第十六話 転換
俺と姉崎は見慣れた草木が生い茂る森の入り口に立っていた。
「じゃあな」そう声をかけて俺は歩き出した。
「待ってよ」姉崎が追いかけてくる。
「今度はなんだ。戻ってきたんだ、後は一人でもなんとかなるだろ」
「ノアはどうなったの? あの子はどう見てもノアにそっくりだった。私は、ノアがあの子じゃなくてもあの子を助けたい。だから、手伝ってよ」
「嫌だね」
「なんで? 吸血鬼と関わり、あるんでしょ?」
「あるにはあるが、俺は殺す側だ」
「え?」
「俺はお前の味方じゃないってことだよ。わかったら馬鹿なこと言ってないで帰れよ」
今度こそ俺は姉崎と別れて、研究所に向かった。
久しぶりに研究所に入ると、アミさんが俺を出迎えた。
「ようやく来た。で? 勝手な行動の謝罪はないわけ?」腕組みをして厳しい顔つきだ。
「悪い、とは思ってる。だから、詫び代わりに情報を提供しに来た」
「ま、『扉』はまだ閉じてないしそれで許したげる。それで?」
「ああ。まず、ヘゲモネがいた。それに向こうには吸血鬼以外に悪魔の類いもいるらしい――」俺は向こうであったことを洗いざらい話した。
女王がスズキ ノアという人間と何らかの関わりがある可能性が高いことと、一緒にいた姉崎の存在以外は。
「――。それにしても、女王に『悪魔』。最悪。ちょっとここで待ってて」
考え込むようにいうとアミさんはどこかへ行ってしまう。
五分ほどして、アミさんは興奮冷めやらぬといったようすで戻ってきた。
「所長の判断で正式に出撃が決定した。正式な部隊が出撃するのは明後日の夜。あなたには、偵察任務も兼ねて明日の夜には向こうに入ってもらう。向こうでの行動はあなたの判断にまかせる。明日の夜までには火を絶やさない装置を作らせておく。今日はしっかり休んで明日に備えて」
「わかった」俺はそう言うと、研究所を出て家へと向かった。




