[IAP本部入隊]
潤はお風呂を済ませ、食堂から持ってきた弁当と大好きなメロンパンを仮眠室で食べていた
今日の任務によほど緊張したのか、成功して安心したのか、潤はとにかく腹がへっていた
まだ足りないなと思いつつ、メロンパンを食べ終えた
潤はやっぱりメロンパンのジンクスは本物だと食べ終えた袋を見ながら思った
これから、任務の日は必ず食べようと思った
食べたりないので、再び食堂にデザートでも物色に行こうと思った時に、潤の携帯が鳴った
潤はきっと聖司だろうと思った
しかし、鳴っているのは、IAP専用電話ではなく潤の携帯だった
そう言えば、IAP専用電話から聖司に一度だけかけた事がある
聖司はIAP専用電話の番号は知っているはすだ
誰からだろう?と潤は思った
急いで潤は自分の携帯を鞄から取り出した
聖司なら嬉しいなと思いつつ
携帯の画面を確認すると、電話は陽子からのものだった
少しがっかりしつつ、陽子からの電話に出た
「もしもし。こんばんは、陽子さん」と潤が言うと
「政府特別中絶省から、情報があったわ。本部入隊おめでとう…」と全然喜んでいない声が返ってきた
「陽子さん。声が喜んでない」と潤が指摘すると
「バレバレね。貴方が入隊する事、私は嬉しくないわ。だって心配だもの…貴方が死んじゃうんじゃないかって!」と陽子は本気で入隊を歓迎していない様だった
「心配ありがとう。陽子さん大丈夫!俺は一度死んだ命。政府から与えられた命を大事に使うからさ」と潤が言うと
「本当に約束よ!命を守りなさい。絶対死なないで!」と陽子はすすり泣きをしている様である
誰かが泣くほど自分の事を心配してくれるなんて、潤にはむず痒い気持ちだったが、同時に嬉しくもあった
「陽子さん。本当にありがとう。泣くほど心配されるなんて、初めてです。陽子さんは俺の姉貴みたいな存在です。この間見守ってくれるって言ってくれましたよね。何時までも、俺のお目付け役でいてください!」と潤は伝えた
「貴方聞いていないのね。IAPに入隊すると、担当がいなくなるのよ!IAPの隊長達がお目付け役になるから。私がこうして貴方と話す事も今日が最後…」と潤にとっては寝耳に水な話しだった
「そんな…今日が最後だなんて、俺何も知らなくて…」と潤は戸惑った
「私の担当の中で、IAPに所属は貴方だけなのよ。私もこんなこと初めてで、何で泣いてるのか分からないわ。ずっと前から見守ってきたから。貴方に生きていて欲しいの!」と陽子は自分でも気持ちの整理が出来ていない様だった
陽子の気持ちに、潤は瞳から一粒の涙を流した
「陽子さん。6年間本当にありがとうございました。俺、陽子さんが見守ってくれた命を大切にしますから!約束です」と潤は陽子に泣いている事がバレない様に伝えた
「貴方泣いているでしょう?」と直ぐに陽子にバレた様だった
「もらい泣きです」と潤は拗ねた様に言った
「そう。私達泣いたりしてバカね。今生の別れでも無いのに。担当は外れるけど、今日の事忘れないで。貴方が死んだら悲しむ人がいるって事を!」と陽子は念を押した
「忘れません。約束です」と潤は誓った
「…それじゃあ、明日から頑張って。入隊おめでとう」と今度は本当に嬉しそうに言った
「ありがとうございます。陽子さんお世話になりました」と陽子には見えないが、潤は御辞儀をした
サヨナラと言って電話は切れた
潤は自分の頬を伝う涙を拭った
こんな形で別れがやってくるなんて、潤には思いもよらなかった
今迄の事が走馬灯の様に思い出される
潤は本当にいままで見守ってくれた陽子に深く感謝した
潤は陽子からの電話ですっかり忘れていたがやはり、空腹感があった
食堂にデザートを取りに行き、やっと満腹感が得られた潤は、ベットに潜り込み直ぐに眠ってしまった
潤は夢を見ていた
子供の頃育った児童養護施設に潤はいた
先生に近付いては行けないと言われていた扉の前にいた
一緒にいた友達が、開けてみようよと誘惑する
潤は何で開けたらいけないと先生が言うのか知りたかった
一人ではない事に安心して、一緒に開ける事にした
重い扉を二人でゆっくり開けた
中を覗くと、真っ暗だった
潤は急に恐ろしくなった
やはり止めようと友達に言おうと思った時に
友達が階段があると言った
下に行く階段だった
友達は階段を下り始め、潤に早く来いと急かす
潤はとても怖くて、足が固まってしまった
その時、「潤」と誰かが呼んだ
潤は誰だろうと思った
知っている先生の声ではない
しかし、潤と呼ぶ声は続いている
潤は真っ暗な階段を下りるのが嫌だったので、友達に誰か僕を呼んでるからと言って声の呼ぶ方に向かった
声の呼ぶ方に行くと段々はっきりと聞こえた
潤は急に息苦しくなった
声の呼ぶ方に行きたいのに、身体がゆうことを利かない
潤は息苦しいのが限界に達して、ようやく夢から覚めた
パッと目を開けると
「潤!」と呼びながら、潤の鼻と口を押さえている聖司の顔が見えた
潤はハッと我に返り、「聖司さん!」と叫んで、ガバッと起き上がった
潤の顔を覗き込んでいた聖司のオデコと潤のオデコがぶつかった
二人とも同時に「痛ってー!」と叫んだ
「潤、急に起き上がるなよ」と聖司がオデコを擦りながら言った
「スイマセン。俺、夢をみてたみたいで、起きたら聖司さんが居てびっくりして…」と潤はまだ寝ぼけながら答える
「約束の10時に潤が来ないから、起こしに来た」と聖司は何で居るのか説明した
「えっ!10時過ぎてるんですか!?聖司さん。ご免なさい!寝坊しました」と潤は慌てて言った
すると聖司は「今日は俺休みで、潤の案内するだけだから。昨日疲れたんだろう。気にしなくて良いよ」と言った
そう言われれば、訓練の時は隊服なのに今日の聖司は私服だった
こげ茶色の革ジャンに中はタートルネックのセーター、細身のブラックジーンズに、こげ茶色のエンジニアブーッを履いている
「潤が気持ち良さげに眠ってたから、優しく起こしてあげようと思って、潤の名前呼んでたんだよ」と聖司が言った
「鼻と口を塞ぐのの何処が優しい起こし方なんですか!」と潤は突っ込む
聖司はケラケラと笑った
笑いながら聖司は「先輩を待たせた罰」と言った
「申し訳ございませんでした」と潤は少し拗ねて言った
「はいはい。潤、拗ねてないで早く朝ごはん済まして、着替えて出発しよう。今日は俺の車で行くよ」と聖司は言った
「聖司さんの車で行くんですか?」と潤は聞き返した
「うん。本部には何時も車で行ってるから」と聖司は答えた
「分かりました。速攻で準備します。あっ!聖司さんの車の中で朝ごはん食べても良いですか?」と潤は聞いた
潤は少しでも時間のロスを減らしたかった
「良いよ」と聖司が答えた
潤はまず食堂に行き、お茶とオニギリを2つ持ってきた
そして、鞄から服を取りだし着替えた
潤の格好は、白色のシャツの上にグレーのVネックセーター、深い青色のジーンズに黒色の革靴、黒色のダッフルコートとゆういでたちだ
二人は警察署の外に出て近くのコインパーキングに停めてあった、聖司の車に乗り込んだ
聖司の車に乗り込むと、潤は早速オニギリを頬張った
時刻は10時45分
朝ごはんとは言えない時間だ
「オニギリ、1つにしておけよ」と聖司が突然言った
「何でですか?」と潤が聞くと
「後で、一緒に昼飯食うからだよ」と聖司は言った
潤はクエスチョンマークがいっぱいだった
聖司は潤の案内役だけで休みだが、潤は自分はIAP本部で訓練などするのだろうと思っていたからだ
「聖司さん。俺本部に行ったら訓練とかあるんじゃないのですか?」と聞くと
「今日は顔見せだけだから、訓練は無いと思うよ!昼頃には終わる。だから、東京タワーで一緒に飯でも食べよう。上ったこと有るか?」と聖司が聞く
「無いです」と潤が答えると
「決まりだな。今日は俺と昼飯食って、東京タワーの大展望台に行こう」と聖司は潤の予定を勝手に決めた
「そんなこと言って、もし俺が訓練とかしなきゃならなかったら、どうするんですか?」と潤は勝手に決められた予定に反発する
「大丈夫!俺も初日は顔見せだけだったから」と断言した
潤は先輩が言っているのだから、間違いなくそうなのだろうと思った
「はい。分かりました。でもいくら地下にIAPが有るからって、俺達が外で一緒に行動して良いのですか?」と聞くと
「もう担当は居ないだろう?三神隊長の許可は貰い済みだよ」と聖司が答えた
「三神隊長の…それじゃあ、隊長の許可が有れば聖司さんと色々自由にいられるって事ですか?」潤は嬉しそうに聞いた
「イヤ、そんなに甘くはない。今回は本部の真上だから、特別だろう」と聖司は言った
潤は少し残念だったが、今日一日聖司と一緒に遊べるなんて夢の様だと思った
話しているうちに、車は東京タワーに着いた
聖司は東京タワーフットタウン2階の駐車場に車を停めた
2階には直通の出入口がある
出入口から東京タワーに入ると、二人はエレベーターの前に立つ
2階には平日と言う事もあり人はまばらだ
改修工事をしたものの、やはり東京スカイツリーが完成してからは、東京タワーにくる客は年々減った
今やエレベーターガールも居ない
エレベーターは3基ある
一号基は光のルービックキューブをテーマに
二号基はUNIVERSEをテーマに
三号基はUFOをテーマにしてエレベーターは作られている
聖司は一号基のボタンを押した
大展望台には行ってなかった様で直ぐに扉が開いた
二人は揃って乗り込んだ
エレベーターの扉が閉まると、聖司がIDカードをポケットから取り出した
そのカードをエレベーターの各階のボタンの横の溝にスライドさせた
「IDカードをエレベーターに読み込ませると
普段は行けない地下に、エレベーターが行ける様になる」と聖司が説明した
エレベーターは地下二階で止まった
「乗り換えだ」と言って聖司はエレベーターを降りた
地下二階は東京タワーの職員の職員食堂がある
地下一階には管理事務所がある
まだお昼前なので、地下二階には人気はなく食堂からあわただしくランチを用意する音だけ聞こえる
エレベーターを降りてから、直ぐに左側に行くと食堂
エレベーターを降りてから右側に行って、さらに突き当たりを右に曲がると、壁に黒色の機械が備え付けてあった
聖司は機械にIDカードをかざす
すると壁は左側に動き、中からエレベーターがまた現れた
「これに乗って、地下深くの本部まで行ける」と聖司はまた説明した
エレベーターに乗り込むと、壁は動きエレベーターをまた隠した
「職員には気付かれないのですか?」と潤が聞くと
「黒色の機械は火災報知器だと思わせてる。食堂があるからな。二階は食堂以外は人気がない。心配するな」と聖司はウィンクした
エレベーターに乗って1分後、目的地に着いた
IAP本部の入り口までやっと来た
聖司は入り口横にある機械に人差し指をかざした
「本部は指紋認証式だ。潤のも明日には登録されると思うよ」と聖司は説明した
二人とも入り口を入った
入り口を入ってすぐは、広いホールになっていた
「本部は3階建てで、ここは地下一階。詳しくは後で説明するから、取りあえず三神隊長の部屋まで案内するよ」と聖司は言った
ホールの端に階段があり、聖司は階段を下りて行く
潤は聖司について行く
どうやら三神の部屋は地下二階に有るようだ
地下二階に着いた
ここは色々な部屋が沢山ある
階段を下りて、まっすぐ進み左に曲がるとはしから2番目の部屋の前で聖司が歩きをとめた
「三神隊長の部屋はここだよ」と聖司が言った
部屋のプレートを見ると``三神竜也´´と書いてあった
潤はドアをノックした
中から``入れ´´と三神の声がした
潤はドアを開けた
中は来客用のソファーとテーブルが置いてあり
その奥に三神のデスクと椅子があり、その椅子に三神は座っていた
「おはようございます。遅くなって申し訳ございません」と潤は深く頭を下げた
「始めての任務の次の日だからね。今回は特別許そう。今後は二度と無い様に」と三神から忠告を受ける
「はい!」と潤は敬礼した
「では、正式入隊した君に、射撃・狙撃部隊の仲間を紹介しよう。皆は、射撃・狙撃部隊専用部屋に集まっている。そちらに移動しよう」と三神が立ち上がった
そして、潤を通りすぎドアを開けた
目で``付いてこい´´と合図していた
潤は三神に付いて部屋を出た
聖司は部屋の外には居なかった
潤は聖司は何処に行ったんだろうと辺りをキョロキョロした
でも居ない。帰ったんだろうか?でも約束したのに…しかも聖司さんの方から…と考えていると、三神が``ここだ´´と言って1つの扉の前で止まった
プレートには射撃・狙撃部隊と書かれている
三神が扉を開けて、開けたまま潤に``中に入れ´´とまた目で合図した
潤はドアをくぐった
すると「ウェルカム真中君!」と声がして
パーンとクラッカーの音がした
潤はびっくりして中を見渡すと、聖司さんがケラケラ笑い、部屋の中にいる男女20人のうち、ただ一人を除いた19人が、聖司と同じように、笑っていた
「歓迎は上手くいった様だな」と三神が満足そうに言った
「真中君!射撃・狙撃部隊にようこそ。アタシは藤川彩宜しく」と潤と同い年位の長い髪の毛をツインテールにした少女が挨拶してくれた
「よっ…宜しくお願い致します」と潤は少し照れながら挨拶した
「キャー、照れてる、照れてる!」と他の女性隊員が声をあげた
「余り、からかうなよ」と聖司の声も聞こえてきた
「くだらない」と一人静かに座っている武下大雅もいる
ぽけっとしている潤に三神が
「おい!大丈夫かね?」と声をかける
「あっ…新しく入隊した、真中潤です。宜しくお願い致します」と潤は挨拶した
ただ一人を除いた皆が拍手をして歓迎した
「今日は顔見せだけだ。部隊の仲間の顔と名前は、訓練中にでも覚えてくれ」と三神が言った
