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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
挑戦!
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125/132

125.どういう才能?

「ローゼンウィンケルバルトに寝返る領主を許すなー!!」

「「「「おおおー!!」」」」


「フライエンフェルスナーダ家の戦士に続けー!!」

「「「「おおおー!!」」」」


 なんで?


 いや、声かけてくれた人もアイドルの追っかけとは思えないほど真剣な顔つきだったし、中心街からどんどん離れて倉庫街の端っこまで連れてこられたのに、すごい大きな箱でパーティーするじゃん、とか思った僕が馬鹿だったけど。


 あれか、広場で真剣な顔で拳振り上げたのが、なんか真面目なこと考えている風に見えたのかな。趣味作ってみよっかなって思い立っただけなのに。


 友達がヤバい集会に参加してるかもしれないと疑った時は、ただのアイドルのファンミーティングだったのに、僕がアイドルのファンクラブ集会に行ってみようと思ったら、ヤバい政治集会を引いちゃうって、どういう才能?


 しかも、地方の田舎貴族とかの諍いなんてレベルじゃなく、この国の王族への批判をしている。バレたらこの場にいたというだけで、政治犯としてしょっぴかれる事案だ。


 僕は碌に学校にも通っていないから、国の歴史なんてほとんど知らないけど、そんな僕でも聞いたことがある大貴族の名前が叫ばれている。

 ローゼンなんとか家とフライなんとか家、もうどっちも名前が長過ぎて覚えられない。


 僕が知っている国の歴史と言えば、国の成り立ちを題材にした子供向けの人形劇で見た知識程度だ。


 このブロッケンベルク王国は、二つの国が一つにまとまって出来上がった国なのだ。昔々いがみ合っていた北の国と南の国がなんやかんやあって、英雄ブロッケンベルクが一つにまとめたという。

 そのなんやかんやに長く暗く血みどろの歴史があるんだろうけど、子供向け人形劇でしか知らない僕は知らん。


 昔の南の国と北の国の元の王家が、ローゼンなんとか家とフライなんとか家である。


 どっちがどっちかは覚えていなかったけど、僕の故郷やルビウスの街を含めてここら辺一体は、元の南の国に位置するから、演説者の話しからすると、南朝がフライなんとか家の方なんだろう。知らんけど。


 一応一つの国にまとまっているけど、今でも南と北で仲はよろしくないらしい。南の方では北の国が攻めてきて国を乗っ取ったと言っているし、北の方では南の国が攻めてきて国を乗っ取ったと言っているそうだ。知らんけど。


 王家はちゃんと南北平等に扱っていると見せつけるため、必ず南側と北側と両方から妃を立てて、まあ政治的なあれやこれやで側妃が増えることもあるけど、北と南と順番に王位を継承しているはずだ。知らんけど。


 僕の知識はこんなふわっふわだから、表向き南北仲良くしているはずなのに、ここの領主が北寄りらしいというだけで、なんでこの人たちがこんなにブチギレているのか、ぜんぜんわからん。


「あ、あのー、すいません、僕、今日初めてここに来たんですけど、領主様が? 北寄り? っていうのはどういう……?」


 あまり首は突っ込みたくないけど、ここに居合わせてしまったからには、逃げるにしても正確な情報が必要だ。

 できるだけ後ろの方にいて、そこまで頭に血が上っていなさそうな人に声をかけてみた。


「ああ、それが、領主がフライエンフェルスナーダ家の戦士を不当に拉致したという情報が入ったんだ」

「直接手を出したのは分家だというけどね」

「アルージュの街で聖戦に参加した一人だという噂だ」


「その、フライぃごにょごにょの戦士ってのは……?」

「我々だよ!」

「我々の同志が捕まったんだ!」

「黙っているわけにはいかんだろう!!」

「あ、そっすね……」


 僕は愛想笑いでお茶を濁しつつ、親切にわかりづらい説明をしてくれた人たちからも距離を取った。

 つまり、たぶん、おそらく、こいつらの仲間はアルージュの街で暴動を起こしたという連中だろう。その一人が何故だかこの街の領主だか分家だかに捕まったらしいから、こいつらはブチギレているというわけだ。


「裏切り者には制裁をー!!」

「「「「おおおおー!!」」」」


「カチコミじゃー!!」

「「「「おおおおー!!」」」」


 うん、僕じゃこれ以上の情報収集は無理。みんな顔恐いし、今日中にもヤバいことしそうだから、今すぐ逃げて知らん顔するしか手はない!


 僕は物陰に隠れて影に潜った。

 出入り口には見張りが立っているけど、幸い、場所が広いせいで耐魔法結界に穴がある。外は閑散とした倉庫街だから、出てしまえば逃げるのは楽勝だ。


 脱出は簡単に出来た。


「ひえぇ~怖い怖い」


 念のため会場からできるだけ離れてから影を出て、足早にその場を後にした。


 政治ウンヌンなんて僕には関係ないことだ。たぶん、田舎者はだいたいみんなそう思っている。今の王様の名前だって知らない。戦火がこっちに来ない限り、国の頭がスゲ代わってもド田舎の村の生活はな~んにも変わらないのである。


 ただ、こんな身近で暴動なんか起きたら、僕の生活に関わるかもしれない。


「ネニトスとシレーネに話して、街を離れることも考えるべきか……借金返済どうしよう……」

「あ、ヨナハン!」


 そんなことを考えながらギルド寮に戻ったら、ネニトスが待ち構えていた。何なら僕を探しに出ようとしていたらしい。


「ネニトス、今日は一日出かけるんじゃなかったのか?」

「それどころじゃないんだ! シレーネが捕まったって?!」

「なんで? 酔っぱらって乱闘でもした?」


 僕の次はシレーネかよ、と僕はこの時はまだ呑気に思っていた。シレーネが捕まる理由なんて、酔って暴れたくらいしか思いつかないもん。

 しかし、ネニトスも信じられない顔で、信じられないことを言い出した。


「違う、捕まえたのは隣町の小領主だって、なんか、政治犯とか噂されてて……」

「え、絶対違うじゃん」

「だよな!」


 さっぱりわからないけど絶対違うことだけはわかる。ネニトスもさっぱりわからないけど僕に同意する。

 でも、シレーネが何故か貴族の私兵らしき輩に連れて行かれたというのは本当らしい。


「今、ギルドの方からも問い合わせてもらってるんだけど、アルージュの街の暴動が関わってるんじゃないかって」


 そこで僕の頭の中でカチッとピースが嵌まった。


 有り得ない可能性だし、最悪な可能性だけど、僕がうっかり知り得てしまった情報を総合すると、これしか考えられない。


「暴動の引き金シレーネかよ?!」


「な、なに? どゆこと?」


 僕もどうゆうことかぜんぜんさっぱりわからないけど、これで知らん顔して逃げることができなくなった。

田舎の町にも寺小屋程度の学校はありますが、小さな村には学校もありませんし、学業の必要性も理解されてないので子供をわざわざ町の学校まで通わせようという親も少ないです。

ヨナハンが読み書き計算ができるのは完全に前世の記憶のおかげです。


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