第十二話 『悪魔』
目を開けると、そこはいつだか教科書でみた西洋の城のような内装だった。
いや、よく見ると部屋の中のガラスのような透明な檻のようなものに入れられている。
「ここ……は?」意識が戻ったらしい姉崎に問いかけられる。
「さあ? さっきの男にはめられたな」
「え?」
「俺たちが奴に近づいたら意識が飛ぶ仕掛けになってたんだろ」
「どうやって?」
「奴らお得意の『魔法』ってやつだろ」
「ご名答」いつの間にかさっきの男が俺のすぐ後ろに立っていた。
こいつには本当に気配がない。
「先ほどはゆっくりしている暇がありませんでしたからね。私の名前はフェリクス。『悪魔』といえば、分かりやすいですかね。ようこそ、『地下』へ。鈴木 了さん。姉崎 璃芭さん」俺たちのことは知っているっていうことか。
そこへいきなり目の前に大量の乾いた草の束とライターのようなものを突き出される。
「これは?」
「今はこのガラスの空間で遮断していますが、
『地下』の大気にはあらゆる魔法、魔術の元である『魔術因子』というものが含まれています。
これは人間の人体に非常に有害で、長期間これにさらされると吸血鬼や魔女になります。
この『魔術因子』は熱や光で分解されるため、何かを燃やし続けていれば、『魔術因子』による吸血鬼化、魔女化の進行を抑えることができます。
それと、『魔術因子』の集合体のような私たち『地下』の住人に触れると、その者の持つ力が強ければ強いほど人間の体を侵食します」
「なんのつもりだ?」どうして俺らに有益な情報を与えるんだ?
「あなたたちの探している人には会わせて差し上げますよ。ただ、時間がまだ満ちていない。」俺の質問の意図とは的を外した返答をする。
こいつ、わざとか?
「でも私」
「時間のことならお気になさらず、ご家族が異変に気付かれる前にお帰りいただける予定です」今度は先回りして姉崎に返事する。
ってことは、さっきの絶対わざとだな。
「なんでそれを?」
「よく分からないが、俺たちをあの赤いカードでここに呼び出したのはこいつってことだ」男の代わりに俺が答えた。
「え?」
「俺たちはあれをスズキ ノア宛だと思っていたけど、本当は俺たち宛だったってこと。俺たちはこの男にはめられたんだよ」
「ええ。結構。素晴らしいです」自分の悪巧みを暴露されてもこの余裕。
凄まじいな。
「さすがは特殊な訓練に耐えてきた方だ」
そこまで知っているのかと驚いて目をみはる。
「ご安心を。彼女はご存知ありませんよ? 私が目的を果たしたら、後はどうぞ」言葉に窮した俺に『悪魔』はそう言う。
『悪魔』は俺たちの目には見えない何かを見つめるように虚空を見つめると不敵な笑みを浮かべ、空に溶けて消えた。