「じゃあ、今日はこれで終了だ」と言って三神が部屋を出て行った
それに付いて、訓練があるのか他の隊員たちも、``宜しくな´´などの声を潤にかけながら部屋の外に出て行った
しかし一人だけ
「三神隊長のお気に入りか…ケツでも掘られたか?それとも、あちらのエース様かな?」と潤を罵った
潤が反論する前に、武下大雅の胸ぐらを聖司が掴んでいた
二人はピクリとも動かず、睨みあっている
先に動いたのは、武下大雅だった
胸ぐらを掴む聖司の腕を払いのけて、鼻でフンとひと笑いしてから、部屋を出て行った
「聖司さん、俺の為にありがとうございます」と聖司に礼を言うと
「なに、俺の事も侮辱されたからな、だからしたまでの事さ!」と聖司は答えた
「武下さんって、前IAP支部で会いましたが、腕は良いけど、嫌な人ですね!」と潤は聖司に言った
「アイツは性格で損してるんだ。腕は良いけど、三神隊長は彼が好きではないみたいなんだ!だから、潤に辛く当たる。でも安心しろ!聖司様がやっつけてやるから」と聖司は笑った
潤もつられて笑った
「じゃ、本部案内始めるか。そろそろ腹も減ってきたしな」と聖司はウィンクした
二人は射撃・狙撃部隊の部屋を出た
「二階は本部大会議室と、各隊長の部屋、
情報部隊の部屋、射撃・狙撃部隊の部屋、スポッター部隊の部屋、接近戦部隊の部屋、武器管理部隊の部屋がある」と聖司が説明した
「二階は、三神隊長の部屋と大会議室と、射撃・狙撃部隊の部屋以外を使う事は滅多にない」と説明を続けた
「そうなんですか。分かりました」と潤は言った
「じゃ、地下三階に行こう」と聖司は言って階段を下りた
潤も後を追う
地下三階に着くと、そこはホテルの様になっていた
部屋が沢山ある
「支部の仮眠室とは違って、本部は仮眠ルームになっている。キーはIDカードを差し込めばドアが開く。中には風呂場が付いている。中は本当にホテルみたいになっている。ツインとシングルがある」と聖司が説明してくれた
その奥にはなにやらお店が並んでいる
「支部と違って、本部は店ごと娯楽室にしてしまったんだ。マン喫にネカフェ、ボーリング、カラオケ、ゲーセンなど、色々な店舗が入っている。また遊びに来よう」と聖司が誘った
「はい」と潤は答えた
「じゃあ、地下一階に食堂があるから、行こう」と聖司が促した
時刻は12時半になっていた
階段を上って地下一階にやって来た
「昼飯食うのが先か、案内かどっにするか?」と聖司が聞いた
「案内でお願します」と潤は答えた
実はオニギリ1つだけでも、潤はまだお腹がすいていなかった
「そうか」と言って聖司は案内を始めた
先ずは射撃場へ行った
ここは、IAP支部より少しスペースが広いだけで、余り変わらなかった
次に狙撃場へ行く
聖司が「びっくりするぞ」と言いながら扉を開けた
扉の中には、1つの街の景色が広がっていた
支部とは比べ物にならない広さだ
「うわースゴい!」と潤は感激の声をあげた
「明日から、ここで訓練出来るんですね。楽しみだなー。でも射撃・狙撃部隊の皆さんは何処に?」と潤は言った
「今頃、皆は昼休みだ。明日からミッチリしごいてやるからな!」と聖司は何か企んでる様な笑みを浮かべた
「その言い方と笑い方、本当に怖いんですけれど…」と潤が聖司から視線をそらせて呟く
「俺も明日の訓練楽しみにしているよ!」と聖司は嬉しそうにしている
どんなしごきが待っているのやらわからないが、潤は聖司が嬉しそうにしているので、まぁ、いいかと潤は思った
「潤、じゃあ、次いくぞ」と言って聖司は狙撃場を出ていく
潤も後から付いて出て行く
次に案内されたのは、道場だった
柔道に空手、合気道、剣道などあらゆる格闘技に利用できる道場だった
聖司の話だと、射撃・狙撃部隊もたまにはここで護身術を学ぶらしい
そして、次が接近戦部隊専用の格闘技場だった
中では、接近戦部隊の訓練が行われており、激しい戦闘が繰り広げられている
壁を蹴りあげて跳んで、相手の背後に回り首もとにナイフを突き付けている隊員に勝利の旗が掲げられている
皆凄い身体能力だ
接近戦部隊の訓練を少し見学してから、潤は聖司に次の場所へ案内してもらった
次は、ATMだった
「外のATMで報酬をおろすと怪しいだろう?だから皆はここを利用しているのさ」と聖司が説明した
「へぇー、便利ですね」と言った時、潤は思い出した
今日振り込まれているから、確認して置いてくれと言われていた事に
「聖司さん。俺ちょっと残高を確認したいんですが良いですか?」と潤は尋ねた
「OK」と聖司は短く返事した
潤はATMにカードを入れて残高を確かめる
昨日言われた通、200万円が振り込まれていた。
潤の元々の残高と合わせて、240万円ある
介護職員をしていた給料の約1年分はある
潤は複雑な気持ちになった
人を殺した報酬の金
介護で老人達を支える事で得た金
どっちもお金に変わりはない
使い道が大切なのかもしれないと潤は考えていた
「おーい、まだか?」と聖司が声をかける
潤はハッとして、聖司の元に戻った
「待たせてすみません」と潤は謝った
「先輩をまた待たせたな!今日は潤のおごりな」と聖司はニヒニヒと笑った
「えぇー。いいですけど…」と潤はモゴモゴと言った
「ウソだよ!今日は俺のおごり。潤の入隊祝いな」と言って聖司はウィンクした
次に案内されたのは、ジムとプールだった
しかもシャワー付きのロッカールームもある
訓練後にここでリフレッシュしてから帰る人が多い様だ
そして、いよいよ食堂に着いた
時刻は午後1時15分になっていた
食堂に着くと、支部の食堂がウソみたいに、賑わっていた
食券制らしく、食券機に着いたら人が沢山並んでいる
聖司と潤もならんだ
聖司はカツ丼に豚汁が付いたセットを選んでいた
潤はしょうが焼き定食を選んだ
もちろん、この食堂もタダだ
食券を選んでからIDカードをかざす
そうすると、券が発行される
その食券を持ってトレーをとって、渡し口に並ぶ
食堂の職員に券を渡すと、あっという間にトレーに料理がのせられた
聖司は先に席に着き、こっちへ来いと手招きしている
潤は聖司の隣の席に座った
食べ始め様としたとき、不意に潤の名前が呼ばれた
その人は、スポッターの中山瞳だった
「昨日は御苦労様」と声をかけられた
「いえ、中山さんの御掛けです」と潤は言った
「もう一人は私の手柄だけど、ターゲットを仕留めたのは君の実力だわ。自信持って」と言って
「じゃあ、またね。君とバディーにまたなれる日を楽しみにしているわ」と言って、自分の席に戻って行った
「潤、自覚ないかもだけど、おまえ女性に人気高いよな!」と聖司がからかった
「からかうのはよして下さい」と潤は反撃した
「ハイハイ!冷めないうちに食べよう」と言って、二人はしばし無言で食事をした
食事を食べ終わった頃、聖司が突然、タワーに上る前に、娯楽室で遊ばうと潤を誘った
「東京タワーはどうするんですか?」と聞くと
「夜のほうが綺麗だから、夕方からにしよう」と聖司は言った
「分かりました。で、娯楽室で何をするんです?」と言うと
「先ずは卓球だ」と聖司は言った
まだ勝敗にこだわっているらしい
「分かりました。トコトンやりましょう」と潤も闘志を燃やした
娯楽室に行き、二人はしばし卓球に没頭した
勝敗は6勝対4勝で潤の勝利だった
聖司は露骨に悔しい顔をした
「次はボーリングで勝負だ」と聖司はどうしても、潤を負かしたいらしい
潤はボーリングする事を快諾し、また二人の勝負が始まった
ボーリングは聖司の勝利だった
聖司は満足した様で、「少し疲れたね」と言って、潤を東京タワー内にあるカフェに誘った
二人はまたエレベーターに乗ってさっきとは反対の手順で、東京タワーのフットタウン一階に着いた
この一階からエレベーターに乗って一気に大展望台2階まで上がった
所要時間は約45秒で着く
夜景を楽しむのは後にして、大展望台の一階に降りて、カフェ・ラ・トゥールと言う展望カフェで、二人は休憩する事にした
カフェに着くと二人は、コーヒーとケーキを頼んだ
このカフェからも、夜景を見る事が出来る
「本部に初めて来た感想は?」と聖司が聞いた
「感想って言ってもまだ顔見せだけですからね。あっ!娯楽室は支部より楽しかったです。聖司さんに勝てたし」と潤が言った
「ボーリングでは俺が勝ったから勝負は引き分けだ!」と聖司は反論した
「負けず嫌いですね。聖司さんは」と潤は少しからかう様に言った
「それは、俺の良い所だ!そうじゃなきゃ、エースと言う看板は背負えないさ。」と聖司は何時もにもまして、真面目な顔をして言った
「エースって大変なんですね」と潤が言うと
「当たり前さ。潤ももっと自覚した方が良いよ。俺の次に腕前良いんだし」と聖司は言った
「まだ詳しく知りませんが、武下さんだって相当な腕前じゃないですか?なんで俺なんでしょう?」と潤は聞いた
「君が素直で、努力家だからさ」と聖司は言った
「そんな理由だけでしょうか?」とまた潤が聞いた
「三神隊長は君の実力と性格に感心しているから、君をお気に入りなんだよ」と明言した
二人は、カフェを出てルックダウンウィンドウに行く事にした
ルックダウンウィンドウは強化ガラスを使用していて、下が覗ける、見える床だ
潤はルックダウンウィンドウの上に立つと、下を覗きこんだ
足のしたは夕方でもハッキリと見る事が出来た
潤は下を歩く人々が蟻の様に思えた
「凄い。高いですね」と潤は感激していた
「俺のお気に入りスポットのうちの1つさ」と聖司が嬉しそうに言った
しかし潤は突然、今朝の夢を思いだし、ルックダウンウィンドウの下に引きずり込まれるんじゃ無いかと、恐怖を覚えた
潤は思わず聖司の腕を掴む
潤の顔は真っ青だった
聖司が「大丈夫か?」と声をかける
「スイマセン。高い所平気何ですけど、ここはちょっと怖くなってしまって」と潤が真っ青な顔のまま答えた
「少し椅子にでも座って、休憩するか?」と聖司が聞く
「大丈夫です」と潤は言った
「そうか、じゃ、二階の大展望台に行くか!」と聖司は提案した
「ええ。いきましょう」と潤は言った
大展望台に行くには、フットタウン一階から二階にエレベーターで上がる
二階に着いたら、そこには綺麗な夜景が広がっていた
「綺麗ですね」と潤は聖司に言うと
「俺の一番のお気に入りだからね」と言った
「ここに一緒に来るのは、潤が初めてさ」と聖司さんが嬉しそうに言った
「他の人と来たこと無いんですか?」と潤が聞くと
「無いよ。潤だから、連れてきた」と聖司は意味ありげに答えた
「何故、俺だけ?」とまた潤が聞くと
「さぁね。俺にも分からない…」と聖司は口ごもった
「潤とは、先輩と後輩ではなく、良い友達だと思っているんだ」と聖司がウィンクした
「俺もです!」と潤も聖司に想いを伝えた
「兄貴みたいに思っています」と更に続けた
「俺も、弟みたいに思っているんだ」と聖司は言った
二人は拳と拳をくっ付け、お互いに微笑みあった
二人はお互いの絆が、かけがえの無い物になっていた
しばらく、二人で夜景を楽しんだ後
タワー大神宮をお参りして、グッズショップにも寄って、
午後8時頃に、駐車場に止めた聖司の車の近くにいた
「送るよ」と言って、聖司は潤を車まで手招きした
「ありがとうございます。宜しくお願いします」と潤はお礼を言って車に乗り込んだ
聖司の車に潤が乗り込むと
「潤の家の住所教えて」と聖司が言った
潤は素直に教える
聖司がカーナビに住所を入力する
「よし!OK。じゃ潤の家に行くよ」と聖司が言った
その時、潤は重要な事を思い出した
「あの…聖司さん?俺を送る事も、隊長から許可が?」と潤は聞いた
「…内緒って事で!」と聖司はニヤリと笑った
「聖司さん、だめですよ。俺達は外では接触したらいけないんですから!」と潤がいさめると
「潤は堅いなぁー、真面目な所が好きだけどさ。もう少しだけ、お兄さんごっこさせてよ」と寂しげな表情をした
潤は悩んだ
潤だってもう少し弟ごっこがしたいのだ
しかし、もしバレてしまえばどちらかがIAPから除隊なんて事になるかも知れない
潤は聖司と会えなくなるなど嫌だった
潤が返事に困っていると、車は勝手に動き出した
「迷うぐらいなら、少しルールから外れてみるのも、勉強になるぜ」と聖司は言った
車は出発してしまった
後戻りは出来ない
だったら、弟ごっこを満喫してみようと潤は腹を決めた
「なんか、聖司さんルールを外れる事に慣れてません?」と潤は聞いた
「おぅ、バレたか。実は俺は射撃・狙撃部隊のアッシー君なんだ。帰りが遅くなったら俺の車に当たり前の様に奴らは乗り込むからな」と聖司が苦笑いした
「それって、隊長にバレて無いんですか?」と潤はいくら常習がバレていないとはいえ気になった
「隊長は知らないと思う。知ってたら今頃大問題だ。あの武下を成り行きで送って行った事もある。部隊の誰かが口を割らない限り大丈夫だ!安心したか?」と聖司が聞く
「分かりました。じゃ、宜しくお願いします」と潤は納得した
聖司は車を走らせながら、煙草をくわえ火を付けた
12月でもう寒いのだが、運転席の窓を聖司が少し空けた
「潤は免許取らないのか?」と聖司が聞いた
「聖司さん見てると車って便利だなとは思いますが、自分には車を運転する事がちょっと怖くて」と答えた
「潤の意気地無し、もう潤なんて知らない!」と聖司は物真似をした
「ネタはハイジですか?全然面白くないですから!てか、俺がハイジ知らなかったら、凄い変な間が空くところでしたよ!」と潤は一気に突っ込んだ
聖司は``知ってるじゃん´´と言ってケタケタ笑った
潤はつられて吹き出してしまった
こんな風に笑い合える事が楽しくて、幸せだと感じた
車の中では、聖司の物真似レパートリーが披露され、潤は突っ込んだり笑ったり大忙しだった
車は潤の家の近くまで来た
