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第8話 神牛ロベルトの手紙~200年前の猫族の王エーレント復活祭への決意~(真夏の夜に)

第Ⅴ章開幕


物語の登場人物・世界の【総まとめ】はこちらの短編を:

https://ncode.syosetu.com/n3739lz/

挿絵(By みてみん)



親愛なる野蛮なエーレントへ

                                        真夏の夜にて



以前、君に手紙を書いたのは、春の十二支会議が終わったときだったね。

今は、もう夏の終わり。

でも、風がなくて、夜なのに暑い。


さて、エーレント、近々、ゴテスベルクの猫の天神(フェリステンプル)に行くよ。


もちろん…君に会いに。

復活祭(パスハ)を行うために、行くんだ。


******

君への手紙を書いた後、

もちろん、シリウス様は気丈に振舞っておられたが、

シリウス様の苦悩を反映して、神通力の分量と操作力は不安定になってね。


運悪く、雨不足や大火事といったことが頻発したが、

シリウス様が神鼠としてこれらの災害を解決するには時間がかかった。


そうなると不思議なもので、

というより、当然の帰結かもしれないが、悪質な犯罪も横行する。


13歳のシリウス様は、

「僕の神通力が不安定だからだな。」

と静かに言いながら、休みもなく訓練を積み、

折れることなく、

様々な方策を探っておられた。


深夜、大神殿の祭壇の前で、

胸元から小さな黒い小箱を出して、そっと刻印につけて、

精神統一をしていることもたびたびあった。


その背中はあまりにも孤独で、

私も、ステファニーも、大王付きも、

言葉もなく打ちひしがれた。


その危うい状況を見透かしたかのように、

生ゴミ共の各州独立運動が、再発したんだよ。


******


最初の場所は南端の神馬エクウス州。


その時は、物理的な運動が起こったわけではなく、内通があったんだ。

内乱を画策していた複数の者が捕らえられ、ディモイゼに送られてきた。


シリウス様の前にその者たちを連行したとき。


急に、シリウス様が硬直して、呼吸もおかしくなっている。

急いで支えると、

犯人たちの一人が薄気味悪くシリウス様を見ているのに気づいた。


「いやはや大王様…さらに美味しそうに成長したんだねぇ?」


瞬時に、我々は、この男が何を言っているか理解した。


「黙れ!!!」


ステファニーが絶叫して、首を締め上げる。

既に神通力を発動している。


「我々との…快楽…覚えてますか…?」


ステファニーが、そいつの顔をボコボコに殴り始めた。


シリウス様は「殺すな。調査がある…」とステファニーに小さく言った瞬間、

気を失ってしまった。


ステファニーが手を止めた瞬間、その男が何と言ったと思う?


「あのときも、よく失神してたねェ?」


もう、私は我慢ならなかった。


が・ま・ん・な・ら・な・い!!!!!!!!


私は、衛兵に錆びた剣を持って来させた。


「ステファニー、捕えたまま、目を開かせてください。」


ステファニーは言うとおりに神亥の神通力を発動する。


「貴女は目を閉じていなさい。」


私は、そいつの股間を、確実にそいつの視界に入るように吊り上げると、

錆びた剣で千切って、切り離した。


当然だろう?


*****


その後、シリウス様の様子を伺いに行くと、

鎮静剤で眠ったところだった。


美し過ぎる寝顔を見ると、胸が張り裂けて粉々になりそうだった。


美貌、大王位、神通力、能力、精神力、体力…

生まれながらに恵まれたものが、

全て、シリウス様を八つ裂きにしている。


さらに、リヒト嬢によって、折角取り戻された感情が、

別離と虐待の傷をえぐる。


シリウス様は、どんなに真摯に、懸命に生きても、

絶対に幸せになれない。

もがくほどに、地獄に落ちていく。


何をすれば、私が幼いころから大切に育てたこの方が幸せになるのか?


私が、幸せにしてやりたい。

何とかして、この方を!!!


私が頭を掻きむしっていたとき、

シリウス様が苦しそうに身動きして、

何かが胸元から落ちたんだ。


拾ってみると…例の黒い小箱だった。


私はどうも嫌な予感がした。

これを開けることは、自分の狂気の扉も開けてしまう気がしたんだよ。


…でも、私は開けた。


そこにあったのは…数本の黒い髪だった。

神鼠と一緒に()()()()()運命の、

神鼠が恋をした、賢く優しい、猫族(フェリス)の少女の残影だった。


もう私は、とんでもない感情の嵐に殴り倒されて、

シリウス様の寝台にしがみついて号泣した。


耐えられなかったんだ。


とても、耐えられなかった。


神が創った、このツヴェルフェトという国の仕組みが、耐えられなかった。

神鼠と猫族を一緒にいられないようにし、

そのくせ神鼠も十二支も捨て駒のように扱う国が…

言ってしまおう…()()許せなかった。


どうせそろそろ死にたかった命だ。


シリウス様にリヒト嬢を取り戻し、幸せにするために、

この命を…

そして、皆には悪いが、十二支の命を差し出そう。


そして、この国を神通力から開放する。


だから、今回こそ、君の復活祭(パスハ)を執り行うことを決めたよ。


(次話に続く)



十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/

第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/


カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067


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