第二十一話 兄弟
「朔?」俺はそいつにきいた。
「そう。朔。ふふ。ふふ」久しぶりの「お兄ちゃん」は小刻みに震え、ろれつがまわっていないようだった。それだけではない、よく見ると朔の左腕は黒く鈍く光る金属に変わっている。
「なんで邪魔するんだよ!」俺は朔に叫ぶ。
「君だれ? 知らない。知らない。ボ……ク、僕」完全にいかれてる。
俺はとりあえず朔を気絶させようと近づこうとした。が、俺が動くより早く朔は俺に左手を向けると、そのまま発砲した。見知った相手と油断していた俺の腹に銃弾が撃ち込まれる。撃たれたことよりも数少ない信用できる人間に裏切られたことの衝撃のほうが大きかった。受け身もまともに取れずに倒れ込む。朔は無感動にただ俺を見つめている。
次に狙われたら俺は終わる、そう思ったときものすごい力で襟首をつかまれた。
さっきまで俺がいた場所に数個の小さな穴があく。それと同時に液体のようなものをかけられる。一瞬痛みが増し、すぐに引いていく。見れば傷が治っている。
「何のつもりだ」俺は自分を助けた女に声をかけた。
「ネクタルだ」そいつはつれなく答えた。
「なんで助けたかって言ってんだよ」
「話してる暇はないぞ。次はない」女はもう一度俺たちに照準を合わせる朔を指さす。傷が治ると、怒りのほうが強くなってきた。俺は撃たれたときに落としたナイフを拾うと朔に向かって走る。ナイフを銃口に向かってダーツの要領で投げる。訓練の賜物かナイフは銃口に吸い込まれるように近づいていきそのままはまった。朔が少し気を取られた隙を見て、回し蹴りをするが、クロスした両腕に阻まれた上に金属に当たって少し痛い。てっきり文化系だとばかり思っていたが、あの研究所にいたこともあってしっかり戦えるらしい。俺は額を相手の額に思い切りぶつけた。
「痛」朔はそういって頭を抑える。顔をあげた朔はきょとんとした顔をした後、俺を見て青い顔をした。俺はその様子に次の攻撃をやめ、朔を見つめた。
「僕は、また……」朔は悲痛な顔をした。