聖司がカーナビを見ながら、「どこら辺」と聞いた
「あっ!あの角のコンビニを左に曲がって直ぐのマンションです」と潤は答えた
「OK」と聖司は了解し、コンビニを曲がった
潤のマンションの前で聖司の車は止まった
「じゃ、明日の訓練でまたな!」と聖司が言った
「あっ!あの今週中には、新しいマンションに引っ越すんです」と潤は伝えた
「それは、また送って下さいって事かなぁ?」と聖司はニヤニヤしている
「や、違います…あの、えっと、カーナビに登録してたみたいだから…」と潤は焦ってシドロモドロしながら言った
「冗談だよ」と聖司は潤の焦りぶりに苦笑いしながら言った
「じゃ、またな」と言って聖司の車は潤のマンションを出発した
「ありがとうございます!」と潤は叫んだ
翌朝、潤は午前7時に目覚めた
朝食をとり、出かける準備をする
鞄の中には隊服が入っている
訓練は午前9時から開始だ
潤は素早く用意を済まして家を出た
午前8時半に東京タワーに着いた
しかし、東京タワーは閉まっていた
営業時間は午前9時からだった
潤は一時考えた後、2階の駐車場から直接入れる出入り口の前で聖司を待つ事にした
出入り口に行く途中で聖司の車を見つけた
聖司はもう中に入ってしまっている
潤は途方に暮れた
その時、``真中君´´と女性から声をかけられた
女性の方を見ると、知っている顔だった
「覚えてるかなぁ?アタシは藤川彩。昨日自己紹介したでしょ」と藤川は言った
「あぁ、藤川さん。良かった。あの、俺ここの入り方が分からなくて」と潤は困った顔をした
「あぁそうか。五十嵐さん説明し忘れたのね。じゃ、アタシが案内するから、一緒にいきましょう」と藤川が言った
藤川は2階の駐車場出入り口についている溝にIDカードをスライドさせた
「車じゃなくても、出入り口はここなの。こうやってカードをスライドすれば、ロックは外れるわ」と藤川が説明をした
二人一緒に中に入った
エレベーターの一号基の前で藤川が止まった
「営業してなくても、一号基だけ動くの。中に入ったら、IDカードをまたスライドさせると地下に行けるから」と藤川が説明する
「どうもありがとうございます。ここからなら、分かります。本当にありがとうございます」と潤は藤川に頭を下げた
「五十嵐さんの言う通りね。真中君は真面目で良い子。アタシは真中君と同い年だし、先輩とか関係なく、タメ口でも良いのよ」と藤川が言った
「そんなタメ口なんて無理です」と潤は手をブンブン振る
「あはは、真中君って面白いね」と藤川が笑った
潤もつられて笑った
エレベーターは地下に着いた
二人は黒色の機械のある場所まで来た
先に藤川がカードをかざした
「アタシ先に行くね。真中君のカードと指紋ちゃんと認証するか試した方が良いから」と藤川は言って先に行ってしまった
潤は自分のカードをかざした
壁は左に動き、エレベーターのドアがあらわれた
しかし、先に藤川が行ったので中の箱が戻って来ていない
潤は一旦閉じておく事にした
1分後また機械にカードをかざした
今度は中の箱が戻って来ていた
潤はエレベーターに乗り込んだ
エレベーターは下にドンドン下がっていく
潤は聖司に会ったら、文句を言おうと思っていた
藤川さんがいて良かったと感謝した
エレベーターが本部の入り口に着いた
潤はエレベーターを降りて、指紋認証の機械に人差し指を押し付けた
カチャッと音がしてロックが外れた
潤は本部の入り口を入り、ロッカールームに向かった
射撃・狙撃部隊のロッカールームに入ると数人の男性が着替えていた
潤は「おはようございます。今日から訓練を一緒にさせて頂く、真中 潤です。宜しくお願い致します」と言って深々とお辞儀をして挨拶した
「おぅ!おはよう。昨日顔見せした新人だろう。よろしくな」と一人の男性が言うと他の人も次々と挨拶を返してくれた
潤はホッとして、自分のロッカーを探した
射撃・狙撃部隊のロッカールームには、部屋のまん中にソファがあり、両壁面にロッカーが10個ずつ合計20個置いてある
女性には女性専用のロッカールームがある
射撃・狙撃部隊の内、男性は13人、女性は7人
新しく潤のロッカーがあるなら、14番目のロッカーを見ればよいのだ
潤は自分のネームプレートが書いてあるロッカーを見付けた
急いで隊服に着替える
荷物をロッカーに入れて、ロッカーに付いていた鍵を閉めた
ロッカーの鍵はズボンのベルト通しに付けた、カラビナにはめた
本部での初めての訓練に、潤は気合いを入れた
「よし!」と一人呟いて、狙撃訓練場に向かった
狙撃訓練場に入ると、数名の隊員達があるビルの上に集まっていた
潤はその中に聖司の姿も発見した
隊員達が集まっているビルに潤は歩き出した
階段を上り終えビルの屋上に着いた
真っ先に、誰かと談笑している聖司の元へと向かう
すると、聖司が潤が来た事に気が付いた
聖司は談笑を止めて潤に近付いてくる
談笑していたのは、藤川だった
「潤!ごめんな。すっかり朝の出入り口の事説明するの忘れてた」と言って聖司は手をごめんと合わせた
「今日、藤川さんがいなければ大変だったんですからね!」と潤は怒ってみせた
「悪かった!本当に」と聖司は心底反省している顔をした
しばらくは、ムカムカしていた潤の気持ちは聖司のすまなそうな顔にほだされた
「まぁ、俺も訓練の時に何処から入るのかとか質問しなかったし…お互い様って事で」
と潤は聖司を許した
「良かった。悪かったな」と聖司はまた誤った
「もう良いですよ。それより、今日の訓練はどんな事するんですか?」と潤は質問した
聖司は「ラビットアンドウルフ」と答えた
「なんですか?それ」と聞くと
「訓練始まるまでお楽しみぃー」とはぐらかされた
そろそろ隊員が全員集まり、時刻は9時3分前になっていた
9時ちょうどに三神が狙撃訓練場に現れた
隊員達は皆ピシッと敬礼する
潤も先輩達を真似て敬礼した
「今日行う訓練は、ラビットアンドウルフだ新人もいる事だし、ちょうど良いだろう」と三神隊長が今日の訓練を発表した
「新人の為に説明するが、ラビットアンドウルフは狙撃訓練場を使った、射撃の訓練だ。狙われる側のラビットと狙う側のウルフに分かれて行う。ラビットは、ひたすら逃げる、隠れるをして、ウルフに見つかってはならない。ウルフはラビットを探して見つけ、銃で射撃して、ペイント弾を当てる。ペイント弾にあたったラビットは、そこで終わり。ウルフは次のラビットを探す。ラビットはペイント弾を喰らわない様に、行動する。この訓練は、狙われるターゲットの気持ちを良く理解するための訓練だ。ラビットはどう逃げるのか、ウルフはどう当てるのか。考える内に、ターゲットの心理を学べるはずだ。では、順番にクジを引いてくれ。赤がラビット、青がウルフだ」と三神が一気に説明した
みんな次々にクジを引いていく
潤もクジを引いた
赤が出たのでラビットだ
「ラビットとウルフに分かれてくれ」と三神が言った
潤はラビット側の隊員をザッと見渡す
武下と藤川がいた
後は、女性二人に男性5人の10人がラビット側だった
どうやら聖司はウルフ側の様だ
潤はがっかりしたが、聖司から見つからない様に逃げ回るなんて、とても面白そうだと思った
三神がラビット側に赤の腕章を渡し、ウルフ側に青の腕章を渡した
皆それを腕に付ける
これでみわけをつけるのだ
ウルフ側が一旦目隠しを付ける
三神が「始め!」と叫びラビットアンドウルフが始まった
ラビット達は一斉にちりじりにそれぞれ散って行った
ラビットが逃げてから、15分後にウルフ達が動き出す
潤は走った、ウルフから遠く遠くへと
適当なビルの中に入り、隠れた
しばらくはここでウルフの動きを監察しようと思った
その時背後から「もっと良い場所ありますよ」と声がした
ビックリして振り返ると、赤の腕章をした男性がいた
身長が潤よりかなり低く、少しぽっちゃりした、可愛い顔の隊員だった
「真中君。自己紹介しますね。僕は君よりひとつ年上の19歳。阿部 馨です。宜しくお願いします」と阿部は挨拶した
「僕は身を隠しつつ、安全にウルフの動きを監察出来る場所を知っています。一緒に来ませんか?」と潤は誘われた
潤は選択に悩んだ
一人のが逃げるには身軽だ
だが、その場所は知っておきたい
「仲間がいると、逃げるには足手まといですよね。僕は君に場所を教えたら、違う場所に隠れるから、大丈夫ですよ。僕は沢山知っていますから」と阿部は親切で教えてくれる様だ
潤はとりあえず、阿部に付いていって良い場所ならそこにいて、また自分が良いと思う場所があったら、移動しようと考えた
「わかりました。ありがとうございます。ぜひ場所教えて下さい」と潤は返事をした
阿部はゆっくり歩き始めて、潤を手招きした
潤もまたゆっくり歩き、阿部の後を付いて行った
阿部に付いていって、たどり着いた場所は大きな高いビルだった
二人は階段を上り最上階を目指した
数分後に最上階に着いた
「このビルの最上階だけ、マジックミラーになっているんです。こちらの姿は隠してくれて、相手の動きも監察出来る、良い場所でしょう!」と阿部は説明した
「階段はひとつだけですか?」と潤は質問した
「階段は3つありますよ。ウルフがビルに入って来た時の退路は確保出来ます」と阿部は答えた
「こんな良い場所を俺に教えてくれるなんて、阿部さんは大丈夫なんですか?」と潤は疑問に思った
「僕はラビットアンドウルフではラビットの経験が多いんです。ウルフ側になった時に、ラビットが何処に逃げるのか?と考えた場所にラビットが必ずいるんです。真中君は他の隊員達より経験が足りない。真中君は五十嵐さん以来の狙撃の腕前だとか。真中君がすぐに撃たれたらつまらない。だからこの場所を教えました」と阿部は淡々と言った
「そうですか。俺にハンディがあるからですね。ありがたく使わせて頂きます。阿部さんありがとうございます」と潤は礼を言った
「いいえ。後、今日のラビットの中でラビットが得意なのは僕と藤川さんと河村さんです」と言った
「河村さんが誰か分かりません」と潤が言うと
「河村さんはすぐに分かりますよ。ガタイの良い関西弁の方です。では、僕は違う場所に行きますね。お互いに頑張りましょう」と阿部は言って階段を下りて行った
潤はとりあえず、ビルの窓から下を覗いてみた
ウルフの人影は無い様だ
潤は一安心した
とりあえずこの場所で過ごす事にした
潤は目標を決めた
聖司には絶対見つからない様にしようと
何故なら、悔しがる聖司の顔がみたいからだ
その顔を想像するだけでも、笑えてくる
その時
「報告!ウルフの五十嵐聖司、ラビットの武下大雅を射撃!ラビットは9名」と三神の声が巨大な狙撃場に響いた
どうやらラビットが射撃されると、放送で伝える様だ
潤は聖司が武下を射撃した事を喜んだ
だけど、やはり聖司はこのラビットアンドウルフの経験が沢山あり、一番にラビットを仕留める事が出来たのだろうと思った
逃げきる事に集中しなければいけないと強く思った
潤はもう一度ビルの窓から下を監察した
ウルフはいない
この場所が駄目になった時に、隠れられそうな場所も探した
一番良さそうなのは、学校っぽい建物だった
隠れる場所がいくつもあり、見つかった時の退路も沢山ある
潤は決めた
この場所からウルフの動きを監察して、学校をウルフが探索後に、学校に隠れる事にした
潤は窓の下をずっと見ていた
するとこちらへ歩いてくる青の腕章を付けた女性が見えた
潤のいるビルに入って来るかどうか?と潤は緊張しながら監察した
女性は周りをキョロキョロ見回している
女性は潤がいるビルの3軒隣のビルに入って行った
窓ガラスにはカーテンがひかれているビルだ
どうやら、ビジネスホテルらしい
銃声が聞こえた
ビジネスホテルにラビットがいる様だ
もう一度銃声が聞こえた
一発目は外したらしい
逃げるラビットが、ウルフの女性が入って行った入り口とは別の出口から出てきた
ラビットは男性だった
逃げるラビットと追うウルフの距離は200m程だ
ウルフがまた撃った
今度の弾は外す事なくラビットの背中に当たった
ラビットは逃げるのを止めて、立ち止まった
その場に座り込み、頭を抱えている
たぶん悔しがっているのだろう
近付いて来たウルフがラビットに話しかける
二人はしばらく何やら話し、その後ラビットとウルフは別々に潤の隠れるビルから離れて行った
ウルフの女性がまた周りを見渡している
潤はまた緊張した
次は自分かもしれない
周りを見渡した後、女性は学校の方へ歩いて行った
潤はホッとしたが、次に自分が行こうと思っている場所に女性のウルフが行くので、しばらく監察する事にした
女性は、4つある出入り口の中から西側にある出入り口を選んで学校に入った
校舎の中に入っていく
どうやら教室をひとつづつ調べる様だ
「これは長くなりそうだな…」と潤は呟いた
その時、また三神の声が響いた
「報告!ウルフの横山 澄香がラビットの有松 大志を射撃!ラビットは8名」
先程の女性は横山 澄香で、男性は有松 大志だったのだろう
どうやらラビットが三神に撃たれた事を報告しにいくらしいと潤は思った
そして、もう一度学校の探索をしている横山に視線を向ける
横山はまだ学校にいて、今は体育館へ向かっている
潤の隠れている周辺にはウルフは横山だけだった
横山は長いこと学校の探索を続けている
潤はジッとその様子を伺う
学校から目線を外し、たまに窓の下を確認する
ウルフはいない
潤は探索が早く終わる事を祈った
監察していると、もう一人青い腕章の男性隊員が学校の正面入り口から学校内へ入って行った
すると横山と男性隊員が鉢合わせした
何やら二人は話している
話した後、二人は東の入り口に向かって歩き出す
要約学校内探索を止めるようだ
潤はホッとしたが、次に二人が何処に向かっているのかを確認した
