第13話 青く輝く洞窟の不思議な住人
「今日は洞窟の続き!」
ELOにログインした雪乃は、前回見つけた洞窟の入口に立っていた。
岩の隙間を抜けると、青く輝く鉱石が壁に埋まった空間が広がっている。
「やっぱりきれいだねぇ!」
雪乃は洞窟の中を見回した。
前回は《洞青花》や《洞白キノコ》を見つけた。
それに、青白い毛並みの小さなモンスター《ルミナモ》にも出会った。
「今日はまた会えるかな?」
雪乃は楽しそうに笑い、洞窟の奥へ歩き出した。
ぷにぷにした水たまり
洞窟の中はひんやりとしている。
天井から水滴が落ち、地面には小さな水たまりができていた。
ぽたっ。
ぽたっ。
雪乃は水たまりの一つに近づいた。
「ここ、前にも見たね」
水の中を覗き込むと、底に何かが動いている。
「ん?」
目を凝らしてみる。
小さな透明の生き物が、水たまりの中をふわふわ漂っていた。
「わぁ! 何これ!」
雪乃は指先を水に入れた。
すると、その生き物が指先に近づいてくる。
ぷるん。
「ぷにぷにしてる!」
『クリスタルスライム』
「スライムさんだ!」
クリスタルスライムは透明な身体の中に、小さな青い粒をいくつも浮かべていた。
雪乃が指でつつくと、身体がぷるんと揺れる。
「面白いねぇ!」
もう一度つつく。
ぷるん。
クリスタルスライムは少しだけ形を変え、雪乃の指から離れた。
「あっ、逃げちゃうの?」
雪乃が手を伸ばすと、クリスタルスライムは水たまりから飛び出した。
ぴょん!
「わっ!」
雪乃の目の前で跳ね、地面を転がる。
どうやら敵対しているらしい。
「そっか、モンスターだったね!」
雪乃は双短剣を抜いた。
クリスタルスライムが身体を膨らませる。
次の瞬間、小さな水の塊が飛んできた。
「わわっ!」
雪乃は横へ跳んで避ける。
水の塊は岩壁に当たり、ぱしゃんと弾けた。
「水を飛ばしてくるんだ!」
今度は雪乃が近づいた。
短剣を振る。
ぷるん!
身体が揺れる。
もう一度攻撃しようとしたところで、クリスタルスライムが小さく跳ねた。
雪乃は反射的に後ろへ下がる。
「おっと!」
水の塊が足元に落ちた。
「危なかったぁ!」
その後も何度か攻撃を避けながら短剣を振り、クリスタルスライムを倒した。
『経験値を獲得しました』
『《水晶粘液》を入手しました』
「おおっ!」
雪乃はアイテムを確認した。
「水晶粘液だって! 何に使うんだろう?」
分からないけれど、珍しいものが手に入った。
「よし!」
雪乃は満足そうに頷いた。
洞窟の壁に生えるもの
さらに奥へ進むと、壁の一部に白いものが広がっていた。
「……ん?」
近づいてみる。
それは、小さな結晶のようなものだった。
壁に張りつくように生えている。
「きらきらしてる!」
雪乃は指先で触れてみた。
少し冷たい。
表面は硬そうだ。
『《霜結晶》を発見しました』
「霜結晶!」
雪乃は採取を試みた。
しかし、指で引っ張っても取れない。
「うーん、これも道具がいるのかな?」
前回の《洞青鉱》と同じらしい。
雪乃は少し残念そうに手を離した。
その近くには、小さな青い草が生えていた。
「あっ、こっちは採れそう!」
摘み取ってみる。
『《洞青草》を入手しました』
「洞青草だって!」
雪乃は草を手のひらに乗せてみた。
葉っぱは薄く、青い筋が入っている。
「これも薬草かな?」
説明を見ると、薬の材料として使われることがあるらしい。
「へぇー!」
雪乃はアイテム欄へしまった。
そのまま壁沿いに歩いていくと、今度は小さな穴がいくつも並んでいる場所を見つけた。
「何だろう?」
穴の一つに顔を近づける。
奥から風が吹いている。
ふうっ。
「ここも風が出てる!」
雪乃は耳を近づけた。
かすかに、何かが動く音がする。
「……?」
ごそごそ。
「何かいるのかな?」
少し待ってみたが、何も出てこない。
雪乃は穴を覗き込むのをやめた。
「また今度ね!」
ふわふわの住人、再び!
少し進んだところで、青い光が視界の端を横切った。
「あっ!」
雪乃は顔を上げた。
青白い毛並み。
小さな身体。
「ルミナモだ!」
前回見た小さなモンスターだった。
ルミナモは岩の上にちょこんと座り、雪乃を見ている。
「こんにちは!」
雪乃が手を振ると、ルミナモは首を傾げた。
「覚えてる?」
もちろん返事はない。
雪乃が近づくと、ルミナモはぴょんと跳ねて、少し離れた岩の上へ移動した。
「あっ、待って!」
また追いかけっこが始まった。
ルミナモは岩から岩へ飛び移る。
雪乃も《跳躍》を使って後を追う。
ぴょん!
