ!」


 思わず目を細める。


 けれど、すぐに甘みも感じられた。


「でも、おいしい!」


『《酸甘の実》を入手しました』


 雪乃は満足そうに頷いた。


 木の上には何がある?


 木の根元を調べ終えた雪乃は、幹を見上げた。


「上にも何かあるかな?」


 枝は太く、登りやすそうだった。


 雪乃は幹に手をかける。


 よいしょ。


 足を乗せて、少しずつ上へ登っていく。


 枝に手をかけ、身体を持ち上げる。


「よし!」


 《登攀》を使いながら、木の上へ進んでいった。


 途中の枝には、小さな葉っぱがたくさんついている。


 その中に、金色の実がいくつか実っていた。


「あっ、上にもある!」


 雪乃は手を伸ばして採取した。


『《陽光の実》を入手しました』


 さらに上へ進む。


 すると、太い枝の根元に小さな穴が開いていた。


「ん?」


 近づいて覗き込む。


 中には、丸いものがいくつか並んでいる。


「卵かな?」


 雪乃はそっと覗いた。


 その瞬間。


 ばさっ!


 大きな羽音がした。


「わっ!」


 木の上から、一羽の鳥が飛び立った。


 淡い金色の羽根。


 長い尾。


 翼を広げると、光がきらきらと反射した。


『《陽羽鳥》』


「わぁ! きれい!」


 雪乃は思わず見とれた。


 陽羽鳥は木の周りを一周し、少し離れた枝へ止まった。


「さっきの卵、あなたの?」


 陽羽鳥は答えない。


 ただ、雪乃の方をじっと見ている。


「ごめんね。びっくりさせちゃった?」


 雪乃は巣から少し離れた枝へ移動した。


 それから、陽羽鳥の姿を眺めた。


 しばらくすると、鳥は翼を広げて森の向こうへ飛んでいった。


「また見たいなぁ」


 雪乃はその姿が見えなくなるまで眺めていた。


 木から降りるときに!


「さて、降りようかな」


 雪乃は枝から地面を見下ろした。


 思ったより高い。


「……ちょっと高いね」


 登るときは楽しかったが、降りるときは少し怖い。


 雪乃は近くの枝へ移動し、ゆっくりと降りていく。


 途中で足を滑らせた。


「わっ!」


 身体が傾く。


 けれど、すぐに別の枝を掴んだ。


「ふぅ……危なかった」


 最後は地面へ向かって軽く跳び降りた。


 ふわり。


 《白蒼の疾風》の効果で身体が軽く浮く。


 さらに風が吹き、マントが揺れた。


「おおっ!」


 思ったよりも遠くへ進んだ。


 トンッ。


 無事に着地する。


『スキル《落下制御》を獲得しました』


「おっ!」


 雪乃は表示を見つめた。


「落下制御?」


 落下中の姿勢を整え、着地を安定させるスキルらしい。


「やった! また新しいスキル!」


 雪乃は嬉しそうに笑った。


「これなら高いところから降りるのも安心かな?」


 もちろん、どんな高さでも安全になるわけではない。


 けれど、少しは役に立ちそうだった。


 今日の冒険は大成功!


 その後、雪乃は大きな木の周りをもう少しだけ歩いた。


 落ちている木の実を拾ったり、根元の草を眺めたり。


 途中で《陽羽鳥》が飛んでいった方向を見てみたが、姿はもう見えなかった。


「また会えるといいなぁ」


 雪乃はアイテム欄を確認した。


 《水泡の実》


 《陽光の実》


 《酸甘の実》


 それから、木の上で見つけたものもいくつか入っている。


「今日は食べ物がいっぱい!」


 雪乃は嬉しそうに笑った。


 そして、森の道を歩いて帰る。


 新しい装備のおかげで、歩くのも走るのも楽しい。


「明日はどこに行こうかな?」


 考えているだけで、わくわくしてくる。


『ログアウトしますか?』


「はーい!」


 雪乃は笑顔でログアウトした。


 今日も森の中で、小さな友達と遊び、新しい木の実を見つけた。


 そして、また一つスキルを覚えた。


 雪乃の冒険は、まだまだ続いていく。


 現実世界・学校


「ミズシズクと触れたの?」


 昼休み、舞は少し驚いたように尋ねた。


「うん! 指にぷにって触れたんだよ!」


 雪乃は嬉しそうに答えた。


「それはかわいいね」


「それにね、木の実をあげたら食べてくれたの!」


 優真が話に加わる。


「友好的なモンスターなんだな」


「そうかも!」


 雪乃は頷いた。


「あと、大きな木の上に鳥の巣があったよ!」


「また登ったの?」


 舞が笑う。


「うん! そしたら、金色の鳥が飛んでいったの!」


「金色?」


「羽根がきらきらしてて、すっごくきれいだった!」


 優真は少し考える。


「珍しいモンスターかもしれないな」


「また会えるかなぁ」


 雪乃は窓の外を眺めた。


「今度はもう少し近くで見たいな!」


 舞は微笑んだ。


「巣を見つけても、あまり驚かせないようにね」


「うん!」


 雪乃は元気よく返事をした。


 次は、あの金色の鳥にまた会えるだろうか。


 それとも、森のどこかで別の不思議な生き物を見つけるのだろうか。


 雪乃は次の冒険を楽しみにしていた。

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