二人は潤がいるビルとは反対方向に向かっている
潤は素早く行動した
いつウルフがこの場所に来るか分からない
ウルフは仲間同士で情報を交換しあえば、有利になる
ラビットとは逆だ
きっと先程の二人も情報を交換し合ったのだろう
学校はしばらく安全に違いないと潤は思った
3つある階段のひとつを選び潤はかけ降りた
下まで来ると、 辺りを見回してから道へ出た
潤は学校までの最短コースの道を走った
最短コースの先には、学校の西口が有る
西口が見えた所で西口に人影が見えた
潤は一旦足を止めた
潤は近くのビルに素早く身を隠す
潤は西口を監察する
西口にいるのはどうやら男性だ
腕章を確認すると赤色だった
なんだラビットかと潤は安心した
潤はビルに身を隠すのを止めて再び西口に向かう
ラビットの男性も潤の存在に気が付いた様だ
男性も潤の腕章を確認すると、潤に手を振った
潤はさらに男性に近付いていく
「お兄ちゃん、あんた新人のー…なんやったっけ?」と男性は潤に話し掛けてきた
「真中 潤ですよ。宜しくお願いします」と潤は言った
「俺は河村 大輔や!よろしくな」と河村は名乗った
阿部さんが言っていた河村さんだろうと潤は思った
ガタイが良くて関西弁
阿部さんの情報にぴったりだ
「河村さん。今からこちらの学校に隠れるんですか?」と潤は聞いた
「そうや。さっきまで横っちょが散々探し回ってたからなぁ、しばらくはここは安全や!」と河村は言った
「横っちょ?とは横山さんの事ですか?」と潤は不思議に思ったので聞いた
「あぁー、スマン、スマン。俺人の事を、勝手にあだ名作って呼ぶ癖があるんや。横山の事やで。あと、さっきのウルフのお兄ちゃんは、クマッチや。熊田 敬吾や!」と河村は教えてくれた
「なんや、真中君もここが安全やと思って隠れに来たんか?」と今度は河村が聞いてきた
「はい。俺あそこのビルの最上階にいたんです」と潤は先程自分がいた場所を指差した
「ほぉーん。初めてなのにええ隠れ場所知ってるやんか」と河村は目を細めた
「俺、阿部さんに教えて頂いたんです」と潤は自分の力ではない事を伝えた
「アベベもよう新人に構うなぁー。アイツは新人に構うのが大好きなんや」と河村は呆れ気味に言った
「俺は阿部さんに感謝してます。お陰で安全な学校に来れましたから。しかも、河村さんのお墨付きの!」と潤は言った
「なるほどなぁ。俺がラビット得意ってアベベに聞いたんか。俺はアベベと違って教えたりせえへんで!」と河村は言った
「分かっています。ここからは、自分の力で勝負しますよ。絶対に聖司さんの悔しがる顔見たいですから」と潤は宣言した
「イガの悔しがる顔かぁ。俺も見てみたいもんやなぁー。イガは見付けるの上手いねん。俺はイガだけには見つかってしまうんや」と河村は悔しそうに言った
「今まで、イガのいない時だけ見つからへんかったんや」と河村は話した
「そうなんですか。聖司さんそんなに凄いんですね」と潤が言っていると
「報告!ウルフの五十嵐聖司がラビットの藤川彩を射撃!ラビットは後、7人」と三神の声が響いた
潤は阿部がラビット得意だと言っていた藤川を射撃した聖司に身震いがした
「こんな所でウカウカしてる場合とちゃうな。ほな俺は行くわ!」と言って河村は校舎の方へ歩いて行った
潤は何処に隠れるのが良いか入り口で考えていた
入り口からは校舎に入って行く河村の姿が見えた
河村が行くぐらいなのでやはり校舎内が安全なんだろうか?と潤は思った
しかし、ウルフが数人来たら、校舎内は逃げ場があまり無い
俺はとりあえず、学校内をウロツキ隠れる場所を探す事にした
西口から学校に入り、少し歩いて校庭に来た
ざっと見渡すと、右側に校舎
正面に体育館とプールと何やら小屋がある
左側にも2階建ての小屋がいくつも並んでいる
潤はまず左側の小屋の正体を見に行く事にした
小屋へ近づくにつれて、段々潤は分かってきた
それぞれの小屋にはネームプレートがある
野球、サッカー、陸上と運動部の名前が書いてある
運動部の部室が並んでいるのだ
南にある正門に一番近い小屋はテニス部の部室だ
潤はとりあえず中に入ってみる
六畳ぐらいのスペースの部室には何も置いて無かった
良く考えれば、狙撃訓練場で部室の中まで再現する必要はない
潤は部室の一階を出て、外階段を上がって部室の二階まで行ってみた
やはり二階にも何も置いて無い
一階は付いていなかったが、二階には窓があった
窓から外を覗くと、西口から校庭に来る道と正門と校舎と体育館とプールとプール近くの小屋など見渡す事が出来た
窓の下には男が身を隠す程のスペースがあった
正門も近く退路として使えるし、学校全体を見渡せて、身を隠す事も出来る
潤はこの場所でしばらく隠れる事にした
正門からウルフが来て、部室に来たとしても二階の窓から下に飛び降りて逃げる事が出来る
潤の身体能力なら可能だ
潤は窓の下にしゃがみこみ、時折顔を上げて辺りを確認した
校舎の方をジッと眺めると、河村が隠れ場所を探している姿が見えた
校舎に隠れるには数人のウルフに囲まれても、見付からない完璧な場所が必要だ
不用意に教室内のなにかに隠れたりしたら袋のネズミになりかねない
河村は何処に隠れるのだろう?と潤は監察していた
どうやら、一階にある職員室に隠れる様だ
職員室は校舎側にも、校庭側にも出入り口がある様だ
河村さんも良い場所を見付けたなっと潤は思った
なんだか、訓練なのにかくれんぼみたいだと潤は懐かしくなった
子供の頃良く児童養護施設の皆と遊んだ記憶がよみがえる
潤はかくれんぼが上手かった
最初のジャンケンで負けないかぎり鬼に見付かる事は無かった
潤が懐かしんでいるとまた放送が入った
「報告!ウルフの瓜生里美がラビットの鈴木 久実子を射撃!ラビットは6名」と三神の声が告げた
更に「ラビットアンドウルフは後30分後に終了とする。皆の健闘を祈る」と三神は続けた
後30分逃げ切れば、潤は目標を達成する
放送があってから10分程経過し
学校にウルフの姿は見当たらない
潤はずっとこの場所にいるか、場所を変えるか考えていた
後20分で終了だから、ウルフは相当焦っているだろうと潤は考えた
まだラビットは6名いる
10人のウルフが潤達を探している
きっと手分けして探しているはずだ
多くても3人ぐらいのウルフがまた学校に来るかもしれない
河村も学校に潜んでいるし、3人ぐらいのウルフなら逃げきれるかもしれないと潤は思った
そんな事を潤が思っていると、西側の出入り口から校庭に聖司が現れた
潤は悲鳴をあげそうになった
聖司が来てしまった恐怖からだ
潤は身を隠しながら聖司を監察する
残り時間は後10分
まず、校舎の方へ行く様だ
河村が危ない
聖司が一階の入り口から中に入り、教室をひとつづつ調べる
聖司が職員室の二つ前の教室に入った時に河村が校庭側の職員室出入り口から校庭に逃げた
それに素早く気付いた聖司は、職員室へ行き、校庭側の出入り口から校庭に出て、河村を追う
河村は潤が隠れている部室の方へ逃げて来る
正門を目指しているのだろう
二人の距離は500m程離れている
河村がテニス部の部室を横切り、正門に近づいた瞬間
聖司の撃った弾が河村をかすめた
河村は正門から逃げる事が出来なかった
校庭を迷走する河村
河村は必死に逃げている
しかし、聖司の足は速く段々差が縮まっていく
二人の距離が300m程になり聖司はドンドン撃っていく
ついに河村が射撃された
聖司がガッツポーズしている
河村はその場に倒れ込み大きく呼吸をしている
ガッツポーズをした後、聖司はすぐにまた歩き出した
聖司は潤のいる部室を目指している
潤は妙に落ち着いた気分だった
聖司が外階段を上り二階のドアを開けたら潤は地上に飛び降りようと思っていた
その時「残り1分!59、58、57、」と三神がカウントダウンを始めた
聖司が外階段を上がって来る
潤は窓をそっと開けた
右足をサッシに掛けて準備万端
ドアが開いたと同時に潤は地上に向かってジャンプして、着地した
後ろを振り向かずに、正門へと走る
聖司が部室の二階から撃ってきたが、弾は潤に当たらなかった
潤は正門を出てから真っ直ぐに走った
聖司は潤と同じく二階から地上に向かってジャンプして着地した
すぐに潤を追いかける聖司
潤と聖司の距離は600m程離れている
三神のカウントダウンは続いている
残り20秒
潤は逃げ切るために全速力で走る
聖司は獲物を狙う猛獣の様な眼で潤を追ってくる
聖司が再び発砲したが、弾は潤の足をかすめただけだ
聖司がやけっぱちとばかりに発砲してくるが
潤には当たらない
距離がありすぎて狙いが定まらない様だ
潤はこれなら逃げきれると確信した
三神のカウントダウンが続く
「10、9、8、7」
もうすぐだ、もうすぐで!と潤が思っていると
聖司のスピードが急にあがり、二人の距離が縮まった
潤は全速力なので、これ以上は速く走れない
聖司の姿が近づいてくる
その姿はチーターの様だ
「6、5、4、3、」と後少しだ
急に聖司が止まった
どうやら、闇雲に射撃するのを止めて、狙いを付けている様だ
聖司が引き金を引く
発砲された弾は潤の背中に当たった
しかし、それは三神のカウントダウンが終わった後だった
聖司はその場にへたりこみ、潤は逃げきった喜びをその場でジャンプしながらガッツポーズをして表した
潤は地べたにへたりこんでうつむいている聖司に近づいた
悔しがる顔を拝みに行く為だ
しかし、聖司は悔しい顔などしていなかった
むしろ、うつむいている顔を良く見ると口元は微笑んでいた
潤が近づいて来るのに聖司は気付いた
聖司が顔をあげると、清々しい表情で笑っていた
「潤!やっぱり潤は凄い。負けず嫌いの俺がこんなにも負けを認められるのは初めてだ!」と聖司が言いながら立ち上がった
潤は聖司が悔しがる顔が見たかったのに予想外の聖司の反応に困惑した
卓球の時はあんなに悔しがっていたのに…
立ち上がった聖司は潤に近付き、右手を上げた
どうやらハイタッチを求めている様だ
潤も左手を上げた
二人はハイタッチをして、聖司が潤の手を握りしめた
「今日は完敗だ。でも、次に狙う時は絶対に外さないよ!」と言ってやはり負けず嫌いぶりを発揮した
「聖司さんの悔しがる顔が見たかったのに、
笑顔でハイタッチなんて予想外です。俺も今度こそ、聖司さんに悔しい顔させて見せます」と潤は宣言した
「おう!何時でもかかって来い。でも俺がラビット側になったら潤が見付けるのは不可能だな」と聖司は言った
やはり相当な負けず嫌いである
「絶対見つけ出しますよ」と潤も段々負けず嫌いが移って来たようだ
「この野郎。生意気!」と言いながら聖司は潤の頭をこずいた
潤はフハハと笑いながらハイタッチしている手を離した
聖司もハハハと笑っていた
「隊員全員、最初のビルの屋上に集まれ」と三神の命令が放送された
潤と聖司は最初に集合したビルに一緒に向かった
ビルに全員が集合すると三神が
「今日の結果はラビット5人射撃と言う結果だ。10人の内の半分だ。少し残念な結果だ。実際の現場では、全員射撃しなければならない。今日はラビットが優秀だったみたいだ。これからも、訓練に励んでくれ!」と告げた
「はい!」と言って全員が敬礼した
「次の訓練は道場で、護身術の訓練だ。1時間の昼休憩後に開始する。道場に集まってくれ」と三神が言って休憩時間になった
潤と聖司は食堂に行く前に、射撃・狙撃部隊のロッカールームに寄った
潤が食券を買うのに必要なIDカードを携帯するのを忘れたからだ
「潤って完璧に見えてたまにおっちょこちょいだよな」と聖司が言った
「聖司さんだっておっちょこちょいじゃないですか!俺に教えるの忘れたくせに」と潤は拗ねた
聖司はウハハと笑い「そうだった」と言って少し焦った
「まだ怒ってるの?」と聖司が聞いてきた
「怒ってませんよ」と潤は答えた
「俺達って似た者同士何ですかね。だから気が合うのかな?」と潤は言った
「あーそうかもな」と聖司は短く返事をした
狙撃訓練場からロッカールームに二人は着いた
ロッカールームには3人の隊員がいた
二人がロッカールームに入ると全員が潤の方を向いた
「真中君。君凄いやん!」と言って来たのは河村だった
「五十嵐君から逃げ延びるなんて予想外でした」と言ったのは阿部だった
「真中君、聖司君に捕まらないなんて凄いね!俺は有松大志だ。これからの訓練も宜しくな」と挨拶したのは、横山澄香に捕まったラビットの人だった
「有松さん。こちらこそ、宜しくお願い致します」と潤は頭を下げた
「ハーイ。今日の潤を讃える会は終了。潤、速くカード持って食堂行くよ」と聖司が割って入ってきた
少し不機嫌な顔をしている
笑っていたけど、やはり悔しかったのだろうか?と潤は思った
潤は自分のロッカーに行きIDカードを取り出して、直ぐに聖司が待つ入り口に戻った
「じゃあな」とだけ聖司が3人に言って二人は食堂へ向かった
「やっぱり、悔しかったですか?俺を射撃出来なかった事」と潤はストレートに聞いてみた
「いや。あの時に言った通りの気持ちだよ。でもなんだか、他の人達に言われるのは腹が立つ」と聖司は眼を細めて不機嫌な顔をした
「エースのプライドですか?」と潤が問いかける
「まぁ、そんな所だろうな。自分で負けは認められるけど、人に言われるとエースの自分のプライドがこうモヤモヤと…」と聖司は眉間にシワをよせた
「ほんっと負けず嫌いですね」と潤が少し呆れて言った
「前にも言ったけど、それはー」といいかけた聖司に被せて
「俺の良いところ。でしょ!」と潤は言った
「分かってるなら、呆れないの」と聖司は言った
「ハーイ」と潤は良い子な返事をした
二人は食堂に着いた
二人とも無事に食券を買い、食事ののったトレーを持って席に着いた
