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第15話 【テレシウス・エーレント編】猫の青年王 欲しい言葉をくれる鼠男を飼う

物語の登場人物・世界の【総まとめ】はこちらの短編を:

https://ncode.syosetu.com/n3739lz/

挿絵(By みてみん)



テレシウスが、神羊(しんよう)コルデールにある俺の狭いアパルトマンに転がり込んで来たのは2年ほど前。


俺が猫族王の継承者になって7、8年くらいのときか。


知人の神牛(しんぎゅう)ロベルト・ウシオから、

「そちらに鼠が行くからよろしく」と手紙が来てすぐに、

フラリと身一つでやって来た。


現大王の神鼠(しんそ)は80歳を超えている相当な爺さん。


目の前のこの…ブルーダイヤモンドの瞳の、

白銀の長髪の男は、神鼠(しんそ)ではない、ただの鼠族だ。


猫族(フェリス)が獣化するのは、神鼠(しんそ)に対してのみ。

テレシウスのように、神鼠ではないただの鼠族に対しては、獣化しない。


とはいえ、猫族の王である俺の家に、鼠が来ることは歓迎できない。


「何しにきたんだ?」

と突っかかると「居候をしにきたが…」と当然のように言って、

どこで知ったのか、俺の馴染みの女まで何人か連れてきている。


猫族(フェリス)の秘儀を探りに来たのか?」

と聞くと「違う」と言うし、

猫族(フェリス)に何か要求があるのか?」

と聞いても「ない」と言う。


「コルデールに野暮用があるが、

知り合いも拠点もない。

やっかいになる」

と言って、女たちに宴会の準備をさせる。


「誰もいいとは言ってねェ!」


と突っかかると、急に近づいて、顔を寄せる。


「貴様、煙草で猫族の生活を安定させようとしているだろう。

私を使え…役に立つぞ。

家賃代わりだ。」


絹糸のような白銀の髪が、俺の口元の煙草にかかるのを一切気にせず、

女たちに聞こえないようにささやく。


思わず顔を上げる俺の口から、煙草をとって、吸い始める。


「アア…うまい。

貴様たちは、最高のモノを作るな。」


堂々として、

上から目線で、

ここぞというときには欲しい言葉をくれる、

テレシウスと名乗る鼠を、

俺は、気付けば、飼っていた。


**********

猫族(フェリス)の王を継承してからというもの、

俺は、「煙草」という嗜好品の存在を知り、その生産を猫族の産業としようとしていた。


ここ10年ほど、猫族(フェリス)神鼠(しんそ)を襲う事件が多発していて、

猫族は各地で白い目で見られ、迫害されている。

なんとか、猫族が生きていける産業を定着させたかったのだ。


この事件が多発するようになった理由は簡単だ。


猫族(フェリス)と他種族の混血が多くなって、

気付かないうちにディモイゼで生活し、神鼠(しんそ)に出会ってしまうからだ。


もともとは、猫族は他種族との結婚を禁じていた。

しかし、しばらく前の猫族の王が、そんな規律は時代遅れだとか言って、

結婚を許すようになったのだ。


実際は、自分が他種族の女に惚れて、結婚したくなっただけなんだが。


これがまずかった。

混血は、俺のような純血よりも、属性の発現は鈍いものの、発現しないわけではない。


純血は、ディモイゼから離れたエクウスやコルデール辺りに固まっていたが、

何代目かの混血は、

自分が猫族(フェリス)の血を引いていることに気付かずにディモイゼに行って、

神鼠(しんそ)に偶然会い、獣化して襲ってしまうのだ。


***********

十二支の種族と異なり、猫族(フェリス)に領地はない。

土地を買うことも禁じられている。

だから、猫族は、各地で点々と暮らしている。


猫族の王は「空間」を操る秘儀を使える。


秘儀は、冥界に通じる魂を具現化する儀式で、

神獣の十二支たちの神通力とは異なり、火などの「道具」が必要だ。


空間の秘儀は、猫族の王が、行こうと念じた場所に行ける儀式。

これで、各地の猫族を統括し、存続が図られているわけだが、

そもそも猫族は自由な種族だから、

この程度の縛りでそれほど問題ないのだ。


神鼠(しんそ)に出会って、獣化しなければ、

細々と、つましいながらも幸せに生きていけたのだ。


それが、崩れかけている。


今や、他種族との婚姻は一般的になってしまっていて、

禁じてもあまり意味がない。


俺は、「他種族と婚姻してできた子供はディモイゼに行かせない」ことを厳命し、

これを破った者は家族もろとも血祭りにあげた。


その一方で、どこに住んでいても、生活できる技術を広めようとしたわけだ。


俺が開発した猫族(フェリス)の煙草作りは独特で、

現時点では、同様のモノを作り出せる種族はいない。

それに、日々、新商品を研究している。


そもそも、原材料も、隣国クラウンに避難した猫族(フェリス)が生産している植物を用いているが、

これも、俺が空間の秘儀を使ってせっせと各地の猫族(フェリス)に運んでいる。


とにかく、俺は、降りかかる火の粉を払い、

生活を安定させ、

ディモイゼに行かないでも細々と幸せにやっていける、

そんな猫族(フェリス)の自由を取り戻そうとしていた。


******


とはいえ、この嗜好品の知名度はまだ低く、

値段も高く設定しないと元がとれないため、

なかなかうまくいかない。


猫族(フェリス)の中での、俺への反発もある。


若い俺の、気概と孤独に満ちた不安な生活にふらりと舞い込んできたのが、

鼠のテレシウスだった。


十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(猫に恋する神鼠 妹に恋する禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

第Ⅲ章(神山ゴテスベルクと猫天神):https://ncode.syosetu.com/n9385lu/

第Ⅳ章(神鼠の中に 住まう者):https://ncode.syosetu.com/n2574lx/


カクヨムでも連載:https://kakuyomu.jp/works/2912051595951960067


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