第三十二話 地下牢
しばらく歩いて、通路に空いた穴と地下に続くらしい階段を見つけた。腰に付いた装置の中にもう一度火をつけ明かり代わりに地下へと下っていく。
鼻につく獣の臭い。ここにキメラにされた者たちがいるのだろう。
数十メートル進んで、地下牢のような見た目のそこに彼らはいた。中にいる者たちの有様は『地下』に来た者たちよりひどかった。体が夜空のように藍色で、全身に星のような斑点がある者。体が硬いうろこでおおわれたもの。腕に何度も切られて再生した痕があり、大きなかぎ爪を持つ者。長い鼻を持つ者。身体的特徴がどうこうよりも、彼らの様子がひどいのだ。諦め。絶望。憎しみ。怒り。彼らはそれらに支配されている。
そして、何よりもこれを人間が興味本位でやったということが許せなかった。しばらくどうすることもできず立ち尽くしていると階段を下る音が聞こえてきた。逃げ場はない。止まる足音。
そこにいたのは、オリジナルだった。爆発の時に付いたのか、彼の全身は小さな切り傷に覆われいて、傷のないところを探すのが大変なくらいだった。
「これは……」オリジナルも地下の様子を見て言葉を失ったようだった。
「とりあえず、柵を。彼らを外に」
「ああ」二人で柵をこじ開ける。が、思ったより硬い。ただの鉄ではないらしい。何とか人が入れる半分くらいになった時。
うっとうめき声が聞こえ振り向くと、オリジナルが腹部を抑えてよろめいた。腹とその向かいの檻の中に立つ男のかぎづめから血がしたたっている。暗く狭い地下で火に照らされた真っ赤な血が赤黒く光を反射する。
「おい」俺は歩みよって今にも倒れそうな男の肩を支えた。
「俺はいい」弱々しくそう言った男の体は見た目よりもずっと傷ついていて全身からかなりの量の血が出ている。
「だけど」
「俺たちの目的を忘れるな」ゆっくりと、それでいて力強くそう言われ俺は男の体を階段近くに横たえ男が途中まで開けていた柵をもう一度開け始めた。柵が開き、攻撃してくるキメラは気絶させる。そんなことをもう二回繰り返し、残る地下牢もあと一つになったとき朔がやってきた。