いただきますと二人は言って昼食を食べ初めた
今日は二人一緒のメニューで、豚骨ラーメンとチャーハンのセットにした
二人は食べる時無口になる
食事に集中してしまうからだ
食べながら会話を楽しむ女性隊員達が二人には器用に見える
そのぶん二人には狙撃の才能があるのだが
二人が夢中で食事をしていると、``潤ちゃん´´と呼ぶ男性の声が聞こえた
潤は一旦箸を置き辺りを見回す
聖司も気付き箸を置いた
すると、髪の毛が明るい茶色で、ウルフカットされた髪型の席の離れた場所にいる男が潤に大きく手を振っている
潤は男性にまったく心当たりがなかった
手を振っても何の反応もない潤に対して男性は潤の席に近づいてきた
聖司が「知り合いか?」と聞くが、潤は良く分からなかった
男性が二人の席までやってきた
「潤ちゃんだよね?」と男性は聞いてきた
「はい。俺は真中潤ですが、失礼ですが…あなたは?」と潤は聞き返した
「やっぱ、分からないか。俺だよ!田中翔平。施設で一緒だったろう!」と言った
潤はビックリした
まさかIAPで昔馴染みに再会出来るなんて
「翔ちゃん!」と潤は名前を呼んだ
昔の記憶が一気に溢れ出す
潤と田中翔平は先生に開けてはいけないと言われていたあの扉を開けて、一緒に怒られた仲なのだ
「翔ちゃんひさしぶり。児童養護施設以来だね!」と潤は言った
「ひさしぶりだな。俺もまさかここで潤ちゃんと会えるなんて思っても見なかったよ」と田中翔平もビックリしている様だ
空気を読んだ聖司が席を移動して、田中にここに座れと眼で合図をした
聖司が座っていた所に田中が座る
「潤ちゃんは何部隊なの?因みに俺はスポッター部隊。見掛けないから、違う部隊だよね?」と田中が聞いた
「翔ちゃんはスポッターなんだ!じゃあ一緒に任務する時あるかもね」と潤が言うと
「じゃあ潤ちゃんは射撃・狙撃部隊なんだ。うん。一緒の任務あるかもね」と田中はうなずいている
「積もる話もあるけど、昼休憩あと少しだから翔ちゃんの携帯番号教えてよ」と潤が言うと、潤の周りの隊員達が一斉に潤と田中を見た
潤はチクチクささる視線を不思議に思った
田中も固まっている
一人だけ聖司が冷静に言った
「潤、いくらIAPでも隊員同士の携帯電話での接触は禁じられている」
「じゃあ何故聖司さんと俺は良いのですか?」と潤は疑問に思った
「俺は潤の指導者だったろう。三神隊長の許可があったからさ」と聖司が言った
「潤ちゃんスマナイな。また訓練休みで、自主連の時なんかに会えたらゆっくり話そうぜ!じゃあな」と言って、田中は席を譲ってくれた聖司に礼を言ってから、潤の席から去って行った
「俺、今みたいな事の為にIAP入りたかったのかも?」と潤は満足そうな顔をした
「動機が不純過ぎるぞ潤」と聖司がジロッと睨んだ
「だって、不純かも知れないけど、嬉しいじゃあないですか!」と潤は拗ねた
「聖司さんは居ないんですか?昔馴染み?」と潤は聞いた
「聞いて驚け。俺は武下大雅と施設が一緒だった」と聖司は言った
「えぇー!武下さんとですか?」と潤は本当に驚いた
射撃・狙撃部隊のなかで聖司を呼び捨てにするのは武下だけだ
潤は武下がたんにバカにしているだけだと思っていたが実はそうではなかったのだ
子供の頃を良く知った仲だったのだ
「潤、驚きすぎ」と聖司が冷静に言った
「イヤー、スイマセン。昔馴染みだから武下さんは聖司さんを呼び捨てなんですね」と潤は言った
「いや。子供の頃施設が一緒だったってだけで、呼び捨てするほどの仲ではなかったぞ。だから、俺は武下に相当嫌われてるって事さ」と聖司は言った
「武下さんって子供の頃からあんな感じだったんですか?」と潤が質問した
「いやだから良く覚えてないんだよ。向こうから良く突っかかってくるんだけど、突っかかってくる理由が俺にはさっぱりさ」と聖司は答えた
「聖司さんを妬んでるだけですよ!今日聖司さんがラビットの武下さんを一番に仕留めた時、心がスッとしました」と潤は今日の訓練を思い出して言った
「今日は武下に潤と俺と三神隊長をバカにされたからな!奴がラビットで俺がウルフになった時、最初の獲物は武下だと決めたのさ」と聖司はニヤリと笑って言った
「さすが聖司さんですよ。ちゃんと仕留めちゃうんですから」と潤は聖司を絶賛した
「そんなに褒めてもなにもないぞ」と聖司は少しぶっきらぼうに照れ隠しで言った
二人が話しにふけっていると、食堂に沢山いた人達が周りから居なくなっている事に二人は気付いた
時刻を確認すると、道場での訓練まで後10分になっていた
二人は既に済ませていた食事のトレーを慌てて返してから道場へと向かった
二人はなんとか訓練時間に間に合った
中に入ると三神ともう一人中年で、頭がボーズで、ガッチリとした体型の男がいた
二人は横2列に綺麗に並んでいる隊員達の列に並んだ
「少し早いが全員揃ったので訓練を初める」と三神が訓練開始の声をあげた
「新人がいるので説明するが、護身術の訓練は私ではなく、こちらの格闘術に詳しい真田勝先生に行って頂く」と三神がもう一人の男を紹介した
「接近戦部隊の講師も務めている、真田勝だ。普段は接近戦部隊に格闘術を教えているが、射撃・狙撃部隊に教えるのは、護身術だ」と言った
「新人がいるんだったな。誰だ?」と真田は聞いた
潤は直ぐに手を挙げて「本日より本部に配属された、真中潤です」と答えた
「では、真中潤。格闘術と護身術の違いが分かるか?」と真田が潤に聞いた
潤にはさっぱり分からなかった
「分かりません」と潤は正直に言った
「格闘術は相手を倒す事を目的としている。しかし護身術は自分の身を守る為の物だ」と真田は言った
「君たちは、接近戦部隊ではない。射撃・狙撃部隊だ。しかし不意に敵に襲われる危険はある。敵から自分の身を守らなければならない。だか、倒す必要はない。相手から身を守り、敵の隙をついて逃げられれば良い」と真田は説明を初めた
「では、どうやったら敵の隙をつけるのかを君たちには学んで貰う。新人もいるので、今日は初歩的な説明もしつつ訓練をしていく。先ず敵の隙をついて逃げるには、向かってくる敵の攻撃をかわす必要がある。その次に敵をひるませる為に攻撃をして、逃げるチャンスをつくらねばならない。攻撃する手段はいくつかある。手、足、ひじ、ひざ、頭突きで敵に打撃を行う。敵が動けない様に、関節を締め付け、はずれるように力を加える。敵を地面に投げたり、固いものの上に倒したりする。首や喉を絞めて空気や血液を取り込めない様にする。良くTVや映画では派手なアクションでハイキックなどしたりしているが、実際の現場ではあまり役に立たない。護身術は至ってシンプルだ」と真田は説明を続ける
「まずは、前方から掴みかかってくる敵の手を、掴みかかってくる腕の外側に身体を移動して、手でガードしてから、敵の顎に掌を上向きにして一撃を加える顎へのジャブを訓練して貰う。これは非常に効果的な一撃で、敵を瞬時にノックアウトが可能だ。今から見本を見せる」と真田は言って三神と向かい合わせになった
三神が右腕で真田の左肩に掴みかかろうとすると、真田は三神の右腕より外側に身体を移動して、三神の右腕を内側にかわして、左手で三神の右腕を掴み、真田の右腕で三神の顎に掌を上に向けて一撃を加えた
「訓練では、多少力を加減しなければならないが、本当に危険が迫った時は、全力だ。訓練して習慣付ければとっさの時に自然と今の様に動く事が出来る。では、二人一組になって、一人15分ずつで掴む側と、かわす側に別れて今から30分この訓練をする。訓練開始だ」と真田が言うと、横2列に別れていた隊員達が、向かい合わせになり訓練が始まった
潤の前にいて振り返ったのは、ショートカットで潤くらい背の高い女性隊員だった
「初めまして。私は佐藤藍といいます。真中君宜しくね」と佐藤は自己紹介した
「真中潤です。こちらこそお願い致します」と潤は慌てて挨拶した
「どちらがどっち役にする?」と佐藤は聞いた
「あ…先輩のお手本見たいので、俺が最初掴みかかろうとする側で良いですか?」と潤は聞き返した
「良いわよ。じゃ始めましょう」と言って佐藤はボクシングのガードの様な体勢をした
潤は佐藤の左肩に掴みかかろうとする
しかし素早く腕をはらわれ、顎へジャブを喰らった
掌による打撃の衝撃と息苦しさがある
数秒後、潤の顎から手がはずされた
潤は少し咳き込みながら空気を吸った
「あら、ごめん。手加減わすれてたわ」と佐藤がすまなそうな顔をした
「ぎにしないでぐださい」と潤はむせながら答えた
佐藤はまたボクシングのガード体勢をとった
再び潤は掴みかかる
またもや綺麗にかわされ、潤は顎に手加減有りのジャブを喰らった
手加減有りでもやはり痛い
潤が「ウッ」と呻くと佐藤は
「またやっちゃった?私怪力だから手加減苦手なのよ。ごめんね」と言いながら佐藤は潤の顎から手を離した
「大丈夫。平気です」と潤は強がりを言った
「じゃあ、私はこの訓練を前から受けてるから今回は真中君が基礎をたっぷり学べる様に、もうチェンジしちゃいましょう!」と佐藤が提案した
「いやでも真田講師が15分づつって…」と潤が言うと
「あくまでも目安としてよ。きっちり守る事はないわ。習得した私より今から訓練して習得していく真中君に時間を沢山使ったほうが良いわ」そう言うと佐藤は潤にボクシングのガード体勢を教えてくれた
「さぁ、行くわよ!」と言って佐藤が潤の胸ぐらに掴みかかろうとしてきた
掴みかかろうとする手が素早くて、潤は手で佐藤の右腕をはらいのける事が出来なくて佐藤に胸ぐらを掴まれてしまった
「残念ね。訓練有るのみよ!」と佐藤が励ました
「ハイ。そうですね」と潤は言ってまたガードの体勢をとった
ずっとこの訓練を続けていると
潤は佐藤の掴みかかり方に慣れてきて
やっと佐藤の右腕をそらす事が出来た
しかしその次が顎へのジャブである
ガードされる前に素早く顎へ打撃を加える
潤は顎を手加減して打撃した
「上手いじゃない。真中君。これは三神隊長が目をかけるはずだわ」と佐藤は感心した
「三神隊長は俺を買いかぶり過ぎなんですよ。俺、聖司さんのが凄いと思うし」と潤は謙遜した
「あら、貴方のみ込み早いしかなり優秀よ」と佐藤がまた潤を褒めた
「それ以上言わないで下さい」と潤は顔を赤らめた
「真中君は照れ屋さんなのね」と佐藤はクスクス笑った
「じゃあ、訓練続けましょう」と佐藤が言った
「ハイ」と返事をして、潤はガードの体勢をとった
佐藤の右腕が潤の胸ぐらを掴もうとする
潤は右腕で綺麗にかわし、左手で佐藤の右腕を掴んだ
そして素早く右手で佐藤の顎にジャブをした
その一連の動作は無駄がなく、素早く綺麗だった
「真中君。今のパーフェクトよ」と佐藤が言った
「ありがとうございます」と潤は返事をした
「30分!訓練やめ」と真田が言った
隊員は向かい合わせから全員、真田の方を向いた
「では、次の訓練へ入る。その前に、前方から襲ってくる敵に対して、有効な攻撃ターゲットを簡単に説明する。敵が男なら股間を狙うのが一番だ。蹴りをお見舞いしてやれ。他には、頭部では目、鼻、顎、耳、首。胴体では、鎖骨、胸骨、みぞおち等だ。そして腕、肩とひじの関節、手首、指、脚は、ひざ、むこうずね、足首、足だ。それぞれへの攻撃の仕方は追々訓練していく。次は、前方から襲ってくる敵に掴まれ組み合いになった時に、柔道の技、大外刈りを使って相手を倒す訓練をして貰う。また手本を見せる」と真田は言った
三神が真田に掴みかかり二人は組み合いになった
真田が前方に動いて、三神のバランスを崩し、真田が三神の上体を後ろに押す
真田が右足を三神の足の後ろにまわし、三神の足を下からすくって、三神の身体を後ろに押して強く倒した
「では、さっきと同じ様に訓練開始だ。倒される側は受け身をとる様に」と真田が言った
再び佐藤が潤の方を振り返った
「真中君。貴方受け身出来る?」と聞いた
「受け身出来ますよ。中学校で習いました」と潤は答えた
「なら良いわ。順番はさっきと同じで良いよね」と佐藤が言った
潤は``ハイ´´と答えて、大外刈りの訓練が始まった
佐藤と潤が組み合いになったとたん、潤の身体は倒され、何とか受け身をとったが気付いたら道場の天上を見上げていた
「真中君。オーイ」と佐藤が潤に呼び掛ける
潤はアッと言う間に倒され、呆然としていた
「あっ、す、スイマセン」と謝り立ち上がった
「私は元々柔道をしていたから、このくらいなんて事ないの。じゃ、私が教えるから真中君の訓練しましょうね」と佐藤は微笑んだ
「あっ、宜しくお願いします」と潤も微笑み返した
先ずは佐藤がスローモーションの様にゆっくり動きながら、大外刈のかけ方を説明した
そして、潤もスローモーションの様に動きながら大外刈の手順を覚えた
「手順は分かったかしら?」と佐藤が聞いた
「ハイ。じゃあ、組み手お願いします」と潤は言った
二人は組み合いの体勢になった
潤は教えられた手順で佐藤に大外刈を仕掛けた
しかし、佐藤は倒れない
「真中君。最初に自分が前方に動いて、相手のバランスを崩して、上体を後ろに押して。その後に踏み出して、足を私の後ろにまわして真中君は前方に動き続けて。足をはらって、私の上体を後方下向きに押して」と佐藤から細かい指導がはいる
潤は言われた事を頭に叩き込み、繰返し呟く
また佐藤と組み合いになり、潤はゆっくりだが、佐藤の言葉通りに技をかけてみる
今度は佐藤のバランスを上手く崩して倒す事が出来た
「やっぱり貴方のみ込み早いわ」と佐藤が言った
「でも今の速度で技かけようとしたら、相手の反撃喰らっちゃいますよね」と潤は冷静に言った
「そうだわね。少しずつ速度を上げて技をかけれる様に訓練しましょう」と佐藤も冷静に言った
二人は真剣に訓練にのめり込んでいく
