表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
スタンピート?
84/87

84.僕らの情報力の無さ、つまりは友達の少なさを突き付けられた

 キラーアント討伐には一ヶ月かかると発表された。


 僕らが決死の大脱出を遂げた翌日、防護服を着て殺虫剤を背負った調査隊が第一ダンジョンに踏み込んだが、予想以上にキラーアントの巣は広がっていたらしい。

 三階層全域と、四階層でもキラーアントが目撃されたという。おそらくはダンジョンの変動に巻き込まれて、広範囲に分布したのではないかと考えられる。


 これだけの範囲だと、女王蟻が一匹とは限らないため、ルビウス第一ダンジョンは一か月間閉鎖され、ひたすら殺虫剤散布とアリの巣探しに明け暮れることになった。


 まったく商売あがったりだ。


 危うく死にかけたので一日は休養日ということにしたけど、その次の日はただただやることがなかった。


 ルビウスの冒険者にとって一番の稼ぎ場所は第一ダンジョンだ。なにせ規模が大きい。出没するモンスターも多い。冒険者だけでなく、ルビウスの主要産業の一角が冒険者相手の装備販売や、モンスター素材の加工や流通だ。

 ダンジョンが閉鎖されれば冒険者の活動も減り、冒険者相手の仕事も減り、モンスター素材を扱う仕事も減る。街中で仕事にあぶれる者が山ほど出るのは当然だ。


 高ランクの冒険者は第三ダンジョンに行けばいいが、規模として第三ダンジョンは第一ダンジョンの半分だ。他には護衛や盗賊退治の依頼を受けたり、森の害獣駆除や薬草採集などの依頼もあるけど、それでも人があぶれる。


 いつも閑古鳥が鳴いていた初級ダンジョンですら、今は混雑して交通整理のアルバイトまで募集されている有様だ。

 どうしようもないので、他の街へ流れる冒険者も多くいるという。


 街の主要産業が一つ潰れるわけだから、この地の領主だって動いている。他の街への馬車を増やすだとか、緊急性の低いインフラ整備を急遽始めて雇用を増やすだとか、色々手は打とうとしているらしいのだが、急なことなのでまだまだ対応しきれていないのが現状だ。


 そんな中、第三ダンジョンへ行く実力はなく、護衛の依頼を受けるだけの実績もなく、他所の街へ行く宛てもない僕たちは、ギルドの訓練場で臭い汁に塗れていた。


「うえ、涙出てきた」

「しばらく匂い取れないだろうな」


 朝からずっとタライいっぱいの臭い草を潰しているから、僕もネニトスもすっかり両手が緑色になっている。


 これも立派な冒険者ギルドからの依頼だ。

 キラーアントが万が一にもダンジョンから出てこないように、大量の虫除けをダンジョンの入り口に撒くという。その虫除け作りのアルバイトだ。


 作業はいたって簡単、材料となる薬草を潰して混ぜるだけ。ただ、虫除けになるくらいだから薬草はどれも匂いがキツい。嗅いだだけで口の中まで苦くなるような刺激臭だ。申し訳程度に口元を布で覆っているけれど、ほとんど役に立っていない。


「今朝の依頼争奪戦はこのせいだったのか」

「さっさと街を出たやつらも教えてくれればいいのに」


 大きなすり鉢を抱えて、すりこ木で只管ごりごりごりごり、二人してしょんぼりしているのは詰まらない作業のせいもあるし、臭い材料のせいでもあるけど、精神的に落ち込んでいるせいもある。


 今朝、僕らはいつもの時間に起き出したけれど、いつもはまだ職員が暇そうにしている時間にも関わらず、ギルドには依頼を求めて冒険者たちが殺到していた。

 何日も受注者が現れずに張りっぱなしになっていた依頼まで綺麗になくなって、ギルドの掲示板に依頼書が一つもないという光景を僕は初めて見た。


 第一ダンジョンが閉鎖されたせいだろうと暢気に考えていた僕らだったが、暇そうにしている連中が軒並み捕まって、今こうして半強制的に虫除け作りに従事されている。

 こうなるとわかっていたから、みんな雑魚依頼でもいいから暇を失くそうとしていたのだ。僕らの情報力の無さ、つまりは友達の少なさを突き付けられた。


 前世でもこういうことあったな。高校までは、まあ友達なんてそんな多くても面倒なだけでしょと思ってたけど、大学に入ると友達の数が単位の取得難易度に直結していた。

 なんせ、講義を休んだ時の代返を頼む当てとか、ノートを借りる当てとか、講義の変更連絡をくれる当てとか、全部友達頼りだ。教室変更があったのに誰にも教えてもらえず、誰もいない教室で呆然とした悲しき思い出。幼稚園の頃から友達を沢山作りましょうと言われ続ける理由を、人は大学生になってから思い知るのである。


 そんな前世の教訓を、僕は全く活かせず今日また泣きを見たわけだが、友達少ないのなんて前世からの宿命だからもう開き直るしかない。


 今はもっと切実な問題があった。


「臭くても仕事があるだけマシだ、明日からどうする?」

 僕の問いかけに、ネニトスも渋い顔をした。


 虫除け作りは今日だけだ。まだ何度か行われるだろうが、材料を集める時間もあるから、次の依頼は十日後くらいになるだろう。ちなみに、その材料集めの依頼も、僕らは当然のように取れなかった。


 色んな意味で雑魚雑魚の底辺冒険者の僕らは、仕事不足が解消されない限り仕事にあぶれてしまう。しかし、底辺冒険者に暇を持て余している余裕はない。特に金銭的な余裕が。

主人公たちが作っている虫除けは虫系モンスター用の強力な虫除けで、どんな虫系モンスターも逃げ出すやつです。作ってから十日ほどしか日持ちしないので、虫系モンスターのスタンピートが発生してから大急ぎで大量生産するのが一般的です。

ダンジョン内でシレーネが使った虫除け煙幕は日持ちしますが、一時的に虫系モンスターを足止めする効果しかありませ。


少しでも面白いと思ったら是非ブックマークお願いします。

リアクションや★付けていただけると嬉しいです。

感想やレビューも待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