↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
レベルアップ!
PR
111/132

111.うえ気持ち悪……

 黒板を引っ掻いているような、下手くそなやつが弾くヴァイオリンのような、鳥肌の立つ汚い高音だ。


「うえぇ、これは……」

「ハーピーの鳴き声だ」


 ハーピーと言えば、人間の女性の上半身に鳥の下半身を持つ飛行型モンスターとして有名だけど、ここに生息するハーピーは人間の女性の頭を持つ人面鳥だ。

 顔は割と美人らしいけど、頭だけだから気味が悪くて魅了の効果はないし、擬態にも使えない。だから、どうして頭だけ人間の女性なのかは謎だ。


「鳴いてるってことは交戦中か」

「じゃあ、既にどっかのパーティの得物かも」

「ハーピー狙うやつなんているか?」


 ハーピーは巣の傍を通ると鳴き声を上げて襲ってくる。それ以外は静かにしているというから、鳴き声を上げているということは、既に何かと交戦しているということだ。


 しかし、ハーピー本体はあまり高値にならないから、遭遇しても追い払うだけでスルーする冒険者も多い。

 ただ、ハーピーの卵があれば結構な値段で売れる。ならば、他の冒険者の得物を横取りするわけにもいかない。


「他のモンスターと争っている可能性もある、とりあえず見に行こう」


 ハーピーが騒いでいるということは、そこに何かがいるということだが、それは何も人間とは限らない。ハーピーはとにかく巣に近づくもの全てに威嚇するのだ。


「モンスターから漁夫の利を得るのか……なんか卑怯な感じ」

「ぎょふ、のり?」

「あー……他人が争いあってる隙に利益をかすめ盗ること」

「いんじゃね? 冒険者から奪うんじゃないんだし」

「モンスター同士が争って弱ってるところを狙うのは立派な戦法だよ」


 ネニトスとシレーネがそう言うなら、一番経験値の低い僕に異論はない。考えてみれば、モンスター相手なら罠だって武器だって使うのだから、正々堂々戦うことの方が少なかった。


 暗い通路の向こうに鳥らしき影が見えてきたが、その他の人影もモンスターの影も見えない。しかし、数匹のハーピーが地面に落ちていたから、戦闘があったのは確かだ。


 予想通り、ハーピー狙いではない冒険者がこの場を通り過ぎていったのだろう。

 ハーピーたちは僕らの接近に気が付いて、再び背筋がゾワゾワするような鳴き声を発する。


「うえ気持ち悪……」


 僕は初めて見るハーピーの実物にちょっと怯んだ。


 おそらく頭は普通の人間の頭部と同じくらいの大きさだ。それが鷹くらいの大きさの鳥の身体に乗っているから、すごくバランスが悪い。遠目からは鳥が人の生首を咥えているようにも見える。


 だが、モンスターだからバランスが悪くても何故か飛べるし、生首みたいな頭部は確かに生きていて、外敵に対して目をギョロギョロさせて警戒している。乱れた髪や異音を発する口も気味が悪くて、モンスターと言うより悪霊っぽい見た目だ。


 これだから、ハーピーの肉は人気が無くて安い。知能は完全に鳥だし、味も普通の鶏肉と変わりないんだけど、人の顔が付いていたものと思うと、なんとなく食べる気が失せてしまう。

 それに、モンスターの解体と見せかけた殺人や死体遺棄を防止するため、人間類似型モンスターの解体には行政への申告がいちいち必要だ。ハーピーはこれに該当する。


 解体が面倒なうえに、肉以外は頭も骨も内臓も使い道はない。弱くて狩りやすいけど狩られない所以だ。もしかすると、気味の悪い頭を持つのは人間除けのためかもしれない。

 唯一、卵だけは薬の材料になるらしい。


「どうする? ハーピーだけなら金にならないぞ?」

 ネニトスも気味悪そうにハーピーを眺めている。十数個の人の頭がこっちを見ているような光景だ。地面に落ちているのはまるきり生首だし、絵面が完全にホラーなんだよな。


「でも、あの場所から動かないね」

「あ! 卵があるってことか」


 僕もわかった。

 ハーピーは巣に近付くものは問答無用で攻撃してくるけど、今目の前にいるハーピーたちは僕らの方に飛んでくる様子はない。

 でも、こちらを凝視して酷く警戒している。すごく不気味だけど、それはともかく、つまりはその場に守りたいものがあるってことだ。


「巣があるとすれば、あの柱の上のとこだろうな」


 ネニトスが指さした先には、確かに柱の上に隙間がある。隙間から二羽が顔を覗かせているし、他のハーピーもそこを中心として陣形をとっているように見える。

 まだ守っているということは、巣は無傷なのだろう。


「僕ならあそこまで登れる、二人でハーピーを引き寄せて」

「わかった」


 ネニトスはすぐに了解した。シレーネは不思議そうにしていたが、ハーピー程度なら致命傷を負うこともないからと、すぐに切り替えて剣を構えた。


「こっちだこっち!」

「かかってきな!」


 二人がわざと大きな声を上げて武器を振る。それを見送ってから僕は影に潜った。

 壁の影を伝って、一気に巣があると思われる柱の上まで登る。確かにそこにはゴミを寄せ集めたような巣があったけど、二匹が陣取っていて卵の有無はわからない。


 もしかして雛だったらどうしよう。ハーピーの雛がどんなものかわからないけど、このゴミの中に人間の胎児みたいなのがいたら、ちょっとトラウマになりそうだ。


 一旦、近くの影から顔だけ出して息継ぎ。影の中で卵回収用の麻袋を構えるけど、なんにしろ、あの二匹を避けないことにはどうにもできない。

 死角から攻撃してみるか。でも二匹を仕留められたとしても、他のハーピーが巣に集まってくるかもしれない。


 そう思っていたら、ネニトスがウィンドカッターを放った。それは接近してきたハーピー目掛けて撃ったのが外れただけだったが、奇跡的に巣から顔を出していた二匹の目の前を通り過ぎた。


 驚いて二匹が巣から飛び立つ。その下には卵が五つもあった。


 この隙を逃さず、巣ごと掬い取るように麻袋の中へ収めて影の中へ引っ張り込む。

 振り返ったハーピーの驚愕の表情がちょっと怖かったけど、影の中ならぜんぜん平気、アッカンベーしてから僕は影の中を泳いで地上へ戻った。

このダンジョンに生息するハーピーは頭だけ人間ですが、生息場所によっては身体も人だったりします。人部分が多くても知能は鳥です。


少しでも面白いと思ったら是非ブックマークお願いします。

リアクションや★付けていただけると嬉しいです。

感想やレビューも待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。