第5話 調査官リヒトは 毒殺事件前に 終局的悪者(ラスボス)を推理していた
第Ⅴ章開幕
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これは、リヒトさんが毒殺されかけた、ほんの少し前の話だ。
つまり、10月の十二支会議が終わった直後、
彼女が誘拐されて、ロベルトが死んで、
ヴァカンティエでつかの間の休日を過ごし、
初めてテレシウスが僕の中に出現した後の…
11月に入った頃だろうか。
********
…
【調査官】として調査を続けるリヒトさんから、
エーレントが、
クロエ殺害や、
ロベルトによる怨霊祭といった、
一連の事件の黒幕…終局的悪者ではないか…という推測・仮説を聞いたのだ。
正直に言うと、リヒトさんの口から、
一連の事件の終局的悪者として、
急に、200年前に処刑された猫族の王エーレントの名前が出てきたときには、
相当面食らった。
リヒトさんは、
調査がエーレントにたどり着いたきっかけは
「怨霊祭」のときの、
ロベルトが口にした
「ある友人から教えてもらった」
という一言だという。
リヒトさん:
『ある友人って誰?って思ったのよ。
ロベルト様が「友人」って呼べる人、
今はファリス様、アダム様、ステファニー様以外いなさそうでしょう?
若いころのお友達だったら…200年くらい前にならない?って思ったときに、
アッ!ってなったのよ。』
神牛は長命だ。
平均的に150歳くらいまでは生きるし、
ロベルトは、自身に神通力【垂涎】をかけて、
僕に処刑されるまで、220年以上生きた。
『200年前といえば、ちょうどテレシウスが、猫狩りを行ったとき…
その時の猫族の王はエーレント。
…ロベルト様は20歳くらいで神牛になったんでしょ?
州王としてエーレントと会って、友人になった可能性は十分過ぎるほどあるわ。
…もし、もしよ?
猫族の秘儀に、
復活とか怨霊とか、そういうものがあるなら…
長命なロベルト様を通じて、復活できるかもしれない。』
リヒトさんは、厳重に封をした箱を僕の前に置いた。
『見て…!!!
すっっっごいものを発見したの!!!!!』
『これは?』と聞く僕に、
リヒトさんはこぼれ落ちるような微笑みを浮かべた。
『エーレントが書いた【秘儀書】』
…驚いた。
砂の中から金を探し出したようなものだ。
僕は思わずリヒトさんの両手を握りしめた。
リヒトさんも僕の目を見て、力強く頷く。
古代語で書かれている上、
年月が経って消えていたり、破れている部分もあるが、
リヒトさんは、その本を解読していた。
『これが…復活を行う秘儀【復活祭】』
『復活祭…!
そんなものがあるとは…
儀式の方法は?』
と僕が聞くと、リヒトさんは首を傾げた。
『猫族の王が死ぬとき、
自分の肉体を、相手に食べさせる…ことまでしか分からなかった。
この辺り、破れているから…
でも、【復活祭】だから、
死ぬとき、
蘇るときの2回、儀式があるはず。
ロベルト様は、三年前…
私が大神殿を去った時くらいに…
蘇りの儀式を、猫の天神で行ったんじゃないかな。』
僕はリヒトさんに尋ねる。
『でも、ロベルトがエーレントを蘇らせることに、何の意味が…』
『それが、【怨霊祭】よ。
ロベルト様が言ってた…十二支がない世界を創る秘儀。
このページを見て…』
リヒトさんはあるページを開いて見せる。
そこには…図と古代語がびっしりと書き込まれていた。
『これは祭壇…この〇は、十二支の王の頭部…
ほら、ここには「十二の血」って書かれている。
…【猫族の王の刻印に火の…】までは読めるけど、そこからは破れて読めない。
でも、少なくとも、十二支の王の頭部と血を集めて、
猫族の王が何かの儀式を行うってことよね。』
『…ちょっと待ってください。
【12】ですか?
【9】ではないんですか?』
僕が聞き返すと、
リヒトさんは嬉しそうに『シリウスと話すと楽しい…』と手を握ってくれた。
急なお褒めと触れ合う手の感触にドギマギするうちに、
リヒトさんは話し始めた。
『ロベルト様は、忌数9人を殺せばいいって言ってたのに…でしょ?
完全な憶測になるけど…エーレントの秘儀では、12人必要なわけでしょ?
そうすると、死ななきゃいけないのは…誰?』
リヒトさんは煌めく瞳で僕を見る。
『…ロベルト自身、
そしてロベルトが助けようとしている僕も入ってしまいますね。
…そうすると…エーレントは、
自分が死ぬ前から、若きロベルトに秘儀を授けたその時から、
ロベルトを謀ったわけですか…?』
『そう!そう!そう!』
リヒトさんは、僕の手を揉むよう握り締め、
いよいよ目を輝かせた。
『【怨霊祭】に、
十二支全員【12人】の血が必要なんて言ったら、
ロベルトが【復活祭】を行うわけがない。
だから、忌数とか理由をつけた人数でロベルト様を納得させて、
まずは、【復活祭】を行わせる。
それで、自分を復活させようと考えたんでしょ。』
「なるほど…ああ」
僕は思わずため息をついて、天井を仰ぎ、片手で目を覆った。
(次話に続く)
十二支と神鼠は猫に「こい」
第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/
第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/
第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/
第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/
カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067




