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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
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110/132

110.なんそれ、雰囲気重視か

 今日の目的地は第一ダンジョン四階層だ。


 三階層も碌に探索していないのに四階層とは目標設定が高い、というわけではなく、三階層までが荒れているから四階層の方が収穫はあるだろうと考えただけだ。


 三階層は未だに変動が続いているし、あちこち掘り返されて道がさっぱりわからなくなっている。キラーアント討伐のために殺虫剤を撒きまくったため、匂いを嫌って他のモンスターも減っているらしい。

 一階層や二階層も、キラーアントの死骸運搬のためにモンスターは片っ端から倒されていたから、いつもよりもモンスターの出現率が下がっている。


 よって、変動の影響もキラーアント討伐の影響もあまり受けていない四階層の方が、モンスターの出現率は高いだろうという予測だ。


 ダンジョンに魔力を還元させないため、キラーアントの死骸は徹底的にダンジョン外へ持ち出して処理したから、四階層以下はこの一ヶ月モンスター狩りに入る者もいなかったけど、モンスターの数は然程増えていないらしい。


「とはいえ、僕は四階層初めてだ」

「俺も最後に踏み込んだのは……ほぼ半年前だ」


 モンスターの数が増えていないと言われても、元のモンスターとの遭遇率を知らない。油断していいような状況ではない。


「ま、あたしも四階層はそれほど潜ったことないよ、三階層までで充分稼げたし」

 シレーネも僕らと似たり寄ったりだ。


 なにせ、ソロで活動していたら深層に潜る必要がない。

 深く潜れば潜るほどモンスターが強力になるから、ソロでは危険というのはあるけど、稼ぎを仲間と分ける必要がないから、大物を狙う必要もないのだ。移動時間を考えれば、浅層の雑魚をたくさん狩る方が効率良く稼げる。


 こういう考えだから、シレーネは冒険者歴が長いけどランクは上がっていないのだろうか。でも、討伐するモンスターの数も冒険者としての成績に反映するのだから、自ずとランクも上がるはずだ。

 これについてはいずれ本人に聞いてみるべきだろう。犯罪絡みや面倒な事情があっても困るし。だが、シレーネの場合は酒を飲ませればべらべら話しそうだから、急ぐ必要もあるまい。


 一階層から三階層はやっぱりモンスターは少なかった。どの階層でも必ずいたファングタートルすら、一匹か二匹見かけるだけだった。

 二階層でマンティコアに遭遇したが、ネニトスがウィンドカッターを一発お見舞いすれば、すぐさま逃げていった。マンティコアは遠距離攻撃を持つものは相手にしない。ちなみに、ネニトスのウィンドカッターは当たらなかった。


 移動時間がもったいないから三階層まで走り抜けたが、これと言って脅威も無く四階層まで辿り着いた。階段も三階層へ下りる階段と大差ないから、新たな階層に入っても特に感慨もない。


「様子はあんまり変わってないな」

「変動があってからしばらく経ってるしね」

「ふーん、変動があったからって、なんか新しくなる感じじゃないんだな」


 四階層は数ヶ月前に大きな変動があったと聞いたが、道順が変わっただけで、雰囲気は変わっていないらしい。


 見た目も、大昔から放置されている遺跡みたいだ。三階層の変動はちょっと見たことがあったけど、変動したばかりの通路は何もなくて、新品というほど綺麗ではないけど古さもないという感じだった。


「ダンジョンって、変動があって新しくなっても、何故か古い遺跡か自然とできた洞窟みたいになるよな」

「ダンジョンにもよるけどね、あたしは変動してるダンジョン内で石像が生えてくるのを見たことあるよ、何故か古めかしく汚れてたり罅割れてたりする石像が新しくできてた」

「なんそれ、雰囲気重視か」


 なんか、テーマパークで新しい遊具に汚れ加工を施して雰囲気を出す、みたいなやつと同じなのだろうか。確かにダンジョン内にぴかぴか新品の通路とかあってもおかしいけど、ダンジョンに雰囲気づくりって必要なんだろうか。


 こんな話をしてはいるものの、ネニトスは変動前にも数回しか四階層まで来たことはないし、変動後は知らない。シレーネは変動後の四階層に入ったことはあるけど、変動前は知らない。そもそもこの街にいなかった。

 もちろん、僕は四階層事態が初めてだから、あれこれ比較する材料が僕らにはなかった。


 とりあえず、シレーネ、僕、ネニトスの順番に並んで先に進む。背の順ではない。悲しいかな僕はシレーネよりも小さい。

 一番経験があって支持を出せるシレーネが先頭、どの位置でも動き回れる僕が真ん中、盾と金属鎧を装備していて背後からの攻撃にも対抗できるネニトスが殿だ。


 現在の四階層は、階段を下りた先に広い通路が奥まで続いていて、そこから細い通路が枝分かれしている。広い通路は大通りと呼ばれているそうだが、大通りの奥は行き止まりで、枝分かれした通路に入っていかないと五階層への階段はないという。

 今日は下に行くつもりはないから、まずは大通りを真っ直ぐ進む予定だ。


「へぇ……洞窟っぽい」


 僕は初めて見る四階層の天井を見上げた。上の階と同じく遺跡っぽい人工的な石材などは見えるけど、半ば自然洞窟に埋もれているようになっている。


 壁も石のブロックを積み上げたような造りかと思えば、途中で大きな岩が飛び出していたり、立派な石造りの柱の上に古い石像があるかと思えば、取り込むように鍾乳石が伸びていたり、自然なようでとても不自然な半洞窟遺跡だ。


「ボケッとしてないでちゃんと見張りなよ」

「見張ってますぅ」


 僕だって周りを見物しているのではなく、ちゃんとモンスターを警戒しているのだ。


 それにしても、鍾乳石とは水に溶けだした鉱物が少しずつ伸びてできるもののはず。数か月前に変動したというのに、あんなに長い氷柱状になるわけがない。

 だから、あの鍾乳石も自然に出来たものではなく、ダンジョンがオブジェクトとして設置したものなのだろう。って言っても、ダンジョン自体が自然発生したものだから、ダンジョンが生み出したものも自然にできたものと言えるのかな? ややこしいから考えないでおこう。


 その時、脇の通路から不快な音が響いてきた。

ダンジョンによっては、常にぴかぴか新品のお城みたいなダンジョンもあります。


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