第三十八話 学校
次の日。学校に行くと目線が突き刺さる。居心地が悪い。
「おはよ」姉崎が声をかけてくる。
「はよ」それだけ言って俺は机に突っ伏した。隣の席は空っぽでそれがひどく寂しかった。顔を上げていたくなかった。ほんとにクローンなの? そんな声が聞こえてきそうで、俺はヘッドフォンのボリュームをあげた。
昼休み。職員室に向かい、ドアを開ける。集まる視線。考えていることは生徒たちとそう変わらないだろう。静まり返った職員室にドアを閉める音と俺の上履きが床をこする音だけが響く。
「先生」担任の元までゆっくり歩いていき、声を掛けた。
「どうしたの?」俺の呼びかけを待って、先生の椅子が回転し俺の方を向いた。
「俺、学校辞めようと思います」
「え?」突然のことに、先生は驚いたようだった。他の先生たちが固唾をのんで成り行きを見守っている。
「先生も知ってますよね。俺、クローンなんです」
「うん」
「ここに俺の居場所がないとかそういうことが言いたいわけじゃないんです。でも、まだクローンは、俺は生まれちゃいけなかったと思うんです。自分を卑下しているわけではなくて」言いたいことをうまくまとめられない自分に対してのいら立ちで、よけいにまとまらなくなってしまう。
「うん」優しい目で見つめられ、少し心が落ち着く。
「ようやく、俺が俺のままでいることのできる場所見つけたかもしれないんです」するりと言葉がでてきた。自分でも驚くくらい優しく、穏やかな声だった。
「そっか。鈴木君の選択は残念だけど、私には君をここに引き留めることはできない。ずるい先生でごめんね」少し考えるように黙った後に、先生はそう言った。
「いいんです、それは先生が俺のことをきちんと考えてくれている証拠ですから。今まで、本当にお世話になりました」俺はゆっくりと頭を下げた。
「うん。元気でね」顔をあげた俺に先生は優しく笑って言った。
その日のホームルーム俺はいつの日か乃亜が立った場所にいた。
「今回、鈴木君の転校が決まりました」クラスが一瞬で静かになる。
「いままでお世話になりました」そう言って頭をあげた俺と姉崎の目があう。
次回で第一章が完結します。
読んで下さり、いつも本当にありがとうございます。




