[新たなる任務]
翌朝、午前7時
潤は携帯のアラームで目を覚ました
小説を読みながら寝てしまったので、電気はついたままだった
うつ伏せで寝たせいか右肩が痛かった
潤はベッドから起き上がりしまったと思ったが
IAP本部近くに引っ越したのにアラームは前のままで、早めに起きてしまった事に気付いた
潤はしばらくボッーとした
潤はのんびりと朝食を食べて、ゆっくりと身支度をした
今日からは本部まで自転車通勤
潤は荷物が沢山入った鞄を持って家を後にした
東京タワーの最寄り駅の自転車置き場に自転車をおいて、ここからは徒歩だ
午前8時半
潤は本部に着いた
メールの指示通りに地下二階の三神の部屋へ向かった
三神の部屋に着き、ノックをしてから``失礼します´´と言って中に入った
中に入ると、既に藤川彩が居た
潤は藤川に軽く会釈した
「おはようございます。三神隊長」と潤は挨拶をしながら、敬礼した
「おはよう。真中君」と三神が挨拶を返した
「五十嵐君が来たら、任務の説明をするので、楽にしていてくれ」と三神は言った
「はい」と潤は返事をして敬礼をやめて姿勢良くその場に立った
「引っ越しはどうかね?落ち着いたかね?」と三神が潤に話しかけた
「はい。昨日までに荷物は片づけ終えました」と潤は答え
「そうか、では任務についても構わないね?」と三神が言った
「はい。勿論です」と潤は返事した
その時、ノックの音がして、聖司が入って来た
「おはようございます。遅くなり申し訳ありません」と言って聖司は敬礼した
「おはよう。五十嵐君」と三神も挨拶した
「3人揃ったので、任務について話そう。今回の任務は麻薬密売グループがターゲットだ」と三神は話しはじめた
「麻薬密売グループですか?それなら警察の仕事では?」と聖司が言った
「グループの中心人物が警察ではマズイ人物なのだよ」と三神は厳しい表情で言った
「まさか!」と聖司が何か感ずいた様だ
「そうだ。そのまさかなんだ」と三神は言った
「麻薬密売グループの中心人物は中絶児なのだよ」と三神は言った
潤は有り得ないと思った
担当がついて、政府に監視されているのに何故麻薬密売グループなんて中絶児が出来るのだろうと
そして、一般人なら刑務所行きなのに、何故暗殺されなければならないのかと
「成る程。犯罪を犯した中絶児の粛清ですね」と聖司は何でも無い事の様に言った
「そう言う事だ。中絶児が中心の犯行グループは4人居る。中絶児がプロジェクトの事を他の3人に話しているかは、不明だ。一般人の仲間は出来れば逮捕にしたいがプロジェクトを知っていたら、暗殺しなければならない」と三神は説明した
潤の頭は説明にまったくついていけなかった
中絶児だから更正の余地無く殺される
中絶児の存在を知ったから殺される
聖司は中絶児の粛清と言っていた
今までも犯罪を犯した中絶児は暗殺されてきたのだろうか?
潤は今回の任務に疑問符だらけだった
「今は情報部があらゆる手段を使って、密売グループに近づいて内部事情を探っている所だ。情報部からの連絡を待ち、いつでも任務に当たれる様に待機していてくれ」と三神は言った
潤は納得のいかない事ばかりの任務だが、他の二人の様に``はい´´と返事をして敬礼した
3人は三神の部屋を出た
3人は既に始まっている今日の基礎体力作り訓練をしている地下一階のジムに向かった
「今回の任務、後味悪そうね」と藤川が暗い顔で言った
「そうだな」と聖司も言った
「おかしいですよ!中絶児だからって殺されるなんて」と潤はモヤモヤした気持ちを爆発させた
「警察が逮捕して、更正するチャンスを与えるのが、日本の法律ですよね」と潤は興奮してまくし立てた
「なら潤は逮捕されなければならないな」と聖司が切り出した
「お前は一人殺している。日本の法律はどうなっている?」と聖司は潤を諭す様に言った
「確かに俺は人殺しです。でも一般人なら刑務所行きなのに、どうして俺達は殺されるんですか?」と潤はモヤモヤを聖司にぶつける
「真中君。さっきから何を甘い事言っているの!アタシ達は政府に生かされているの。ターゲットはそれを忘れて、麻薬を売りさばいて、何人の一般人達を地獄に陥れていると思うの?麻薬を売ったお金で本人は懐がホクホク。ヘドが出そうだわ。アタシはターゲットが巻き込んだ、一般人達を暗殺する事になったら、後味悪いと言ったのよ」と藤川は凄い剣幕で潤に言った
「潤。俺は既に犯罪を犯した中絶児を3人粛清している。どいつもこいつも、救いようの無いようなバカばかりだった。IAPに依頼がくる中絶児の案件は、中絶児の存在を知っている警察ですら手に追えないバカな中絶児の案件ばかりだ。情報部からあがってくる、中絶児の情報を聞いたら、きっと潤だって、ムシズがはしるさ!」と聖司は潤のモヤモヤした気持ちを解す為に話した
「でも…」といいかけたが潤は言葉が出てこなかった
そんな潤の様子を見て聖司は潤の背中をさすって、頭をポンポンと叩いた
「俺が今回の任務に潤を巻き込んだ。嫌なら、俺から三神隊長に話す。どうするか、今日中に決めてくれ」と聖司は優しく言った
「分かりました…」と潤は返事をした
3人は一階のジムにたどり着いた
IAP本部のジムはあらゆるマシンがそろっている
更にランニングコースまである
ジム訓練には教官はいない
ジムの中で中絶児のスタッフが働いている
基本的に自分の自由に訓練出来る
遅れてきた3人はまずストレッチをした
マットの置いてある場所で、TVで流れているストレッチ体操を真似して15分かけてストレッチをした
ストレッチ後3人はそれぞれ別々の事をした
潤はランニングコースへ、聖司はランニングマシンへ、藤川はエアロバイクへ
潤は無心に走った
今は何も考えたくない
だが、どうしても頭から離れない
聖司や藤川に言われた言葉が潤の心に突き刺さっている
犯罪を犯した中絶児
中絶児だって人間だ
一般人の様に、罪を犯す者もいると、潤は考えてもいなかった
中絶児の中には極僅かだが一般人と同じ様に障害者だっている
障害者は政府に守られている
じぁあ犯罪者は?何故守られない?
