第二十話 違和感
「身代わりか?」俺は尋ねた。
「何を言う。姿が変わっただけだ」スズキ ノアが、いや女王が答える。見れば見るほどスズキ ノアそのものだ。
「知った顔にでも似ているか? まじまじと見て」じろじろと見る俺に向かって言う。
「ああ。そっくりだ」
「そうか。種族が違くても顔というのは似るものなのだな」興味深そうに言う。
「ここまできてまだとぼけるのか」俺はいらだってそう言った。
「何の話だ? この姿は女王だけが許された力、その一つである身体的特徴を全て人間と同等にする能力によってしか得られない。この力を使えるのは我一人。我が知らぬと言うているのだ。ならば我と似た顔の者が人間にいるというだけであろう」怪訝そうに言う。
嘘をついているようにも見えないが、別人のようにも思えない。他人の空似というレベルではない。どうなってるんだ。
「無駄話は飽いた。さあ、かかってくるがいい。この姿なら直接攻撃できるぞ」女王が淡々と言葉を紡ぐ。
「そうだな。ご協力感謝するよ」俺はそう言うとナイフを取り出し、自分を待つ宿敵のほうに走った。
心臓を狙った突きも、首を狙った斬撃もすんでのところで交わされる。もどかしい。焦った俺が一瞬どこをねらおうかと迷ったのを相手は見逃さず、まずいとおもったときにはみぞおちをすくいあげるように殴られ、吹っ飛ぶ。
どこが人間と同等だよ、思わず心の中でぼやく。
素早く立ち上がると相手のあごを狙って殴りかかる。今度は手ごたえがあった。確実に脳震とうを起こしやすい部位を狙ったのに相手は少しよろめいただけだった。もう一度攻撃を加えようと俺が相手の息がかかりそうなほど距離を詰めたとき、熱い。突如そう思った。脇腹が熱い。見ると血が馬鹿みたいに噴き出している。致命傷ではないが、不快なことには変わりない。
目の前の化け物の仕業かと前を見ると、そちらも赤く煌めく血が噴き出ている。
化け物の血に触れないように後ずさると、脇腹を抑え無粋な乱入者をさがす。後ろをむくと、そいつはすぐに見つかった。




