第十七話 予兆
次の日の夕方。居ても立っても居られなくなった俺は研究所へと向かった。
研究所に入ると、いつだったか俺をとっつかまえた女がいた。
「アミさんいる?」
「ええ……。たぶんこの廊下のつきあたりのラボ」どこか呆けたように女が上ずった声で答える。前に会った時とは別人のようだ。自分の研究服に付いた一色と書かれたネームプレートを引っ張っては止め、引っ張っては止めを繰り返している。
「どうも」その様子が薄気味悪くて、それだけ言うと俺はアミさんがいるというラボにむかった。
廊下のつきあたりに「ラストラボ」というプレートが付いている。その下のフックには「担当者 畢」というプラスチックの札がかかっていた。
「どうしてこんなとこにいるの?」後ろから声をかけられ振り向くと、アミさんが目を見開いて言った。
「一色っていう人に聞いたらここにいるっていうから。昨日言ってた装置、もらいにきた」
「一色が?」アミさんが唇を噛む。
「ヒイロ? へー、あの人そんな名前なんだ」
「装置は、もう少し。昨日の場所で待ってて。人がいると集中できないの」そういうとアミさんはラボに入っていった。
いつも冷静なアミさんがここまで冷静さを失うのは珍しい。やはりやっと吸血鬼を倒す機会を得られたことがうれしいのだろうか。そう思いながら、さっき一色という女に会った場所まで戻った。
一時間半ほどの時間が経過して、俺が暇を持て余しているとアミさんが近づいてくる音がする。
「装置。できたよ」すっかり元のようすに戻ったアミさんが透明な球体の付いたベルトを手渡してくる。グレネードポーチの付いたベルトにも少し似ているそれは思ったより重かった。特殊な素材で作られているのかもしれない。
「ここからものをいれれば燃えるようになってる。抜いてすぐの草でも燃えるようにしてある」球体の上部にあるフタのようなところを、開けてみせて言う。
すぐに着けてみて体に合っていることを確認すると、アミさんにお礼を言い、『扉』のある森に向かった。