何故殺されてしまうんだ?
政府に害を為す者だからか?
自問自答しても答えは見付からない
ランニングコースで30分走り込んだ潤はマシンでの訓練に切り替えた
今度こそ潤は心を無にした
マシン訓練に没頭する事で、心のモヤモヤが吹き飛ぶ様な気がした
マシン訓練を一通り終えた潤は今度はエアロバイクでひたすらこいだ
時刻は11時半
もうすぐ昼休憩だ
潤は最後にまたストレッチをして、訓練を終えた
潤は聖司には、``一人で考えたい´´と言ってお昼を一緒に取る事は辞めておいた
潤はジムでかいた汗を拭きながら、食堂に向かった
あんなに運動したのに、今の潤は食事が喉を通りそうにない
軽くパスタを食べる事にした
パスタを持って席に付くと
「潤ちゃん」と声をかけられた
潤が声をかけられた方を向くと田中翔平が居た
「翔ちゃん」と潤も声をかけた
「今日は五十嵐さんと一緒じゃあ無いんだね」と田中は言った
「あぁ、うん」と潤は不自然にならない様に言った
「じゃあ、潤ちゃん。俺と食べようよ!」と田中が誘った
「うん。良いよ」と潤は返事した
一人でモヤモヤ考えるよりよっぽどよかった
田中が潤の向かい側の席に座った
「ねぇ、潤ちゃん。今新しい任務を受けたばかりでしょう?」といきなり田中が聞いてきた
「ゲッフォ…なんで知っているの?」と潤はむせながら言った
「今回の潤ちゃんの任務のスポッター誰だと思う?」と田中がニヤニヤして聞いてくる
「まさか…翔ちゃん?」と潤は答えた
「正解!まさかこんな早くに潤ちゃんと任務出来るとは思わなかったよ」と田中はとても嬉しそうに言った
潤は複雑な気持ちだった
まだやるって決心がつかないからだ
潤はその気持ちを素直に、田中に打ち明けた
「中絶児がターゲットの時、誰もが悩む事さ。俺も含めてね。だけどね、潤ちゃん。これだけは覚えておいて。犯罪を犯した中絶児はよっぽど悪い奴じゃなければ、IAPに依頼が来ない。一般人にもあるだろ。死刑が。それと同じ事さ」と田中は潤の気持ちを汲み取ったうえでこう話した
「死刑か…」と潤は呟いた
今の話は少しだけ潤の心が動いた
「そう言う事さ。まぁ、決めるのは、潤ちゃんの価値観だと思うから。今日中に決めて返事するんでしょ。だったらお昼ご飯くらい楽しく食べようよ!」と田中がニッコリ笑った
「そうだね。食べよう」と潤もぎこちない微笑みを浮かべた
二人は食事の続きをはじめた
「そういえば、翔ちゃんに聞きたい事があるんだけど」と潤はいきなり切り出した
「おう。何さ」と田中は聞いた
「児童養護施設にいた時、二人で開けちゃいけないドア開けようとしたでしょ?」
「あーぁ!潤ちゃんが、逃げ出した時ね」と田中は余計なことまで思い出した様だ
「結局なんの部屋だったの?」と潤は聞いた
「なんて事ない、ただの食料庫だったよ。オヤツとかも置いて有ったから、先生達が子供に悪さされては困るから、立ち入り禁止だったみたい」と田中は答えた
「そうだったんだ」と潤はホッとした
あの恐怖感は子供だったからかなと自分自身を振り返って思った
二人は思い出話に花をさかせて、色々話した
潤は楽しい昼食を過ごす事が出来た
潤と田中は食事を終えて、別々の訓練場所へと別れた
射撃・狙撃部隊は狙撃場での狙撃訓練を今日の午後は行う
射撃・狙撃部隊のメンバーがチラホラと集まっている
潤を見つけた聖司が近寄ってきた
「どうだ?潤。決まったか?」と聖司がストレートに聞いてきた
「まだです」と潤は小さな声で呟いた
「そうか。まぁゆっくり考えてみてごらん」と聖司が優しく微笑みながら言った
「はい」と潤は申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら返事をした
隊員が全員集まり、三神も狙撃場へやって来た
「全員そろっているね。では今日はスターリングラードを行う。新人がいるので、また説明するが、スターリングラードとは、スナイパー同士の対決だ。隊員全員が敵だ。隊員が全員、狙撃訓練場に隠れて、他の隊員を狙う。またペイント弾を使う。撃たれたら負けだ。第二次世界対戦の時、スターリングラードでスナイパー同士の対決があったのが名前の由来だ。では、それぞれどこかに散ってくれ。15分後に始まりの合図をする」と三神は言った
隊員はそれぞれ好きな場所へと散って行った
潤は何処に隠れるか決めていた
ピンと来たのは、ラビットアンドウルフの時に隠れていた学校だ
隠れ場所も沢山あり、学校内にいる隊員を狙い易い
潤は学校へと向かった
向かう途中で、ビーとサイレンの様な音がした
きっとスターリングラードの合図だろう
学校に着いた潤は、早速隊員を見つけた
有松大志だった
有松大志はグランドにいて、隠れる場所を探している様だ
潤は門の隙間から銃を出した
スコープを覗き狙いを定める
風向もOKだ
潤は有松大志に向けて発砲した
有松大志が驚いて振り向き、弾は有松の足に当たった
有松がグランドにへたりこんだ
潤は一人目の狙撃に成功した
潤は撃った方向から潤のいる方向がバレるといけないので、素早く場所を移動した
潤はラビットアンドウルフの時に隠れていたビルの前に来た
潤は良く考えたら、さっきのは狙撃ではなく射撃だなと思った
やはり遠くから狙うのが狙撃だ
潤は前に隠れていたビルを上がり、狙撃に良さそうな、建物を探す事にした
マジックミラーになっている部屋に着いた