やはり速度はゆっくりだが潤は手順をすっかり覚え佐藤をどんどん倒す
最初よりはスピードが出てきた
「よし!訓練やめ」と真田が言った
「真中君。貴方筋が良いわよ」と言いながら佐藤が前を向いた
「今日の護身術は以上だ」と真田が告げた
「真田講師は忙しいのでね。今日はこれまでだ」と三神が話した
「では、射撃・狙撃部隊の今日の訓練も終わりとする。皆それぞれ自主訓練や任務の為に身体を休める等してくれ。ご苦労だった」と三神が言った
隊員全員が``お疲れ様でした´´と敬礼をした
「ねぇ、真中君」と潤は佐藤に話しかけられた
「ハイ。なんですか?」と潤は聞いた
「自主訓練を一緒にやっていかない?柔道の技教えるわよ」と訓練のお誘いだった
潤は迷った
確かに柔道の経験者から指導して貰えるのは魅力的だが、聖司からお誘いがあるかもしれない
潤は聖司の方をチラッと見た
聖司は他の隊員とタオルで汗を拭きながら談笑中だった
不意に聖司と目が合った
聖司が潤の視線に気付き、潤に話しかけた
「どうした?」と少し離れた場所から聖司が潤に声をかけた
「あの、俺佐藤さんと自主訓練していきます」と潤が話すと
「おう。そうか。俺はコイツらとジムで汗流して くるよ」と談笑していたメンバーを指さしながら聖司は答えた
「そうですか。じゃあ、お疲れ様でした」と潤が言うと
「お疲れ様~」と聖司は言って、数人の隊員と道場を出て行った
「と言うわけで、佐藤さん宜しくお願い致します」と潤は佐藤に頭を下げた
「ハイ!宜しく」と佐藤はクスクス笑って答えた
「えっ!何で笑ってるんですか?」と潤が聞くと
「だって貴方と五十嵐君って犬と飼い主みたいなんだもの。貴方に耳とシッポが見えたわ」と佐藤はからかいながら言った
「うっ…犬ですか?聖司さんの事は兄の様に思っていますが…」と潤は犬と飼い主を否定した
「ご主人様の許可も頂いたし、訓練始めましょうか」と佐藤はなおもからかいながら言った
「ご主人様って…からかわないで下さいよ」と潤は顔を赤らめた
「ごめん、ごめん。貴方からかうと面白いからつい。ごめん。じゃあ、真剣に訓練始めましょう」と佐藤が謝りながら言った
「ハイ!宜しくお願いします」と潤は言った
先ずはさっきの大外刈を極める為に、二人で何度も組み合った
何回も何回も、佐藤が倒れる
潤の技をかけるスピードはかなり速くなった
天上を見上げたまま「やっぱり、筋が良い人に教えるのは楽しいわ」と佐藤はニコニコしている
「それより、何回も倒れて大丈夫ですか?少し休憩入れますか?」と潤は佐藤を心配して聞いた
「そうね。少し休憩しましょう」と佐藤は言った
二人ともタオルで汗を拭い、スポーツドリンクで水分補給した
その後道場の隅の方に、二人は座った
「そういえば、貴方自分で志願したそうね。因みに私もなのよ」と佐藤は明かした
「佐藤さんも自ら志願を!?」と潤は驚きながら言った
「ええ。私柔道やっていたって話したでしょう。でも、私の腕前ではオリンピックは程遠かったの。いつも選考漏れ。もうすぐ、18歳で適職受けなきゃって時期だったわ。そんな時に、酔っぱらいの男性に絡まれてる女の子がいたの。男性に柔道の技をかけて女の子を助けてあげたの。その時、これだって思ったの。だから警察を目指したかったけど、私達、職業を選べないでしょ。だから、IAPに志願したの」と佐藤は自分の事を語った
「貴方は?」と聞き返された
「俺は、こうして中絶児の仲間と昔の様に話して見たかったんです。一般人の友達や彼女と居ても、何だか心に穴が空いてるみたいで…前職は介護の仕事だったんですが、話して楽しいはずなのに、何処かポッカリ穴が空いてるみたいで辛かったんです」と潤は話した
「なるほどね。それで五十嵐君になついているのね」と今度はからかいではないトーンで佐藤は言った
「ハイ。久しぶりに初めて会った仲間だったので。楽しくて。本当に兄の様です」と潤は言った
「心の穴。埋まった?」と佐藤は聞いてきた
「何だか今は満足しています。こうして皆さんのおかげさまで」と潤は微笑みながら言った
「よし!十分休んだし、次の技教えるわよ」と佐藤が立ち上がり言った
潤も立ち上がり返事をした
次の訓練は背負い投げだった
二人が休憩も入れつつ訓練に夢中になっていると
訓練が終わった午後2時半から午後5時まで2時間半が過ぎていた
「そろそろ訓練切り上げましょう」と佐藤が提案した
「そうですね」と潤は返事をした
「今日は訓練して頂いてありがとうございました」と潤は丁寧にお礼を言った
「私が誘ったんだから、かしこまらなくて良いのよ」と佐藤は微笑んだ
「明日は土曜日だから訓練は休みね。また月曜日に会いましょう。今日は楽しかったわ。ありがとう」と佐藤は言った
「明日訓練ないんですか!?」と潤は驚いた
「貴方知らないの?IAPは土日休みよ。上の観光スポットに人が沢山来るってのも、理由の一つだけど。だだし、訓練がって話よ。任務中なら土日なんて関係ないわ。土日でも本部と支部で自主訓練は出来るわよ」と佐藤が教えてくれた
「そうなんですか。三神隊長も聖司さんも何も言って無かったから、休みがあるなんて知りませんでした」と潤は言った
「じゃあ、五十嵐君のミスね!本部案内人が教えるはずだから」と佐藤は言った
「聖司さん忘れすぎだよ」と潤はタメ息をついた
「五十嵐君、狙撃の腕前は見事だけど、任務や訓練以外の時にたまにミスをするのよね」と佐藤が苦笑いしていた
「誰の話しかな?」と入り口から声がした
「聖司さん!」と潤は声の主を呼んだ
「俺もさっきジムで訓練終わった所。潤、一緒に娯楽室いこうぜ」と聖司からのお誘いだった
「その前に聖司さん。休みとかちゃんと教えて下さいよ」と潤は文句を言った
「悪かったよ。ごめん。機嫌直して」と聖司が困った顔をしている
「今日二回目ですからね。もう忘れてる事ないですか?」と潤は心配になって聞いた
「ごめん。もう一つ有った。引っ越し先が決まったから、日曜日に三神隊長が潤に連絡するって、伝言」と聖司が申し訳無さそうに言った
「その伝言はいつ聞いたんですか?」と潤はなおも責める
「えっと、昨日の朝」と聖司が笑顔でごまかしながら言った
「で、今まで忘れていたと?」と潤は聖司を睨む
「ごめんなさい…」と聖司が頭を下げた
「あら、今度は五十嵐君に耳とシッポが見えたわ」と二人のやり取りを見ていた佐藤が笑っている
「耳とシッポ?」と聖司はなんの事やらと不思議そうに言った
潤は慌てて、「佐藤さん!」と抗議の言葉をあげた
「じゃあ、飼い主さんが迎えにきたし、私は先に帰るわね」とまたからかいながら、佐藤は道場を``お疲れ様´´と言いながら出て行った
「飼い主?」と聖司がまだ思案している様だ
「あー、佐藤さんの話は気にしないで!娯楽室行きましょう」と潤は話題を変えた
「おお。そうだな。娯楽室の前に仮眠ルームでシャワー浴びてきて良いか?」と聖司が聞いた
「俺もシャワー浴びます」と潤は答えた
「一緒にか?」と聖司がおどけて聞いてきた
「なわけないでしょう!」と潤は突っ込んだ
「なんだ別々か」と聖司はイタズラっぽく笑った
「当たり前です」と潤もつられて笑った
二人はまず、ロッカールームに鞄を取りに行ってから、3階の仮眠ルームへと向かった
二人は3階の仮眠ルームについた
潤は聖司が一人部屋か、二人部屋に行くのかどっちだろう?と考えていた
「潤。お前は考えている事が顔に出やすい。一人部屋も二人部屋もシャワーは一つだ。さて、どちらに行くと効率良くシャワーが浴びれるでしょう?」と聖司が問題を出した
「ああ。そうですね。一人部屋ですね」と潤は答えた
「ピンポーン。正解。じゃあ、俺はこの部屋ね。潤はその隣」と聖司は部屋を指さした
聖司が部屋の入り口の機械にIDカードをスライドさせた
すぐに扉は開いた
「じゃ、後で電話する」と言って聖司が中に入って行くのを、潤は``待ってください´´と言って制止した
「仮眠ルームの部屋ってIDカード有れば誰でも開けられるんですか?」と潤は聞いた
「あぁ、なるほどね。大丈夫。きゃーっ、のび太さんのエッチにはならないから」と聖司が笑いながら言った
「仮眠ルームのドアの内側の近くにパスワードを設定する機械があるから。それを設定してある時は、外側の機械にカードをスライドさせても、部屋の主しか開けられ無いんだ。外に出るときにもそのパスワードを入力してある時は部屋の主以外のカードはスライドさせても受け付けない。部屋を使い終わった時は、内側の機械のパスワードをリセットさせてから、部屋を出るんだ」と聖司が説明した
「そうなんですか…てか、今聖司さんそれを俺に教えずに部屋の中に行こうとしてましたよね?」と潤は聖司を鋭く睨んだ
「またやらかしたか。スマン!」と聖司が謝った
「まぁ、良いですよ。俺が先に気付いて聖司さんに聞きますから。で、シャワーは何か特殊な操作は必要無いんですか?」と潤はもう一度質問した
「シャワーは至って普通の何処にでもあるシャワーだよ」と聖司は答えた
「分かりました。じゃあ聖司さん。また後で」と潤は納得して言った
潤の言葉を聞いて、聖司は手をヒラヒラさせながら、部屋に入って行った
潤も隣の部屋に行ってドアにカードをスライドさせた
ドアが開き、潤も中に入った
潤はドアの内側にある機械にパスワードを設定した
部屋は8畳程の部屋で地下なので窓はないが、ベッドと机とクローゼットとTVと冷蔵庫とエアコンがある
潤はエアコンを暖房にしてつけっぱなしにした
そして潤は洗面所とトイレと風呂のある方へ向かった
風呂の脱衣所で、隊服を脱ぎ風呂でシャワーを浴びた
シャワーを15分くらいで終わらせ潤は最初から脱衣カゴに置いてある白いタオルで体を拭いた
隊服に着替える前に潤はタオルと一緒に置いてあったガウンを羽織って、部屋に戻った
部屋はちょうど良く暖かくなっていた
潤は鞄の中からIAP専用電話を取り出した
聖司からの着信はまだ入っていなかった
潤はクローゼットを開けてみた
クローゼットの中には、色がグレーのスエットの上下が掛かっていた
そして、新品の下着と肌着も置いてあった
汗臭い隊服に着替えるのはやめて、潤は新品の下着と肌着とスエットに着替えた
着替えてから冷蔵庫を開けてみた
色々飲み物が入っていた
潤は烏龍茶を選び飲んだ
そして、洗面所へ戻りドライヤーで髪を乾かした
部屋に戻ると携帯が光り着信を知らせていた
潤は着信を確認した
着信は聖司からだった
潤は聖司に電話をかけ直した
5コール目で聖司が電話にでた
「もしもし。聖司さん。シャワー終わりましたよ」と潤は言った
「ああ。俺も終わった。そういえば潤。お前引っ越しの準備はどのくらい進んでるんだ?」と聖司がいきなり聞いてきた
「まぁ、そこそこですかね」と潤は答えた
実は、入隊テストの時に準備しておくように言われていたが、本部案内と本部入隊でバタバタとしており、潤は引っ越しの準備が思うように進んでいなかった
「俺の経験から言うと、隊長から電話掛かってきたその日に引っ越しになる。政府が依頼した引っ越し業者がすべてやってくれるけど、大事な物はちゃんと自分で分けとかないと、捨てられるぜ」と聖司が忠告した
「そうなんですか!どうしよう…俺実はあんまり、準備出来て無くて…」と潤が黙ってしまうと
「今日は遊んでる場合じゃ無いな。送ってくから帰ろう」と聖司が言った
「ハイ。スイマセン」と潤は落ち込んだ
「落ち込むなよ。これから沢山遊ぶ時間は有るんだ」と聖司が優しく言った
「そうですね」と潤は少し気持ちが浮上した
「じゃ、部屋から出てロッカールームで着替えて帰ろう」と聖司が言って電話は切れた
潤は下着はそのままで、グレーのスエットから隊服に着替えた
脱いだスエットは脱衣カゴに入れた
シャワー前に履いていた下着を鞄から袋を取りだしその中に入れて、鞄にしまった
部屋から出る準備を終えて、潤はドアの内側の機械のパスワードをリセットした
そして部屋を出た
部屋を出ると、聖司が既に廊下にいた
「お待たせしました」と言って潤は聖司の側に行った
「じゃ、ロッカールームに行って着替えて帰ろう」と聖司が言った
潤は``はい´´と返事をして、二人はロッカールームに向かった
二人は階段を上がっていく
「潤。お知らせが一つあるよ」と聖司が突然言った
「何ですか?」と潤はドキドキした
「三神隊長に、潤が荷物がかたずかなくて困っているって報告したら、俺が行ってかたずけてあげてってさ」と言ってウィンクした
「本当ですか!聖司さん」と潤は喜びの声をあげた
「本当だよ。一緒に引っ越し準備しよう」と聖司が言った
「ありがとうございます」と潤はお礼を言った
二人はロッカールームに着き、隊服から私服に着替えて、本部を出た
エレベーターに乗って、駐車場の出入り口から出て、二人は聖司の車に乗り込んだ
車に乗ると、聖司がカーナビに登録してある潤の家を検索していた
「よし。じゃあ行くか」と聖司が言って車は出発した
時刻は6時半になっていた
20分後、車は潤の家の近くまできた
「あのコンビニを曲がった所だったよな」と聖司が確認した
「そうです」と潤は返答した
車は潤のマンション前で止まった
「潤。近くに長く車を止めておける場所はあるか?」と聖司が聞いた
「コインパーキングならあそこに」と潤は指さした
「分かった。じゃあ、俺車止めてくるから、潤は先に部屋に居て。部屋番号教えて」と聖司が言った
「11Cです」と潤は答えた
「OK。じゃあ後でな」と言って、潤をおろした聖司の車はコインパーキングに向かった
潤はマンションのエレベーターに乗って、11階のボタンを押した
11階に着き、11Cのドアの鍵を開け、潤は部屋に入った
潤はまず玄関の灯りをつけた
履いていた靴を脱ぎ、部屋に入り灯りをつけた
