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第12話 青い光に誘われて

「昨日の青い光、もう一回見たいなぁ!」


 ELOにログインした雪乃は、昨日見つけた岩場のことを思い出していた。


 森の奥にあった小さな窪地。


 そこから続く細い道の先で、青い光を見失ってしまった。


「今日は見つかるかな?」


 雪乃は双短剣を装備して、森の奥へ歩き出した。


 もちろん、今日も寄り道するつもりだった。


 青い光を探して


 昨日通った道を思い出しながら、雪乃は森の中を進んでいく。


 大きな木を通り過ぎ、岩場を抜ける。


「あっ、ここだ!」


 昨日の窪地にたどり着いた。


 周囲を見回してみる。


 木々の間には、昨日と同じように薄暗い空間が広がっていた。


「えーっと、青い光は……」


 雪乃は目を凝らした。


 しかし、すぐには見つからない。


「いないのかなぁ」


 少し残念そうにしていると、岩の隙間から小さな光が漏れていることに気づいた。


「……ん?」


 青い光だ。


 雪乃は近づいていった。


 岩の隙間を覗き込むと、奥で何かがふわふわと動いている。


「あっ! いた!」


 昨日見たルミナホタルだった。


「待ってー!」


 雪乃が手を伸ばすと、ルミナホタルは岩の向こうへ飛んでいく。


「あっ、逃げちゃった!」


 雪乃は慌てて岩の周りを回った。


 すると、岩の向こうには細い通路のような場所があった。


「こんなところに道があったんだ!」


 雪乃は迷わず進んだ。


 岩の間の道


 通路は少しずつ下り坂になっていた。


 両側には岩があり、ところどころ苔が生えている。


 天井からは小さな水滴が落ちていた。


 ぽたっ。


 ぽたっ。


「わぁ、涼しい!」


 外の森よりも空気が冷たい。


 雪乃は壁に手を触れながら歩いていった。


 すると、足元に小さな光る石が落ちていた。


「おっ!」


 拾い上げてみる。


『《青光石》を入手しました』


「青光石!」


 石の中には、青い光が閉じ込められているようだった。


 雪乃は手のひらで転がしてみる。


「きれいだねぇ」


 そのままアイテム欄へしまう。


 さらに進むと、今度は壁に小さな穴がいくつも開いていた。


「何だろう?」


 一つを覗き込む。


 奥は暗くて見えない。


 別の穴も覗いてみる。


「こっちも暗い!」


 雪乃は少し笑った。


 そのとき、奥の方から羽音が聞こえた。


 ぶんぶん。


「あっ!」


 青い光が、通路の奥を横切った。


「待ってー!」


 雪乃はまた走り出した。


 風の吹く場所


 通路を進むと、少しずつ空間が広くなってきた。


 そして、目の前に大きな岩の壁が現れた。


「……あれ?」


 道が終わっている。


 雪乃は立ち止まり、周囲を見回した。


「行き止まりかな?」


 壁に手を触れてみる。


 ひんやりしている。


 そのとき、頬に冷たい風が当たった。


「ん?」


 風が吹いている。


 しかし、目の前は岩壁だ。


 雪乃は顔を近づけて、風の出どころを探した。


 すると、岩壁の端に小さな隙間があることに気づいた。


「あっ、ここ!」


 隙間から冷たい空気が流れてきている。


 雪乃はしゃがみ込んで覗いてみた。


 奥は暗い。


 けれど、少しだけ青い光が見える。


「……あれ?」


 ルミナホタルだろうか。


 雪乃は目を輝かせた。


「いた!」


 手を伸ばしてみるが、届かない。


 隙間は狭く、身体を通すこともできそうにない。


「うーん……」


 雪乃は岩壁の周りを調べ始めた。


 右側。


 左側。


 上の方。


 そして、少し離れた場所に、岩と岩の間にできた大きな割れ目を見つけた。


「おっ!」


 近づいてみる。


 そこには、人が一人通れそうなほどの隙間があった。


 奥から風が吹いている。


「ここから行けるのかな?」


 雪乃は中を覗き込んだ。


 暗い。


 でも、青い光が奥の方に見える。


「行ってみよう!」


 雪乃はその隙間を通り抜けた。


 洞窟を発見!