「おおっ!」
ぴょん!
今度は少し遠い岩へ飛び移った。
「わっ、届いた!」
ルミナモはさらに奥へ進んでいく。
雪乃も追いかける。
すると、ルミナモが突然立ち止まった。
その先には、少し広い空間があった。
「わぁ!」
雪乃は思わず声を上げた。
天井から青い結晶がいくつも垂れ下がり、床には小さな水たまりが広がっている。
壁の一部には、淡い光を放つ苔が生えていた。
「すごいねぇ!」
雪乃はルミナモのことを忘れて、周囲を見回し始めた。
その隙に、ルミナモは岩の隙間へ消えてしまった。
「あっ、いなくなっちゃった」
少し残念だったが、今は目の前の景色の方が気になる。
「ここ、きれい!」
雪乃は広い空間の中を歩き回った。
光る苔と不思議な花
壁に近づくと、淡く光る苔が一面に広がっていた。
「これ、触ってもいいのかな?」
指先でそっと触れてみる。
柔らかい。
「ふわふわ!」
少しだけ摘み取る。
『《燐光苔》を入手しました』
「燐光苔だって!」
手のひらに乗せると、苔が小さく光った。
「わぁ、光ってる!」
雪乃は何度も手のひらを眺めた。
そのすぐ近くに、小さな花が咲いている。
花びらは透明に近く、中央に青い光が灯っていた。
「お花もある!」
摘み取ってみる。
『《星雫花》を入手しました』
「星雫花!」
名前もかわいい。
雪乃は花をアイテム欄へしまった。
さらに床の水たまりを覗き込む。
水の中には、小さな透明の粒が沈んでいた。
「これも採れるかな?」
手を伸ばして拾い上げる。
『《水晶粒》を入手しました』
「また水晶だ!」
今日はきらきらしたものがいっぱいだ。
雪乃は嬉しそうに笑った。
奥から聞こえる音
しばらく探索していると、洞窟の奥から低い音が聞こえてきた。
ごご……。
「……ん?」
雪乃は顔を上げた。
もう一度。
ごごご……。
岩が動くような音。
雪乃は少しだけ立ち止まった。
「何の音だろう?」
音のする方へ目を向ける。
広い空間の奥には、さらに細い通路が続いている。
その先は暗く、よく見えない。
「奥に何かあるのかな?」
雪乃は通路へ近づいていった。
しかし、途中で大きな岩が道を塞いでいた。
「わっ、通れない!」
岩の隙間から、冷たい風が流れてくる。
雪乃はしゃがみ込んで覗いてみた。
奥は暗い。
そして、少しだけ青い光が見えた。
「……きれいな光」
雪乃は手を伸ばしてみたが、届かなかった。
岩は大きく、動かせそうにない。
「うーん……」
少し考えたあと、雪乃は立ち上がった。
「今日は無理かな!」
無理に進むのはやめて、広い空間へ戻ることにした。
今日の発見!
ログアウトの時間が近づいてきた。
雪乃は洞窟の中でアイテム欄を確認する。
《水晶粘液》
《洞青草》
《燐光苔》
《星雫花》
《水晶粒》
「いっぱい!」
新しいスキルは増えなかったが、洞窟の奥にあるきれいな場所を見つけられた。
「また来たいなぁ!」
雪乃は青く光る天井を見上げた。
「次はあの岩の向こうも見てみたい!」
そう言って笑った。
『ログアウトしますか?』
「はーい!」
視界が白く染まる。
今日も雪乃は、洞窟の中で自由に遊んでいた。
そして、洞窟のさらに奥では、何かが静かに動いていた。
現実世界・学校
「洞窟の中にもモンスターがいたんだね」
昼休み、舞が雪乃の話を聞いていた。
「うん! 水たまりにスライムがいたよ!」
「水晶みたいなスライム?」
「そう! 透明で、中に青い粒が入ってた!」
「きれいそうだね」
「うん! 倒したら水晶粘液が手に入ったよ!」
優真が少し興味を示す。
「鉱石は採れたか?」
「ううん。硬くて取れなかった」
「採掘道具が必要なのかもな」
「そうみたい!」
舞が尋ねる。
「洞窟の奥には行けた?」
「途中に大きな岩があって通れなかったの」
「じゃあ、まだ先があるんだね」
「うん! 青い光も見えたよ!」
雪乃は目を輝かせた。
「次はあの岩の向こうを見てみたい!」
優真は笑った。
「何がいるか分からないぞ。気をつけろよ」
「はーい!」
雪乃は元気よく返事をした。
次にログインするのが、今から楽しみだった。




