第9話 神牛ロベルトの手紙~行くよ、猫の天神へ~復活祭(パスハ)と怨霊祭(ゲシュペンストフェスト)の始まり
そう、エーレント、
恥ずかしい話だが、200年も経って、ようやく、
君が、死ぬ前に、
「いつかアンタには、復活の儀を行うときが来る。」
と言っていた意味が分かったんだよ。
そして、このことを見越していた、
君の「力」と「苦悩」が分かった。
**********
君やテレシウスのことが、やけに思い出されるよ。
私は、猫族の王を継承した君に会ったとき、
威厳や威圧感などではなく、むしろ、
気さくでハンサムな青年といった親近感を感じていた。
ごく普通にいそうな、といったら怒るかな?
でも、テレシウスは違った。
君に会ったこともないうちから、
どこで知ったのか、君の力量を高く評価していた。
自分が親衛隊長として仕える神鼠に対してすら、鼻で笑っていた、あの男が。
君は知らないだろうが、
テレシウスと言う男は、誰ともつるまず、誰にも靡かない奴だった。
その男が、陰では、君を支えるため、君を助けるために、
自分の時間も労力もつぎ込んでいたよ。
君を少しでも悪く言う人間がいたら、容赦なかった。
テレシウスは国一番の剣士だったから、
目にも止まらない速さで剣を抜いて、
相手の睫毛だけ切ったり、
投げた剣で服を壁に縫い付けたりしていた。
でも、怒った風も見せずに、ニヤリと笑うんだ。
「ハッ!私の剣が失礼。」
ってね。
まあ、怖いこと。
それくらいテレシウスは、
君を尊重し、
大事にしていた。
***
私は若かったし、実際に君たちの生活も見ていなかったから、
仕事の一環として、君の所にいっただけのはずのテレシウスが、
猫に化かされたのかと思っていた。
でも、処刑前の君に会ったとき、実に単純な話だと分かった。
二人は、【無二の友】なんだとね。
しかし、結局、神鼠と猫族の属性と立場の違いには抗えなかった。
その結果、大きな悲劇が起こってしまった。
なあ、エーレント、
200年のときを経て、
シリウス様とリヒト嬢に、君たちと同じ悲劇が起こっている。
エーレント、今こそ目覚め、共にこの狂った仕組みからこの国を開放しよう。
狂った仕組みから…
…
「狂った」?
考えてみれば、復活祭の後の怨霊祭で、
仲の良い、気のいい、立派な十二支が何人も死ぬのに、
それを当然だと思っている私は、今、「狂って」いないのか?
いや、私は、私だけは「狂って」いない。
狂っているのは、神だ。
シリウス様が幸せになれない、この国の方だ。
そうだろう?エーレント…
*********
君が、死の復活祭のときに言った、
「復活祭の儀の初め
拠り所となりし復活の柱来たる
その魂を贄とし
身体をば棲み処とすれば
猫族の王 復活せり」
…誰が来るのだろうか?
予測がつかないね。
誰であっても、魂を抜かれて昇天するのだから、
喜ぶべき最初の犠牲者だ。
その魂を祝ってやろう。
…さあ、そろそろ、君に会いに行こう。
猫の天神へ。
君に会えるのが楽しみだ
おそらくは君の友 ロベルト




