第三十三話 崩壊
「二人とも無事だったんだね」
「ああ。俺はな」俺は朔に答えた。
「俺も、平気だ」傷を抑えながら男が言う。
「これ、研究所の全てのデータが入ってる。了、この人たちと紅さんを上に。そろそろ研究所の建物が崩壊する」小さなチップを手渡され、ポーチにしまう。
「でも、地下牢が」
「あれは、僕が。これを使えば君より早い」朔は左腕を掲げて見せた。
「分かった」俺は男に肩を貸して、他のキメラたちと階段を上った。
ちょうど上まで登り終わったとき金属同士がぶつかるキン、という不快な音がして、残りのキメラが走って上がってきて。
地下が、潰れた。
それはあっという間の出来事だった。俺は崩れ落ちるようにその場に膝をついた。後ろで建物が崩壊していく音が聞こえてきたが全て遠い出来事のように現実味がなかった。朔が。朔が、死んだ? 研究所の最高傑作が? 優しく、気高く、賢く、強い朔が? ありえない。ありえてはいけない。クローンである俺らが生きることを許されないのであれば、死ぬべきなのは俺だ。朔じゃない。頼むから。朔じゃない。涙が溢れて止まらない。どうして。霞み、朦朧とする意識の中で、俺はそれだけを考えていた。
『僕を一番理解できるのは君で、君を一番理解できるのは僕なんだ』その言葉が頭の中をこだまする。なら、なんでだよ。俺を置いていかないでくれよ。
いつも読んでくださってありがとうございます。
そろそろ第一章が終わります。




