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第5話 調査官リヒトは 毒殺事件前に 終局的悪者(ラスボス)を推理していた

第Ⅴ章開幕


物語の登場人物・世界の【総まとめ】はこちらの短編を:

https://ncode.syosetu.com/n3739lz/

挿絵(By みてみん)



これは、リヒトさんが毒殺されかけた、ほんの少し前の話だ。


つまり、10月の十二支会議が終わった直後、

彼女が誘拐されて、ロベルトが死んで、

ヴァカンティエでつかの間の休日を過ごし、

初めてテレシウスが僕の中に出現した後の…


11月に入った頃だろうか。


********



【調査官】として調査を続けるリヒトさんから、

エーレントが、

クロエ殺害や、

ロベルトによる怨霊(ゲシュペンスト)(フェスト)といった、

一連の事件の黒幕…終局的悪者(ラスボス)ではないか…という推測・仮説を聞いたのだ。


正直に言うと、リヒトさんの口から、

一連の事件の終局的悪者(ラスボス)として、

急に、200年前に処刑された猫族の王エーレントの名前が出てきたときには、

相当面食らった。


リヒトさんは、

調査がエーレントにたどり着いたきっかけは

怨霊(ゲシュペンスト)(フェスト)」のときの、

ロベルトが口にした


「ある友人から教えてもらった」


という一言だという。


リヒトさん:

『ある友人って誰?って思ったのよ。


ロベルト様が「友人」って呼べる人、

今はファリス様、アダム様、ステファニー様以外いなさそうでしょう?


若いころのお友達だったら…200年くらい前にならない?って思ったときに、

アッ!ってなったのよ。』



神牛(しんぎゅう)は長命だ。

平均的に150歳くらいまでは生きるし、

ロベルトは、自身に神通力【垂涎(すいぜん)】をかけて、

僕に処刑されるまで、220年以上生きた。


『200年前といえば、ちょうどテレシウスが、猫狩りを行ったとき…

その時の猫族(フェリス)の王はエーレント。


…ロベルト様は20歳くらいで神牛(しんぎゅう)になったんでしょ?

州王としてエーレントと会って、友人になった可能性は十分過ぎるほどあるわ。


…もし、もしよ?

猫族(フェリス)の秘儀に、

復活とか怨霊とか、そういうものがあるなら…

長命なロベルト様を通じて、復活できるかもしれない。』


リヒトさんは、厳重に封をした箱を僕の前に置いた。


『見て…!!!

すっっっごいものを発見したの!!!!!』


『これは?』と聞く僕に、

リヒトさんはこぼれ落ちるような微笑みを浮かべた。


『エーレントが書いた【秘儀書】』


…驚いた。

砂の中から金を探し出したようなものだ。


僕は思わずリヒトさんの両手を握りしめた。

リヒトさんも僕の目を見て、力強く頷く。


古代語で書かれている上、

年月が経って消えていたり、破れている部分もあるが、

リヒトさんは、その本を解読していた。


『これが…復活を行う秘儀【復活祭(パスハ)】』


復活祭(パスハ)…!

そんなものがあるとは…


儀式の方法は?』


と僕が聞くと、リヒトさんは首を傾げた。


猫族(フェリス)の王が死ぬとき、

自分の肉体を、相手に食べさせる…ことまでしか分からなかった。

この辺り、破れているから…


でも、【復活祭(パスハ)】だから、

死ぬとき、

蘇るときの2回、儀式があるはず。


ロベルト様は、三年前…

私が大神殿を去った時くらいに…

蘇りの儀式を、猫の天神(フェリステンプル)で行ったんじゃないかな。』


僕はリヒトさんに尋ねる。


『でも、ロベルトがエーレントを蘇らせることに、何の意味が…』


『それが、【怨霊(ゲシュペンスト)(フェスト)】よ。

ロベルト様が言ってた…十二支がない世界を創る秘儀。

このページを見て…』


リヒトさんはあるページを開いて見せる。


そこには…図と古代語がびっしりと書き込まれていた。


『これは祭壇…この〇は、十二支の王の頭部…

ほら、ここには「十二の血」って書かれている。

…【猫族の王の刻印に火の…】までは読めるけど、そこからは破れて読めない。


でも、少なくとも、十二支の王の頭部と血を集めて、

猫族の王が何かの儀式を行うってことよね。』


『…ちょっと待ってください。

【12】ですか?

【9】ではないんですか?』


僕が聞き返すと、

リヒトさんは嬉しそうに『シリウスと話すと楽しい…』と手を握ってくれた。


急なお褒めと触れ合う手の感触にドギマギするうちに、

リヒトさんは話し始めた。


『ロベルト様は、忌数(いみかず)9人を殺せばいいって言ってたのに…でしょ?


完全な憶測になるけど…エーレントの秘儀では、12人必要なわけでしょ?

そうすると、死ななきゃいけないのは…誰?』


リヒトさんは煌めく瞳で僕を見る。


『…ロベルト自身、

そしてロベルトが助けようとしている僕も入ってしまいますね。


…そうすると…エーレントは、

自分が死ぬ前から、若きロベルトに秘儀を授けたその時から、

ロベルトを(たばか)ったわけですか…?』


『そう!そう!そう!』


リヒトさんは、僕の手を揉むよう握り締め、

いよいよ目を輝かせた。


『【怨霊(ゲシュペンスト)(フェスト)】に、

十二支全員【12人】の血が必要なんて言ったら、

ロベルトが【復活祭(パスハ)】を行うわけがない。


だから、忌数とか理由をつけた人数でロベルト様を納得させて、

まずは、【復活祭(パスハ)】を行わせる。

それで、自分を復活させようと考えたんでしょ。』


「なるほど…ああ」


僕は思わずため息をついて、天井を仰ぎ、片手で目を覆った。




(次話に続く)

十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/

第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/


カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067


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