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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
修行編?
95/99

95.これだけ恥を掻いて大した成果もないなんて泣きたい

 グレンさんにもスイルーさんにも揶揄う雰囲気はない。あるのは、小さい子が背伸びしてお洒落しているのを微笑ましく見守るような、生温い雰囲気だから、余計に居た堪れない。


 前世でも覚えがある。中学生で初めて自分で服を買った時、自分ではめちゃくちゃイケてる服を買ったつもりだったのに、近所のおばちゃんから「あらあらあら格好良いわね~ウフフフフ~」と思い遣りしかない笑顔を向けられた。あの服はそれ以降一度も着ることができなかった。


 今の僕は前世合わせて既に四十代くらいの精神を持っているから、生温い視線ごときで挫けたりはしないけれど、だからこそ、イキッたガキンチョを見守る視線は痛い。なにせ中身は四十代のオッサンだから。


 だが、こういう時は反論する方がガキっぽくなるということもオッサンは知っているので、僕はしょうがなくベストとグローブを着けた状態で、もう一度ダークネスを使ってみることにする。


「もう一回やるんで、笑ってないでちゃんと見ててくださいよ」

「おう、やってみブッフッ、おま、ベストピッチピチじゃん」


 グレンさんは気を取り直して顔を上げた瞬間、また顔を下げて笑い出した。


「ベストはジャストサイズなんです、服の方がオーバーサイズなんです」

「悪かったって、見ててやるからフフ、すまん、でも、おまえ、背中に闇って書いてあんのかよ、ぐっ、ふふふふ」


 スイルーさんも顔を引き締めた次の瞬間、口元がぐにゃぐにゃになって、結局笑い出した。この人、古代文字読めるのかよ。


「え、あの文字、そうなのか、じゃあ手袋の文字も?」

「闇って書いてある、すっげー格好付けた字体で……」

「闇属性のアイテムに、闇って、でかでかと……」


「「「アッハッハッハッハッハッハ!!」」」


「ちょっとー!!」


 気遣われながら笑われるのも居た堪れないけど、堂々と笑われるのもやっぱり腹が立った。


 自分でも面白い格好をしている自覚はあるので、僕は涙目になって、ネニトスだけ蹴っ飛ばしておいた。おまえは笑うとこじゃないだろうが。


「はぁ~~笑った笑った、じゃ気取り直してやってみ」

「気取り直すのはみなさんの方ですけど」


「もう見慣れたから平気だわ、ただの変な格好」

「僕がネタ切れになったみたいに言うのやめてもらえます? 寄って集って笑い物にするの普通にイジメですからね?」


「「「ごめんて」」」


 ぜんぜん反省してない!


 僕は青筋を立てたままダークネスを発動した。このままではぜんぜん話が進まないので仕方なく。

 結果は、黒い靄の出せる広さは変わらなかったけど、限界まで広げるのに十秒もかからなかった。相変わらず性能いいなチクショウ。黒い靄が更に濃くなったのは、僕の怒りを反映していたと思う。


「魔力の底上げじゃなく、発動速度が上がるって感じか」

「あと効率が良くなるような、精度も上がる感じなんで、魔力消費の燃費は良くなると思います」


 しかしながら、ダークネスはやっぱりもっと強化しないと使い道がないという結果になった。これだけ恥を掻いて大した成果もないなんて泣きたい。


「それにしても、ヨナハンの魔法は暗躍向きだな」


 グレンさんの言う通りだ。ダークネスはともかく、シャドウウォークは完全に闇討ち特化だし、ブラックホールなんて標的を死体も残さずお片付け出来てしまう。


 能力的にはアサシンとしての適性があり過ぎる。しかし、性格的にアサシンとか絶対無理。死体見ただけで悪夢で眠れなくなる自信があるからね。


「格好もアサシンっぽいもんな」

「アサシンっぽいってなんだよ」


 ネニトスが阿呆な発言をするから肩を叩いとく。本当は頭を引っ叩きたいけど、身長的に難しいので、奇しくもお笑いのツッコミみたいなことしかできない。僕は冒険者パーティを組んでいるのであって、お笑いコンビを結成したつもりはないのに。


「アサシンがアサシンらしい格好しててどうすんだよ笑」

「アサシンの意味!!笑」

「ほらもうまた笑い出しちゃったじゃん!! どうしてくれんのネニトス!!」

「ご、ごめ……笑」

「おまえは笑うなよ!!」


 冒険者よりアサシンよりお笑いコンビの方が向いてるかもしれない。スイルーさんもグレンさんも意外とゲラだったらしい。いらん発見ばかりだ。

 というか、この世界でもアサシンは黒っぽい服装をしているってイメージあるんだ。イメージだけだけどね。隠れて悪いことしようって人が、「自分悪人です!」みたいな恰好するわけないからね。


 僕はもうみんなが笑い止むまで休憩時間だと開き直って、いじけて待っていた。メンタルが四十代オッサンじゃなかったら今頃引き籠って泣いてたね。


「しかし、こうも特化してると、下手に暗殺術も教えられないね」


 スイルーさんが気を取り直して真面目に話し出すけれど、さっきまで馬鹿笑いしてたから、今更真面目な態度をとられてもクールな印象は最早ない。


「何でですか?」

「犯罪者ギルドに目を付けられちまうよ」

「え、うわぁ……」


 犯罪者ギルドとは、公式にギルドと認められているわけではない。法に触れるようなことを請け負っている組織の寄り合いを、わかりやすく犯罪者ギルドと呼んでいるだけだ。前世で言うならヤクザの会合だ。


 確かに、冒険者ギルドが犯罪者ギルドの領分を犯しているなんて思われたら、どんな難癖を付けられるかわかったもんじゃない。

この世界でもイキッたチンピラは黒っぽくて刺々しい服を着るイメージがあるので、主人公はイキッたチンピラに憧れている田舎者みたいな格好になっています。

本物のヤクザ者は街に馴染むような平凡な格好をしています。


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