全体を見渡してみる
一人歩いている隊員を見つけた
しかし、ここからでは撃ちにくい
その時「有松大志を真中潤が狙撃」と三神のアナウンスが流れた
潤は一番乗りだった様だ
潤はガッツポーズを決めた
高校の頃、サッカー部で先制点を入れた気持ちに似ていると潤は思った
潤は早速二人目を狙撃しに、今居るビルの屋上に上がった
屋上に上がると、歩いて居た隊員が消えていた
何処に隠れたのだろうか?と思い近くの隠れていそうな場所を見渡した
しかし、発見出来なかった
仕方無いので潤は、しばらくこのビルの屋上でターゲットを待つ事にした
このビルからなら、ギリギリ学校も狙える距離だ
15分後「五十嵐聖司が奈良拓真を狙撃」とアナウンスされた
さらに5分後「藤川彩が田中美里を狙撃」とアナウンスされた
任務組が狙撃を成功させている
藤川彩はラビットが得意らしかったが、狙撃の腕前も確かな様だ
潤は場所を移動する事にした
移動は隠れている隊員からの狙撃が心配だが、しばらくこの場所にいても、隊員は通らなかったので、潤は移動を決意した
潤は周りに気をつけながら移動した
なるべく建物の影や狙撃しずらい場所を移動した
狙撃に良さそうなビルがなかなか無かった
潤がこのまま、狙撃しずらい場所に隠れていようかと思った時だった
背中に衝撃が走った
確かめるとペイント弾の跡が背中に付いていた
やはり移動は危険だった様だ
誰が撃ったか確認しようとしたが分からなかった
潤はそういえば、ラビットアンドウルフの時は撃たれた隊員が誰に撃たれたかを自己申告していたが、今回は何故分かるのだろうと思った
潤は撃たれたので、三神の所へ報告に向かった
集合場所だった場所に潤は戻った
集合場所には有松大志と奈良拓真と田中美里がいた
三神の姿は見当たらない
「三神隊長は何処にいますか?」と潤は有松大志に話し掛けた
「真中君。俺が撃たれたから真中君を応援していたのに、こんなに早くここで会うなんて…」と有松は質問とは無関係な話をした
「はぁ、なんだかスイマセン」と潤はとりあえず謝った
「三神隊長ならあそこだよ」と指差して教えてくれたのは奈良拓真だった
指差す先は、狙撃場の上にある映写室の様な所だった
「奈良さん。ありがとうございます。隊長はあそこで何をしてるのですか?」と潤はまた質問した
「休みの間に、狙撃場に沢山の小型カメラが設置されたみたいなんだ!三神隊長はカメラのモニターを見ながら、あそこでアナウンスしてるわけ」と奈良が教えてくれた
「はぁーそうなんですか。だから誰が撃ったか分かるんですね」と潤は合点がいった
「そう。今までは誰が撃ったかわからないから、撃たれた隊員の名前しかアナウンスして無かったからね」と奈良は言った
潤は自分を撃ったのは誰なのか気になっていた
アナウンスが流れた
「加藤理世が真中潤を狙撃」と三神は言った
潤を狙撃したのは、潤が話した事の無い加藤理世と言う人だった
訓練が終わったら、是非話してみたいなと潤は思った
潤は狙撃された組のメンバーと一緒にこの訓練を楽しむ事にした
それぞれ、好きな隊員を選び最後まで残るのは誰かと言う事を賭ける事になった
勿論潤が選んだのは聖司だ
他の隊員も好きな隊員に賭けて、今居るメンバーだけの賭けが始まった
負けたら他の隊員達からシッペをされる
潤は真剣に聖司を心の中で応援した
三神のアナウンスが流れる度にメンバーは楽しげに談笑した
メンバーが選んだ隊員はまだ全員残っている
有松大志は飯島新を、奈良拓真は武下大雅を、田中美里は藤川彩を選んでいる
撃たれて増えた隊員は5人居る
横山澄香と佐藤藍と河村大輔と立花智と江藤咲哉が戻ってきた
女性2名と男性3名だ
撃たれた隊員が合計9名
今狙撃場で対戦しているのは、残り11名だ
聖司は今ここに居る内の4名を狙撃している
流石エース様だと潤は益々尊敬した
潤を撃った加藤理世も残っている
潤は彼女の事も応援している
最後に撃たれて戻ってきた、江藤咲哉が来てから、スターリングラードはあまり動きがない
潤は、任務について考えていた
自分と同じ中絶児の暗殺
いくら犯罪者でも、暗殺されるなんて可哀想だと考えている
潤は久しぶりに聖司や他の隊員達に会って中絶児としての仲間意識が強くなったのだろう
潤は1つ思い付いた
自分が任務を行うに当たって、重要な事を
聖司や他の隊員の様に、暗殺される中絶児を良く知る事だ
情報部の情報じゃ分からない、生の人物像だ
潤は決めた
この提案を三神が認めてくれるか分からないが、潤はこの眼でしっかりと確かめたい
犯罪者になった中絶児
これもまた、中絶児が抱える闇なのだろう
闇の中の闇を知りたい
潤はそう思っていた事を思い出した
「どうしたの?」とボーとして考え込んでいた潤に、田中が話し掛けた
「えっ!あ、ちょっと考え事」と潤は誤魔化した
潤が考え事をしていた間にようやくスターリングラードに動きが有った
「坂口仁が飯島新を狙撃」と三神のアナウンスが流れた
飯島新は有松大志が賭けていた隊員だ
有松大志はメンバーからのシッペをくらった
メンバーが賭けた隊員は残り3名
狙撃場で対戦しているのは10名だ
その後、武下大雅が鈴木久実子を
阿部馨が瓜生里美を
聖司が熊田敬吾と加藤理世を狙撃した
これで狙撃場で対戦しているのは残り6名となった
残っているのは、五十嵐聖司、藤川彩、武下大雅、坂口仁、阿部馨、宮藤航だ
