第十八話 邂逅
『扉』を使い無事に『地下』に来れた俺は、同じ轍は踏むまいと周囲を警戒する。幸い他には誰もいない。
ひとまず安全を確認した俺はこちらに来るときに用意した黒い手袋をはめて草を少し多めに摘み、装置に入れると残りをポケットから取り出したナイフと一緒にベルトの後ろにはさみ込んだ。
準備は万端。しかしどうやって森を抜け女王のところにたどり着こう。
いや、まずは森を抜けることが先決か。体力には自信がある、歩くか。そう思い、俺は森の出口を目指し歩き始めた。
どのくらい歩いたのだろうか、唐突に森が開けた場所に出て、森から出ることができた。
そこにはなにもなく、ただ荒野が広がるだけだった。
腹が減った。食料を多少持ってきてはいるが、滞在時間の見通しが立たない今、無駄に消費するわけにはいかない。
かといって、『地下』のものを口にするわけにはいかない。
ふと古代ギリシャの人々は『地下』のことを冥界と考えていたのかという考えが浮かんだ。
冥界の王ハデスにより連れてこられ、ザクロを四粒口にして、一年のうちの四カ月を冥界で過ごすことになったペルセポネの話。
オルフェウスの妻エウリュディケが、死してなお冥界でその姿を保っていたこと。
この二つの真偽はおいておいても、『地下』に行った人間が帰って来ないことと人間とは異なる存在となって生き続けること。大筋は似ている。
そんなことをぼんやりと考えていると、荒野に人影があることに気が付いた。そいつは迷いなくこちらへ近づいてくる。暗い上に遠かったが、白く光る髪は見間違えるはずなどなかった。




