第二話 出立
王家に伝わる祈りを行い、時の神クロノスにお伺いを立てる。十二時間の時間が経過していた。
「ノア様、手に入れて参りました」間を置かずアリスティッドが現れる。
「ご苦労」
「雪 乃亜という名前を使うように申し付けられました。それからこれを」アリスティッドが差し出したそれにはたくさんの線と×印が二つ、それから扉のような記号がついている。どうやら、地図のようだ。
「ここが『地下』と向こうをつなぐ『扉』、この×印はノア様のお住まいで、もう一つはノア様が通われる学校です」
「学校」私の胸は高鳴った。王城にある禁書庫で読んだ『人間の歴史』という本に書いてあった学校というものにずっと私は憧れていた。
「ええ、詳しいことはあちらで『悪魔』様がお伝えくださるようですよ」
「そうか。しばらく私の留守を頼んだ」
「はい、行ってらっしゃいませ」アリスティッドのその言葉とともに『悪魔』が現れる。
「ご機嫌うるわしゅう、女王陛下。フェリクスとお呼びください。それではお手を」差し出された手を取ると、景色は一変し森の中に立っていた。
「便利なものだな」
「陛下の力には及びません」フェリクスは女王が扱うことのできる特別な祈りの探りを入れるようにそう言った。女王は通常の祈りのほかに特別な祈りを行える。それは『地下』において信仰されているギリシャの神々のなかでも特別な十二の柱の神に対する祈り。通常の祈りよりずっと強力な祈り。それは最弱の魔族である吸血鬼の『最後の切り札』になりえるくらいの。
「時間くらい貴様もわかるであろう」はぐらかすように答える。
「私は時間の女神ホーライのうちの一柱である、あの忌々しい秋の女神プティノポロンに呪われてからです。彼女の象徴であるこのツタ模様、まったく忌々しい」フェリクスは自身の顔半分を覆うツタの形のあざに触れると顔を歪めた。
「我はもう行く」フェリクスを無視しそう言うと『扉』を血で開けると、その波紋の中に足を踏み入れた。