潤は自分を狙撃した加藤理世が撃たれたので残念だった
しかし、相手が聖司なら仕方無いとも思った
聖司は隊員の内の6名を狙撃している
これなら自分はシッペをくらうことなく済みそうだと思った
しかし、それは甘かった
「藤川彩が五十嵐聖司を狙撃」とアナウンスが流れた
メンバーがニヤニヤ笑いながら、潤に近寄ってくる
「エース様でも今日は調子悪そうだったからな」と先程シッペをくらった有松大志が言った
「そうよね。何時もの五十嵐君ならあっと言う間に、10人ぐらい、しとめてるわよね」と田中美里も言った
「さぁ、真中君。心の準備は良いかな?」と奈良拓真が聞いた
潤は一人一人からシッペをくらい、腕が赤くなった
痛ってぇーと潤は腕を擦った
シッペをくらう原因になった聖司が帰ってきた
潤は聖司を軽く睨んだ
「どうした?潤。そんなに怖い顔して」と呑気に聖司は聞いた
「どうもしてないですよ」と明らかに何か有った声で潤は言った
「ちょっとこっち来いよ」と聖司が潤の腕を掴んで隊員達より少し離れた場所に連れていった
「任務の事か?」と聖司が真剣な顔で聞いた
「俺は今日潤が心配で、俺が巻き込んだから…」と聖司は弱々しい声で言った
「訓練中も頭から離れないし…で、エース様がこの様さ」と聖司は自分の弱さを罰する様に言った
潤は要約気付いた
潤と同じ様に聖司も悩んで考えていたのだ
「聖司さん。ごめんなさい。心配お掛けしました。俺決めました!任務に当たる前に知って置きたい事があるんです。だから、三神隊長に話しに行くときに、一緒に付いてきて貰えませんか?」と潤は切り出した
「そうか!決めたか。よし。一緒に三神隊長の所行こう」と聖司は嬉しそうに言った
「宜しくお願いします」と潤は頭を下げた
「じゃあ、潤はなんでさっきあんなに睨んでたんだ?」と聖司は不思議そうに聞いた
まさか賭けをしていた何て本人に言えなかった
「あれは、気にしないで下さい」と潤は誤魔化し
「訓練中ですから戻りましょう」と言って今度は潤が聖司の腕を掴んで隊員がいる場所まで戻った
戻ってみると、阿部馨と武下大雅と宮藤航が戻って来ていた
狙撃場で対戦しているのは残り2名
藤川彩と坂口仁の一騎討ちだ
田中美里が興奮している
潤は聖司に気付かれない様に、奈良拓真に近寄って、素早くシッペをした
奈良拓真は痛がっている
田中美里も気付き、奈良拓真にシッペをした
女性にしては田中美里はシッペの威力がある様だ
潤はもう経験済みだから分かる
隊員達が見守る中、勝負は付いた
「藤川彩が坂口仁を狙撃」とアナウンスが流れた
田中美里がガッツポーズをしている
隊員達はそれぞれに何やら話している
アナウンスを終えて、三神隊長が下に降りてきた
「諸君。今日の訓練は終了だ。今日の勝者は藤川彩君だ。藤川彩君の健闘に拍手を」と三神が言うと、隊員皆拍手をした
「では、解散」と三神が言うと
お疲れ様でした!と隊員達が敬礼した
「あの!」と潤は帰ろうとする三神を呼び止めた
「なんだね。真中君」と三神が振り向いた
「お話がありますので、後でお部屋に聖司さんと一緒にお伺いします」と潤は言った
「ふむ。分かった」とだけ言って三神は狙撃場を出て行った
潤と聖司は三神の部屋の前にきた
聖司には先に潤が思い付いた事を話しておいた
聖司は驚いていたが、潤らしい答だと納得した
潤は三神の部屋のドアをノックした
三神の返事があり、二人は部屋へ入った
三神は机でパソコンをいじっていた
その手をとめて、三神は視線を二人に向けた
「話とはなんだね?真中君」と三神は聞いた
潤は緊張でゴクッと唾を飲み込んだ
「あの…今回の任務なんですが、俺どうしても納得出来なくて」と潤は話始めた
「何が納得出来ないのかね?」と三神は聞いた
「犯罪者だからと言って中絶児には更正のチャンス無く、暗殺されてしまう事です」と潤は自分の意見をハッキリ言った
「成る程。真中君はこう言う任務は初めてだったね。任務を降りたいのかね?」と三神は潤に厳しい視線を送った
「いえ。違います。任務は確実にやり遂げます。しかし、今回のターゲットが中絶児だから初めて考えたのですが、何故暗殺されてしまうのか、俺には理由が必要なんです。だからターゲットの情報が欲しいのです」と潤は訴えた
「情報部からの連絡を待てと言ったはずだが?」と三神はいまいち潤が何を言わんとしているのか分からない様子だ
「情報部からの連絡を待つのでは無くて、この眼でターゲットがどんな人物なのか知りたいのです」と潤は自分の気持ちをありのまま伝えた
「つまり、情報部の情報だけでなく、自分で情報を確認したいと言う事かね?」と三神は潤の言いたい事を理解した様だ
「はい。出来れば情報部の隊員と行動を共にして、ターゲットの情報を自分の眼で見て感じて、何故暗殺されてしまうのかの答を見付けて、それから任務に当たりたいと思っています」と潤は情報部と共にターゲットに接触する事を望んだ
「ターゲットに接触し過ぎて、情がわき任務が出来なくなる可能性もある。もし、答が見付からなかったら?真中君はどうする?暗殺出来ないだろう」と三神は難色を示した
「それは…あり得るかも知れません」と潤は正直に答えた
「俺が潤を指命したんです。この任務は俺の任務です。しかし、潤はこの任務をやり遂げたいから、この様な提案をしたのです。どうか彼の提案を許して貰えないでしょうか!」と聖司が助け船を出した
