101.そりゃゲンナリするわ
自分の思っている得意分野と、実際の得意分野は違うというのは本当だった。でも、スイルーさんがドヤ顔することではないと思う。
「へー、あのボール投げで……」
「体術訓練もしてるし武器の使い方も習っとるわ」
僕の結果を覗き込み、あんなことで? と言いたげなネニトスの呟きに、僕は顔を顰めた。
僕の魔法の訓練は、魔力がなくなるまで初級魔法を使いまくる以外は、相変わらずただのボール投げだったりするけど、それ以外にも体術や武器での戦闘方法も教わっているのだ。
自分でも戦力の伸びには驚いちゃったけど、人に意外そうな顔されるのは心外だ。
「走り込みでバテてほとんど動けない体術訓練と、武器に振り回されてる戦闘訓練だろ」
「でも毎日やってますぅー」
ネニトスにニヤニヤ言われる通り、僕は体力が雑魚過ぎて他の訓練は碌にできていないけど、その雑魚い身体で毎日訓練をしているのだから誉められるべきだ。もしも、根性なしのネニトスが、僕と同じ体力だったら、とっくに実家に泣きついて強化訓練は終了していただろう。
「次はネニトスだ、さっさとしろ」
人の鑑定結果をニヤニヤ見ていたネニトスは、スイルーさんに頭をすっ叩かれて水晶玉の前に座らされる。ざまあない。
ネニトスが水晶玉に触れると、風属性の特徴らしい薄い青色がクルクル回りだす。クルクルしているということは、ネニトスも魔力が安定していないということだ。
その中にキラキラとラメみたいなものが舞っているように見える。僕は何度か瞬きをして見直したが、確かに青色の渦の中に時たまキラキラしたものがあった。
「なんかキラキラのゴミみたいなもの混ざってません?」
「ゴミて」
「エルフの魔力の特徴ですね、ネニトスくんは四分の一エルフですから、ゴミ程度しか混ざりませんけど」
「ゴミて」
本当にゴミみたいなキラキラが混ざってた。心外そうなネニトスは無視する。なんせ、キラキラ度でいえば、前世の姉ちゃんのアイシャドウの方がまだキラキラしてた。
「これをエルフの頭カチコチ純血主義バカどもは『エルフの輝き』とか呼んでる」
「え、はっず」
「恥ずかしいだろ」
失礼なことを言っちゃったと思ったけど、スイルーさんはゲンナリした顔で同意する。自分たち種族の特徴にキラキラした名前を付けちゃうお年寄りがたくさんいるなら、そりゃゲンナリするわ。
「え、じゃあ、スイルーさん鑑定したら、もっとエルフの輝き笑? 出るんですか?」
ネニトスがちょっと吹き出しながら言うから、またもや頭をすっ叩かれている。
「出ますね、たいへん輝きます、眩しくて鑑定結果が見えづらいのでエルフの鑑定はしたくないですね、幸い、エルフの皆さんは大抵ご自身で鑑定できますから、滅多に鑑定を依頼されることはありませんけどね、その点、ネニトスくんの輝きはゴミなので見やすくて助かります」
「ゴミやめてもらえます?」
鑑定の結果、ネニトスは体力が五十五から六十五に、魔力が三十九から四十三に、戦力が二十五から三十八に、技力が二十三から二十八になり、総合レベルは九になっていた。
「詰まんね」
「その感想は酷くないですか」
鑑定を覗いていたスイルーさんはガッカリと言いたげだけど、訓練結果は悪くないと思う。体力と戦力の伸びが良くて、魔力と技力はそこそこ。ガタイの良い見た目通りの伸びで、確かに意外性はないけど。
それよりも僕は気になることがあった。
「僕よりネニトスの方が数値的には上がってるのに、レベルは同じ一しか上がってないな」
「ほんとだ」
僕の微妙な伸び方でレベルが一上がったなら、ネニトスの伸び方なら二くらい上がってもおかしくないはずだ。
「割と一桁台は一定に上がるんだ、二桁になるとどんどんレベルが上がりづらくなっていくぞ」
スイルーさんは大雑把に説明してくれる。どうせ僕らに詳しいこと説明してもわかんないだろ、という態度だけど、その通り、鑑定魔法の詳しい数値的決まり事なんか説明されてもわからない。総合レベルは一桁から二桁に上がるのがまず難しいということだけはわかった。
まあ、ずっと同じ訓練だけしていて、ずっと一定にレベルが上がり続けるわけがないのは理解できる。訓練だってレベルに合わせて難易度を上げるべきだ。
今までがサボり気味だったネニトスは、この七日間は今までの倍は頑張っているのに、それでも足りないと言われて絶望している。
「ネニトスは体力と腕力がある、鍛えれば鍛えただけ筋肉の付く身体だ、魔法はイマイチだが、大抵の武器を使えるガタイがあるからな、武器の扱い方を覚えろ」
「あー斧とか」
「斧以外もだ、斧も大事に使えアホ」
ネニトスは今日から武器の扱いを主に教わることになった。戦い方だけでなくメンテナンスについてもだ。ダンジョンアイテムの錆びない斧を見せたら、錆びなくても手入れはしろと怒られていた。
「ヨナハンは身体は雑魚だ、どれだけ鍛えてもネニトスのようなガタイにはならないだろう、体力もないし、腕力もグローブの補助があってようやく使いもんになる程度だ」
「ぼろくそ」
「だが速さと柔軟性は悪くない、魔法との相性もいいしな、今後は最低限の動きで最大限の効果を発揮する方法を考えていく」
「あーなんかこう相手の力を利用するとか、関節技とか」
「わかってるじゃないか」
「頭では」
「身体でもわかるようになれ」
僕は柔道のような体術を教わることになった。あとは影の中からの投擲練習を引き続き頑張る。
こうして僕らは鑑定を終え、己の鍛え方が少しだけわかり、一歩前進できた気がする。
そして、新たな訓練として、まず走っていた。
「なんも変わらんじゃないですか~」
「進歩してないじゃないですか~」
「黙って走れ! 体力は全ての基本だ!!」
レベルの計算方法とかは私も詳しく考えてないのでツッコミは入れないでください。
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