潤の部屋は6畳のワンルームで、男の独り暮らしには珍しく、3畳程のキッチンがついており、2コンロで魚焼きグリルもついている充実したキッチンである
キッチンも部屋も綺麗に片付いている
部屋の角に段ボールが3つ積んで置いてある
その側には、まだ折り畳んだままの段ボールが沢山置いてある
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った
潤は聖司だろうと思い、インターホンに出ずに、すぐにドアを開けた
「寒い」と言いながら聖司が玄関に入った
「なんだ。まだ暖房ついてないじゃーん」と聖司がなげいた
``おじゃまします´´と言って聖司は部屋に入った
「うーわ。イメージ通り。綺麗に片付いてる部屋」と聖司がぼやく
「何か問題でも?」と潤は聞いた
「なんか、意外性が欲しいよね。真面目だけど、部屋汚ないとか」と聖司が無茶を言う
「そんな意外性要りません」と潤はキッパリと言う
「それより聖司さん。腹減りませんか?」と潤は聞いた
「そういえば、減ったな」と聖司は答えた
「俺、料理好き何です。作りますよ」と潤は言った
「料理が出来るとかもイメージ過ぎる」と聖司はまたぼやく
「じゃあ、食べませんか?」と潤は意地悪く言った
「いや、それとこれは別だ。是非食べたい」と聖司は言った
潤は冷蔵庫の中身を確認した
「肉じゃがとオムライスどっちが良いですか?」と潤は聞いた
「オッムライスゥー!」と聖司は喜んで答えた
潤はまず玉ねぎを刻んだ
それはとても形の悪いみじん切りだった
料理好きと料理上手いは別物だ
作る事は好きだが、潤はけして上手い方ではない
次に冷凍してあった鶏肉を凍ったまま一口大に切った
凍ったままの方が切りやすい
切った鶏肉を電子レンジの解凍機能を使って解凍した
ある程度解凍できた鶏肉を油をひいたフライパンに入れた
鶏肉を数分炒めた後、玉ねぎをフライパンに入れた
鶏肉と玉ねぎに良く火が通った所で、ご飯をフライパンに投入した
味付けの調味料として、塩コショウをまんべんなくふった
そして最後にケチャップを入れて炒めて、チキンライスは完成した
潤は二つの皿にチキンライスを盛り付けた
潤が作っている間、聖司は潤のベッドに座りTVを見ている
潤は卵をボールに4つ割った
その半分を、さっきとは別のフライパンに流し込む
火を弱火にして、卵が半熟にかたまるのを待つ
半熟になったら、皿に盛り付けたチキンライスの上でフライパンをひっくり返して、オムライスの完成だ
潤はもう1つ半熟卵を作ってチキンライスの上にのせた
「聖司さん。出来ましたよ」と潤は聖司に声をかけた
「おー。食べよう、食べよう」と聖司は返事してTVを消した
潤は折り畳み式のベッドを折り畳んでテーブルを置くスペースを作った
部屋の真ん中にテーブルを置いて、オムライスの皿を並べた
飲み物とコップとスプーンとケチャップも並べた
聖司と潤が向かい合って座った
「聖司さん。自分の好みで卵焼きにケチャップかけてください」と潤は言った
「えー。潤が描いてくれないの?」と聖司は言った
「子どもですか。自分の好みでどうぞ」と潤は言った
「はーい。自分で描きますよー」と言って聖司はケチャップでオムライスに描き始めた
その文字は大人と言う漢字だった
「俺は大人ですよー」と拗ねている
「大人は拗ねませんよー」と潤は突っ込む
「潤だって、たまに拗ねるくせに」と聖司は反撃する
「俺はまだ成人してませんよ」と潤は返した
すると聖司が潤のオムライスにケチャップで描き始めた
その文字は未成年と言う漢字だった
「俺は子どもだって言いたいんですね」と潤は聖司を睨んだ
「そう言う事」と聖司は潤が睨んだって平気そうに言った
「はい、はい。俺は子どもですよー」と潤は聖司をあしらった
「それより、お腹空きました。早く食べましょう」と潤は言った
「おぅ。食べよう」と聖司も言った
``いただきます´´と言って二人は食べ始めた
「潤。玉ねぎさんがつながってるよ?」と聖司は不思議そうに聞いた
聖司は料理好き=料理上手いだと思っているからだろう
「スイマセン。野菜切るのは苦手なんです。気にしないで食べてください」と潤は言った
「潤。良かった!料理好きだけど、料理下手なんてかなり意外な感じだよ」と聖司は喜んでいる
「料理下手って、味は美味しいはずです」と潤は反論した
「うん。美味い。じゃあ料理好きだけど野菜切るの苦手って事は、不器用なんだ」と聖司は一人納得している
「もうなんでも良いですから、早く食べて、引っ越し準備しましょう」と潤は言った
「そうだな」と聖司も言った
二人は黙々とオムライスを食べた
二人は同時に食べ終わった
「ご馳走さまでした」と聖司が手を合わせた
「どういたしまして」と潤は返答した
「じゃあ、俺洗い物してくるんで、お願いがあるんですが、聖司さんあそこの段ボールから3つをガムテープ使って箱にしといてくださいますか?」と潤はお願いした
「OK」と聖司は返事して段ボールの所に行った
潤は洗い物を手早く済ませた
潤が聖司に合流すると、段ボール箱が3つ完成して、聖司は暇そうにガムテープをクルクル指で回していた
「で、何からはじめる?」と聖司が聞いた
「俺が先ず要るものと要らないものをこっちの2つの段ボールに分けていくので、要らないものを入れた段ボールをガムテープで閉じていって、段ボールに要らないものってペンで記入していってもらえますか?」と潤は聖司に頼んだ
「もう1つの箱はどうするんだ?」と聖司は聞いた
「要るものの箱が一杯になったら、俺が閉じていくので、もう1つの箱は、要るものと要らないものの箱が一杯になった時の次の箱になります」と潤は説明した
「そう言う事か。じゃあ、俺は要らないものの箱を閉じつつ、新たな段ボール箱を作っていけばいいんだな」と聖司は言った
「はい。宜しくお願いします」と潤は言った
潤は本棚から作業を開始した
要る本と要らない本に分けていく
介護関係の本は要らない箱に
大事にしている漫画は要る箱に
潤が分けている間、聖司は暇なのか本棚の下の方をいじっている
「お!卒業アルバムじゃーん」と言って聖司は潤の高校の卒業アルバムを手に取って、開いた
「潤、なん組?」と聖司が聞いた
「3組です」と潤は返答した
聖司が3組のページを開き、高校3年生の潤を発見した
「今とあんまり変わらないね」と聖司はガッカリしている
「当たり前ですよ。今年の3月に卒業したんですから」と潤は言った
「他のアルバムないかなぁー」と言って聖司は物色し始めた
「小学校と中学校も近くにありますよ」と潤は教えた
聖司は小学校と中学校のアルバムも取りだし、潤になん組か聞いて、発見しては昔の潤は可愛いと呟いてずっと眺めている
昔の潤探しに飽きた聖司は
「で、潤の最初の彼女はどの子?」と聞いてきた
「もう、聖司さん。邪魔しに来たんですか?手伝いに来たんですか?要らないもの箱一杯ですよ」と少し怒りながら言った
「だって気になるじゃーん」と聖司はアルバムを見ながら言った
「絶対教えません」と潤はキッパリと言った
「ケチ」と聖司は文句を言ったが、一杯になった要らないもの箱を閉じて、要らないものと段ボールに書いた
潤も要るもの箱が一杯になり、箱を閉じて何が入っているのかを記入した
聖司は急いで新しく段ボールを2つ作った
こんな感じで二人は作業を進めていき、部屋やキッチンや色んな場所がすべて終わったのは、深夜の2時だった
「終わったぁー!」と言って潤は床にひっくり返った
「結構掛かったな」と聖司が潤の隣に座って声をかけた
「俺、物が捨てられない性格なんですけど、今日は思い切って、要らないもの箱に入れました」と潤は言った
「引っ越し先に持っていって、捨てなきゃいけませんけどね」と潤は苦笑いしながら言った
「急だったからな」と聖司も自分が伝えるのを忘れていた事を思いだし、苦笑いした
「聖司さんどうするんですか?」と潤は聞いた
「三神隊長から許可もらった、引っ越し準備の手伝いが終わったから、帰るよ」と聖司は言った
「そうですか。じゃあ、俺は明日いつ電話があっても良いように、寝ます。聖司さん。今日は本当にありがとうございました」と潤は起き上がってお礼を言った
「じゃ、明日引っ越し頑張れよ!」と言った後、帰る準備をして聖司は玄関に向かった
潤も後をついていく
玄関で聖司を見送り、潤は灯りを消して、目覚ましをセットしてベッドにもぐり込み眠りについた
翌朝午前7時
潤は目覚まし時計の音で起きた
電子レンジで食パンを焼いて、ジャムをつけて食べた
IAP専用電話を確認したが、着信はまだ無いようだ
潤は歯磨きと洗面を済ませてから、今日着る用に段ボールに入れなかった服に着替えた
潤は改めて、中学校から一人暮らししてきた部屋を眺めた
段ボールと家具だけになった部屋
思い出が沢山ある
一般人の友達が数人遊びに来て、夜中に騒いで管理人から注意されたり
彼女が遊びに来たり
最初の頃は陽子が、潤の世話をしに良く訪れていた
その思い出の最後には、初めて中絶児の仲間として部屋に入ったゆういつの存在の聖司がいた
潤は部屋を見渡してしばし思い出に浸った
そして、何か踏ん切りがついたような気持ちになり最後の片付けと掃除をする事にした
先ずさっきまで寝ていたベッドにある布団を布団入れにしまった
次にカーテンを外して衣装ケースにしまった
電器のかさのホコリ拭きや部屋の上の方にたまったホコリを掃除した
ベランダの窓ガラス拭きや、色んな場所を拭き掃除していく
時刻は9時になっていた
潤のIAP専用電話がなった
着信は三神からだ
潤は急いで電話にでた
「はい。真中です」と緊張しながら言った
「三神だ。五十嵐君から聞いていると思うが、真中君の引っ越し先が決まった。準備は出来たかね?」と三神が聞いた
「はい。聖司さんが手伝いに来て下さったので、終わらせる事が出来ました」と潤は答えた
「そうか。では、大丈夫だね。今日の10時に引っ越し業者が真中君の家に行く。すべて彼等に任せて大丈夫だ。行き先も業者が知っている。彼等についていきなさい。では。」と言って三神からの電話は切れた
電話の後、潤は部屋中に掃除機をかけて
雑巾で床を拭き掃除した
掃除が終わり、潤は一息ついた
時刻は9時45分もうすぐ引っ越し業者が来る
潤はなんだか引っ越しして新しい部屋でこれから暮らす事にワクワクしていた
10時になり、潤の部屋のチャイムが鳴った
潤はインターホンで話して、引っ越し業者だと確認した
4人の男性が潤の部屋にお邪魔しますと言いながら入って来た
リーダーらしき人物が3人に指示を出す
2人の男性は段ボール箱から運びはじめた
残りの2人は、家具や家電が傷つかないように、業者が持ってきた布をかける作業をしている
潤の部屋は11階なので、段ボール箱運びの男性が何往復もして段ボール箱をトラックに運んでいる
潤が段ボール箱運びを手伝おうとするとリーダーらしき人物が
「何かあると困りますので、お部屋で見守っていていただけますか」と言った
潤はリーダーらしき人物の言葉に従った
家具と家電の保護も終わり、2人の男性は家具と家電もトラックに運びはじめた
引っ越し業者がきてから、30分でアッと言う間に潤の部屋は空っぽになった
リーダーらしき人物から「お忘れものはございませんか?」と聞かれた
潤は部屋を眺めて、何も無いなと思ったが1つ忘れていた
外にあるから、気付かなかった様だ
「スイマセン。駐輪所に自転車があります」と潤は思い出して答えた
「自転車ですね。他にはありませんか?」ともう一度聞かれた
「大丈夫です」と潤は答えた
「でわ、自転車を乗せた後、出発致しますので、トラックまでどうぞ」とリーダーらしき人物は言った
潤は今日の朝脱いだパジャマと歯磨きセットなど、段ボール箱に入れずにおいた物たちが入った鞄を持って、玄関の鍵を閉めた
リーダーらしき人物と一緒にエレベーターで下に降りた
トラックに乗っていて下さいと言われたので潤はトラックの助手席に乗った
段ボール箱運びをしていた男性が潤の自転車を運んでいた
自転車を積み込み終えて、業者全員がトラックに乗り込んだ
リーダーらしき人物が出発しますと言ってトラックは新しい潤の部屋へと走り出した
「今から向かう所は何処ですか?」と潤はリーダーらしき人物に聞いた
「東京タワーから近い、港区内のマンションですよ」とリーダーらしき人物は答えた
「ここから20分ぐらいでつきますから」とリーダーが補足説明した
潤は初めて会った人と20分も同じ空間に居なければいけない事に緊張した
打開策として、潤は音楽プレイヤーで音楽を聞いている事にした
鞄からさっそく取りだし、潤は新しいマンションに着くまで、ずっと聴いていた
引っ越し業者のトラックはあるマンションの前で止まった
そのマンションは、高層マンションで、オートロックの高級そうなマンションだった
「えっ!ここですか?」と潤は思わずリーダーらしき人物に聞いてしまった
「はい。ここですよ。ここの2階になります」とリーダーらしき人物はにこやかに答えた
「私、鍵を預かっておりますので、真中様にお渡し致します」と言ってリーダーらしき人物は潤に家の鍵を渡した
「前のマンションの鍵は私がお預かりして、返しておきますので、預からせて頂いて宜しいですか?」とリーダーらしき人物は言った
潤は前のマンションの鍵をリーダーらしき人物に渡した
「では、真中様にお部屋を見て頂いてから、何処にどの荷物などご指示を頂きたいので、先にお部屋を見にまいりましょう」とリーダーらしき人物が言ったので潤はトラックを下りた
潤はマンションの入り口まで来た
「オートロックの解除番号は何番ですか?」と潤はリーダーらしき人物に聞いた