「ふむ。これからもこう言った任務はあるだろう。その度に真中君が迷うのならば、困ってしまう。迷いを打ち消す為にも、真中君の提案を審議してみよう。この件は明日情報部隊長と金田作戦総合本部隊長と話し合って、結果を真中君に伝える。それで良いかな?」と三神は言った
「三神隊長!ありがとうございます」と潤は深々とお辞儀をした
潤と聖司は敬礼をしてから、三神の部屋を出た
「まだ分からないけど、よかったな潤」と聖司が言った
「聖司さんの助け船のお陰です」と潤は喜んで言った
「そうか。全ては明日だな」と聖司が言った
「はい!」と潤は意気込んで言った
翌日、三神不在の為午前中の訓練はスポッター部隊と合同で狙撃場での自主訓練となった
三神は今頃、会議室で潤の提案を審議している所だろう
「おはよう」と潤に話し掛けて来たのは昔馴染みの田中翔平だった
「あ!翔ちゃんおはよう」と潤は挨拶を返した
「潤ちゃん俺と訓練しようよ!」と田中が誘った
「うん。良いよ」と潤は返事をした
「じゃ、あの場所にターゲットがいるって設定で訓練しよう」と田中が指差した
指差したのはビルとビルの間の狭い路地だった
「分かった」と潤は了解した
先ず、二人はターゲットがいる場所に人形を置いた
それから、ターゲットが狙いやすい場所を探した
二人はいくつかビルをのぼって、最適な場所を見付けた
路地が良く見渡せる、ビルの屋上だ
早速、潤は狙撃銃をセッティングし始めた
セッティングする間に田中が潤に話し掛けた
「潤ちゃん。任務の事、まだ悩んでる?」と聞かれた
迷っていないと言うのは嘘だが、潤は自分が決心した事を、田中に伝えた
「そっかぁ…。情報部隊と一緒にね。俺は暗殺されてしまうくらい悪いやつと思って、疑問に感じた事無かった。潤ちゃんは繊細なんだね」と田中に言われた
「繊細なんかじゃないよ。ただ、翔ちゃんや他の中絶児にここで出会って、仲間意識が強くなってしまっただけなんだ」と潤は話した
「成る程ね。仲間意識か。俺はスポッター部隊の仲間には仲間意識があるけど、潤ちゃんの仲間意識はとっても深くて、広いんだろうね」と田中が言った
「うん。中絶児の仲間だから、全国に仲間がいるかな」と潤は茶化して言った
「プハッ。それは大変だな」と田中は笑った
潤も一緒に笑った
潤は今日の訓練が田中と同じでよかったなと思っていた
昔馴染みだから安心出来る
本当は潤は会議の事が気になって仕方なかったのだ
しかし、田中と一緒ならば忘れていられそうだ
「会議通ると良いな」と田中が言った
「ありがとう。翔ちゃん」と潤はお礼した
銃をセッティングし終わり、二人は訓練を開始した
「さぁ、翔ちゃん。何処から狙う?」と潤は聞いた
「そうだなぁー、先ず潤ちゃんが思う場所から狙ってみて。潤ちゃんの腕前がみたい」と田中は答えた
「分かった」そう言って、潤はスコープを覗きながら、少しずつ銃の位置を変えていく
「実はさ、今日合同訓練だって聞いてから今度の任務を想定した訓練を潤ちゃんとしたいと思ったんだ。分からないけど、麻薬の密売って、きっと人目に付かない場所かなって」と田中が話した
「そうなんだ。だからこんな狭い路地裏を選んだんだ」と潤は田中が選んだんだ場所に納得した
「室内での取引もあるかもね」と潤は想定出来る場所をあげた
「うん。あり得るね。その時は出入口から外に出て来た時に狙わなきゃね」と田中は言った
「そうだね。流石にその時の訓練は出来ないね。その時の現場で判断するしかない」と潤は言った
「うん。その時の為に今日は二人で協力して訓練しよう」と田中は言った
「OK!場所決まったよ。ここから狙撃してみる」と潤は銃の位置を固定した
人形の頭を狙って、スコープを覗く
潤は引き金を引いた
銃弾は人形の頭を貫いた
「スゲー!潤ちゃんスポッター要らず」と田中が言った
「狙撃するこのビルを選んだ翔ちゃんのお陰だよ。ここはあんなに狭い路地裏が狙いやすいから」と潤は田中を褒めた
「潤ちゃん。ありがとう。じゃあ、場所変えて色々試してみよう」と田中は言った
「良いよ。いろんな場所から協力して狙撃してみよう」と潤も言った
二人はターゲットをいろんな場所に置き、その度に何処から狙うか?と話し合って訓練した
途中、潤と田中は聖司と中山瞳が一緒に訓練している所に遭遇した
「おう。潤。訓練どうだ?」と聖司が聞いてきた
「はい。昔馴染みの翔ちゃんと一緒に訓練しているから、楽しいですよ」と潤は答えた
「そうか。ならいいんだ。じゃあ頑張れよ」と聖司は言った
中山瞳も``お互い頑張ろうね´´と言って二人は別の場所に移動して行った
田中が聖司が狙った人形を確認した
「ウヒャー!さすが五十嵐さん。こんな難しい場所から狙って当たってる!」と田中が驚き言った
潤も確認してみた
確かに当てるには難関な場所だ
「潤ちゃんもやってみる?」と田中が聞いた
「もちろん!チャレンジしてみるよ」と潤は答えた
潤は慎重にスコープを覗いた
しかし、ターゲットは中々照準に入らない
聖司はいったいどんなテクニックで当てたのだろうと潤は思った
場所を変えつつスコープを覗く
ようやく照準にターゲットが入った
その一瞬を逃さず、潤は引き金を引いた
弾はターゲットの左腕に当たった
「潤ちゃん惜しい!左胸から少しそれたね」と田中が言った
「うん。もう一度やってみるよ」と潤は言った
