↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
挑戦!
PR
120/132

120.ダンジョン内での一番の課題は荷物だ

 僕はただ死角でじっと息を潜める。


 眼前に見据えるのは、僕の身長の倍以上の大きさがある大型モンスターだ。


 そいつに果敢に立ち向かっていく仲間たちを見守り、僕はひたすら息を潜めてタイミングを計る。地鳴りのような大きな音が鳴り響く中、息を潜める必要もないのだが、縮こまって身を潜めてしまうのはもう癖だ。


 でも今は、怯えているのではない。


 恐怖はあるけど、それ以上の興奮と、やる気と、後は少しの感慨が胸を占めていた。




 僕らも、こんな大きな獲物を狙えるようになったんだな。




   * * * * *




 ナナトちゃんの正体を知って、シレーネが燃え尽きて冒険者を辞めたらどうしよう、という不安はちょっとあった。


 でも、結果として、シレーネはそこまで落ち込まなかった。

 ネニトスを一発殴って、僕は何とか拳を回避して、三人で飲みに行って、泥酔して泣きながら熱唱して、翌日、二日酔いの酷い顔で変わらず現れた。


「あたしはもうただの冒険者なんだ、過去なんて関係ない、ましてや……幻想なんて……ハハハ」


 渇いた笑い声で黒歴史を隅に追いやったらしい。そうだ、美少女町娘ナナトちゃんなんて幻想だったんだ。


 今日は三人揃って買い物だ。

 目的はパーティ共有の魔法バッグを買うこと。


 ダンジョン内での一番の課題は荷物だ。

 どれだけ腕に自信のある者でも、大荷物を抱えて戦闘は難しい。どれだけの力自慢でも、狭いダンジョン内で大荷物を背負って行動するのは難しい。

 だから、容量が見た目の何十倍もあり、重量も軽くできる魔法バッグは冒険者の必需品である。


「やっぱ五階層以下に挑むなら四十リッポーはほしいよな」

「それなら遅緩魔法付きの方がよかないかい?」


 僕らは冒険者御用達の古道具屋で魔法バッグを物色していた。予算の関係で中古品だけど、それでも種類がたくさんある。店は僕が初めて自分で装備を買ったところ、冒険者ギルドの近くでギルドカードを見せると色々融通も利く。


 第一ダンジョンの五階層からは大型のモンスターが出てくる。

 僕らは三人パーティになってからは、四階層までの中型モンスターは苦も無く倒せるようになっているから、いよいよ五階層以下の大型モンスターに挑もうとしている。


 それで問題になったのが魔法バッグだ。


 ネニトスが持っている魔法バッグは、容量が凡そ二リッポーくらいだ。中身の重さを感じさせない魔法はかかっているが、時間経過についての魔法は付与されていない。

 二リッポーと言えば、雄ライオンくらいのマンティコア一匹入れて満杯の大きさ。


 シレーネが持っている魔法バッグは四リッポーくらいの大きさで、ネニトスのと同じく重量は感じないが時間魔法はかかっていない。


 僕のは二人のとは比べるのも烏滸がましい。重量三割減の魔法がかかっているだけのリュックだ。容量は八十リッターくらいかな。


 三人とも大型モンスターを丸ごと入れられるバッグは持っていない。

 安い魔法バッグだと、容量以上の物を無理に入れようとすると壊れる可能性がある。僕らの魔法バッグはどれも安物か、年季の入った中古品だ。


 それで、僕らは魔法バッグを買いに来たわけだけど、大きさを重視するべきか、他の付加価値も見るべきか、なかなかに難しいところである。


 ちなみに、体積の単位リッポーは、辺の長さが一メーターの立方体の体積が一リッポーだ。ついでに、辺の長さが一メーターの正方形の面積は一ヘーホー。

 僕の身長はだいたい一.六メーターなので、一メーターは前世で言うところの一メートルと同じだ。だから、ヘーホーは平方メートルとほぼ同じだし、リッポーは立方メートルとほぼ同じ。

 リッターも体積の単位で、これもリットルと同じ。千リッターで一リッポーだ。前世だとリットルは液体とかの単位としてよく使われてたけど、この国では一リッポーよりも小さい体積を現す時にリッターを使う。


 前世の記憶を思い出したあとも普通に使っていた単位だから、特段何も思わなかったけど、世界が違うはずなのに単位の読み方が似通ってるのはなんだか面白い。


 計算式も同じだから、この世界で碌に学校にも通っていない僕としては、前世の記憶の中でも数少ない有益な知識だ。

 記憶が混乱してメートルと言っちゃうこともあるけど、そこは田舎の訛りだとか言って誤魔化している。


 それはともかくも、今は魔法バッグだ。パーティとしての共有財産になるから、僕も口を出しておかないと。


「容量が今よりも小さくなったら意味がない、時間魔法付きを検討するなら、今後どれくらいダンジョンに潜るか考えないと」


 ダンジョンで獲れるものと言えばモンスター、つまり生ものだ。それに、下層に行けば行くほど移動に時間がかかるから、五階層以下になるとダンジョン内での泊まり込みも考える必要がある。

 だから、時間停止か遅緩の魔法が付いているのは魅力的なんだけど、時間停止魔法が付与されたバッグはすごく高価だ。


「そうかー、五階層でモンスターを狩るだけなら、一泊あれば何とかなるかな、長くても二泊」

「滞在時間が延びれば食料や水も考えないとね、大物狙ったって装備に金取られて儲けがトントンじゃ意味ない」

「長居するなら、休憩時間も考えて結界魔法陣とかも欲しいしね」


 ダンジョン深層を目指すとなると、バッグ以外にも新しく必要になる装備もある。そうなると、中で獲った荷物だけじゃなく、中に持っていく荷物も増えるわけで……

 ダンジョン探索って考えることがたくさんあるな。今までの日帰り浅層探索がいかにお気楽だったか思い知る。


 僕らの今の予算だと、せいぜいが遅緩魔法付きバッグだけど、中身の時間経過をちょっと遅くするだけの魔法なら、余計な魔法は切り捨てて中の大きさだけを重視した方がいいだろう。


 深層に挑む高ランクパーティでも、時間停止魔法付きの大容量魔法バッグなんて持っているところはほとんどいない。

 そもそも、密輸入にも使える魔法バッグは、一定の容量を超えると所持するだけでも国の許可が必要だ。更に時間魔法なんか付与されたら審査も厳しくなる。


 僕らはそんな基準をちまちま調べる伝手も根気もないし、そんな高性能なアイテムを持つような実力もないから、中古品で売っているものから選ぶしかない。


 こんな下町の古道具屋には、そもそも持つのに申請が必要な物は置いていないから、あまり考慮する必要もない。もしもあったら、たぶん法に触れるような代物だ。

単位については考えるのが面倒くさいので大体現代日本と同じです。


少しでも面白いと思ったら是非ブックマークお願いします。

リアクションや★付けていただけると嬉しいです。

感想やレビューも待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。