「ご依頼主様から、真中様のカードの下4ケタだと伺っております」とリーダーらしき人物は答えた
潤は自分のIDカードの番号を確認した
下4ケタは1983だった
潤はオートロックの機械に1983と入力した
マンションの入り口のドアが開いた
玄関ホールがやたらと広々としていた
潤とリーダーらしき人物はエレベーターに向かった
エレベーターの側には階段も有った
エレベーターは今30階にいる
「階段のが早そうですね」と潤が言って二人は階段で潤の部屋へと向かった
潤の部屋は206号室だった
潤はさっきもらった鍵で玄関のドアを開けた
中に入ると、右手側にトイレがあり、左手側にお風呂と洗面所がある廊下があった
廊下の奥のドアを開けると、10畳程のリビングと5畳程のキッチンがあった
リビングの左手側にはもう1つドアがあり、開けてみると、8畳程の部屋だった
新しい部屋は1LDKの一人暮らしにはとても豪華な部屋だった
「では、どういたしましょうか?」とリーダーらしき人物が聞いた
「じぁあ、家電は持ってきた時に指示を出しますので、段ボール箱はすべてリビングに運んで下さい。後で自分で別けますので」と潤は指示をした
「分かりました。じぁ、運んで来ますので、ご指示をお願いします」と言ってリーダーらしき人物は部屋を出て行った
潤は改めて新しい部屋を見渡した
一人暮らしには豪華過ぎる部屋
こんなに広かったら寂しさが増すような気がした
家賃は政府持ちだが本当に自分がこんな場所に住んでも良いのだろうか?と潤は思った
突然インターホンがなった
インターホンのある廊下に行くと引っ越し業者の男性の顔が映っていた
潤がインターホンに出ると、入り口を開けて下さいと業者に言われた
潤はインターホンに付いている、入り口のロック解除ボタンを押した
ドアが開き業者が荷物を持って入り口を入った
そんな作業を繰り返し、潤は業者に指示を出し、引っ越し作業は午後12時ぐらいに終わった
潤が代金を払おうとすると、すでに受け取っていると断られた
「では、ちょうどお昼ですし、この1万円で皆さんで美味しいものでも食べて下さい」
と潤がお金を差し出すと、最初は断った業者も、3回目のススメでお金を受け取った
業者はありがとうございますと言って帰って行った
潤はご苦労様ですと言って見送った
業者が帰った後、潤はマンション周辺の情報を確認する事にした
取りあえずお腹がすいているので、潤はコンビニを探すつもりだった
潤は携帯を鞄から出して、地図のアプリを開きコンビニを検索した
3件ヒットした
一番近いコンビニに行く事にした
携帯に3Dで表示されてる地図をみながら一番近いコンビニに向かった
地図通り歩いて行くとマンションを出て、マンションのある道の裏の道を真っ直ぐ500m程歩いた場所にあった
潤はお弁当と飲み物とメロンパンを買ってマンションに戻った
部屋に戻り潤はコンビニで買った牛丼を食べた
お腹が減りすぎていたので、おやつ用に買ったメロンパンも食べてしまった
お腹がふくれた所で、潤は片づけをはじめる事にした
先ずは、要らない物の段ボール箱を全部8畳の部屋に運んだ
要らない物の段ボール箱を運んだら、リビングにある箱は3分の1に減った
要るものの段ボール箱をキッチンなど中身別に分けた
潤はキッチンの段ボール箱から片づけていく
さっきコンビニを検索した時に、ついでにスーパーも検索しておいたのだ
料理好きの潤は自炊する事が一番楽しいのだ
キッチンの段ボール箱を全て空っぽにして、段ボール箱を潰して、ベランダに置いた
潤は後の箱は追々片づける事にして、スーパーに買い出しに行く事にした
今度もまた一番近いスーパーを選んだ
潤は携帯の3D地図に従いスーパーに着いた
そこはどうやら普通のスーパーとは違っていた
置いてある食材も値段が高くて、高級なお肉や野菜ばかりが並んでいる
セレブ向けの会員制のスーパーの様だ
潤の今の報酬なら、無理なく買えるがやはり、潤の庶民的な感覚が邪魔をして、手が出せなかった
潤が買うか買わないか迷っていると、前の方に、見たことある後ろ姿を見つけた
その人物は阿部 馨だった
カートを押して食材をカゴに入れている
潤は声をかけるべきか、どうか迷った
中絶児同士の外での接触は禁じられている
潤が迷っていると、阿部 馨が潤に気付いた
阿部が会釈をして、潤の方に近づいてくる
「真中君。こんにちは」と阿部は声をかけてきた
潤はあの、あの、と繰り返しながら返事を出来ずにいた
状況をさっして阿部はこう言った
「接触禁止を気にしているなら、心配ないですよ。ご近所同士の只の挨拶ですから。住む場所を選んだのは政府ですから。」と小声で囁いた
「そうなんですか。こんにちは阿部さん」と潤は改めて挨拶しなおした
「真中君はいつ引っ越してこられたんですか?」と阿部は聞いた
「今日引っ越して来たんです」と潤は答えた
「今日ですか。なら色々ご不便もあるでしょうし、困り事があればお力になりますよ」と阿部は言った
潤はさっそく「あのー。もう少し庶民向けなスーパーって、近くにありますか?」と質問した
「僕で良ければご案内致しますが」と阿部は言った
つくづく、面倒見の良い人だと潤は思った
「いえ!場所さえ教えて頂ければ大丈夫ですので。ありがとうございます」と潤は丁寧に断った
「そうですか。では紙に地図を描いてお渡し致しますね」そう言って阿部は手帳のメモ用紙に地図を描いてくれた
「携帯の地図だと少し分かりづらい場所にありますから」と言ってさっき描いた地図を潤に渡した
ありがとうございますと言って潤は受け取った
「じゃあ、僕は行きますね」と阿部がまた会釈して買い物に戻って行った
潤は手を振って見送った
しかし、阿部は何かを思い出したのか、潤の方に戻ってきた
「言い忘れました!五十嵐さんもこの近所に住んでいますよ。良くお見かけしますから」とだけ言って、阿部は買い物に再び戻って行った
潤は聖司が近所に住んでいると聞いて嬉しかった
今日の様に偶然会えたら良いのにと思った
しかし、聖司が自炊などする様に見えなかったので、スーパーでは会わないだろうなと思った
潤はスーパーで買い物する聖司を想像したら少し笑えた
コンビニで会える事を期待しようと思った
潤はさっき阿部に教えてもらったスーパーに買い物に行く事にした
阿部に教えてもらったスーパーに着いた
潤は至って普通なスーパーに安心感を覚えた
今日と明日のメニューを決めて必要な材料と、卵やハムや食パンや色々と常備しておく物を買い込んだ
潤はエコバッグ2つを抱えて、今日引っ越して来たばかりの自宅に戻った
食材を冷蔵庫に入れたり、キッチンの棚にしまったりした
時刻は午後2時半
片づけなきゃいけない箱は沢山あるが、潤は少し休憩を入れる事にした
8畳の部屋に要らない物の段ボール箱があるので潤はリビングにベッドを出して横になった
しばらくボケッと天井を眺めて、潤は無の状態になった
昨日の夜から今日の朝までバタバタとしていた反動だろう
一旦、一休みするとまた段ボール箱を片づけるのがおっくうに感じられた
それに初めての本入隊での訓練の疲れもあるのだろう
明日も休みなのだから、ゆっくりと片づければ良いと潤は思った
その時、潤の携帯が鳴った
IAP専用電話だった
しかし、着信の時とは違うメロディーが流れた
潤が専用電話を見るとメールが一件届いていた
三神からのメールだった
``引っ越しそうそうで悪いが、近々真中君に任務が入る。ターゲットの情報は、月曜日に、私の部屋で話す。本部に着いたら直ぐに私の部屋まで来てくれ´´と言う内容のメールだった
潤は任務と言う言葉に身が引き締まった
本部に入隊して初めての任務だ
月曜日から任務に入る
のんびり片づけてる暇はない
潤はリビングにある段ボール箱を一気に片づける事にした
潤は途中で夕飯休憩をとった
6時から夕飯を作った
メニューはカレーライスだ
段ボール箱が全部片づいたのは、午後9時だった
片づけ終えた潤は、お風呂に入り後は寝るだけの状態になった
明日は8畳の部屋の要らない物段ボール箱を開けてゴミの分別をする事にした
慌ただしい一日が終わり、潤はベッドに入り今日は早めに眠りについた
翌朝、7時に潤は目が覚めた
朝食を食べた後、洗面をすませた
潤はスエットから服に着替えた
さっそく8畳の部屋の要らない物段ボールを開けて、ゴミの分別をはじめた
2035年では分別がかなり細かくなっている
45㍑のごみ袋は一般家庭では使わなくなっていた
分別が細かいので10㍑や20㍑のごみ袋で充分なのだ
平日は毎日がゴミ出しの日だ
箱を開けて潤はごみ袋にどんどん分別していく
ごみ袋に入れなきゃいけない物の分別が済んだのが、午前10時だった
その後、潤は古紙回収に出す本をビニール紐でまとめた
さらに、空になった段ボールを潰してビニール紐で縛ってベランダにおいた
時刻は10時半になっていた
8畳の部屋には分別したごみ袋が沢山ある
月曜日から任務に入るとなると、来週のゴミの日に、全部出せるか潤は不安になった
しばらくは8畳の部屋で眠れそうに無いなと潤は思った
リビングに戻ってきた潤は、ベッドに横になった
本部入隊から、今まで忙しくしてきたが、明日の月曜日から任務に入るとなると、今からが、潤の実際の休日だ
潤はベッドでゴロゴロしながら、何をしようかと迷っていた
潤は携帯で家の近くの地図を見て、何処か行きたい所はないか探してみた
残念ながら特には見付からなかった
周辺のお店情報等は、明日良い所がないか聖司に聞いてみる事にした
今日はせっかくの休日なので、潤は家でゴロゴロする事にした
昼食にラーメンと炒飯を作って食べた
そしてまた、ベッドに横になりゴロゴロとした
お腹が満たされて、潤は眠気を感じた
そのまま潤は眠ってしまった
潤はまた夢を見た
何故か洞窟の中を歩いていた
途中で道が2つに別れた
一方には微かな光が見えた
もう一方は真っ暗闇だ
潤はあえて真っ暗闇な方を選んで進んだ
するとそこには、見知らぬ誰かがいた
暗くて顔は見えない
見知らぬ誰かが潤の方に近づいてくる
潤は何故か恐怖感を感じた
道が2つに別れている所まで潤は必死に戻った
そこで、潤は目が覚めた
時刻は午後2時半だった
潤は手のひらに汗をかいていた
夢なのにまだ恐怖感が消えない
いったい何なんだと潤は思った
取りあえず、ウォーターサーバーから水をコップに入れて、一気に飲んだ
少し気持ちが落ち着いた様だ
その時、潤のIAP専用電話がなった
今度はメールでは無くて、着信だった
三神か情報部からかも知れないと思い、潤は着信の相手を確認せずに、急いで電話に出た
「もしもし」と潤は電話に出た
「私だ」と電話の相手は言った
「聖司さん、イタズラなら切りますよ!」と聞き覚えのある声の相手に潤は言った
「すぐバレたか」と聖司は悪びれる様子もない
「潤、任務のメールきたか?」と聖司は聞いた
「はい。三神隊長からメールが来ました」と潤は素直に話した
「実は俺が潤を指名したんだよ」と聖司が言ったが、潤には何の事かさっぱり分からなかった
「指名したって、何の事ですか?」と潤は聞いた
「今回の任務は俺がメインで遂行するんだけど、ターゲットが複数居るから、チームで任務を行うと三神隊長から聞かされたんだ。で、俺がチームメイトを指名する事になった訳なんだ」
「えぇー!そう言う事なんですか。じゃあ、聖司さんに指名されなければ、俺の任務は無かったって事ですね」
「そう言う事だ」と聖司は言った
「何で俺なんですか?もっとベテランな隊員のが良かったんじゃ無いですか?」と潤は聞いた
「潤はチームメイトとしては、最高だよ。俺が狙撃を指導したんだからね。潤は俺の分身みたいなものさ!だから扱い易い」と聖司は答えた
「何か扱い易いとか、褒められてるのか微妙なんですけど」と潤は選ばれた理由が気にくわない
「潤の腕前を認めてるって事だよ」と聖司は言った
「おかげさまで、引っ越しの片づけを急ピッチで終わらせたんですけど」と潤は文句を言った
「ああ、そうだったな。悪かった!ごめん」と聖司は謝った
「許しません!許すとしたら、聖司さんの自宅と俺の家が近いみたいなので、周辺情報を教えてください」と潤は冗談ぽく言った
「そうなのか。近いのか。よし!任せろ。しかし誰に確かめたんだ?俺の自宅が近いって?」と聖司は疑問に思った
「阿部さんとスーパーでお会いして、聖司さんも近くだと教えて下さったんです」と潤は答えた
「あー、阿部か。そう言えば良く見掛けるな」と聖司は納得した
「で、聖司さんがメインの任務のチームメイトは何人居るんですか?」と潤は聞いた
「3人だ。俺と潤と藤川彩ちゃんだ」と聖司は答えた
「藤川さんもですか。任務の内容は聖司さんは知っているんですか?」と潤はまた聞いた
「任務の内容はまだ知らないよ。明日まで分からない。ただチームメイトを選べと言われただけだ」と聖司は言った
「分かりました。選んで下さってありがとうございます。明日から宜しくお願いします」と潤はお礼の言葉を述べた
「おう。明日から宜しくな」と言って聖司からの電話は切れた
ターゲットが複数いて、チームで任務に当たる
どんな任務だろうかと潤は思いを巡らせた
全ては明日分かる事だ
潤は考えるのをやめて、またベッドでゴロゴロとしはじめた
潤はTVのHDDに録画しておいた映画を思い出した
ベッドに横になりながら、その映画を観る事にした
映画の内容は第二次世界対戦を題材にした日本の映画だった
映画を見終わると、潤は夕飯作りの時間まで音楽を聞いて過ごした
夕飯を食べて、お風呂に入って、時刻は午後10時になった
寝るにはまだ早いので、潤は読みかけの小説を読む事にした
小説を読みながら、潤はだんだん眠気が出て来てそのまま眠ってしまった