潤が再びスコープを覗こうとすると田中が止めた
「待って、潤ちゃん。風向きがさっきと変わった。今度はここから狙ってみて」と田中は銃を移動させた
「OK」と短く返事をして潤も移動した
潤はスコープを覗く
さっきよりは、ターゲットが見やすかった
潤は照準をターゲットに合わせる
また左胸を狙う事にした
照準が合った瞬間潤は引き金を引いた
今度は見事に左胸に命中した
田中が拍手をする
「やったね、潤ちゃん」と田中は声をかけた
「うん。ありがとう」と潤は返事をした
「翔ちゃんのアドバイスのお陰だよ」と潤は言った
「俺のアドバイスを活かすのも殺すのも、スナイパーの腕次第だからね」と田中が嬉しそうに言った
「潤ちゃんの腕前見れてよかった。もう五十嵐さんと肩並べられちゃうよ!」と田中が満面の笑みで言った
「聖司さんと肩なんて並べられないよ。こんなに難しい場所からあの人、百発百中なんだから」と潤は恐れ多いとばかりに否定した
「そっか。じゃあ、五十嵐さんの足下ぐらいで。でも潤ちゃん自分の腕前にもっと自信もって大丈夫だよ」と田中は言った
「うん。自信をもつようにしてみるよ」と潤は答えた
二人が夢中で訓練しているうちに、時刻は訓練終了10分前になっていた
今日はスポッター部隊の隊長が指揮している
二人は隊長がいる集合場所に戻った
訓練終了2分前
スポッター部隊隊長の岡田俊文隊長の話が続いている
「…今日は合同訓練を通して改めてスナイパーとスポッターの協力が重要だと、皆思ったと思う。それを忘れないでほしい。私からは以上だ。では訓練を終了する。解散」との岡田の合図でスポッター部隊と射撃・狙撃部隊の全員が敬礼して、``お疲れ様でした´´と挨拶した
訓練終了後、潤が田中と話していると聖司が二人を呼び止めた
「潤と田中君!一緒にお昼いかないかい?」と聞いてきた
聖司の側には中山瞳と藤川彩と潤の知らない男性がいた
「えーと、今回の任務組が一緒だけども。潤ははじめましてだよな。こちら、スポッター部隊の原田要君だ」と聖司が紹介した
「真中君。はじめまして。原田要です。藤川さんと今回の任務で組ませてもらいます。よろしくね」と原田が改めて自己紹介した
「あ、はじめまして。真中潤です」と潤も挨拶した
「おんなじ任務、中山さんと原田さんだったんですね」と田中も今知った様だ
「え!翔ちゃんしらなかったの?」と潤が聞くと
「俺しらなかった。潤ちゃんと組むのは知らされたけど」と答えた
「そうなんだ。聖司さんさっき何で教えてくれなかったんですか?」と潤は聞いた
「悪い。訓練に集中してて言い忘れた」と弁明した
「で、どうする?お昼ご飯?」と聖司がもう一度聞いた
潤と田中は顔を見合わせうなずいてから
「そうですね。皆さん一緒に食べましょう」と潤は言った
「よし!じゃあ、さっさと食堂に行こう」と聖司が言って全員食堂に向かった
食堂に着くとまず席を確保した
何しろ6人一緒に座れなければならない
4人掛けのテーブルを二つに繋げて8人掛けのテーブルを作った
そのあと、みんな券売機に並び、食事をテーブルに運んで座った
``いただきます´´と全員が言って食べ始めた
「真中君、聞いたわよ」と中山が潤に話しかけた
「え?何をですか?」と潤は訊ねた
「情報部隊に入ってターゲットを知りたいって話し」と中山が答えた
「あぁ、それですか」と潤は今日会議が行われている事を思い出して、苦笑いしながら言った
「確かに、私達は殺す理由も知らずに、中絶児の粛清をしてきたわよね」と中山が思い深げに言った
「そうよね。今回真中君の気持ちを聞いてアタシも知りたくなったわ」と藤川も言った
「真中君。君の思いが叶うと良いね!」と原田も事情を知っている様だ
「皆さんありがとうございます。俺のわがままで、皆さんの任務に不調はきたさないですから」と潤は宣言した
「俺たちは今回同じ任務をこなすチームだからな。だから、心配するなよ潤。潤の気持ちはみんなの気持ちさ」と聖司が言った
その言葉にみんながうなずいた
潤は自分のわがままなのに、こんなにも気持ちを理解してくれる仲間とチームが組めて幸せだなと思った
「ありがとうございます」と潤はもう一度お礼を言った
潤は食事をしながらチームのみんなと楽しく雑談した
田中が潤の小さい時の失敗話をバラしてみんなが爆笑している時だった
潤のIAP専用電話がなった
6人全員がシーンと静かになった
着信は三神からだった
潤は深呼吸をひとつしてから
「もしもし。お疲れ様です。真中です」と言って電話にでた
「訓練ご苦労だ真中君。昨日の君の要望の件だが、会議を終えて答えが決まった。情報部隊と一緒に行動をする事は出来ない。君が一緒にいたら足手まといになると情報部隊の隊長の意見だ。私と金田隊長も意見は一緒だ。しかし、今後の真中君の任務の事を考えて、私と金田隊長が諭した所、情報部隊の隊長から、一日だけなら一緒に行動をしても良いと約束を取り付けた。詳しい事は情報部隊の隊長から説明してもらう。私からは以上だ。何か質問は?」と三神が聞いた
「ありがとうございます!三神隊長。一日だけでも凄く嬉しいです。あの、情報部隊の隊長さんから詳しい事は説明していただくのですが、お部屋に伺えば良いのですか?電話を待っていれば良いですか?」と潤はお礼を言ってから質問した