 岩の隙間を抜けると、少し広い空間に出た。


「わぁ……!」


 そこは、自然にできた洞窟のようだった。


 天井は高く、壁には青く光る鉱石がいくつも埋まっている。


 床には小さな水たまりがあり、天井から落ちる水滴が音を立てていた。


 ぽたっ。


 ぽたっ。


「すごい! きれい!」


 雪乃は周囲を見回した。


 青い光が洞窟の中を照らしている。


 まるで星空の中にいるようだった。


「こんな場所があったんだね!」


 雪乃は壁に近づいた。


 青く光る鉱石に触れてみる。


『《洞青鉱》を発見しました』


「洞青鉱!」


 採取できるか試してみる。


 しかし、素手では取れそうにない。


「うーん、道具がいるのかな?」


 雪乃は残念そうに手を離した。


 そのとき、洞窟の奥で何かが動いた。


 ぴょん。


「ん?」


 小さな影が岩の上を跳ねた。


 青白い毛並みの生き物。


 丸い身体に、小さな耳。


「わぁ! かわいい!」


『ルミナモ』


「ルミナモ?」


 ルミナモは雪乃を見ると、ぴょんと跳ねて奥へ逃げていった。


「あっ、待って!」


 雪乃は追いかけようとした。


 しかし、ルミナモは岩の隙間を通り抜け、すぐに見えなくなってしまった。


「逃げ足が速いねぇ」


 雪乃は笑った。


 そのとき、視界に通知が表示された。


『スキル《暗所視》を獲得しました』


「おっ!」


 雪乃は目を丸くした。


「暗いところが見やすくなるのかな?」


 説明を確認すると、暗い場所での視認性が上がるスキルらしい。


「洞窟に入ったからかな?」


 雪乃は周囲を見回した。


 確かに、先ほどよりも奥の様子が見えやすくなっている。


「おおっ! 便利!」


 洞窟の奥に何がある?


 雪乃は洞窟の中を歩き始めた。


 床は少し湿っている。


 ところどころ水たまりがあり、足元に気をつけないと滑りそうだった。


 《足場感知》を使いながら、ゆっくり進む。


「ここ、滑りそうだね」


 一歩ずつ進んでいくと、壁際に小さな青い花が咲いていた。


「お花!」


 雪乃は近づいて摘み取る。


『《洞青花》を入手しました』


「洞青花だって!」


 花びらは淡い青色で、暗い場所でも少しだけ光っている。


「かわいい!」


 その近くには、小さなキノコも生えていた。


 白くて丸い形をしている。


「キノコだ!」


 雪乃はしゃがみ込んだ。


 指でつつく。


 ぷにっ。


「柔らかい!」


 匂いを嗅いでみる。


 特に変な匂いはしない。


「……食べられるかな?」


 少しだけ迷う。


 しかし、さっき混乱するキノコを食べたばかりだ。


「うーん……これは持って帰ろう!」


 雪乃はキノコを採取した。


『《洞白キノコ》を入手しました』


「洞白キノコ!」


 食べるのは、また今度にしよう。


 さらに奥へ進むと、天井から小さな水滴が落ちている場所があった。


 水たまりの中には、透明な石が沈んでいる。


「おっ、石!」


 雪乃は手を伸ばした。


『《雫晶》を入手しました』


「雫晶!」


 石は水滴のように透明で、光を受けるときらきら輝く。


 雪乃は嬉しそうに笑った。


「洞窟って面白いね!」


 今日はここまで!


 洞窟の中をさらに進もうとしたところで、ログアウトの時間が近づいてきた。


「えー、もう?」


 雪乃は少し残念そうにした。


 まだ奥には何かありそうだ。


 でも、今日はここまで。


「また明日来ようっと!」


 洞窟の入口を振り返る。


 青い鉱石が、静かに光っていた。


「きれいな場所だったなぁ」


 雪乃は今日見つけたものを確認する。


 《青光石》


 《洞青花》


 《洞白キノコ》


 《雫晶》


 それから、新しいスキル《暗所視》。


「ふふっ!」


 雪乃は満足そうに笑った。


『ログアウトしますか?』


「はーい!」


 視界が白く染まる。


 今日、雪乃は森の奥で洞窟を見つけた。


 けれど、本人はそれが特別な場所だとは思っていない。


 ただ、青い光を追いかけていたら、きれいな洞窟にたどり着いただけだった。


 現実世界・学校


「洞窟を見つけたの?」


 昼休み、舞が驚いたように尋ねた。


「うん! 青い光を追いかけてたら見つけたの!」


「青い光?」


「ホタルみたいな虫! それが岩の隙間に入っていったんだよ!」


「それで洞窟に?」


「そう!」


 雪乃は両手を広げた。


「中が青く光ってて、すっごくきれいだった!」


 優真も興味を持ったようだった。


「洞窟か。鉱石とか採れそうだな」


「うん! でも、道具がなくて取れなかったの」


「採掘道具を用意してみたらどうだ?」


「そうだねぇ。でも、まずは中を見てみたい!」


 舞が少し笑った。


「雪乃は洞窟の奥に何があるか気になるんだね」


「うん! まだまだ奥がありそうだったよ!」


「モンスターもいるかもしれないから、気をつけてね」


「はーい!」


 雪乃は元気よく返事をした。


 そして、次のログインを楽しみにしながら、昼休みを過ごした。


 青く光る洞窟の奥には、まだ見たことのないものが待っている。


 雪乃は、それを見つけるのが楽しみで仕方なかった。

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