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闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
修行編?
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100/130

100.何歳なんですかと聞きそうになった言葉を僕は飲み込んだ

 スイルーさんの説明通り、七日間精神の滅入る反復訓練をやり続けた後、僕らは再び鑑定を受けた。


「ヨナハンくんはアイテムを身に付けた状態で鑑定しましょうか、アイテム無しは話しにならないので鑑定するだけ無駄です」

「酷い言われよう」


 鑑定前からアルバートさんにけちょんけちょんに言われつつ、僕は例の水晶玉に手を翳した。このニョロッと掌を舐められるような感触にも慣れた。


 僕の鑑定中は相変わらず黒いモヤモヤがグルグルしている。そう言えばこの前エルンさんに聞いたけど、この黒いモヤモヤは魔力が安定するとこんなにグルグルしなくなるらしい。

 エルンさんに鑑定の時の光景を話したら「まだまだぜんぜんダメダメですね~笑」と腹の立つ言われ方をした。封印されし左手がそのままだから、言われんでもわかっとるわいと思った。


「ほうほう」

「ふーん、へー」

「これは、ふむふむ」

「ふふ、なかなか」


 アルバートさんが鑑定している横で、スイルーさんも水晶玉を覗き込んで顎を撫でている。二人して意味深な呟きを零さないでほしい。


「スイルーさんも鑑定見えるんですか?」


 僕には水晶の中に黒いモヤモヤがあることしか見えない。初めて鑑定を受けた時にレヴィさんも水晶玉を覗き込んでいたけど、反射的に見ちゃっただけで内容はぜんぜんわからんって言ってた。


「そりゃ鑑定魔法使えるからね」

「普通は人の鑑定魔法の内容は見えません、スイルーさんのはエルフ族が持つ特殊な目のおかげです」


 スイルーさんはわかって当然みたいな言い方するけど、やっぱり、普通は他人が使っている鑑定魔法を覗いても内容はわからないらしい。


「え! エルフ族! なら俺も見えるってこと?」


 ネニトスがキラキラした目で水晶玉を凝視するけど、アルバートさんとスイルーさんはそれを生ぬるい笑みで眺める。


「無理でしょうね、ネニトスくんにはセンスがない、磨いてどうにかなるだけの基礎もない」

「こつこつ磨ける根性もないしな」


 ネニトスは期待した分だけ、けちょんけちょんに言われてしょぼくれていた。


 他人の鑑定魔法も見える目は、エルフ族やその他妖精族にのみ発現する特殊能力で、妖精族の中でもごく一部のものしか身に付けられないのだそうだ。


「と言われてるけどね、実は長年魔法の研鑽を積めば誰でも身に付く能力とも言われてる、ただ、五百年以上の修行が必要だから、それだけ長生きできて魔法に優れた種族が妖精族くらいしかいないってわけだ」


 スイルーさんは事も無げに言うけど、つまりスイルーさんは五百年以上魔法の研鑽を積んだということで、何歳なんですかと聞きそうになった言葉を僕は飲み込んだ。


「それじゃあ、他の種族が習得できるか検証することもできないのか」

「俺も四分の一エルフだから、そこまで長生きしないし」

「そこまで魔法も好きじゃないし、根性もないしね」

「そうなんだよ」


 ネニトスはもう根性無しと言われてもいちいち落ち込まなくなってきた。これは精神が鍛えられたというか、ただの諦めだから、やっぱり根性無しだ。


「エルフ族だけの特殊能力と言われているものはそう言うの多いですよね、不老長寿の秘薬を手に入れた人間の大魔法使いがエルフ族に変身したという伝説がありますが、あれも長年魔法の研鑽を積んだ結果、エルフ族だけが習得できる特殊な魔法を身に付けたためエルフ族になった、と言われただけで、本当に種族が変わったわけではなかったというのが現在の説です」


「エルフ族の貴族の中には、エルフの血やら魂やらに特別な力があると言い張ってる阿呆は未だにいるからね、まったく何千年前の定説なんだか、長生きすると脳味噌が化石になっちまうんだろうね、あのジジババどもは」


 アルバートさんの話に面白ーっと思っていたら、スイルーさんの愚痴が始まった。どうやら同種の貴族があまり好きじゃないらしい。この世界にも純血主義者はいるようだ。


 僕らから見るとスイルーさんも立派なババアだけど、純粋なエルフとしてはスイルーさんはまだ若者に分類されるのだろうか。推定五百歳以上が若者だなんて、エルフ族はいったいどれだけ生きるのか、僕なんぞは想像もできない。


 お喋りをしている間も、仕事のできる鑑定士アルバートさんはしっかり僕の鑑定書を作っていた。


 それをまずスイルーさんが当然のように奪い取る。

 さっき鑑定覗いてたんだからもう見なくてもよかないですかね。と言うか、人の鑑定を覗き見するって、今更だけどプライバシー侵害過ぎる。本当に今更だし、この世界にプライバシーなんて概念も碌にないだろうけど。


 それから、ハッと鼻で笑ってから僕に鑑定書を寄越した。


「ほらな」


 何故かすごく得意気。鼻で笑うくだりはいらなかったと思うけど、鑑定書を見て僕も納得した。


 僕は体力が二十八から三十になり、魔力が四十七から五十になっていた。

 あれだけ毎日死ぬほど走ったのに、体力がぜんぜん伸びてないのは絶望的。魔力は、元が高かったから、初級魔法ばっかり使っててもイマイチ伸びないのは想定内。


 技力が二十九から三十四は予想通りの伸びだ。今まで無視していたダークネスも満遍なく練習するようにしたら、魔法を使うのに慣れてきた気がする。


 そのおかげか、なんか新しい魔法を習得できるような予感がしているんだけど、僕の場合、きっとあの背筋が痒くなるような闇ポエムが突然頭に浮かんでくるのかと思うと、新たな魔法の習得にちょっと躊躇いがある。こんなこと知られたらスイルーさんに怒られるだろうから言わないけど。


 鑑定結果で一番重要なのは、戦力が十七から二十七と、一番の伸びを記録しいていたことだ。


 総合レベルは八になっていた。


「意外……」

 僕は思わず呟いていた。


 身体を動かすのがあんまり好きじゃなかったけど、実は身体能力伸ばせるタイプだったってことか。

この世界では魔族なども妖精族に括られます。エルフの純血主義者からは一緒にするなと猛抗議が数千年出てますが、種族分類学的には同じ妖精族になります。


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