「あぁ、忘れていた。すまないね。明日の訓練終了後に、情報部隊隊長の夏目新太郎隊長の部屋に顔を出してくれたまへ」と三神は言った
「分かりました。明日の訓練終了後ですね」と潤は了解した
「ではまた明日の訓練で」と言って三神からの電話は切れた
5人の視線が潤に突き刺さる
「あー、一日だけなら一緒に行動しても良いそうです」と潤は報告した
それを聞いて皆はホッとした様な表情をした
口々に``よかったわね´´、``おめでとう´´と皆が言った
「ありがとうございます。俺一日だけど、しっかりターゲットの事この眼で見てきたいと思います」と潤は決意を新たにしながら言った
昼休み終了の時間が近付きスポッター部隊と射撃・狙撃部隊に分かれてそれぞれ訓練に戻って行った
時間は午後2時半
午後からの訓練が終わり、潤は聖司と射撃・狙撃部隊のロッカールームにいる
「俺の分までターゲットの事見てきてくれよな」と聖司は潤に話しかけた
「はい。勿論です」と潤は返事した
「今日はどうする?」と聖司が聞いた
どうやら、自主トレか娯楽ルームへのお誘いみたいだ
「今日一日ずっと緊張していたから、疲れました。娯楽ルームへいきましょうよ」と潤は答えた
「OK.んじゃ、娯楽ルームへ行くか」と聖司は言った
二人は隊服を着替えて、娯楽ルームへ向かった
二人は娯楽ルームに着いた
「何処行く?」と聖司が潤に聞いた
「行った事ないから漫喫入ってみませんか?」と潤は提案した
「たまには静かに読書も良いか」と聖司は了解した
「漫画ですけどね」と潤は言った
二人は漫喫に入った
漫喫に入るとカウンターがあり、機械がひとつ置かれていた
「いらっしゃいませ。IDカードを読み取り機にかざしてください」と機械がしゃべった
聖司と潤はIDカードをかざした
「確認をいたしました。ドリンクはフリードリンクとなっております。お食事はバイキングとなっております。お好きな物をどうぞ。3番の個室が空いております。どうぞごゆっくりお過ごしください」と機械がまたしゃべった
「3番だとさ」と言って聖司が歩きだした
潤も付いていく
この漫喫は個室タイプの漫喫になっている
二人はドアに3番と書かれている個室を見付けた
二人は中に入った
普通の漫喫とは違い、個室の中はやたら広かった
男二人が寝っ転がって漫画を読んでも十分な広さがある
机の上にタブレット端末が二つ置いてありその前に二人がけには広いソファーがありソファーの後ろには畳が敷かれている空間があり、そこに寝っ転がるスペースがある
「ワオ。潤。快適な漫喫だね!」と聖司が言った
「広くて過ごしやすそうですね」と潤は言った
二人は早速好きな漫画を物色しに行った
潤は最近の新しい漫画が置かれている棚より、昔の名作が置かれている棚をうろうろしている
潤はお目当ての漫画を見付けた
個室に戻ると、聖司が先に戻り漫画を読み始めていた
聖司は読んでいた漫画から眼を潤に向けて「おう。潤は何選んだんだ?」と聞いた
「俺はドラえもんです」と潤は答えた
「ドラえもん!また古い漫画選んだんだな」と聖司は言った
「子供の頃、施設でアニメを良く見ていて、原作の漫画が気になっていたんです」と潤は言った
「そうか。そう言えば俺もアニメ見ていたな。俺はこれだ。エヴァンゲリオン」と聖司は本の表紙を潤に見せた
「聖司さんだって十分古いんですけど」と潤は突っ込んだ
聖司はクスクス笑っている
「ドラえもんよりは新しい」と聖司が笑いながら言った
「そうですけど、俺たちからしたらあんまり変わらないじゃないですか!」と潤は反論する
「からかって悪かったよ。まぁ、ゆっくり読もうぜ」と聖司がウィンクした
「もう!」と潤は言ったが、聖司のお詫びの言葉に潤は聖司の隣に座り大人しく漫画を読み始めた
二人は坦々と漫画を読み続けた
先に読み終わったのは聖司だった
潤は残りあと2話分まで読んだ
「潤。漫喫って会話が無くてつまらないな」と聖司が突然言い出した
「はぁ?漫画読むの楽しいじゃないですか」と潤は言った
「うん。漫画を読むのは楽しい。だが、黙々と読むだけで、会話が無いから面白くない。と言うか二人で居る意味がない」と聖司は言い出した
「えーっ!どんだけ寂しがりやですか?いいじゃないですか。二人で黙々と漫画を読めば。娯楽ルームは羽休めの場所なんですから」と潤は冷たく言った
「潤冷たいね。せっかく二人で来たから少々話がしたいと思っただけなのに」と潤の態度に聖司は拗ね気味だ
「分かりました。ドラえもん読み終わったら話し相手しますから、少しだけ待ってください」と潤は言った
「了解!」と聖司は返事した
潤が読み終わるまでの暇潰しに聖司はタブレット端末をいじり始めた
潤はドラえもんを読む事に集中した
「聖司さん。終わりましたよ」と潤は聖司に話しかけた
しかし、返事が無い
隣を見ると聖司はタブレット端末でゲームをしていた
「今良い所だからちょっと待って」と聖司が眼はタブレット端末に向けたままで潤に言った
「俺が読み終わったのに、聖司さんがゲームにハマッていたら意味がないじゃないですか」と潤は突っ込んだ
「悪い!直ぐに終わるから」と聖司は言った
潤は聖司がプレイしているゲームを覗き込んだ
ゲームは上から段々下がってくるカラフルな風船を、同じ色の風船を下から投げて、3つ揃えば風船が消えていく内容だった
潤が覗き込んでいる事に緊張したのか聖司は風船を上手く消す事が出来ず、ゲームオーバーになった
「あー、良いところまで言ったのに」と聖司は嘆いている
「面白そうなゲームですね」と潤は話しかけた
「後で潤もやってみなよ。でスコアを競おうぜ」と聖司が言った
「お!なんかいつもの展開ですね。俺は負けませんよ!」と潤は言った
「おう。じゃ、なんか俺腹へったし、ご飯食べながら、話すか」と聖司が提案した
「そうですね」と潤は返事した
二人は料理が置いてある場所に行った
色々な料理がバイキングに並んでいる
二人は適当に皿に沢山の料理をのせた
一旦皿をテーブルに置きにいき、二人は戻ってきて茶碗にご飯を盛りつけて、ドリンクバーで飲み物をついで、またテーブルまで戻った
``いただきます´´を二人はして食べ始めた
「そういえば、聖司さんは3人の中絶児を粛清したんですよね?」と潤は質問した
「やっぱり、聞きたいかこの話し」と聖司は嫌そうな表情で言った
「出来れば、教えてほしいです」と潤はお願いした
「そうか。じゃあ話すよ…」と聖司はあまり乗り気ではないが、返事をした
聖司は話し始めた
「まず、最初の中絶児のターゲットは、連続婦女暴行犯。20人が犠牲者になった。中には小学生もいたそうだ。犠牲者の内1人の女性を殺害した」と聖司は思い出したくない様に、唇を噛みしめている
「次は飲酒運転のひき逃げ犯だ。保育園児の列に突っ込んで、4人が死亡した」と聖司はますます厳しい顔つきになっている
「最後は連続放火犯だ。軽いボヤも含めて50件放火して6人が死亡した」と聖司は語った
「皆、普通の裁判でも極刑になりそうな事件ばかりですね」と潤は言った
「あぁ…だからこそ俺は粛清に疑問すら持たなかった」と聖司は言った
「俺こそですよ!中絶児の中にそんな犯罪者が居るなんて、思いもしなかったですから」
「確かに極刑になりそうな人達ですが、中絶児だからって、暗殺されるなんて…裁判できちんと刑を決めるべきだとまだ思います。例え死刑でも…」と潤はもう一度自分の気持ちを確かめる様に言った
「そうだな。だから潤、俺の分までちゃんと見極めてきてくれ」と聖司は真剣な顔をして潤の背中を軽く叩いた
「はい!」と潤は返事をした
「真面目モードはおわりー!じゃ、次は潤の暴露話ね」と聖司が無茶を言い出した
「えーっ!暴露話なんてないですよ!」と潤は困った
「じゃ、今までの恋話しで」と聖司が話を振ってきた
「嫌ですよ!そんなたいして面白くないですよ」と潤は恋話しを拒否した
「潤のケチ~!俺は話したのに」と聖司が文句を言う
「…っ、それを言われると困りますが、本当に聞きたいですか?」と潤は聖司に確認した
「勿論だよ」と聖司は速答した
「分かりました。話しますよ。最初に好きになったのは…」と潤は話し出した
潤は今までの恋愛経験を事細かに聖司に話した
「つまり、あれだ。潤は髪が長くて、メガネっ子で、巨乳な女性がタイプなんだね!」と聖司が言った
「ちょっと待ってください!俺の今までの話しを、そんな言葉で総括しないでください!」と潤は反論した
「冗談だよ」と言って聖司はウィンクした
「潤の純情で青春な話が聞けてよかったよ」となんだか聖司は嬉しそうに言った
「はぁ、俺のこんな平凡な話しを聞いて嬉しいですか?」と潤は聖司に聞いた
「あぁ。潤のお兄さんの気分が味わえたからね」と聖司は言った
「じゃ、俺は聖司さんの弟だから聖司さんの恋話しを!」と潤はすかさず言った
「俺は粛清の話しをしたからドローだ。恋話しはまた今度~」と聖司は自分の恋話しを上手く逃れた
「聖司さんズルい!」と潤はなおも聞き出そうとする
「俺の話は潤にはまだ早いの!」と聖司は意味不明な言葉で逃げる
「うー、ますます聞きたい」と潤は呟いた
「よし!さっきのゲーム。点数競おうぜ」と聖司は話しを切り替えた
「えー。分かりましたよ。今度絶対話してくださいね」と潤は言ってしぶしぶゲームをする事を承諾した
二人とも畳に寝そべりゲームをたのしんでいた
白熱したバトルの末、勝者は聖司に決まった
「俺に勝つなんて、潤には100年早い」と聖司は勝利に酔っている
「ハイハイ。分かりましたよ」と潤は軽くあしらった
「もうすぐ12時だ。そろそろお開きにするか?」と聖司が聞いた
「そうですね。仮眠ルームいきますか」と潤は答えた
「潤家に帰らなくて平気か?」と聖司は潤を自宅に送るつもりでいたので確認した
「あぁ。平気ですよ。明日情報部隊長の部屋に訓練終了後に行くので、むしろ仮眠ルームのが朝の出勤が便利です」と潤は言った
「そっかぁ。なら大丈夫だな。別々に寝るか?二人部屋にするか?」と聖司はまた聞いた
「うーん。支部の仮眠室は一緒でしたから。二人部屋で良いですよ」と潤は言った
「じゃ、部屋に行くか」と聖司が言って二人とも仮眠ルームに移動した
仮眠ルームに着くと、二人はちゃっちゃっとシャワーを浴びて、眠る時の格好に着替えて、すぐにベットに潜り込んだ
``おやすみ´´と言って眠りについた
翌日午前7時
二人は目覚めた
潤と聖司は同時に起きた
二人とも、朝の準備を済ませて、食堂へ向かった
食堂には仮眠ルームを利用した隊員の為に軽食が用意してある
潤は寝ぼけたままで、サンドウィチを頬張る勿論、メロンパンも確保済みだ
聖司はお茶漬けを食べている
二人は食事を終えて、ロッカールームに行き隊服に着替えた
午前中と午後からの訓練を終えて、潤はいよいよ情報部隊長の部屋に向かった




